SSスレ(萌え)8 (188レス)
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97: 2012/10/14(日)11:51 ID:eOztz1hQ0(2/4) AAS
 東洋の魔都。上海。
 そのとある飯店の一室に二人の男が寛いでいた。
 とはいえ、紳士に見える二人以外に人はおらず、互いに酒を酌み交わしながら苦々しそうな顔を隠そうとはしない。
 正確には、この飯店の中にいる人間は彼ら二人のみ。
 日本が抱え込んだ諜報関係種族たる黒長耳族対策として、彼ら英米のエージェントが取った苦肉の解決策である。
 それすら危険と考えて、重要な情報交換は互いの意思を漏らさない手紙でのやり取りで行っていたのを変更してのこの会談。
 いい話である訳が無い。

「で、今回私を呼んだ理由は?」

 呼ばれた男の表向きの職は、国民党への軍事顧問団という肩書きになっている。
 だからこそ、現在敗走どころか壊走している国民党軍の内情を本国に悲鳴のように送り続けていた。

「川向こうの共産主義者についてですよ」

 呼んだ男は香港在住のビジネスマンという肩書きである。
 その肩書きに間違いはない。
 ただ、ちょっとそのビジネスの相手が政府であるというぐらいなものだ。

「あの調子に乗っている奴らですな。
 それが何か?」

 北京無血開場から始まった共産党の躍進はドミノ式に国民党内の各軍閥を共産党に走らせ、国民党軍は淮河で食い止めようとあがいているが、もはやどの軍が忠誠を期待できるか国民党内部ですらわからなくなっていた。
 軍事顧問団に属している男は『信頼できる部隊の派遣を--つまり、合衆国のさらなる介入を--』と報告を送っているが、現状それが不可能である事をその男自身が一番良く知っていたのである。
 そんな男がさらに絶望する言葉を、ビジネスマンはさらりと口にした。

「ロシア人と本格的に手を握りましたぞ」

「!?」

 もともと中国共産党はソ連と協力関係にあったのだが、モスクワ陥落とスターリン粛清にともなう集団指導体制の混乱で関係に変化が出始めていた。
 ソ連の弱体化で中国共産党も弱まると判断していた英米はここで読みを盛大に外し、そのつけを今ここで払う事にななっている。

「ロシアには資源と人があるが武器がない。
 それを貴国をはじめとしたレンドリースで補っていたのだが……」

「……そのルートがこの大陸を使う事になった為に、川向こうの中国人にも武器が流れるようになって頭痛の種となっていたのはこの間話したばかりだろう?」

 淡々と話す男二人。
 間など気にしない阿吽の呼吸はこの二人が同じつけを払う同胞意識ゆえか。
 一人で払うならば発狂するが、相手がいるなら不幸も山分けという所だろう。

「その中国人どもが義勇軍としてナチと戦うのはご存知で?」

「そうきたか」

 ソ連はスターリン亡き後集団指導体制に入っていたが、暗闘も激しいらしく詳しい事はこちらに伝わってはない。
 それは、同時に強権を持って人民に死ねと言いにくくなった事を意味する。
 とはいえ、かの国にとって人の価値などまだ英米に比べてはるかに安いのだが。

「要するに、我らが支援する国民党が腐りきっていたという事だ。
 武器を持ったまま無傷で寝返り続けるから、共産党もそいつらの処遇に頭を痛めていたと。
 恩を売って、元国民党軍を厄介払いできるならばやすいものだ」

 さすがに、中国人どもを独逸軍の弾の盾に使うほど彼らも愚かではない。
 だが、ウラル以西の穀倉地帯や工業地帯を独逸に抑えられたソ連にとって、中国人という使い潰していい労働力はいくらでも欲しがる場所があるのだ。
 そして、その分の人員が兵士となって独逸軍に押し寄せる。

「で、ソ連が共産党に払う代価は?」

「資源・及びレンドリース横流しの黙認。
 で、資源は満州国で日本人に売るらしい」

 つまり、筋書きを書いていたの日本らしい。
 そして、その情報はこちらに届いていない。
 二人は知らない。
 はなから日本本土にそんな意思も能力もなく、黒長耳族もまだ現状把握できていない現場が暴走しているだけという事を。
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