SSスレ(萌え)8 (188レス)
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158: F世界逝き [F世界逝き] F世界逝き http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/158
159: F世界逝き [F世界逝き] F世界逝き http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/159
160: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 基本的に日本が不利な世界観ですが、果たして救援は間に合うのでしょうか。 と色々考えさせられながら続きを待ちます。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/160
161: F世界逝き [F世界逝き] F世界逝き http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/161
162: パトラッシュ [] 「東京の暗黒決戦」の震源となる策謀のひとつは東京で吉田らの密談が行われる少し前、中華民国臨時首都が置かれた四川省重慶市郊外の古ぼけた民家から始まっていた。みすぼらしい外見にはおよそ不釣合いに巨大な太極旗が掲揚され、白木の板に『大韓民国臨時政府』と大書された看板が館の主を示している。この日、国民政府陸軍旗の小旗をつけた米国製高級車が滑り込んできたことが舞台の開幕となったのだ。 「帝国の龍神様」サイドストーリー3(陰謀編:某作品とのクロスオーバー) 「そ、それは本当なのか? 彼がチョッパリ(日本人の蔑称)の味方に転向したなど……」 「間違いありません、主席。京城に送り込んだ間諜からの情報です」 重慶市郊外にある古い中国家屋。壁に大きな太極旗が飾られた一室で「閣議」を開いていた大韓民国臨時政府主席の金九は、趙素昴外務部長の報告に絶句した。同席の「閣僚」たちも、信じがたいニュースに声もなく顔を見合わせる――『反日運動の闘士として有名な任侠団体「鐘路派」の若き頭目である金斗漢が、天皇への忠誠と日本の朝鮮総督府への無条件協力を公に表明した』と。 「しかし、金斗漢の光復(独立)にかける熱情は本物だった。日本軍の武器庫を爆破したり、日本の暴力団と抗争して叩き潰すなどの活躍は、知らぬ者はいないぞ」 「ソウルの総督府で記者会見した金斗漢は『独立運動に協力してきた自分は間違っていた。天皇陛下の慈愛溢れる統治こそ朝鮮に必要なのだ』と述べて、親日派の中央日報の記者すら唖然とさせたそうです。表向きの理由はそれで通しておりますが……」 「拷問か買収でやられたのか? そんなもので売国奴になり下がるとは思えないが」 「申し上げにくいのですが、京城の裏社会では金斗漢は竜州行きを約束されて光復の志を捨てたとの噂がもっぱらだと――」 金九の顎が、がくりと落ちた。他の臨時政府閣僚も呆然としている。 「つ、つまり金斗漢は、あの竜の支配する異世界とやらで女を好き放題にできることを、光復の志より優先したのだと? そんな馬鹿な!」 「残念ですが主席、竜州には性奴隷になりたがる美女がたくさんいるという例の噂が世界を駆け巡って以来、総督府の警察はそれを利用して独立運動家に対し、日帝に従えば竜州に行かせてやるとささやいているのです。その悪魔の誘いに金斗漢だけでなく多くの同胞が飛びついてしまい、朝鮮全土で独立の気運が急速にしぼんでいます……それだけでなく、竜州行きを目指して日本軍に志願する同胞が激増しているのも事実です。ただでさえ少なくなっていたわが臨時政府への献金も急減しておりますし。状況は満州や日本の在留同胞でも同じとのことです」 「おのれチョッパリめ、卑怯な真似をして、わが民族を貶めおって!」 吐き捨てる金九に、閣僚たちも口々に日本を非難する。しかし、話はこれで終わりではなかった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/162
