ＳＳスレ（エログロ） (727ﾚｽ)
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46: 流血衛星◆aP0ZjXi03Y 2006/01/19(木)20:58 ID:Wi2t5R9.(2/8) AAS
灰まみれの肌をなめてみるが、酸味もアルカリの鹹味もない。害のない中性鉱物だ。
「偽装にはちょうどいい。夜でも寒くもないんだ、二枚しかない服は高山を登る時まで温存したほうがいいかなあ」
ふたたび耳をすまし、今度は目も使ってあたりを観察する。
昼間に下草を踏みわけると飛び出してきた、カゲロウに似た細ろげな羽虫が、夜になってそこかしこで宙を舞い、惑星光に照らされ光っている。
近くを舞う一匹にふうっと息を吹きつけたが、特に反応しない。しいなに敵意をもたない生き物もいる。
少女の小指に隠れてしまうほどの小さな生き物は、四枚の糸羽を鞭毛のように羽ばたかせ、らせんを描いて夜空へ昇っていく。
サボテン木のこずえのさらに上方に、羽虫の群れが川のような流れを作って、あたりから飛び出す白いものが次々に合流していた。
しいなは羽虫たちを見送り、目は笑いながらも肩を落としてつぶやいた。
「仲間がたくさんいるんだ。いいなあ。繁殖でもするのかなあ」
羽虫たちの輪舞のはるか向こう、黒々と深い宇宙に意識が吸い寄せられた。表情を引き締める。
「あのガス惑星のリングは方角の特定に使える。でっかい方位磁石が浮いてるようなもんだ」
サボテン木など利用して空中に釣り糸を張り、リングから読み取れるガス惑星の赤道面と天球での移動方向の差異を調べる。
予想通りの結果が出た。
リングと水平に張った糸に通したじゅずだまのように、ガス惑星が天球を移動していた。しいながいる衛星の自転軸と公転軸は一致している。
ガス惑星とこちらの位置関係を脳裏に浮かべ、地球と月の関係に当てはめると、違和感があった。
「普通の衛星は潮汐力の影響で、地球の月のように自転と公転の周期が一致しているのに。この衛星は自転が速い。誕生して若い星系なのかな」
生物が存在する環境は短い時間で作られるものではないと思うが、天体の運行にそれほど詳しくない。
解けない謎に凝り固まった頭をほぐそうと、気分転換に即席背嚢を開くと、回収してあった自動車用のレーダー探知機が目についた。
表示器のダイオードがほのかに発光している。
「電源を落とし忘れたかな？ もったいない」
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