◆三島由紀夫の遺訓◆ (511レス)
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453: 2011/07/20(水)23:44 ID:elGshaHu(1/2) AAS
古林:私の場合は海軍のパイロットで――といっても、特攻隊には直接の関係はありませんでしたが、(中略)
最近、いろんな記録やら写真集が出版されるでしょう。あれの巻末によく特攻隊員の名簿なんかが掲載されて
いますね。あそこに知っている名まえがずいぶん出てくるんですよ。(中略)どうしてこの男が死んで、ここに
私が生き残っているんだろうかと、そんなことを考えると、いたたまれない気持ちになります。私が生きているのは
たんなる偶然なんです。あいつがおれのかわりに生きてたとしたら……と、思うたびに、戦後の二十五年は一挙に
空白となって、戦争下の記憶へたちまちショートしてしまうんですね。
三島:その気持ちはよくわかります。ぼくも、だから、たとえば「最後の特攻隊」なんていう映画は、絶対に
観にゆきません。(中略)ぼくはヤクザもの映画なら出かけるけど、「最後の特攻隊」なんてのは観たくない。
古林:私も観たくありませんね。それにウソのような気がするんです。
三島由紀夫
省1
454: 2011/07/20(水)23:45 ID:elGshaHu(2/2) AAS
三島:同時に ぼくがウソだと思ったのは「きけわだつみのこえ」でした。あの遺稿集は、もちろんほんとに
書かれた手記を編集したものでしょう。だが、あの時代の青年がいちばん苦しんだのは、あの手記の内容が
示しているようなものじゃなくて、ドイツ教養主義と日本との融合だったんですよね。戦争末期の青年は、
東洋と西洋といいますか、日本と西洋の両者の思想的なギャップに身もだえして悩んだものですよ。そこを
突っきって行ったやつは、単細胞だから突っきったわけじゃない。やっぱり人間の決断だと思います。それを、
あの手記を読むと、決断したやつがバカで、迷っていたやつだけが立派だと書いてある。そういう考えは、
ぼくは許せない。〈わだつみの像〉が京都でひっくりかえされたが、ぼくは快哉を叫びましたね。ぼくは一面的な
考え方はどうしても嫌いなんです。
三島由紀夫
古林尚との対談「三島由紀夫 最後の言葉」より
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