アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/
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668: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 今日出航する2隻の空中軍艦の他に、出港準備を行っている艦はおらず、残り6隻は未だに、機関部の最終調整すら終わっていなかった。 一応、残り6隻の巡洋艦、駆逐艦も建造は終わっているのだが、これらの艦は、12月後半から1月下旬にかけて順次、北方の拠点に異動する 予定であったため、乗員すら乗り組んでいない状態だ。 米軍機の反復攻撃が予想される今となっては、これらの6隻が大空を飛ぶ事は、確実に無いと言った方が正しかった。 「ならば……せめて、この2隻だけでも大空に浮かべ、無事に逃げ切って見せる!必ず……!」 ハヴォンソは断固たる決意を心中で現しつつ、艦の上昇を待ち続けた。 「味方の迎撃隊が現れました!敵艦載機に向けて突入していきます!!」 建造ドッグの右端に作られた見張り台から、伝声管越しに報告が伝えられた。 「味方のワイバーン隊か……頼むぞ!」 ハヴォンソは、藁にもすがる思いで味方迎撃隊の奮闘を祈った。 「敵騎接近!11時上方よりワイバーン20騎前後!」 「5時下方より敵機!数10前後、飛空艇だ!」 2つの報告が同時に、エセックス攻撃隊指揮官であるアール・ガラハー少佐へ届けられる。 「ワイバーンと飛空艇が異方向から同時に……か」 敵は2方向から攻撃隊を挟み撃ちにする形で向かいつつある。 それに対抗するには、こちらも護衛の戦闘機をぶつけるしかない。 「アウトローローダーより、各戦闘機隊へ!イントレピッド隊は11時方向の敵ワイバーン、エセックス隊は5時方向の飛空艇にあたれ!」 「「了解!」」 エセックス、イントレピッド戦闘機隊の指揮官が応答し、スカイレイダーの周囲に張り付いていたF8F32機(エセックス隊の一部は シギアル港周辺で制空任務にあたっている)が2方向に別れて離れていく。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/668
669: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「敵ワイバーン視認!距離4000!12時方向!」 イントレピッド戦闘機隊第3小隊の3番機を務めるケンショウ・ミヤザト少尉は、耳元のレシーバーに流れる声に耳を傾けながら、戦闘 準備を整えていた。 「ケビン!今の聞いたな?」 「勿論です!いつも通りにペアでやりましょう!」 44年11月から相棒を務める、ケビン・フィリッツ1等兵曹が快活の良い声音で答えた。 イントレピッドに所属する20機のF8Fは、一斉に増槽タンクを切り離すや、増速して敵ワイバーンとの距離を詰めていく。 前方に敵ワイバーンが見え始めた。 数はざっと見て20騎足らず。 「ん……?」 この時、ケンショウは敵ワイバーンの動きに違和感を覚えた。 「なんだあいつら……編隊が崩れかけているぞ」 敵ワイバーン隊の動きは、よく見るとぎこちないように思えたが、敵との距離はあっという間に詰まる。 敵もほぼ全速力で突っ込んできているため、早々に空戦が始まった。 ケンショウは1騎のワイバーンに狙いを定め、距離400に縮まった所で20ミリ機銃を撃ち始めた。 両翼の20ミリ機銃4丁が重々しい発射音を発し、12.7ミリ弾より図太い火箭が目標のワイバーンに注ぎ込まれていく。 一連射したケンショウは、とっさに機を右に横滑りさせる。 ワイバーンも光弾を撃ち返してきた。 ケンショウの放った機銃弾はワイバーンを捉えるが、これは敵の展開した魔法防御にはじかれる。 敵の放った光弾は、ケンショウ機の左脇をかすめて飛び去って行った。 互いに有効打を与えられぬまま、猛速ですれ違う。 空戦開始の儀式ともいえる正面対決が終わるや、互いに反転して空戦に入ろうとする。 敵ワイバーンは果敢にF8Fに突っかかってきた。 「2時上方より敵ワイバーン!突っ込んでくる!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/669
670: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 相棒のケビンがとっさに伝えてくる。ケンショウは操縦桿を左に倒しつつ、旋回上昇に移る。 上方よりワイバーンの放った光弾が注がれてくるが、回避運動を行ったケンショウ機にあたらない。 ケンショウが反撃を行おうとしたとき、敵ワイバーンはケンショウ機のすぐ右を飛び抜けて急降下していく。 「……」 ケンショウは無言のまま、新たなワイバーンの攻撃をかわしつつ、攻撃の機会を探る。 機会は程なくして訪れた。 ケンショウ機に突っかかったワイバーンは、急降下をやめて緩やかに旋回上昇に入り始めた。 「そこだ……!」 彼は小さく叫ぶと、愛機の機首をそのワイバーンに向け、一気に下降し始めた。 機首のプラット&ホイットニーR2800-34W、2300馬力エンジンは、F6Fよりも軽くなったベアキャットの機体をあっと いう間に最高速まで引き上げた。 下降の影響で、時速700キロ近くまで上がった2機のベアキャットが、その敵ワイバーンに近づくまでさほど時間がかからなかった。 