[過去ログ] 【コスパ】DALI OBERON/ZENSORシリーズ 13【未知】 (1002レス)
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792: 2019/10/24(木)14:20 ID:FiAs1wMo(6/10) AAS
「お、お兄ちゃん…………」
「だ、大丈夫だ。お前は、俺が守るから」
一緒に入水自殺しようとしといて何言ってんだよ。
その気概はもっと早く発揮しとけ。
「それで? 名を寄越すなら、俺の召使として生かし、働きによっては泉から出してやるが?」
「…………わかった。俺の名は…………ヘンゼル。こっちはグレーテ、ルだ」
はい、偽名いただきましたー。
魔法使い舐めんなよ。
793: 2019/10/24(木)14:21 ID:FiAs1wMo(7/10) AAS
3章(タイトルネタ切れ)
仮名、ヘンゼルとグレーテルを拾った俺は、さっそく二人をこき使うことに決めた。
ま、ご主人さまに偽名名乗るなんて舐めた真似したお仕置きだ。
俺が本物の精霊だったら、今頃問答無用で呪われてたぞ。
「寝る間も惜しんで俺のために働け! それがお前たちの役目だ!」
それっぽく手を広げて命じてみたら、兄ことヘンゼルに冷めた視線を返された。
妹ことグレーテルは、何度も瞬きをして首を傾げる。
「働くって、何をすればいいんだ? こんな水の中で、俺たちにできることがあるとは思えない」
「大抵のことは魔法でどうにでもなるがな。ちゃんとお前たちように仕事は考えてやる」
「今から考えるのか」
省2
794: 2019/10/24(木)14:21 ID:FiAs1wMo(8/10) AAS
というところで、ちょっと魔法を使う。これは俺が考えた魔法で、相手の基本的な情報を読み取れるというもの。
王宮で人の名前とか血縁関係とか覚えられなくて作った魔法なんだよな。
えーと、ヘンゼルの本名はヨハネス=ドルフ。グレーテルはマルガレーテ=ドルフ、ね。
ドルフってのは家名じゃなくて、村を表す名前だ。つまり村人っていう身分を表す。
が、気になる項目が魔法にある。血筋だ。
こいつら、水の精とのハーフだな。水の精が女って知ってたのは母親が水の精だったからか。けど兄妹の反応からして、正体は秘密にしてたんだろうな。
水の精は誘惑の性質があるから、たまに人間の男と結婚する奴いるんだよなぁ。
「いつまでも座り込んで怠惰に耽るな。立ってこっちにこい」
「なんだその言い方!」
「あの、泉の精さま!」
省9
795: 2019/10/24(木)14:22 ID:FiAs1wMo(9/10) AAS
「買い取ってって、金があるのか…………」
おっと、そこで俺への不信深めるのかよ。
「お兄ちゃん。こんな水の中におうち作れるなんて、すごい精霊さまだよ、きっと」
「魔法の腕は、確かみたいだけど…………」
うわー、背中に猜疑の視線が突き刺さるー。疑り深いな、ヘンゼル。
いや、こうしてなきゃここまで妹守ってこれなかったってことか?
で、行き場失くして、このままじゃ死ぬってわかったから、命の終わりは自分で始末つけようって? ふざけんな!
死んだら負けなんだよ。
国が相手で歯が立たなくて、強がってその場を去ることしかできなくてもな、自分を陥れた奴らの思うままに死んでやる必要なんかないんだ。
俺はちょっと、復讐とか見返しやるなんてやる気起きない年齢だけどさ。お前らはまだ子供なんだ。今から巻き返しの未来を見据えて生きていいはずだ。
省8
796: 2019/10/24(木)14:23 ID:FiAs1wMo(10/10) AAS
「そんなみすぼらしい体では、身体能力の伸びも見込めないだろう。少しは俺の役に立つように魔法でも覚えてみるか? まぁ、覚えられるだけの頭があったらの話だが」
「はぁ? 言ったなてめぇ…………」
いや、本当、ヘンゼルくん? なんでそんなに喧嘩っ早いの?
