ここだけファンタジー世界世界長期スレpart1 (995レス)
上下前次1-新
989(1): 全身を茶色で覆われた少女@人獣 2014/05/31(土)02:21 ID:28/o1OnM(2/3) AAS
>>987
兄さんの手が、母さんから離れる。待っていましたと言わんばかりに、母が男へと迫る。
こうなることはわかっていたから、すぐに動けた。
兄さんはしっかりしているように見えて、どこか抜けているんだから。
母が走るのと同時に、兄さんのコートから手を離し、一気に足を速める。
できれば母がアイツに牙を立てる前に、その間に割り込みたかった、それはできなかった。
数倍も、母の方が早くアイツへと距離を縮め、押し倒していた。
さすがは魔獣、と言ったところか。ううん、感心している場合じゃない。
このままでは、良くないことが起きる。
「……」
でも、できることと言えば、こうしてすぐ傍で見守ることぐらい。
アイツの顔を見て、たぶん、睨み付けて。母の方を見て、やっぱり、睨み付けて。
ここで殺したって、何にもならないでしょ? だから、もう帰ろう? そう言いたかったけれど、なにも言えない。
ただ、二人の顔を交互に見るぐらいしか、できやしない。
母は、硬直していた。
迷っている、のだと思う。色々なことで。
「……たぶん、納得できないのは、もっとも憤っているのは、自分のこと……」
自分でも知らず知らず、口が開く。
「どうして自分がそこにいなかったのか、どうして自分が生きているのか。
どうして、自分じゃなくって、あの子が……姉さんが、死んでしまったのか」
まるで自分自身に言い聞かせるような口調で、自分でも次第に納得していく。
きっと母は、そのことで怒っている。
その怒りは、誰にもぶつけることができやしないのだろう。ただこの人、一人だけを除いては。
そして、その人が目の前にいる。じゃあ、ぶつけないわけがないの。
「……どうして、姉さんが死ななければならなかったのか。どうして守ってくれなかったのか、って……」
きっと、母さんも泣き叫びたいのだと思う。
そうしないのは、なにを考えるよりも襲いかかってしまったのは、自分が魔獣だからか。
魔獣は、涙を流すことができないからか。
上下前次1-新書関写板覧索設栞歴
あと 6 レスあります
スレ情報 赤レス抽出 画像レス抽出 歴の未読スレ AAサムネイル
ぬこの手 ぬこTOP 0.143s*