照準器に、旋回上昇に入るワイバーンの背中が捉えられる。 その時、ワイバーンの竜騎士がハッとなって、顔を見上げる様子が見えた。 距離は200メートルまで迫っていた。 ケンショウは無言で20ミリ機銃を発射した。 重々しいリズミカルな発射音が鳴り、4条の曳光弾がワイバーンに向けて叩き込まれた。 ケンショウ機の射弾がワイバーンを押し包む。 魔法防御の展開によって機銃弾が弾き飛ばされるが、今度は1連射限りでもなく、1機だけでもない。 ケンショウ機の後方にいるフィリッツ機も両翼を真っ赤に染めて多数の機銃弾を撃ち放っている。 多量の20ミリ弾を受けたワイバーンの防御結界は、程なくして限界を超えた。 一瞬、まばゆい光が発せられたと見るや、ワイバーンの竜騎士が20ミリ弾を複数受けて体を吹き飛ばされる。 次いで、ワイバーンの背中や両方の翼に万遍なく20ミリ弾が突き刺さり、あっという間にワイバーンがボロボロにされた。 2機のベアキャットが轟音を上げて飛び去る頃には、そのワイバーンは体全体から大量出血しながら、真っ逆さまに墜落し始めていた。 「まずは共同撃墜1!」 無線機からケビンの声が流れてきた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/670
671: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「ああ、幸先良しだ」 ケンショウも確かな手応えを感じつつ、再び戦闘空域に戻り始める。 空域からはさほど離れていないため、すぐに戦闘の様子を見ることができた。 「おいおい……速度はこちらが上とはいえ、機動性抜群のワイバーンが、空戦開始早々押されまくっているとは」 「あのワイバーンの連中、動きが明らかにおかしいですよ」 空戦開始前から敵編隊の動きを見ていたケビンが当然とばかりに、ケンショウに行ってくる。 「ありゃあ、半数以上が新米ですぜ」 「……頑張っている奴もいるようだが」 1騎のワイバーンが、上手く機動性を活かしてベアキャットの背後に回り込むと、光弾の連射を叩き込んで右の主翼を吹き飛ばし、 錐もみ状態に陥らせた。 だが、その背後から猛速で迫った2機のベアキャットに機銃弾を撃ち込まれ、瞬時に叩き落とされる。 この他にも、巧みな機動でベアキャットを翻弄するワイバーンもいるが、大半のワイバーンは2機1組となったベアキャットに追い 回され、あるワイバーンは逃げ切れずに撃墜され、別のワイバーンは機銃弾をかわすだけで精一杯となっている。 イントレピッド隊の空戦は、既に勝敗が決まったようだ。 「何とも呆気ない物だ。そう思わんか、ケビン?」 「ええ、自分もそう思いますね」 ケンショウはケビンのため息交じりの応答を聞きつつ、視線をスカイレイダー隊に移す。 エセックス隊のF8F12機は、ケルフェラクと思しき飛空艇と渡り合っているが、今の所1機のケルフェラクも突破できていない。 敵機の迎撃を受けずに済んだスカイレイダー48機は、編隊を維持したまま高度4000付近を悠々と飛び続けていた。 ふと、ケンショウは、その後ろ下方から迫る機影に目を取られた。 「あれは……!」 ケンショウは、すぐに機を増速させた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/671
672: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 緩めていたスロットルを再びフルにし、機首の大馬力エンジンを力いっぱい唸らせる。 「ケビン!攻撃隊に敵機だ!」 「な……了解!!」 増速した2機のF8Fは、スカイレイダーの後方から食い下がる4機の飛空艇に向かっていく。 同時に、無線機で攻撃隊指揮官機に敵機接近を知らせる。 ケンショウ、ケビンペアが敵機に迫るよりも、敵機がスカイレイダーに攻撃を開始する方が早かった。 「あ……畜生!」 スカイレイダーの編隊が攻撃を受け、編隊の一部が崩れる。 光弾の集中射を受けてしまったのか、スカイレイダーの1機は胴体から黒煙を吐きつつ、機首を下にして落ち始めていた。 別の1機も同様に煙を吐きながら、急速に高度を落としていく。 敵の奇襲で、早くも2機のスカイレイダーが犠牲となったのだ。 敵飛空艇が猛スピードで突っ込むF8Fに気付くや、急いで散開し始めた。 だが、ケンショウは動きの鈍い1機に狙いを定め、150メートルの距離から敵機目がけて機銃を放つ。 20ミリ弾は敵飛空艇の左側面や胴体に命中した。 その直後、敵機は胴体中央部がぱっくりと折れ、2つに別れて墜落していった。 ケビンも別の飛空艇に機銃を放つ。 この飛空艇は回避運動に入った所を20ミリ弾に撃ち抜かれ、機銃弾は右主翼を根元から叩き割った。 「1機撃墜!」 「こちらも叩き落した!!」 ケンショウとケビンは、互いに戦果を報告しあいながら、回避に成功した敵機を注視する。 その敵機は、全体的にずんぐりとしており、全長もベアキャットとほぼ同じか、やや小さいように見える。 主翼もあまり大きくはない。 彼は一目見ただけで、この飛空艇の正体を見破ることができた。 「ドシュダムか!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/672