163: パトラッシュ [] 「それに在米の李承晩元主席から、米国外交筋を通じて連絡がありました」 「李承晩が? 今さら何用だと言うのかね」 金九の表情が一気に険しくなる。かつて臨時政府主席だった李承晩は、路線を巡り臨時政府内部での政治闘争に敗れてからアメリカへ移り、政界へのロビー活動に専念している。一貫して反李承晩派に属してきた金九にすれば、日本人の次に許しがたい政敵であった。 「実は在米同胞にも日本が手を伸ばしているらしいのです。日本に味方すれば竜州へ行かせてやるぞと。李元主席の側近がひとり、誘いに転んで情報を流していたとか。まことに恥ずべき話だが、そちらでも裏切り者が出ぬよう気をつけてほしいとのことでした」 会議室の空気が一気に冷え込んだ。いくら政敵とその同調者でも、金斗漢に続き同じ民族の同胞が日本の策略に引っかかって独立運動を裏切るとは、情けなく悔しい話だ。しかも、転向した理由が拷問や買収ならともかく、好きなだけ女を抱ける世界に行きたいからだとは恥ずかしくて声も上げられない。 「日本を非難するために公表するわけにもいきませんな。韓国人はその程度の民族だと日本側に返されたら、恥の上塗りになるだけだ……」 「ええい、世界の中心であるはずのわが韓民族の誇りはどこに行ってしまったのだ! 光復よりも女を取るとは」 「ふん、そんなことを言って、実は自分も竜州とやらに行きたいのではないかね」 「何だと貴様、その侮辱は許せんぞ――」 「やめたまえ! われわれが喧嘩して分裂するなど、日本を喜ばせるだけだ!」 金九の一喝に、閣僚たちは沈黙した。いくら独立運動の闘士とはいえ、臨時政府の小さな組織内部にも激烈な党争(派閥争い)は存在する。かつての李氏朝鮮内部で当たり前のように繰り広げられていた党争は、韓民族の宿命的な業病ではないかと最近の金九は思えてならない。かつて豊臣秀吉の朝鮮侵略時、唯一日本に勝利した李舜臣将軍も党争に巻き込まれて地位を追われ、その間に朝鮮水軍は大敗して亡国の瀬戸際に追い込まれたのだ。 情けなさに押しつぶされそうな表情の金九に、内務部長が手をあげた。 「……それにしても主席、この先どうしましょうか。残念ながら今後も、竜州行きというエサにつられてチョッパリどもへ寝返る同胞が増えるのは確実です。わが臨時政府としては放置できぬ事態ですぞ」 「どうしろと言われても――女より光復こそ第一だと、内外同胞に訴えるしかあるまい。愛国の志こそ民族の栄光そのものであると理解させなくては」 「しかし、そのための活動資金はどうします? 現状、わが臨時政府は組織維持のための費用すら賄えていません。国民政府からの支援金は、二箇月も滞ったままではありませんか。何とか揃えた光復軍部隊のわずかな人員さえ、装備や訓練にもこと欠く有様です」 内務部長の発言は事実であった。大韓民国臨時政府の財政は当初、内外の朝鮮人同胞からの献金によって支えられていたが、組織が拡大するにつれていくらあっても足りなくなり、やがて満州などで日本企業や日本人を対象にした恐喝・強盗を起こして資金を得るようになっていった。このため関東軍や満州国警察による厳しい取り締まりに遭ったほか、日本政府の外交圧力もあって外国からの送金も困難になり、この当時は蒋介石率いる中華民国の中国国民党政権(国民政府)からの支援に頼りきりの状態であった。 しかも龍神の出現以降、国民政府が日本との関係改善に力を入れているため、支援も先細り気味となっている。この場の誰も口にしないが、臨時政府が重慶中心部の比較的立派なビルから住宅街に近い古家へ移転を余儀なくされたのも、ひとえに金がないせいだ。 貧乏所帯の臨時政府の面々は、戦争とは金でするものと骨身にしみていた。さらにジリ貧となれば、自分たちは自然消滅してしまう。それこそが日本の狙いだとすれば――。 全員が言葉もなく下を向く。静まり返った会議室の扉が叩かれ、秘書が顔を出した。 「国民政府軍の周遠峰中校(中佐)が来られました。至急、主席にお会いしたいと」 「周中校が? わかった、閣議は休憩とする」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/163
