アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/
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1: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] アメリカ軍のスレッドです。 議論・SS投下・雑談 ご自由に。 アメリカンジャスティスVS剣と魔法 駆逐艦乗りにとって一番辛い仕事は、沈没寸前の味方艦から脱出する戦友を救出する事です。 私が覚えている限りでは、特に空母サラトガの乗員を救出する時が一番辛く、また、心に残った任務でもありました。 当時、私の乗っていた駆逐艦アレン・M・サムナーは最新鋭の駆逐艦でしたが、第1次レビリンイクル沖海戦では敵の航空攻撃で 同型艦3隻が犠牲になっていました。ですが、私の乗艦は運よく敵の攻撃から逃れることが出来ました。 しかし、辛いのはその後です。 私の乗艦は、サラトガが沈む前は、巡洋艦ジュノー乗員の救助にも当たっていましたが、甲板には負傷して今にも死にかけた水兵や 乗艦から脱出して心身共に疲れ切ってうずくまる水兵達で一杯でした。 私等は彼らに励ましの言葉を送って勇気付けてやりましたが、酷い手傷を負った水兵は、甲板に上がった途端に意識を失ったり、 そのまま死んでしまう者もいました。 ジュノー乗員の救助が終わった後は、サラトガ乗員の救助となりましたが、私達は必死に彼らを助けました。 私は、あの時の……彼女の最期の光景を、今でもはっきりと覚えています。 暁の空を背景にゆっくりと沈んでいくサラトガの姿と、嗚咽しながら見送るサラトガ乗員達の姿を…… サラトガの沈没は穏やかで、ゆっくりとしていました。 今になって思うのですが、あの時、レディ・サラ自身は、今まで共にして来た乗員達に最後の言葉を送っていたのかもしれませんね。 映像の20世紀「第4章 総力戦、異世界は地獄を見た」 駆逐艦アレン・M・サムナー航海長 ヘンリー・グリース大尉の証言より ・sage推奨。 …必要ないけど。 ・書きこむ前にリロードを。 ・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。 ・SS投下中の発言は控えめ。 ・支援は15レスに1回くらい。 ・嵐は徹底放置。 ・以上を守らないものは…テロリスト認定されます。 嘘です。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/1
2: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 暫定ガイドライン(分家米軍Ver.) 1.「アメリカ軍がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「独立戦争〜近未来のアメリカ軍事組織」 が「ファンタジー世界」に関わる話であること。 なおアメリカは合衆国に限定せず、南部連合・テキサス共和国・ノートン朝等も含むものとする。 2.アメリカ軍というからには、組織・装備は実在もしくはその延長上にあるものに限る。 実在しないが延長上にあるものを出すには、そこに至る流れを説得力のある理由つけてハッタリかますこと。 3.ターミネーター・元特殊部隊のコック・核兵器としての劣化ウラン弾・艦載型B-52など アメリカ軍が配備するにはナンセンスなものは極力避ける。 しかしトンデモ軍事サスペンスとしてならまた別かも知れない。 4.あくまで「ファンタジー世界」の話であり、F世界側の設定は作者が自由に決めることが出来る。 ただしそれ単独でパワーバランスを大きく揺るがす存在(兵器・魔術・キャラクター等)は作らない事が望ましい。 5.アメリカ・F世界双方の人間をきちんと描写する方が好ましい。 一方の主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。 6.戦略・戦術としてありえないものを避ける。例えば現役大統領が戦闘機パイロットとして宇宙人相手に陣頭指揮とか。 7.萌え・エログロはあくまで表現手段であり、目的ではない。安易に狙ったり、しつこく要求するのは流石にウザイので自粛すべき。 どうしてもそれ主体でやりたい場合は各専用スレでやる事。 8.叩き・煽り・嵐は徹底放置。嵐認定を受けた後に、かまった者も同罪とする。 9.SS作者は、抽出がしやすいようにトリップ装着を推奨。 10.感想書き込む人も節度や口調を考えるべし。作品が気に食わないなら透明あぼーん汁 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/2
3: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 過去スレ・関連スレ・本家スレ アメリカ(マリアナ侵攻部隊)軍がファンタジー世界に召喚されますた ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1133677466/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.2 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1145665335/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.3 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1162735625/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.4 