673: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] ケンショウは散開したドシュダムの内、旋回上昇に入ったドシュダムを追跡した。 「下降した奴は自分が追います!」 「周囲に気を付けろよ!」 ケビンと別れたケンショウは、自分も戒めるように、相棒に注意を促した。 上昇に移ったドシュダムは、ケンショウのベアキャットが追跡してくるのに気付くや、すぐに反転、下降を行い始める。 「逃がさんぞ……!」 ケンショウも後を追い、愛機をドシュダムの後尾に付ける。 旧世界のソ連製戦闘機、I-16戦闘機に似た、全体的にこじんまりとしている敵飛空艇は、思いの外巧みな動きで最新鋭戦闘機で あるF8Fの追尾を振り切ろうとする。 その動きはキレがあり、ケンショウも動きに翻弄されてなかなか射点に付けない。 時折、急激な水平旋回や宙返りを行って、F8Fの背後を取ろうとする。 しかし、F8Fも格闘性能に置いては最高と太鼓判を押された機体だ。 ドシュダムの背後にピタリと食い付き、射撃の機会を待ち続ける。 操縦席から敵のパイロットがしきりに後方を確認する姿が見て取れる。 その姿は、米海軍のパイロットと比べて差異はあるものの、目元に付けたゴーグルや酸素マスクのような物等、基本的な装備はほぼ 同じのように感じられた。 胴体後部に赤い数字(シホールアンル語で12を表している)が描かれたドシュダムは、ベアキャットを尚も振り切ろうとするが、 ケンショウ機は離れないどころか、じわじわと距離を詰めつつある。 300はあった距離が200、200から150と、徐々に近付いてくる。 高度計は2000メートルを切っていたが、水平飛行に近い今なら、急な機動で地面に落ちる事はない。 「もう少し……もう少し……」 ケンショウは、左右に動き回るドシュダムの動きを見計らい、タイミングを合わせて20ミリ機銃を発射しようとした。 「!?」 不意に、ケンショウは背中に悪寒を感じた、と思いきや、目の前の敵が機体をほぼ垂直に傾けた状態で静止した。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/673
674: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「なっ!?」 敵機の予想外の動きに、ケンショウは驚いたが……不思議にも、極端に驚くほどでもなかった…が、 「まさか……!」 敵機の視界が急速に後方に流れた。 ベアキャットは、ドシュダムをオーバーシュートしてしまったのである。 戦闘機乗りにとって、未だに戦意旺盛な敵に対して、最もやってはいけない行動の1つを、ケンショウは今しがた、敵に目の前でやって しまったのである。 脳裏に、ドシュダムの光弾に貫かれ、爆散するベアキャットの姿がよぎった。 ケンショウは考えるよりも先に、体を動かした。 『ドシュダムの照準器に、間抜けなベアキャットの姿が綺麗に納められ、光弾の発射ボタンに手がかかる』 左のフットバーを踏み込み、そこから操縦桿、ラダー等を瞬時に操作する。 『光弾の発射ボタンは綺麗に押し切られる』 愛機が若干左斜めの姿勢に傾きつつ、同時に左旋回の形を取り始める 『両翼の2本の銃身から太い光弾がはじき出され、ベアキャットの柔らかそうな後部に殺到した。そして……』 ベアキャットは見たこともない態勢を取ったと思いきや、瞬時にして眼前から消え去った。 『「!?」』 2人のパイロットは一瞬の出来事に驚いた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/674
675: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] しかし、この時……攻守は逆転していた。 ドシュダムの射撃は、ベアキャットに居た位置を貫いたが、当の敵機はそこにはいなかった。 ケンショウは激しいGに体を押し付けられながらも、愛機の姿勢を元に戻した。 (今の動きは……!) 彼は、自分が今やった、機体を捻りこませるような機動がなぜ出来たのか理解できなかったが、どういう訳か、ドシュダムの背後は捉えられている。 反撃のチャンスである。 ケンショウは無言で20ミリ機銃を放った。 機銃弾はドシュダムの胴体に突き刺さるかと思ったが、敵もやり手なのだろう。 即座に機体を右に傾け、水平旋回でよけようとする。 だが、ドシュダムが機銃弾を避ける事は叶わなかった。 まず、左主翼に20ミリ弾が命中し、大穴を穿つ。次に尾翼や胴体に命中し、こじんまりとした機体から白煙が吹き上がった。 ドシュダムには数発しか命中弾を浴びせられなかったが、その数発が致命弾となったのであろう。 敵機はくるりと一回転したあと、そのまま機首を下に墜落し始めた。 その時、コクピットから搭乗員が飛び出した。 程なくして白い花のような落下傘が開き、搭乗員は落下速度を大幅に減殺され、大空にゆらゆらと漂い始めた。 かろうじて脱出を果たした敵搭乗員と、ケンショウ機の位置は近かった。 「……相手の顔でも見てやるか」 不意に、自らを苦戦させた相手の顔を見たくなり、ケンショウはゴーグルを外し、高度を下げてパラシュートに接近する。 そして、400キロほどの速度を維持し、ケンショウはそっと敬礼を行いつつ、敵パイロットの近くを通過し、顔を確認しながら その場を飛び去って行く。 「あんな女の子に、俺は翻弄されていたのか……こりゃ参った」 ケンショウは自然と、自らの不甲斐なさを恥じる余り、顔に苦笑を浮かべていた。 その一方で、心中では最新鋭機を手玉に取りつつあったその女性パイロットに、尊敬の念を抱いていた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/675