164: パトラッシュ [] 主席執務室に戻った金九は、周遠峰が同道してきた男に目を剥いた。いや、ペトロというクリスチャンネームを持つキリスト教徒としては見慣れた姿だが、国民政府の軍人とカトリック神父という組み合わせはあまりに奇妙すぎた。 「初めましてぇ金九主席ぃ、アレクサンド・アンデルセンと申しますぅ」 がっしりとした長身と刈り上げられた金髪。流暢な広東なまりの中国語を話す口許には優しげな笑みを浮かべているが、分厚い眼鏡の奥底で少しも笑っていない眼差しが鋭い光を放つ。野太い声に無精髭を生やした姿は、屈強な古参兵が間違って法衣を着ているようだ。差し出された手を握った金九は、神父の握力の強さに顔をしかめた。 「それで周中校、聖職者とご一緒の用向きとは何なのです?」 「主席、こちらのアンデルセン神父はバチカンの外交官で、カトリックの教宗(教皇の中国語表現)猊下よりの提案を携えてこられました。その提案を蒋介石総統はわが国民政府のみならず、大韓民国臨時政府にも極めて有益なものと判断されたので、主席にお話しするよう総統の命を受けてきました」 「バチカン、ですと――」 カトリックの総本山に対して、これまで臨時政府側から接触したことはないし、逆に関係者と話すらしていない。困惑する金九を、アンデルセンは正面から見据えた。 「ご存知のように間もなくぅ、地球に来た五匹のドォラゴンどもがぁ東京に集まってぇ会議を開きますぅ。ナデシコとかいう日本のドォラゴンが主導してぇ、ドォラゴンと人間との平和共存を模索するためとされていますがぁ――まぁだ公表されていませんがぁバチカンが得た情報によるとぉ、実はこの会議に英米両国首脳が参加するというのですぅ」 「な!……」金九は自分の顔が蒼ざめるのをはっきりと感じた。「英米の首脳というと、チャーチル首相とルーズベルト大統領が訪日すると言うのですか?」 「ええ。しかもぉ英国と戦争中のドイツとフランスもぉ、ヒトラー総統やペタン元帥が訪日できないためぇ、両国の駐日大使を副首相に任命して政府高官が参加する形をとろうとしておりますぅ。いわばドォラゴンたちの会議はぁ、同時に日米英独仏五カ国の首脳会議にもなるわけですぅ。これがぁどういう意味かぁ、閣下にはおわかぁりでしょうぅ」 アンデルセン神父のもたらした驚くべき情報を吟味した金九は、何とか気持ちを立て直した。間もなく対日戦争に突入すると踏んでいた英米両国の首脳が、敵国に等しい日本を訪れるとは。竜という巨大な存在と何とか折り合いをつけようとする大国の思惑がうかがえるが、弱小亡命政権幹部を長年務めてきた金九には即座に最悪の想像が頭に浮かんだ。 「……竜が来たことで日米戦争はあり得なくなり、スターリンが死んで大混乱の渦中にあるソ連は事実上世界の大国から脱落している。そこで新たな力である竜の参加する首脳会議で、世界の権益を再配分しようというわけか」 「おっしゃる通りです。そしてわが中華民国は、その場に招かれておりません」周中校が口を挟んだ。「ソ連はともかく、かの五カ国にとって中国など無視して構わないとしか思われていないのです。わが国さえそうならば、大韓民国臨時政府はどうなりますかな」 どうもこうもなかった。臨時政府の存在などハナにもひっかけられず、せいぜい日本のご機嫌をとるためにテロリスト集団扱いされるのが関の山だ。日米開戦と同時に対日宣戦布告を行い、米国に味方することで独立回復を図るという臨時政府の目論見が潰えるどころか、米英にまで弾圧される事態になっては救いようがない。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/164
