SSスレ(萌え)8 (188レス)
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113: 陸士長 [sage] クレタ島の南方 リビア海 「帰ってしまうな……畜生、港に着くまでずっとアイツが頭上に居ればいいのに」 頭上を哨戒機が通過して去っていくのを、アレクサンドリアから出航しクレタ島に向かう大型タンカーの見張りは不安そうに見送った。 「アイツが出勤してきたトコまでもうすぐだ。この辺はクレタ島に常駐している対潜部隊の哨戒範囲だから大丈夫さ」 「そうだと良いがなぁ……」 数回大西洋航路のタンカーに乗船し、一度は被雷して海に投げ出された事もある見張りは尚も不安そうだ。 もう1人の見張り、シンガポールから印度の航路で勤務していた所為か緊張感が足りない男が笑いながら言う。 「ほら見ろ、夕暮れが綺麗だぜ。アジアの日暮れも良いが地中海も悪くないな」 「今は見張りの時間だぞ、良いからしっかり見張れ……んっ!?」 「どうした!?」 双眼鏡を覗いてた片方が慌てた口調で言葉を途切れさせ、もう1人も慌てて双眼鏡を覗きこむ。 「なんだ、イルカか……」 「イルカかよ、そんなもんで騒ぐんじゃねぇよ」 「だってあのでかい尾びれが急に海面に浮いたから潜望鏡かと思ったんだ……」 2人がそう言い合っている間、イルカはタンカーの側面と並行するように泳いでいる。 近寄ったり離れたり、先行したり背後に回ったりと忙しなく泳ぎ回っていた。 「お、アイツ、こっちをじっと見ているぞ」 「ハハ、俺達をお仲間と勘違いしてるのかね。可愛いもんだ」 「バーカ、こんなでかいイルカが存在するかっての!」 「居るかもしれないぞ? ドラゴンや吸血鬼なんてファンタジーな生き物が存在するんだからな」 軽口を叩き合っていると、何時の間にかイルカは姿を消していた。 良く見れば遠くの方で海面上に跳ねる姿が夕暮れの朱に混じって見えた。 「行ってしまったな」 「ああ、俺達のクレタとは違う方向みたいだけどな」 少し寂しく感じたが、2人は気持ちを切り替えて双眼鏡を覗きこんだ。 「お、おい!」 「今度は何だよ、鯨でも出たか?」 「ち、違う、雷跡だ!! 2、3……魚雷が3本来る!!」 慌てて片方がブリッジへの受話器を取る。 「右舷から魚雷が3本接近して来ます!! 直ちに回避を!!!」 しかし、彼らの発見は遅すぎた。 巨体のタンカーでは舵の効きが遅く、3本の魚雷は船体の横っ腹で大爆発を引き起こした―――。 そしてその爆発とタンカーの最後を、海面から顔を出した先程のイルカがじっとみていた。 「1番、2番、3番命中を私の使い魔が確認。目標は機関停止の上、爆発炎上傾斜しつつあり。 喜べ諸君、今日のディナーは10000級の大型タンカーだ。腹一杯食えるぞ」 閉じていた目蓋をゆっくりと開き、ルツィア・ヘンデルバンド大尉は精神集中を解いてイルカとのパスを切った。 ウルディアーナ級の『Ⅶ』を率いる女艦長は、脂汗を拭い獰猛な笑顔を浮かべて部下達に告げる。 「代わりに、クレタの英国空軍はガス欠で腹ぺこになる訳だがな。 厨房に伝えてくれ、祝杯はトゥーロンに戻ってだが、夕食は特配だとな!」 司令室に抑え気味の黄色い歓声が響き渡った。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/113
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