676: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] ワイバーンと飛空艇の迎撃を退けた攻撃隊は、敵秘密工場まであと5マイルという距離まで接近していた。 TG38.3攻撃隊指揮官兼エセックス攻撃隊指揮官を務めるアール・ガラハー少佐は、秘密工場の中を見た瞬間、思わず自らの 目を疑ってしまった。 「何だいありゃあ……工場の中に軍艦があるぞ!?」 信じ難い事であったが、それは確かに軍艦であった。 左右横開き式に開いた天井からは、明らかに船と思しき物体が鎮座している。 前部甲板と後部甲板には、立派な連装式の主砲塔が設置されており、艦上構造物も配置されている。 それは紛れもなく、戦艦その物であった。 そして、更に驚くべき事がこの軍艦で行われていた。 「しかも……少しずつだが、浮いている!?」 ガラハーは、目の前の非現実的な光景にパニックに陥りかけていたが、部下の声が響くや、我に返った。 「隊長!見えますか!?あれは軍艦ですぜ!しかも浮いてやがる!!」 「ああ。あの秘密工場はとんでもない物を作っていたようだな!」 ガラハーは部下にそう返しつつ、800メートルほど離れた場所にあるもう1つの長方形状の建物に視線を移す。 その建物も、天井が左右に開き、中から巨大な建造物が見えている。 こちらは空母と似たような全通甲板に、右舷側に艦橋といった形をしている。 しかも、こちらも徐々にだが、船体部分が浮き上がりつつある。 「こいつらは絶対に逃がしちゃいかん!ここから逃がせば、取り返しのつかぬ事態を招くかもしれない……!」 この2隻は、ここで必ず叩き潰す! ガラハーは直感で、この2隻が危険な存在であることを確信し、彼は心中で固く決意した。 「全機に告ぐ!これより、攻撃隊は未知の軍艦2隻を叩く!エセックス隊、イントレピッド隊は前方の敵砲艦!ボクサー隊は 奥側の敵母艦を叩け!」 「「了解!」」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/676
677: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] スカイレイダーは飛空艇の襲撃で2機が撃墜されたものの、未だに46機が残っている。 そのうち、エセックス隊、イントレピッド隊の30機、ボクサー隊の16機という具合に二手に分かれて進撃が続く。 秘密工場の周囲に予め配置されていたのか、あちこちから高射砲の物と思しき発砲炎が見えた。 高度4000付近で編隊を組みながら進むスカイレイダーの周囲に砲弾が炸裂する。 数は少なくない。 「敵が盛んに撃ってきたな……む、工場の中の敵艦も撃ってきたぞ」 ガラハーは、工場の中からも発砲炎を確認する。 唐突に、1発の高射砲弾が至近弾となり、機体のあちこちが金属的な音を立てる。 高射砲弾の破片が機体を叩いたようだが、致命傷には至らず、機首の大馬力エンジンは会長に回り続けている。 「小隊毎に散開!工場を四方から包め!」 ガラハーの命令が下るや、緊密な編隊を組んでいたスカイレイダーが4機ずつに別れ、工場の右側や、前方、後方側に向かっていく。 高射砲弾の弾幕は、工場に近づくにつれて濃くなりつつある。 ひっきりなしに炸裂する砲弾は、スカイレイダーを徐々に痛めつけて行く。 1機のスカイレイダーが胴体中央部から火を吐いたと思いきや、突然大爆発を起こす。 どうやら、翼に抱いていた2発の爆弾のうち、1発に高射砲弾の破片が命中して誘爆を起こしたようだ。 続いて、工場の後方側(北東側)に向かいつつあった機が火達磨となり、断末魔の様相を呈しながら急激に高度を落としていった。 2機が犠牲になったが、敵地上部隊と工場の中の軍艦が上げた戦果はこれだけである。 先に降下を開始したのは、ガラハーの直率する小隊であった。 ヴェルティンルは、機関の始動に成功すると、ゆっくりと上昇を続けていた。 艦内には、浮遊石が起動した事によって発せられる、独特の機関音が響いている。 その音は甲高いが、さほど不快になるような物ではない。 どちらかというと、森の中で聞こえる鳥の鳴き声を小さく、かつ薄く伸ばしたような音だ。 空中艦隊計画で建造された空中軍艦は、浮遊石の特性で垂直離着陸が可能となっている。 ハヴォンソは敵機が来る前に上空に上がり、爆撃を回避しようとしたのだが…… 敵機に対応した迎撃隊は撃退されてしまい、敵攻撃機は今や、建造ドッグから目と鼻の先まで迫っていた。 「対空砲!撃ち方始め!!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/677