睨み殺しそうな顔するなよ。教える気が失せるから。
俺、小さい時から天才って持て囃されたから、肉体言語とか嫌いなんだよ。
「お兄ちゃん、泉の精さまにそんな口きくのは」
グレーテルはいい子だなー。
「やるなら魔法を覚えてからでいいでしょ?」
省9
797(1): 2019/10/24(木)14:28 ID:8POCU8vg(1) AAS
外部リンク[html]:hissi.org
798: 2019/10/24(木)15:21 ID:EIgWywm0(1/13) AAS
「できないことを仕事としてやらせるなんて、卑怯だぞ!」
「ほう? こんなこともできないのか。では、手本を見せてやろう」
俺はヘンゼルの手から斧を取ると、木を一本土台代わりの切り株に置く。
で、魔力を流して一振り。
カッコーンといい音を立てて、木は二つに割れて飛んだ。
やべ、ちょっと力んでやりすぎた。
薪割りって、一発で両断するもんじゃないんだよ。色々危ないから、斧刺して、もう一回木ごと打ちつけて割るべきだ。
そうしたらできた薪も今の俺みたいに飛んで行かない。
「とまぁ、ここまでしろとは言わん。普通に薪割りをしていろ」
俺から斧を受けと取ったヘンゼルは、もう一度刃がないことを確認している。
省12
799: 2019/10/24(木)15:22 ID:EIgWywm0(2/13) AAS
そこ、怯えるんじゃないの?
うーん、この子は良くわからんな。ヘンゼルくらい鼻っ柱が高いなら、俺も自分の子供の頃に覚えがあるから扱いやすいんだけど。
「やります! お仕事、やらせてください!」
なんでかやる気満々になった。
えー? これって簡単な炊事やってもらおうと思ってたんだけど、意気込みを買ってちょっときついことやらせるべき?
「グレーテ、ル! こんな変質者みたいな奴に何を言ってるんだ!」
「お前こそ何言ってるんだ、こら! 誰が変質者だ、誰が!」
腹立ったので、ヘンゼルには作る薪を四本追加した。
家の中に入っても、ヘンゼルは窓から室内を窺ってくる。
変質者みたいなことはしねーよ!
省6
800: 2019/10/24(木)15:24 ID:EIgWywm0(3/13) AAS
>>797
「もっとドロドロの薬品とか、なんの痕かもわからない染みとか」
「何を想像していたんだ、何を」
ちょっと想像力逞しすぎじゃないか?
「魔法使いなら怪しい本とか、大きな鍋とかがあると聞いてたんですけど。泉の精さまは違うんですね」
「そうした研究をする者もいるが、研究とは求めるもののある者がやることだ」
「泉の精さまには、求めるものはないのですか?」
「求めて得たものが、永遠に己の手の内にあるわけではない。求めることは、何かに束縛されることだ。得るだけ無駄だ、甲斐もない。そう知っているから、最初から求める気も起きない」
期待に応えようと王宮に上がって、地位を得て、失った。
あの国から持ち出す物などなくていい。
省2
801: 2019/10/24(木)15:28 ID:EIgWywm0(4/13) AAS
「家事はできるか?」
「お、お掃除なら…………」
「炊事は?」
「まだ早いって、包丁も持たせてもらえなくて」
あちゃー、家事できないか。
近所じゃ、この年頃から教えてたと思ったけど、教える前に母親殺されたみたいだ。
「そうか、それなら拭き掃除と洗濯を基本的な仕事にしよう」
「炊事も、私、覚えます!」
おっと、またやる気が出て来たな。
けど、そう簡単に俺が与える仕事をクリアできると思うなよ。
省8
802: 2019/10/24(木)15:30 ID:EIgWywm0(5/13) AAS
4章
自殺志願の兄妹を拾って、三カ月が経った。
泉が、魔法の暴発で水量を減らした。
「おーまーえーはー! 基礎さえまともにできない奴が、なんてことしてくれたんだ!」
俺は黒く焦げた家の外壁を叩いてヘンゼルを叱りつけた。