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1169635779/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.5 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1182214841/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.6 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1193842720/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.7 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1206694426/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.8 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1220577232/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.9 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1239460245/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.10 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1260528816/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.11 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1291978715/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.12 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1312646833/ アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.13 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1342183267/ 在日米軍がファンタジー世界に召喚されますた ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1116673454/ http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/3
4: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] スレ立て終了であります。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/4
5: 名無し三等陸士@F世界 [sage] ヨークタウン氏乙であります(ー_ー)ゞ 大海戦を!一心不乱の大海戦を!! http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/5
6: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] こんばんは〜。レスをお返しいたします。 前スレ>>992-994氏 ありがとうございます。前回は意外と時間が空いたのでササッと書けました。 >色々な面でリスクの高い夜間攻撃が双方にどんな影響をあたえるのか・・・目が離せませんね。 双方ともに、敵主力の漸減を目的としていますが、距離的にアメリカ側がきつそうです。 戦闘ともなれば被弾機がでますから、夜間攻撃隊の未帰還率は高そうですね・・・ その反面、シホールアンル側の空中騎士隊もかなりの損害を受けて、翌日の決戦時には・・・となる可能性もありますな。 前スレ>>995氏 久しぶりにwikiを見たら、前回分まで一気に更新されていました。ありがとうございます。 前スレ>>996氏 どちらかというと……凶と出そうな感もありますが、どうなるかは次回の投下で明らかになります。 前スレ>>997-998氏 誘導ありがとうございます! 前スレ>>999氏 実を言うと、艦こればっかりやってたりしますね・・・・おかげで集中力がががが 前スレ>>1000氏 あざっす!!なお、現実世界のアメリカさんは(ry >>5氏 勿論ですとも!張り切って書かせて頂きますぞ!! それでは、SSを投下いたします。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/6