678: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 艦長が号令を発するや、左舷側に設置されている高射砲が砲撃を開始した。 高射砲はこの艦に配備されて以来、1発の試射も行っていない。 それに加えて、搭載されている砲弾は高射砲弾が少々で、主砲弾や魔道銃用の魔法石は全く搭載されていない。 ヴェルティンルが使える武器は、この高射砲のみである。 とはいえ、全く応戦できないよりはマシであると、ハヴォンソは心中で呟いた。 ドック護衛にあたる地上部隊も、高射砲弾を盛んに撃ち放っている。 だが、敵機は数機ずつに散開し、建造ドックを押し包むように向かってきた。 高射砲の射撃は尚も盛んに行われる物の、2機を撃墜しただけに留まる。 そして、遂に左舷側から進入しつつあった敵編隊が急降下を始めた。 上空に敵機の放つ異様な轟音が響き渡る。対空部隊は高射砲のみならず、魔道銃も撃ち始めた。 ハヴォンソは、艦橋から敵機の姿を見据えていた。 敵機は胴体下部と、左右側面から板状のようなものを張り出しながら急降下しつつある。 狙いは勿論、ヴェルティンルだ。 敵機は激しい対空射撃を浴びている筈なのだが、一向に落ちる様子がなく、その機影を急速に拡大させつつある。 始めは小さかったその姿が、拡大される轟音と共にあっという間に大きくなる。 「来るぞ!」 ハヴォンソは思わず叫んでしまった。 直後、スカイレイダーの両翼から、2つの黒い物が切り離された。 スカイレイダーは機首を引き起こし、轟音をがなり立てながら上空を飛び去って行った。 「敵機爆弾投下!命中します!!」 悲鳴じみた声が艦橋に響く。 そして、遂に爆弾はヴェルティンルに命中した。 爆弾が命中するや、ヴェルティンルの艦体は……思いの外揺れなかった。 この時、2発の爆弾は、1発がドッグの壁の外に落下し、もう1発がヴェルティンルの後部甲板に命中した。 爆弾が命中するや、爆炎が吹き上がると同時に、甲板の板材が空に舞い上がった。 だが……驚くべきことに、後部甲板は、そこが“非装甲部”であるにも関わらず、爆弾の貫通を許さなかった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/678
679: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「爆弾命中するも、損害軽微!」 「……これが、魔力付加の効果か」 ハヴォンソは小声で呟くが、直後、2番機の放った爆弾が再びヴェルティンルに命中する。 今度も爆弾は2発中1発がドックの外に外れ、1発が前部甲板に叩きつけられたが、これまた派手な爆炎を噴き上げただけで、 艦体になんら損害を与えられなかった。 「ようし!期待通りの効果だ!!」 艦長が勝ち誇ったかのように大声で言った。 ヴェルティンルには、甲板上にワイバーンが使用する防御魔法の亜種を組み込んだ魔法薬を塗り込んでいた。 この特殊な魔法薬は、1週間前に開発されたばかりの試供品であり、魔道院の責任者からは、アメリカ製の航空爆弾(1000ポンド相当) なら、同一箇所に7、8発は命中しても耐えられると言われていた。 これは、本来なら海軍の竜母にて使用される予定であったが、決戦までに開発が間に合わず、その最初のテスト艦として、このヴェルティンル とヒィネ・レイズネスが選ばれたのである。 米軍機は四方からやって来ては、次々と爆弾を投下していく。 爆撃は正確であり、ヴェルティンルの艦体のあちこちに爆弾が落ちていく。 しかし、魔力付加の施された甲板は、アメリカ製の航空爆弾を1発も貫通させなかった。 とはいえ、高射砲や艦上構造物への被害は避けられない。 ある爆弾は、左舷2番両用砲に命中するや、大音響と共にこれを粉砕し、黒煙を噴き上げさせる。 艦橋脇に命中させた爆弾は夥しい破片を構造物に叩き付け、新品であった艦橋を傷物にしてしまった。 だが、都合15機目の爆撃を終えた所で、ヴェルティンルの主要部……艦橋や主砲、機関部等は無事であった。 最後の1発は、ドックの右側開閉扉に命中し、大量の破片が舞い上がるのをヴェルティンル艦橋に張り付いていたハヴォンソらに見せつけたが、 ほんの数分だけ敵の空襲が中断された。 「艦長!左舷両用砲は全滅!右舷側両用砲も1基が破損しましたが、艦深部の機関区画は無事です!」 「うむ……出航前に傷物にされてしまったのは非常に腹立たしいが……」 艦長は艦橋の外を見ながら独語していく。 外に見えていた壁は完全に視界から消えている。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/679
680: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「間もなく、ドックより離れます!」 ヴェルティンルの艦体は、あと少しでドックから完全に浮き上がる。 そうなれば、もはや勝ったも同然であった。 「我々は運が良かったようだな」 艦長は半ば、勝ち誇ったように言うが、その一方で、ハヴォンソは隣で爆撃の様子をじっと見据えていた女性士官が、艦長とは正反対の表情…… まるで、艦の命運は悪い方向に極まってしまったとばかりに、苦渋に満ちた表情を浮かべている事に気づいた。 「大尉!」 ハヴォンソは自然と、その士官に声をかけていた。 「体の具合でも悪いのかね?」 「いえ、体の具合は悪くありません……が」 大尉は口を震わせていた。 「この艦の状況は良くありません……!」 彼女は、何故か殊更低く、小さな声でハヴォンソに返していた。 「……何故だね?」 「敵の使っている爆弾の威力は……今までに使った物と同じではないからです」 「何故分かるのだね?」 「……私は過去に竜母に乗って、実際に爆撃を受けましたが……あの時の爆弾の威力は、これほどの物ではありませんでした」 「……」 その時、ハヴォンソは彼女の言わんとしている事を理解してしまった。 「今敵が使っている爆弾は……新型です。それも、威力の大きな」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/680
