[過去ﾛｸﾞ] 〜山尾悠子スレッド集成第二巻〜 (131ﾚｽ)
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1(2): アルゴールの名無しにて 2010/03/07(日)20:36 AAS
「憂愁の世界の涯ての涯てまで、累々と滅びた石の都の廃墟で埋まっている。まずはそう思え。
三百六十度の、不安な灰色の大俯瞰図――その何処にも動くものがない。
天球は一枚のぶ厚い痰に似た膜、永遠の黄昏どきである物憂い日蝕のようだ。
そして偏執的な細密画を見るような、地平線の涯てまでを執拗に刻みつくした石の大厦高楼群――。
この世界を領するものは、見捨てられたそれら建築群の豪奢と荘麗、ものわびしい廃墟美。
大殺戮の果てたあとの、不吉な静寂。そして沈滞した憂悶の気分、それだけであると思え。
神々の没落をとうに見送り果てた筈のこの世界に、ある日変化が起きたと思え。
動くものが現れたのだ。地平を越え、嬰粟粒ほどに小さく、しかし確実に動いてくるものが。」
(「傳説」)
・拾遺
省2
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