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163: パトラッシュ 2013/06/08(土)21:11 ID:WsRTftk.0(2/8) AAS
「それに在米の李承晩元主席から、米国外交筋を通じて連絡がありました」
「李承晩が? 今さら何用だと言うのかね」
金九の表情が一気に険しくなる。かつて臨時政府主席だった李承晩は、路線を巡り臨時政府内部での政治闘争に敗れてからアメリカへ移り、政界へのロビー活動に専念している。一貫して反李承晩派に属してきた金九にすれば、日本人の次に許しがたい政敵であった。
「実は在米同胞にも日本が手を伸ばしているらしいのです。日本に味方すれば竜州へ行かせてやるぞと。李元主席の側近がひとり、誘いに転んで情報を流していたとか。まことに恥ずべき話だが、そちらでも裏切り者が出ぬよう気をつけてほしいとのことでした」
会議室の空気が一気に冷え込んだ。いくら政敵とその同調者でも、金斗漢に続き同じ民族の同胞が日本の策略に引っかかって独立運動を裏切るとは、情けなく悔しい話だ。しかも、転向した理由が拷問や買収ならともかく、好きなだけ女を抱ける世界に行きたいからだとは恥ずかしくて声も上げられない。
「日本を非難するために公表するわけにもいきませんな。韓国人はその程度の民族だと日本側に返されたら、恥の上塗りになるだけだ……」
「ええい、世界の中心であるはずのわが韓民族の誇りはどこに行ってしまったのだ! 光復よりも女を取るとは」
「ふん、そんなことを言って、実は自分も竜州とやらに行きたいのではないかね」
「何だと貴様、その侮辱は許せんぞ――」
「やめたまえ! われわれが喧嘩して分裂するなど、日本を喜ばせるだけだ!」
金九の一喝に、閣僚たちは沈黙した。いくら独立運動の闘士とはいえ、臨時政府の小さな組織内部にも激烈な党争(派閥争い)は存在する。かつての李氏朝鮮内部で当たり前のように繰り広げられていた党争は、韓民族の宿命的な業病ではないかと最近の金九は思えてならない。かつて豊臣秀吉の朝鮮侵略時、唯一日本に勝利した李舜臣将軍も党争に巻き込まれて地位を追われ、その間に朝鮮水軍は大敗して亡国の瀬戸際に追い込まれたのだ。
情けなさに押しつぶされそうな表情の金九に、内務部長が手をあげた。
「……それにしても主席、この先どうしましょうか。残念ながら今後も、竜州行きというエサにつられてチョッパリどもへ寝返る同胞が増えるのは確実です。わが臨時政府としては放置できぬ事態ですぞ」
「どうしろと言われても――女より光復こそ第一だと、内外同胞に訴えるしかあるまい。愛国の志こそ民族の栄光そのものであると理解させなくては」
「しかし、そのための活動資金はどうします? 現状、わが臨時政府は組織維持のための費用すら賄えていません。国民政府からの支援金は、二箇月も滞ったままではありませんか。何とか揃えた光復軍部隊のわずかな人員さえ、装備や訓練にもこと欠く有様です」
内務部長の発言は事実であった。大韓民国臨時政府の財政は当初、内外の朝鮮人同胞からの献金によって支えられていたが、組織が拡大するにつれていくらあっても足りなくなり、やがて満州などで日本企業や日本人を対象にした恐喝・強盗を起こして資金を得るようになっていった。このため関東軍や満州国警察による厳しい取り締まりに遭ったほか、日本政府の外交圧力もあって外国からの送金も困難になり、この当時は蒋介石率いる中華民国の中国国民党政権(国民政府)からの支援に頼りきりの状態であった。
しかも龍神の出現以降、国民政府が日本との関係改善に力を入れているため、支援も先細り気味となっている。この場の誰も口にしないが、臨時政府が重慶中心部の比較的立派なビルから住宅街に近い古家へ移転を余儀なくされたのも、ひとえに金がないせいだ。
貧乏所帯の臨時政府の面々は、戦争とは金でするものと骨身にしみていた。さらにジリ貧となれば、自分たちは自然消滅してしまう。それこそが日本の狙いだとすれば――。
全員が言葉もなく下を向く。静まり返った会議室の扉が叩かれ、秘書が顔を出した。
「国民政府軍の周遠峰中校(中佐)が来られました。至急、主席にお会いしたいと」
「周中校が? わかった、閣議は休憩とする」
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