681: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「イントレピッド隊、続けて突入しろ!」 耳元のレシーバーに、ガラハー少佐の声が響くのが聞こえたが、カズヒロは、相当数の爆弾を受けても未だに致命傷を受けていない、 敵艦の防御力に舌を巻いていた。 「なんて固い奴だ……俺達だけで奴を潰せるか……?」 カズヒロは、エセックス隊だけでも潰せなかった敵を、イントレピッド隊で倒せるか自信がなかった。 だが、指揮官機はやる気であり、早速、敵艦の至近に到達したスカイレイダー小隊が急降下を始めた。 敵艦から発せられる対空砲火は微弱なのだが、周囲に配置された対空砲火がかなり激しい。 ひっきりなしに高射砲弾が炸裂し、魔道銃の光弾が目を蓋わんばかりに撃ち放たれている。 だが、こちらも百戦錬磨の精鋭揃いである。 対空砲火の弾幕を突破して、スカイレイダーは次々と投下高度である600付近まで達し爆弾を投下していく。 両翼に取り付けられた2発の爆弾が、敵艦の中央部に命中し、派手な爆炎を噴き上げる。 高射砲座の残骸と思しき物が宙高く吹き上がるが、艦体に損傷を与えたようには見られない。 続いて、別の機の爆弾が投下され、これまた敵艦に命中する。 カズヒロは、この攻撃も敵艦の装甲に弾かれるだろうと確信していた。 爆弾は敵艦の後部付近に命中していた。 爆炎が吹き上がるや、夥しい破片が上空に飛び散る。そして、命中箇所からは…… 「「!?」」 これまでに見た事もない……そして、米艦載機隊のパイロット達からは、待ちに待った光景が広がっていた。 「敵艦の後部甲板に損傷あり!!」 誰が言ったのか分からなかったが、その声音は明らかに、希望に満ちていた。 それに触発されたかのように、3番機、4番機が爆弾を投下していく。 爆弾は、新たに前部付近と中央部付近に命中する。 爆発が起こるや、やはり、先とは違う光景がみられる。 先程まで、爆炎は上がるものの、艦体には一切傷が付かなかったのだが、どういう訳か、敵艦は被弾するたびに艦体に傷を負い始めていた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/681
682: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 命中箇所からは爆炎と共に甲板の物と思しき板材や鉄片など、多数の破片が吹き上がった。 爆発が収まると、被弾した部分からは黒煙が流れ始め、火災が発生している。 敵艦の装甲が、相次ぐ被弾によって強度限界に達した証拠であった。 「第2小隊、突っ込むぞ!」 耳元のレシーバーにカズヒロの属している小隊指揮官の声が響く。 「いよいよだ!」 カズヒロは気を引き締めつつ、急降下に入る隊長機を視認する。 1番機が急降下を開始してから10秒後に、カズヒロも急降下に入った。 愛機のスロットルを振り絞りつつ、ダイブブレーキを開く。 重い爆弾を抱いたスカイレイダーは、これまでの艦爆同様、機速が上がり過ぎないようにするため、ダイブブレーキが取り付けられている。 このダイブブレーキの位置と形が変わっており、ドーントレスやヘルダイバーでは主翼に設置されていたが、スカイレイダーでは 胴体後部の左右側面と、下部の3箇所に配置されている。 スカイレイダーが急降下する時は、この3つのダイブブレーキを展開した状態で行われるが、その姿は、ドーントレス、ヘルダイバーとは 違う威圧感を感じさせる。 カズヒロはその姿を見たとき、これぞ新型攻撃機かと思ったものだが、それを下から見つめる敵兵の気持ちは、如何ばかりであろうか。 高射砲弾の炸裂で愛機が揺れる。光弾が左右に飛び去り、コクピットの近くを通過した際に不気味な擦過音を響かせる。 地上部隊の航空支援や、機動部隊同士の戦闘で何度も聞いた音だが、今でもふと、恐怖を感じる事がある。 カズヒロはいつもの通り、滲み出す恐怖感を気合で押し込み、愛機の降下を続けていく。 高度計は1500メートルを切り、1400、1300、1200と、猛烈な勢いで回っていく。 先行していた隊長機が、対空砲火を受けながらも高度600で爆弾を投下した。 爆弾は、敵艦の後部付近と中央部付近に過たず命中し、夥しい破片や火災炎を噴き上げさせる。 最初、エセックス隊の爆撃を受けても、平然とした様子で受け止めていた敵艦であったが、今では艦体のあちこちを傷物にされ、 満身創痍と言っても良い状態にある。 だが、小隊長機の爆弾も、敵艦に致命弾を与えるに至らなかったようだ。 それどころか 「まずい……!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/682
