【夢か】SSスレ【幻か】 (528レス)
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259: Origin 〜THE BLACK BLOOD〜 12/14 2014/11/27(木)23:36 ID:ZCHlt7mo0(68/70) AAS
(……父親は、世界を苦しめてる。母親は、俺に悪意を持っている……だから、俺はダメなんだ。だけど、そうじゃない……はずだ)
上手く言葉に出来ない。それを上手く言葉にしなきゃならない。今を諦めたら、俺はもう本当に死にたくなる――――そんな直感があった。
(俺は……俺は、何も悪くない。そのはずだ! 色々スれはしたけど、人を傷つけたりした、つもりは無い……!
悪いのは、アイツらなんだ。だから、俺が苦しんでる……でも、それっておかしいだろう?)
まるっきり、それは中学生の勘違い哲学みたいなものだ。だが、それは俺には必要で……そして今、大事な何かが見つかりそうなのは事実だ。
(俺が苦しむのは『運命』なんかじゃない。『悪い奴』が居るからなんだ……! 原因と結果……『因果関係』だ……!
誰かが悪いから、誰かが悲しむ……良くある話じゃないか。俺の場合もそうなんだ……親がどうだろうが、俺が責められる謂われは無い……!
でも『良くある話』なんだ……じゃあ、諦めるしかないのか?
――――でも、その『良くある話』を、みんな放っときっぱなしにしてるだろ? ……あって良いのかよ、そんな事……!)
絶望が、憎しみにすり替わっていく――――『悪』への憎しみに。怒りは、人間の精神の持つ、もっとも危険で強いエネルギーだ。
(……やってやるさ。それが俺の『復讐』だ。俺は放っておきはしない。誰かを……『謂われの無い誰か』を苦しめる様な『悪』は、俺が絶対に……!
……やれる。やれるさ。アコーディオンの言葉が、確かなら……。そしてそれは、俺だけの、俺だけにしかない、俺だけにしか出来ない、オンリーワンだ)
――――それは、確かな萌芽だった。その後の俺の全てを決定した、その最初の一歩だった。
それから、折に触れて常に反芻し、更なる思索を重ね、自分の人生を自問する、その最初の一歩だった。
『悪』は、理由の如何を問わず皆殺しにする。その、最初の一歩だった。
「院長先生! ……我儘を言いますが、俺はここを出ます! やらねばならない事があるんです!」
「……藪から棒に……っ、お前……何かを決めた様な、そんな目をしているな……だが、それは危険な目だ。私には分かる……何を、勘違いしてしまったんだ?」
孤児院に戻った俺は、一も二も無く院長室に飛び込んだ。院長先生は相変わらずの静かな顔で、俺に向かいあった。
相変わらずの厳粛さだ。しかし俺はもう折れない。確かに己に決めた事がある。「筋金が通った」とでも言えば良いんだろうか。今ならこの重み、耐えられる。
「何も言えません。そして、中学を出たら、恩返ししたいと思ってましたが、それも出来ないかも知れません。
本当に無礼で、不躾で、恩を仇で返す様な真似だって事は分かっています。でも、それでも俺は、俺にしか出来ない事を見つけたんです」
「……………………」
あの厳しく静かな目が、俺を覗き込んでくる。だがもう一度言おう――――俺はもう折れない。ハッキリと、対等に立ってみせる。俺だけの人間の価値を以って。
「……今私が何を言っても、もう無駄な様だな……分かった。その決意があるなら、もう一度ちゃんと『けじめ』をつけてきなさい」
「え……?」
「話そうと思っていたところに君が来た……。お母さんが亡くなったそうだ。前回は中途半端だったのだろう?
……これが本当に、君とお母さんの『最後の最後』だ。葬儀も挙げずに火葬するらしい。その場にだけは、出席しなさい
そして然る後……出発しなさい。自分の足で生きていく、その覚悟が出来たんだと言うならな……それが実を結ぶ事を、私は祈ろう……」
「……ありがとうございます! 出来ないかもしれない、なんてさっきは言いましたが……必ず、この6年間のご恩は、お返しします……!」
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