◆三島由紀夫の遺訓◆ (511レス)
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135: 2011/02/14(月)12:40 ID:PWfHU2J0(2/4) AAS
第二は、著者自身についてのことであるが、人間の生命力といふもののふしぎである。
舩坂氏の生命力は、もちろん強靭な精神力に支へられてのことであるが、すべての科学的常識を超越してゐる。
あらゆる条件が氏に死を課してゐると同時に、あらゆる条件が氏に生を課してゐた。まるで氏は、神によつて
このふしぎな実験の材料に選ばれたかのやうだ。氏は、水も食もない戦場で、左大腿部裂傷、左上膊部貫通銃創二ヶ所、
頭部打撲傷、右肩捻挫、左腹部盲管銃創、さらに左頸部盲管銃創といふ致命傷を受け、一旦あきらかに戦死したのち、
三日目に米軍野戦病院で蘇り、さらにペリリュー収容所で、敵機を破壊しようと闘魂を燃やす。
しかも氏が生を無視しようとすればするほど、死もあとずさりをするのである。もちろん、氏に課せられた死の条件が
十であるとすれば、その条件がたとひ一であり二であつた人も、一方では現実に命を失つてゆく。それは意志とも、
あるひは勇気とも関はりがない。氏の勇猛果敢が、氏の命を救つたすべての理由であつたといふわけではない。

三島由紀夫「序 舩坂弘著『英霊の絶叫』」より
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