683: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 敵艦は空中で前進し始めていた。 敵はエセックス隊、イントレピッド隊の猛爆を受けながらも、遂に脱出を開始したのだ。 カズヒロは、敵艦の艦橋部分に狙いを定めていたが、敵が前進を始めた所で、狙いがずれてしまった。 だが、高度は既に800メートルを切っている。 重い爆弾を抱いて急降下爆撃を行っているため、降下スピードは1000ポンド爆弾3発を積んだ時よりも早い。 今更、狙いを定め直す余裕は全くなかった。 「ええい……ならば、爆弾が当たる所が致命弾になる事を祈るだけだ!!」 カズヒロは、半ば自棄になりつつも、高度600に降下した所で爆弾を投下した。 狙いは、敵艦の中央部分だ。 中央部分は何発もの爆弾に叩かれているため、そこからいくつもの火災が起こり、吹き上がる黒煙も幾分厚い。 カズヒロは、Gに体を押し込まれつつも、愛機を水平飛行にするべく、必死に操縦桿を引いた。 爆弾が命中することはほぼ確実だ。あとは、狙い通りに行くかどうかだ。 対空砲火の追い撃ちをかわしつつ、カズヒロは高度100メートルで水平飛行に移った。 直後、後方から何かの閃光が光ったような気がしたが、避退中のため、戦果を確認する余裕はなかった。 爆弾が命中するや、これまでにない強い衝撃がヴェルティンルを襲った。 爆発音は、艦の表面部分ではなく、艦内から伝わっていた。 「な……まさか!?」 ハヴォンソは顔が真っ青になった。 驚くべき事に、爆弾は最上甲板を貫通して第2、第3甲板までも貫き、第4甲板の第1魔力調整室で達してから爆発していた。 ヴェルティンルは、魔道機関室と魔力調整室を2つずつ設けており、これを前部と後部に1つずつ配置……いわゆる、機関のシフト配置を 行い、艦の防御力向上を図っていた。 敵機の爆弾は、魔力付加の影響で防御力の向上した甲板によって弾かれていたが、強度限界に達した後も、甲板には300リギル爆弾の命中に ある程度耐えられる設計がなされていたため、爆弾が艦深部まで貫通する事はなかった。 しかし、敵機の爆弾は、相次ぐ被弾で強度が弱くなったとはいえ、戦艦と同等の防御力を誇る水平甲板を貫いたばかりか、そこからさらに深く 突き進んで爆発したのである。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/683
684: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] (敵の使っている爆弾の威力は……今までに使ったものと同じではないからです) 近くにいた女性士官の言葉が、脳裏に浮かび上がる。 「……ヴェルティンルは新兵器だが……敵も同じように、新兵器を用意していた、と言う事か……!」 ハヴォンソが悔し気に呟いた時、更なる被弾の衝撃が、立て続けにヴェルティンルを襲った。 新たに4発の爆弾を後部付近、並びに後部艦橋付近に浴びたヴェルティンルは、後部付近の火災を更に拡大させられた。 そして、悪夢のような報告が立て続けに舞い込んできた。 「艦長!後部機関部に敵弾命中!機関室内の総員、戦死の模様!」 「艦の高度が下がっています……!まずい、落ちる!!」 誰かの声が耳に入ったと思いきや、急に、艦が下に落ち始めた。 機関室を損傷したヴェルティンルは、艦を浮かせていた浮遊石の魔法出力が決定的に足りなくなった事で、重い巨体を空中に浮かせる 事が不可能となった。 艦体はドッグの壁の上(長方形部分の短い箇所)から半ば超えていたが、そこから落下し始めたため、壁の上に艦底部がのしかかる 形となった。 壁は何万トンもの大重量を誇るヴェルティンルを支えきれず、瞬時にして崩れ落ちた。 落下の勢いは軽減出来ず、ヴェルティンルはそのままの勢いで艦体の半分を地面に、残り半分をドッグ内に叩き付けられた。 この瞬間、周囲は黒煙と共に膨大な土煙に覆われた。 ヴェルティンルは水平状態で地面に墜落すると、ゆっくりと右舷に傾き始める。 そして、煙を吐きながら横倒しとなった。 この時、金属の凄まじい叫喚が周囲に響き渡った。 それは首都ウェルバンルにも響いたほど大きく、とある住民は、怪物の悲鳴のようにも聞こえたと語るほどであった。 イントレピッド隊は、第2小隊が敵艦を撃破すると、第3、第4小隊が母艦の攻撃に向かった。 ボクサー隊は敵母艦に対して急降下爆撃を敢行し、撃破を試みたものの、敵砲艦と同様に甲板上が異様に固く、最後の1機が爆弾を命中させた 後も、敵母艦は秘密工場から上昇を続けていた。 だが、そこに第3、第4小隊が駆けつけて爆撃を行った所、あっという間に致命弾を受け、敵母艦は前進すら出来ぬまま、そのまま工場の中に 墜落し、魔法石の暴走が原因と思われる大爆発を起こした。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/684