165: パトラッシュ [] 失神したくなるのを気力でこらえながら、金九は必死に考えをめぐらした。 「そ、それで、この件にバチカンがどう関係してくるのでしょうか?」 「わぁがバチカンとしてはぁ、ドォラゴンの存在など認めるわけにはいきません。奴らは人を惑わす魔法や魔術を使うだけでなくぅ、シチリアのドォラゴンなどは眷属たる吸血女ドラキュリーナを情報収集のため全欧州にばらまいておりますぅ。おかげでぇ欧州各地ではぁ、恐慌に陥った無知な者どもが無実の女たちが大勢殺している有様ですぅ。このようなぁ主の教えを辱める真似をして恥じぬドォラゴンは、断じて許せません。そのため教宗猊下はぁ、ドォラゴンどもに対する十字軍の発動を決断されたのですぅ」 「じ、十字軍ですと……」 さすがの金九も、十字軍などという前時代的なセリフを平然と口にするアンデルセン神父の正気を疑った。しかし、隣の周遠峰はまじめな表情を崩さず、神父の言葉に頷いている。そういえば周は、蒋介石側近中でも特に熱心なクリスチャンであったが。 「今回の十字軍はぁ、カトリック単独ではありません。プロテスタントや正教のみならず、ユダヤ教からイスラームなどに対してもぉ協力を呼びかけておりますぅ。世界中の宗教が一致団結して、ドォラゴンどもを倒すため戦おうとぉ。十字軍と申しましたがぁ、正確には世界宗教連合軍の結成を目指しておるのですぅ」 「対ドラゴンの宗教連合軍……し、しかし、そのようなものが本当に実現するので? 私も一クリスチャンとして、カトリックとプロテスタントの抗争は幾度も目撃してきました。まして他の宗教が、対ドラゴンのためとはいえカトリックに協力するとはとても」 「難しいのは承知しておりますぅ。昔のように教宗猊下の命令一下、忠実な信徒が馳せ参じる時代ではありませんしぃ、日本の軍事力も侮れませんからぁ。だぁが各宗教はどこも異端者や敵国から教団を守り、神のために命を投げ出す者を揃えておりますぅ。今回はぁそうした力を結集してぇ、ドォラゴンどもを退治する軍団を組織するつもりなのですうぅ」 各宗教の私兵軍団による対竜殲滅作戦――あまりにも壮大な構想に、金九はめまいを覚えた。ただひとつ光復という目標のみに邁進してきた自分などには、間違っても思いつけない話だ。もし実現すれば世界全体を巻き込む大戦争が発生し、日本も否応なく巻き込まれる。日米戦争で目指していた、自分たち大韓民国臨時政府も光復のため戦う機会を改めて獲得できよう。だが、キリスト教との結びつきが強い中国国民政府はともかく、宗教とは無縁の自分たち臨時政府のような極小で無力な存在が、世界宗教連合軍の中でどのような役割を果たせるというのか。 「バチカンの主張はわかりました。しかし、問題は英米独仏というキリスト教世界で最も影響力があり、かつ神の教えより自国の政治的利益を最優先する諸国が、宗教連合軍の結成や目的を認めるかです。チャーチル英首相は、ドイツとヒトラー政権を倒すためなら悪魔とでも手を組むと公言しました。その悪魔とはスターリンのことかと思っていましたが、彼が死んだ今となってはドイツ打倒のため竜と結ぼうと考えるのではありませんか?」 笑っていなかったアンデルセン神父の眼差しが、一気に凍りつく。金九は息をのんで肘掛けを強く握り、周もごくりと喉を鳴らした。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/165
166: パトラッシュ [] 「英国国教会はぁ、今回の教宗様の呼びかけに応じないでしょう。あの連中はぁ成り立ちの経緯もあってぇ、長年にわたりカトリックと敵対してきましたからぁ。国教会の組織はあくまで英国王室に忠誠を尽くしぃ、訪日するチャーチルを守る立場をとるでしょうぅ。つまぁり、彼らはわれわれの敵になることが確定しておるのですぅ」 「すると英国以外のプロテスタントなどは、バチカンの提案に賛同していると?」 「まぁだ打診の段階ですがぁ、前向きな感触は得ておりますぅ。アメリカで独自に発展したプロテスタント諸派はぁ、われわれ以上に主イエス・キリストを否定するドォラゴンに反発しておりますのでぇ、日本がドォラゴンの力を得たことは断じて許せぬと真っ先に賛成してきましたぁ。ルーズベルトも彼らの反感を買っては選挙に勝てませんしぃ、ハワイ以来のドォラゴンに対するアメリカ国民の憎悪は変わっておりませんのでぇ、まず黙認するでしょう。