◆三島由紀夫の遺訓◆ (511レス)
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309: 2011/03/23(水)14:03:09.53 ID:Dmee37i8(6/6) AAS
ナショナリズムがかくも盛大に政治的に利用されてゐる結果、人々は、それが根本的には文化の問題であることに
気づかない。九十年前、近代的武器を装備した近代的兵営へ、日本刀だけで斬り込んだ百人のサムラヒたちは、
そのやうな無謀な行動と、当然の敗北とが、或る固有の精神の存在証明として必要だ、といふことを知つてゐた
のである。これはきはめて難解な思想であるが、文化の全体性が犯されるといふ日本の近代化の中にひそむ危険の、
最初の過激な予言になつた。われわれが現在感じてゐる日本文化の危機的状況は、当時の日本人の漠とした予感の中に
あつたものの、みごとな開花であり結実なのであつた。
三島由紀夫「日本文化の深淵について」より
330: 2011/04/14(木)12:34:10.53 ID:81ES1X5G(1/2) AAS
思想的立場からこの著者に偏見をもち、かういふ本をことさら避けてとほる人たちが居れば、さういふ人たちは
私には狭量に思はれる。何はあれ、宮崎氏は、道徳的善悪を離れて、自分の感じ方に忠実なのである。
私は別にかつての軍隊の讚美者でもなく、軍隊生活の経験も持たない身は、それについて論じる資格もないが、
大分前に、「きけ、わだつみの声」であつたか、その種の反戦映画を見て、いはん方ない反感を感じたおぼえがある。
たしかその映画では、フランス文学研究をたよりに、反戦傾向を示す学生や教師が、戦場へ狩り出され、
戦死した彼らのかたはらには、ボオドレエルだかヴェルレエヌだかの詩集の頁が、風にちぎれてゐるといふシーンが
あつた。甚だしくバカバカしい印象が私に残つてゐる。ボオドレエルが墓の下で泣くであらう。日本人が
ボオドレエルのために死ぬことはないので、どうせ兵隊が戦死するなら、祖国のために死んだはうが論理的であり、
人間は結局個人として死ぬ以上、おのれの死をジャスティファイする権利をもつてゐる。
三島由紀夫「『青春監獄』の序」より
451: 2011/07/19(火)20:22:14.53 ID:cPSUDHt5(4/5) AAS
三島:ぼくは死の問題について彼ら(全共闘)に期待していませんよ。つまり彼らが革命のために死ぬかどうか
という点を、ぼくはずっと注意して見てきたけれど、彼らは革命のためには死なないね。明治維新のときは、
次々に志士たちが死にましたよね。あのころの人間は単細胞だから、あるいは貧乏だから、あるいは武士だから、
それで死んだんだという考えは、ぼくは嫌いなんです。どんな時代だって、どんな階級に属していたって、
人間は命が惜しいですよ。それが人間の本来の姿でしょう。命の惜しくない人間がこの世にいるとは、ぼくは
思いませんね。だけど、男にはそこをふりきって、あえて命を捨てる覚悟も必要なんです。維新にしろ、革命にしろ、
その覚悟の見せどころだとぼくは思うんだが、全共闘には、やっぱり生命尊重主義というか、人命の価値が
至上のものだという戦後教育がしみついていますね。
三島由紀夫
古林尚との対談「三島由紀夫 最後の言葉」より
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