685: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] カズヒロは、高度2000まで上がった所でもう1度、爆撃した秘密工場に目を向ける。 秘密工場では、相次ぐ被弾で地上に叩き落とされ、工場を巻き込みながら横転した敵砲艦が黒煙を噴き上げている。 その奥では、工場の中に隠れた母艦が同様に黒煙を吹いているが、吐き出す黒煙の量は母艦の方が多かった。 「やった……ようだな……」 カズヒロは、途切れ途切れの言葉を吐いた。 彼は、今までにない緊張と興奮で体を震わせていたが、操縦桿だけはしっかりと握りしめ、愛機を操縦し続けている。 「2000ポンド爆弾を積んでいたから、あの固い敵艦を撃破する事が出来たのだろうか……」 TG38.3より発艦したスカイレイダー隊は、全機が通常の1000ポンド爆弾ではなく、新開発の2000ポンド爆弾を搭載していた。 この爆弾は、従来の1000ポンド爆弾と比べて2倍もの重量を持ち、威力も大幅に上がるだけでなく、装甲貫徹力も向上していた。 TG38.3司令官であるドナルド・ダンカン少将は、秘密工場爆撃を命じられた時、迷わず2000ポンド爆弾での攻撃を提案した。 ちなみに、ダンカン少将は、本来であれば練習航空隊の指揮官に任命されるはずであったが、11月に同任務群の司令官であった クリフトン・スプレイグ少将が急病で倒れたため、急遽ダンカン少将が群司令に任命された。 ダンカン少将は当初、参謀からは1000ポンド爆弾での攻撃を提案されたが、 「例の秘密工場は何か重要物を作り出しているだろうから、空襲対策が強化されている可能性がある。連中はB-29の戦略爆撃を何度も 経験しているからな。一昔前と違って、爆撃対策を行う事は大事であると学んでいる筈だ。このため、工場施設の耐爆防御を上げている 可能性は極めて高いだろう。そのような工場を一息で破壊するのならば、スカイレイダーに2000ポンド爆弾を搭載して攻撃を行うのが 最も効果的であると、私は確信する」 と、ダンカン少将は自らの経験思い起こしながら参謀達の提案を退けた。 ダンカンは過去に、空母エセックスの艦長として前線で航空戦を指揮したことがあるが、固い目標に対して搭載爆弾が貧弱なため、2、3度の 反復攻撃でようやく目標を撃破した経験も1度や2度ではない。 反復攻撃は、敵に断続的に攻撃を与えられるという利点を持つ反面、その都度、敵ワイバーン等の航空隊や対空部隊によって迎撃され、 結果的に、指揮下の航空部隊に無視できない損害を招くというデメリットも有している。 地上の基地航空部隊に比べて、損耗を受ければ補充用の護衛空母が居ない限り、艦載機の補充が難しい母艦航空隊にとって、搭載している 航空団の過度な消耗はどうしても避けたい問題である。 それを踏まえたダンカンは、出来るだけ航空機の損耗を避けるために、一撃必殺の意味も込め、あえてスカイレイダー隊に2000ポンド 爆弾の搭載を命じたのである。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/685
686: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] このあたりの指示は、第3艦隊司令部からは何も通達されていなかった。 ダンカンの命令で搭載された2000ポンド爆弾は、初陣で未知の空中軍艦2隻を撃破するという戦果を挙げたのである。 後の歴史家はこう語っていた。 「もし、ダンカン提督が1000ポンド爆弾の搭載を命じていたら、あそこで空中軍艦を叩く事はできても、脱出を阻止するには至らなかった でしょう。ですが、2000ポンド爆弾だから、空中軍艦を撃破できた。それが、歴史の歯車を大きく動かしたのです」 艦体に爆弾が命中した時、ツンとした匂いが艦橋に伝わる。 直後、殊更に強い衝撃が艦橋を揺さぶる。 艦橋のスリットガラスが音たてて砕け散り、内部に入り込んだ無数の破片が乗員を殺傷した。 次に目を開けるときは、唐突に感じた浮遊感と、直後に伝わる大地震のような強い振動…… 人が宙に浮き、また床に叩き伏せられる。 誰かの悲鳴が耳突き刺さり、耳元を抑えたくなったが、艦が急激に右に傾く。 叫び声がまた聞こえたが、それに応答する間もなく艦隊が右に倒れ、体が側壁に叩き付けられたところで意識が途絶えた。 次に目が覚めた時は、煙った艦内で誰かに起こされた時だ。 「……令……り!い……だっ………を」 耳元に聞こえる鈍い声。途切れる言葉が理解できない。 意識も飛び飛びになっている。 真っ赤な血潮と何か柔らかそうな物が付いた壁。大穴の開いた壁面。 不意に、何度もぐにゃりと伝わる感覚。人体のような気もするし、そうでもないようにも思える。 かと思えば、床が歪に曲がり、足を取られて転倒してしまう。 それが何度も何度も繰り返された。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/686
687: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 耳にも、鈍い声のようなものが響くが、籠っていてそれが声なのかも正確に判別できない。 暗い視界の中で、壁に手をついた時は、ぬるりという感触がし、鼻腔にありとあらゆる物の悪臭がこびりつき、何度もむせる。 口からしばしの間、何かを吐き出したようだが、何故だか体が理解しない。 ここは地獄か? いや、地獄に行く前の果てしない道のりか? そこに辿り着くまでに要する時間は1時間か、1日か……それとも、10年か? 目の前に現れる白い視界。そして、耳に突き刺さる大きな音。そこでぼやけた意識が途切れる。 死の世界か? ならば、ここは天国か? それとも、地獄か? あるいは…… http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/687
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