バチカンと最も激しく敵対してきたルター派やカルヴァン派もぅ、ドォラゴンという共通の敵の出現に危機感を感じているのは同様ですぅ」 「で、ではそれ以外の宗教はどうなのです?」 「イスラームもアッラーがドォラゴンによってないがしろにされるのではと怯えているので、協力する方向ですぅ。正教会はギリシャの有力聖職者が賛同の意向を示しておりますがぁ、中心地であるロシアや東欧諸国の大部分がドイツの占領下にあり、ヒトラーがドォラゴンとの協力を進める方針のためぇ、反ドォラゴンの姿勢を明確に打ち出せていません。しかしぃ、ドイツ政府内部にもカトリックへの協力者は大勢いるのでぇ、間違いなく味方になってくれると予想されておりますぅ。ただユダヤ教徒はドイツの苛烈な弾圧を受けている最中のためぇ、余裕はないようですがぁ」 世界宗教連合軍の実現に向けて、バチカンは着々と手を打っているらしい。あらゆる場所に信徒のいる巨大宗教の力に、金九は圧倒される思いだった。かつてスターリンはカトリック教会を嘲笑し、「バチカンは何個師団持っているのだ?」と言い放ったという。自分も何となくスターリンの意見に同感していたが、ここにきて教皇の意志は大軍に等しい力があると思い知らされた。竜州行きの切符に引きずられて独立の機運が急速にしぼみ、味方だったはずのアメリカが頼りにならぬ現状、バチカンの構想に参加する話は魅力的だが、臨時政府を率いる立場としては簡単には乗れなかった。 「竜とその眷属に戦いを挑む、ですか。しかし、竜の力には恐るべきものがあります。恥ずかしながらわが同胞も、多くが竜の力に屈して日本に従う道を選びました。米国もハワイの竜に手も足も出せぬではありませんか。とても世界宗教連合軍に勝算があるとは……」 「金九主席ぃ、化け物どもを殺して何が悪いのですかぁ!」 腹の底から響く大喝に、金九はのけぞった。椅子の肘掛けで身を支えたが、あやうく意識が飛びそうなほどの強烈な威圧感に冷や汗を流す。独立運動や政治闘争であまたの修羅場をくぐってきたが、アンデルセン神父は格が違いすぎた。彼は外交官などではない。その手で数え切れないほど直接殺していると、金九は恐怖とともに確信した。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/166
167: パトラッシュ [] 「教宗猊下は化け物どもをこの地上から一掃するためぇ、あえてプロテスタントやイスラームなどの異端者や異教徒と手を結ぶという苦汁の決断を下されましたぁ。教宗様の思いに応えずして、誰がクリスチャンと名乗れましょうかぁ。ましてぇ中国や韓国の敵である日本は、ナデシコなるドォラゴンを完全に味方につけておるのですぞぉ。今度の会議でぇシチリアやアイスランドのドォラゴンまでもが同じく日本の味方となり、ドラキュリーナのようなきゃつらの眷属がすべて日本の手先となったらぁ、どぉうなると思いますかぁ?」 「ドラゴンの力を背景に、日本が世界を支配する……」 「いかにもぅ。そんな事態を英米独はドォラゴンとの話し合いで避けようと考えておりますがぁ、甘いとしか言えません! 神をないがしろにする化け物は、滅ぼさねばならないのです。さもなくば朝鮮が再び独立国となる日も来ないでしょう」 確かに竜が日本の味方である限り、光復はあり得ない。女をエサにされた同胞が次々と親日派に転向している状況は、アンデルセンの言葉そのものではないか。額に脂汗を浮かべた金九は、指の震えを押さえながら神父の強烈な眼差しを見返した。 「そ、それでバチカンは、わが臨時政府に対して何を求められるのです?」 「ドォラゴンとの戦いは、われわれ宗教連合軍が担当しまぁす。しかぁし、われらは日本における足場があまりない。日本の言葉や風俗習慣を解する者も少なく、何よりあの国で外国人は目立ちすぎるぅ。そこでぇ、貴殿らには日本での後方支援をお願いしたぁい。多くの朝鮮人が日本に住んでおりぃ、不本意でありましょうがぁ怪しまれにくいでしょう。その見返りにバチカンは、臨時政府を外交的に支援する。いかがですかなぁ?」 「わ、わかりました。直ちにバチカンの提案を閣議に諮りましょう……日本に有利に傾きつつある国際情勢を打破するためにも有効な手段であると、私も思います」 金九としては、他に言いようがなかった。 