7: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [] 第267話 夜海の相撃(後編) 1485年(1945年)12月6日 午後11時55分 第5艦隊旗艦ミズーリ 「長官。夜間攻撃隊の発艦準備が完了いたしました。」 第5艦隊航空参謀を務めるエルンスト・ヴォーリス中佐は、艦橋で司令官席に座って眠気覚ましのコーヒーを啜る フランク・フレッチャー大将に向けて報告を伝えた。 「参加機数は合計で72機に上ります。」 「72機か。夜間の編成にしてはなかなかの大所帯だな。」 「主力である対艦攻撃機はアベンジャー36機にヘルダイバー12機ですが、この他にヘルダイバー6機が照明隊、 ベアキャット16機が護衛、ハイライダー2機が先導役として参加しておりますので、規模がやや大きくなっております。」 「10分前には、敵の索敵ワイバーンが我が艦隊を発見している。敵が夜間空襲を仕掛けて来る可能性もある。急いで攻撃隊を発艦させよう。」 「アイ・サー」 フレッチャーの命令を聞いたヴォーリス航空参謀が顔を頷かせた。 それから程無くして、TG58.2所属の正規空母レンジャーⅡ、アンティータム、TG58.1所属の軽空母ラングレーに 攻撃隊発艦の命令が伝えられた。 1分後、各空母の飛行甲板から攻撃機が発艦し始めた。 TBFは胴体の爆弾倉に重い魚雷を抱いたまま、SB2Cは、12機が1000ポンド爆弾1発を搭載し、残った6機は照明弾を 積んで飛行甲板から飛び上がった。 これとは別に、軽空母ラングレーからは護衛役のF8Fベアキャット16機が発艦し、その他には誘導役のS1Aハイライダーが シャングリラから発艦した。 夜間という悪条件にも拘らず、午前0時10分には全機の発艦が完了。 72機の攻撃隊は翼端灯の明かりを頼りに(ベアキャットはそうでもなかったが)編隊を組み、一路、北北東420マイル付近を 航行している敵機動部隊へと向かって行った。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/7
8: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [] それから5分後…… 「長官!TG58.2のピケット艦より緊急連絡です!我、敵機の接近を確認。位置は艦隊の南南西120マイル、方位195度。 速力は約200マイル(320キロ)。」 「敵は1機だけか?」 フレッチャーは、報告を伝えて来た通信参謀のエイル・フリッカート中佐にそう問い質した。 「今の所は1機だけのようです。」 「その後方に別の敵編隊が続行しているような報せ等はまだ入っていないか?」 「いえ、まだありません。」 「それにしても南南西か……昼間の敵機はシェルフィクル方面から飛来して来たが、今の敵機は、方角からしてレビリンイクル諸島から 飛来したように思える。参謀長、レビリンイクル諸島には事前に、航空部隊が駐屯したと言うような情報は無かったな?」 「はい。そのような報告は見られませんでした。恐らく、敵は秘密裡にレビリンイクル列島にある航空基地にワイバーン隊を移動させたのでしょう。」 「2か月前の情報では、シホールアンル軍はレビリンイクル駐留部隊を前線に回したとあったが……また戻したのか。しかし、航空基地があるのなら、 偵察機は何故見落としたのだね?」 「恐らく、敵は元の航空基地があったベルクァ島から別の島に基地を移し、入念に偽装を施してこちらの目を欺いたのでしょう。」 作戦参謀のジュレク・ブランチャード中佐が答えた。 「レビリンイクル列島は、西端のベルクァ島から北西に伸びる形で配置された大小6つの島で構成されており、どの島も200〜300単位の航空戦力を 有する事が可能な面積を有しております。先の敵機は、この6つの島のいずれかから発進したものと見て間違いないでしょうな。」 「ふむ……こちらの哨戒機は、幾度もレビリンイクル列島を飛び越す形で飛行していたのだが、それでも見破れんほどの巧みな偽装を施していたとはな。」 「となりますと、敵の夜間攻撃隊が来襲する可能性があります。至急、夜間戦闘機を追加で発艦させるべきかと思われます。」 ヴォーリス中佐が進言する。 「そうだな。艦隊上空を飛び回っている12機だけでは少々心許ない。最低でも、あと12機は上げなければいかんな。」 「長官。TG58.4とTG58.5が2時間後の交代に向けて発艦準備中です。この夜間戦闘機の準備を急がせましょう。」 「そうだな。通信参謀!TG58.4とTG58.5に命令を送れ。敵航空隊の空襲の公算、大なる物なり。夜間戦闘機の発艦を急がれたし、だ。」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/8
9: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [] 「ハッ!すぐに送ります!」 フリッカート中佐は、用紙に命令文を書き終えるや、作戦室から退出していった。 それから20分後、作戦室に続報が入った。 「長官!ピケット艦より続報です!敵偵察機の後方に敵大編隊を探知せり。数は100騎前後。位置は艦隊より南南東120マイル、方位175度。 高度2000メートル付近を飛行中。速度は約250マイル(400キロ)。」 「来たか……それにしても、敵編隊のスピードが思ったよりも早いな。」 フレッチャーは敵攻撃隊の速度が、夜間飛行時の大編隊の速度にしては異様に早いように思われた。 見通しの悪い夜間飛行では、巡航速度で編隊を組むのにも、昼間以上に危険が付き纏う。 だが、ピケット艦がレーダーで捉えた敵編隊は、夜間であるにもかかわらず、緊密な編隊を組んだまま巡航速度以上のスピードで飛行を続けていた。 アメリカ軍が得たこれまでの情報では、最新型の85年型ワイバーンは、爆弾や魚雷を積んだ時には、220マイル前後の巡航速度で飛行する事が判明している。 だが、TF58に向かっている敵編隊のスピードは明らかに早い。 「……もしかして、重い魚雷を積まずに、比較的軽量な対艦爆裂光弾だけを積んでいるのか?」 「その可能性は高そうですな。」 ヴォーリスがフレッチャーに言う。 