803: 2019/10/24(木)15:39 ID:EIgWywm0(6/13) AAS
ストック尽きて来たから
文字数減らす
804: 2019/10/24(木)15:47 ID:EIgWywm0(7/13) AAS
「本当に馬鹿か!? 物覚えがいいだけの馬鹿なのか?」
「うるさい! 泉の精だって、魔法は使って初めて自分のものになるって言ってただろ!」
「使う前段階すっ飛ばすから、馬鹿だって言ってるんだ! お前は水の属性に偏ってるから炎の属性は扱えないと言っただろう!」
「制御には失敗したけど、こうして魔法は発動してる! 扱えないなんて適当なことを言うな!」
「制御できない魔法なんて、扱えないのと一緒だ! いいか、使えないんじゃない。扱えないって俺は言ったの!」
俺は壁の焦げを白く戻しながら、ヘンゼルに説教を続けた。
なのに、ヘンゼルは俺が魔法を使う手を凝視して真面目に説教を聞かない。
805: 2019/10/24(木)15:47 ID:EIgWywm0(8/13) AAS
「なんでこんな恰好つけの、中身子供みたいな奴に、こんな簡単に使えて…………」
「おうこら、正真正銘のお子様がなんだと?」
「ふん!」
「そっぽを向くな! 説教はきちんと聞け! 今回は怪我がなかったから良かったがな、安全策も講じないままに攻撃力の強い魔法を試すんじゃない!」
806: 2019/10/24(木)15:48 ID:EIgWywm0(9/13) AAS
いや、男の子がそう言うのに憧れるのはわかるよ?
誰かに見られて努力するより、努力する姿隠してどーんとお披露目したいのもわかるよ?
けどな、下手したらお前がドーンと爆発するからな?
この天才魔術師も、魔法で怪我は治せても、命まではどうしようもないから!
取れたてピチピチの腕なら一本くらい繋げられるけど、命とかはもう人間の領分離れてるから!
807: 2019/10/24(木)15:54 ID:EIgWywm0(10/13) AAS
「ヘンゼル、当分薪割りと書き取り以外禁止。お前の魔法は俺が許すまで封印する」
「は!? そんな横暴!」
「横暴じゃない! 教育的指導!」
俺は突きつけた指を弾いて封印をかけた。
すぐさま魔法を使おうとするヘンゼル。
もちろん、発動するわけがない。俺の魔法が干渉して魔法が形にならないようにしてるからな。
808: 2019/10/24(木)15:55 ID:EIgWywm0(11/13) AAS
「嘘だろ!? どうやるんだよ、この魔法?」
わー、キラキラした目で見上げられたー。
「お前…………。その知的好奇心は魔法使い向きなのになぁ。焦ってもいいことないぞ」
「…………焦ってなんて」
「お説教終わりましたか?」
またヘンゼルがそっぽを向いたところで、グレーテルが窓から顔を出した。
片手には木製のお玉を持っている。
809: 2019/10/24(木)15:55 ID:EIgWywm0(12/13) AAS
「お昼、できましたよ」
「グレーテルは着実なのになぁ」
「うるさい!」
はーん、妹への見栄か。恰好つけはどっちだよ。
兄貴っていうのは大変だな。
俺は魔法の才能を見出されて早々に養子に出されたから、兄弟という存在に実感がない。聞いた話じゃ、上にも下にもいたはずだけど。
810: 2019/10/24(木)16:15 ID:EIgWywm0(13/13) AAS
家の中に入って、当たり前のようにグレーテルが欲しがる皿やコップを用意するヘンゼル。その行動に迷いはなく、グレーテルもやってもらうことを当たり前に受け入れている。
目に見えない信頼が、確かに感じられるやり取りだ。
811(1): 2019/10/24(木)16:26 ID:xlxq+KyA(1) AAS
イキリト居着いちゃったのか
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