「……アンデルセン神父、最後にひとつお聞かせください。恐るべき力を誇る竜に、果たして世界宗教連合軍が本当に勝てるのでしょうか。いや、無論あなたがたの信仰や信念を疑うわけではありませんが、世界最強の軍事国家である米国も竜を打倒できないでいる現実から目を背けるわけにはいかないのです」 再び怒声を浴びるかと肘掛けをつかむ金九に、アンデルセンは子供に接するような笑顔で頷く。しかし、その口から発せられた言葉は、優しげな口調にもかかわらず金九も思わず失禁しそうな威圧に満ち満ちていた。 「我らは唯一絶対なる神の代理人、神罰の地上代行者としてぇ、我が神に逆らう愚者どもを、その肉の最後の一片までも絶滅することが使命なのですからぁ。塵に過ぎぬドゥラゴンどもは塵に帰るべきなのですぅ。主は勝利し、主は支配し、主は君臨される。主を愛さぬ者あらば呪われよ! 我らの主よ、来たりませぃ!――父と子と聖霊の御名において、AMEN(エイメン)!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/167
168: パトラッシュ [] 「総統閣下、大韓民国臨時政府は今回のバチカンからの提案を受諾いたします」 「ありがとうございます、主席。これが成功すれば、わが中華民国もようやく日本と共産党に反撃する足がかりがつかめます。立場上、公然とはできませんが国民党としても全力で支援いたしますので」 「感謝します。当然ながら、この件は私と閣下だけが知っており、双方が個人的に動かせる人員だけを使うということでよろしいですね?」 「無論です。特に英米には絶対に知られてはなりません。主席と私の連絡役は周中校だけが担当し、どのような些細な件も他の者には洩らさぬようお願いします」 その夜、国民政府陸海総司令部を訪ねた金九は、蒋介石に臨時政府の決定を伝えた。今回のアンデルセン神父の来訪について臨時政府内部には、反ドラゴンを訴えるバチカンの主張を内外の同胞に発信するよう要請されたと説明していた。費用もバチカンが出す話を受けようという金九の提案を、閣議は一も二もなく承認した。カトリックの総本山を外交的後ろ盾に持てるという見返りは、窮状にある臨時政府の面々にとってこの上ない魅力であったのだ。無邪気に喜ぶ閣僚たちに「反ドラゴンのための世界宗教連合軍構想」などという真実を伝えても、正気を疑われるだけであろう。 それに、金九としても個人的な野心に駆られていた。今回のバチカンからの依頼をひとりで動かせたら、アンデルセン神父が約束したカトリック教会の後ろ盾を自分が独占できる。それは臨時政府の完全掌握につながり、今後の光復運動において大きな政治的資産になろう。失敗すればすべてを失うが、先の見えない現状を打破するためにもやってみる価値はあると決断していた。 (竜……すべては竜が日本に味方などしたからだ。ことここに至っては手段など選んでいられない。たとえ国民政府が滅んでも、我々が生き残るために。何よりも、この作戦が成功すれば光復後の祖国は私を絶対指導者として迎えることになる。私こそが朝鮮の新たな竜たるにふさわしいと誰もが認めるだろう……) http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/168
169: パトラッシュ [] 中国人には古代より竜への信仰が深くしみついており、歴代皇帝は竜の生まれ変わりとされてきた。その竜が日本の味方をしている現実は、次の「竜」たる中国の支配者を目指す蒋介石と国民政府への支持を失わせるに十分な理由だった。竜とて不死身ではないと民衆に知らしめねば、国民政府の立場がない。その点は共産党も同じなので、情報が洩れても妨害はなかろうと蒋介石は踏んでいた。スターリンが死んでソ連が弱体化している現在、共産党は国民政府以上に行き詰まっているのは明らかなのだ。 「ところで総統閣下、あのアンデルセン神父とは何者ですか? 周中校のお話ではバチカン国務省の使者とのことですが、とても外交官などとは思えません。