ＳＳスレ（萌え）8

27: 竜神様の中の人 ◆NdgHDvOgik []

「まぁ、顔見せついでに君達にも仕事を頼もうと思ってね。
　一人につき金貨一枚。
　これからの関係を円滑にしようという訳だ」

金貨一枚といえば、一月ぐらい遊んで暮らせるだけの金である。
　それで何をさせるのかと冒険者達が見構えるが、出てきたのは銅貨の仕事だった。

「何、この牛の世話さ」

「え……？」

冒険者達が固まる。そりゃそうだろう。
　こんな所に呼ばれて、顔見せついでの牛の世話で一人につき金貨一枚なんて濡れ手に粟の仕事なんて裏がある以外に考えられない。
　辰馬の(あれ？俺またやった？)という顔とベルが手を顔に当てて「あちゃー」なんて言葉の後に慌ててベルが金貨一枚分の価値をでっちあげてゆく。

「ちょっと説明させて頂戴。
　今回の盗賊退治の仕事は、かなりの大人数でするの。
　で、それはナブレス盗賊ギルドも確認しているわ。
　同時に、それだけの大人数で動くとどうしても情報が漏れちゃう。
　ここで見たこと、聞いたことを黙ってもらうという代金も入っている訳」

冒険者達がベルの言葉の後にティターロを見つめる。
　ティターロはそのベルの口車に乗ったが、故意なのかどうかまではベルにも分からない。

「本当だ。
　ちょっと、この件は知りすぎるとやばい山なんだ。
　深入りはしないほうがいいぜ」

それからしばらくして、冒険者達は金貨一枚分の口止め料の理由を思い知る事になる。
　轟音と共に、海岸に着水した九七式飛行艇によって。

「分隊整列！
　神堂小隊長に敬礼!!」

ベルの号令に、降りてきたメイド隊十人と歩兵分隊九人と何でかいる喧嘩屋こと塩田剛三が整列して一斉に辰馬に敬礼する姿に冒険者だけでなく、ベルですら唖然とする。

「ねぇ、いまさらの質問だけど、タツマって偉い人？」

そりゃそうだろう。
　整列した男女二十人が敬礼するというのはそれだけの説得力があるものである。
　そんなベルの今更の疑問に答えたのは、隣にいるアンナとナタリーに色々叩き込まれたベルだった。

「辰馬様は、この世界だと百騎長に相当するお方だそうです」

その一言に今度は冒険者達が唖然とする。
　百騎長クラスというと、バートン大公国では指揮官クラス、下手すると領地持ちの貴族の可能性があるからだ。
　そりゃ、金貨を払うよなという冒険者とベルの勘違いの視線が辰馬には痛い。

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