上海や香港の暗黒街の住人ですら、あれほどの恐ろしさは感じさせなかった……」 蒋介石は周遠峰と視線を交わした。周が頷くと、態度を改めた蒋は身を乗り出した。 「金九主席、あなたの見立ては正しい。彼は外交官などではありません。アレクサンド・アンデルセン神父の正体は、バチカンの擁する秘密戦闘部隊の指揮官です」 「バチカンの秘密戦闘部隊……」 「カトリック教会が過去に多くの異端者や魔術師と見なした者、さらに異教徒を苛烈に弾圧してきたのはご存知かと。当然、相手も黙ってやられるわけがなく、死に物狂いで反抗しました。敵対者と千年余にわたって知られざる戦いの歴史を重ねてきたバチカンが数世紀をかけて整えてきた戦力こそ、アンデルセン神父の所属するローマ教宗直属の闇の組織、通称イスカリオテ機関なのです」 「イスカリオテですと……何と不吉な! 裏切り者ユダの名を冠した組織がバチカンにあるなど、とうてい信じられませんが」 そう言いながら、ようやく金九はアンデルセンと会見した際に感じた圧迫感の正体が理解できた。あれは狂信者と対していたからだ。自分とて祖国の独立を強く信じているが、弱肉強食が当たり前の世界で弱小亡命政権を率いて苦労を重ねた経験から、国際政治や外交で一方的な狂信など百害あって一利なしであるとは心得ている。しかし狂気をまとったアンデルセンは、バチカンがいったんこうと決めたなら、どのような妨害も叩き壊して突き進んでいくだけなのだ。「神のために死ぬことが自分たちの使命」と信じて疑わない死兵の群れ。理想的だが恐るべき兵士といえる。 「これは世界の支配層にしか知られていない極秘事項です。私も最近ごく一部を知った程度で、とても熟知しているとは言えません。一方、対立する英国国教会もバチカンに対抗すべく王家に忠誠を誓う国教徒による実戦部隊を組織しており、イスカリオテ機関と世界の裏側で戦ってきました。創設者の名を取ってヘルシング機関と呼ばれているとか」 「ヘルシング――では、彼らが日本でチャーチル首相の護衛に付くわけですな」 「はい、竜と共に最大の敵となる相手です。心してかかってください。それからこれは申し上げるまでもありませんが、イスカリオテ機関やヘルシング機関については一切他言無用に願います。うっかり口を滑らせたら、双方の刃が主席に向けられるでしょう。そうなっても私たちも、かばうつもりはありませんから」 首ふり人形のように頷きながら、金九はバチカン支援のための作戦を考え続けていた。確かに日本国内には百万人を超える朝鮮人が住んでいるが、日本の警察や憲兵隊に疑われることなく任務を遂行できる能力と立場を兼ね備えた人材は限られる。まして今回は、自分の手の及ぶ範囲内から有能な者を選抜しなくてはならない。自然と金九の思考は、数名の人物に絞られていった。 (実働部隊には信頼できる人物を選ばねば。日本側に疑われず、むしろ信用される者を。そういえば朴正煕は満州国軍少尉として、東京の陸軍士官学校に留学していたな。彼は優秀な軍官だし、祖国のためと説得してみる価値はある。あと、日本に忠誠を誓っている同胞が支援してくれたらなおいい。旧李王家や朝鮮貴族などは最初から論外だが……まてよ、洪思翊は先年、日本陸軍少将に昇進したと聞いた。彼に使者を送ってみるか) ※金九、金斗漢、朴正煕、洪思翊=Wikipedia参照 ※続きを書けるとは、ワタクシも思っていません。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/169
170: 名無し三等陸士@F世界 [] 投稿乙 世界を人の手に有るべき姿にと言うのは同意、人の世に忌むべき力、一国のみが手にしたチート を封じるべく動くのは必然だが・・・世界宗教連合とは・・・なんと言うかご愁傷様としか言え ないよ・・・・ アンデルセンいい味出しすぎ、ワロタw http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/170
171: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 殺伐とした魔女狩り中の欧州に天の助けが! ttp://oyoguyaruo.blog72.fc2.com/blog-entry-5725.html ……凄い所だなスペインは(;・∀・) http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/171
172: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 竜神様読み始めたら面白いくてここまできてしまった 中の人早くきてくれー! http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/172
173: 竜神様の中の人 [sage] 読んでいた人いたのか。 という訳で久しぶりの突発一レス更新。 バイオ11の小話。 石原がその話を撫子に持っていった時、石原も博之もおつきのメイヴも同じ幻想を見るハメになった。 つまり、『尻尾ふりふりで遊びに連れてってもらえるわんこ』という。 「安心せい! わらわの力を持ってすれば、盗賊の砦の一つや二ツや三つや四つまとめて大地に沈めてくれるわ!!!!!」 「人の話はちゃんと聞きやがれ!この馬鹿竜が!!」 ああ。さっきまでのドヤ顔からしゅんとしていじける姿へ。 またその背中が比べ物にならないぐらい哀愁を誘う。 そんな事は皆おくびにも出さないが、どうせテレパスでばれているのである。 「で、近くやって来るこの船をナブレスに飛ばすと?」 「はい。メイヴ殿。 後はこちらでなんとかしますゆえ」 「わらわならば何とかどころか、何でもできるのじゃぞ。 ここでわらわの力を見せ付けて、博之にいろいろごほうびもらうというわらわの企みがぁ・・・・・・」 人は優しさを持つ生き物である。 馬鹿竜様の嘆きを聞かなかった事にして事は淡々と進むのであった。 リハビリがてらに小話投下。 色々手を広げすぎたので、竜神様は優先順位的に後回しになりがちなのでご容赦を。 これが大友の次に資料調べるの大変なので。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/173
174: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 艦これをやってたら無性に読みたくなったので久しぶりに、 撫子に船を艦むすにしてもらえばトラックなり電車で移動できて国内の移動分の油節約できるんじゃねとか考えた 海軍士官さんとかいないかなとか考えてみたり。 ゴーレムに担がれてテンションあがった那珂改二とか面白そうだなとか思ったり http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/174
175: 詰めた鋳物 ◆ywVgXTwd3Q [] 「帝国の龍神様」の一部再編集版が、小説家になろうにて「帝国士官冒険者となりて異世界を歩く」ttp://ncode.syosetu.com/n7036ca/ として掲載された事に伴い、 同作の二次創作作品として萌スレ7にて当方がUPした二次作の一編を、「ノモンハンの亡霊」ttp://ncode.syosetu.com/n2192cd/のタイトルにて、小説家になろうに転載しました。 小説家になろうの二次創作作品に関する規約に従い、中の人の許諾済です。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/175
176: 名無し三等陸士@F世界 [sage] なろうの方、完結乙でした。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/176
177: F世界逝き [F世界逝き] F世界逝き http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1335097928/177
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