「恐らく、明日中には、敵主力艦隊はTF58との決戦を行うでしょう。その戦いを少しでもやり易くするために、こちら側の戦力を削る必要があります。 ですが、空母を直接減らすにはかなり難しい。であるならば、敵が空母を守る護衛艦のみに的を絞って、攻撃を行う可能性もあるでしょう。」 「ふむ。つまり、この敵編隊は防空艦の漸減を目的とした夜間攻撃隊という訳か。」 「今の時点ではただの推測にすぎません。この敵編隊の主目標が、護衛艦だけとは限らないでしょう。」 「対空艦潰しを行うと同時に、主目標である空母も攻撃して来るかもしれんか……いつもの通りに。」 「長官。敵が艦隊に到達するまで30分もありません。直ちに、戦闘準備を命じましょう。」 「うむ。そうしよう。」 フレッチャーはデイビス少将の進言を受け入れた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/9
10: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [] 「TF58全艦に命令!各艦はこれより、対空戦闘の準備に掛かれ!」 午前0時55分 レビリンイクル沖北方190マイル地点 「夜間戦闘機隊が敵編隊との戦闘を開始しました!」 第58任務部隊第4任務群司令官を務めるジェラルド・ブランディ少将は、旗艦キアサージのCICで戦況の推移を見守っていた。 「敵編隊の進路からして、TG58.4に突入して来るのはほぼ間違いないでしょう。」 群司令部参謀長のニール・ワトソン大佐がブランディ提督に話す。 「迎撃隊が、上手く削ってくれればいいが……」 ブランディ少将は額に滲んだ汗をハンカチで拭いながらワトソン大佐に言う。 「敵編隊の4分の1が護衛機として、攻撃機は約70機程でしょう。迎撃隊が20機落としてくれれば、こちらも大分やり易くなります。」 「だが、そう上手く行かんだろう。夜間空戦のエキスパートであるVFN91は、先の敵機動部隊に対する夜襲で全て出払っている。私としては、 リスクの高い夜間攻撃などやらずに、明日の日中に決着を付ければ良いと思っていたんだが……ひとまず、これ以上は言わない事にして。」 ブランディ少将は対勢表示板に目を向けた。 透明のアクリルボードに水兵が張り付き、刻一刻と変化する戦況を事細かに書き記していく。 戦闘開始の報告が伝わってから15分後、戦況は予想通りの展開となっていた。 「夜間戦闘機隊は尚も、敵編隊と戦闘中ですが、既に敵攻撃騎隊の半数は迎撃網を突破し、我が艦隊に向かいつつあります。」 「やはり、24機では無理があるか。」 ブランディ少将は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべた。 「報告では、敵戦闘ワイバーン4騎、攻撃ワイバーン9騎を撃墜したようですが、我が方も夜間戦闘機6機を撃墜されております。現在、 夜間戦闘機隊はほぼ全てが、敵護衛騎との空戦に忙殺されており、敵攻撃隊を阻止できる余裕はありません。」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/10
11: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 「あとは、艦隊の対空砲火で何とかするしかないか。」 ブランディ少将は、ワトソン大佐の言葉を聞きつつ、アクリルボードに視線を向ける。 敵編隊を現すマークは、TG58.4まであと20マイルにまで迫っている。 あと10分足らずで、敵編隊はTG58.4目がけて突進して来るであろう。 「各艦、戦闘準備は出来ています。あとは、敵編隊が来るのを待つだけですな。」 「全く、とんだ幕開けになった物だ……」 「隊長!正面の生命反応が高まっています!!」 第409空中騎士隊の指揮官であるヴェイト・アスフラム少佐は、直率小隊の2番騎を操る竜騎士の報告を聞き、大きく首を頷かせた。 「ようし!手筈通りに行くぞ!照明隊はそのままの高度で前進を続けろ!対空艦掃討隊は雷撃隊と共に高度20グレル(40メートル)まで降下! 雷撃隊は単横陣に展開し、敵空母を攻撃しろ!」 「「了解!!」」 彼の頭の中で、部下達が発した返信が届く。 (今頃、このやり取りも敵艦に盗み聞きされているのかな) アスフラム少佐は、本国から送られて来た派遣参謀が行っていた話を思い出した後、不敵な笑みを浮かべた。 「盗み聞きするのなら、幾らでもするがいい。その姑息な機械ごと、俺達が叩き沈めてやる。」 彼は唸るような声音でそう言いつつ、直率の小隊と共に高度を下げ始めた。 今日の出撃では、第409空中騎士隊の他に、第402空中騎士隊も参加している。 この2個空中騎士隊は、半数が経験未熟な竜騎士だが、残り半数は米空母部隊との戦闘や、前線で陸軍航空隊との戦いを幾度も経験した強者ばかりである。 第409空中騎士隊は、402空中騎士隊と共に85年の6月に編成された。 彼らには、最新の汎用型ワイバーンである85年型ワイバーンが与えられた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/11
12: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] このワイバーンを受領した彼らは、シェルフィクル近海で日夜猛訓練に励んだ。 アスフラムは過去に2度、米空母部隊との戦闘に参加しており、攻撃方法は2度とも低空雷撃であった。 1度目の雷撃では、エセックス級空母に魚雷を命中させている。 2度目の魚雷攻撃はレビリンイクル沖海戦の時に行われたが、この時は別のエセックス級空母を雷撃した物の、回避されていた。 彼の率いる第409空中騎士隊は、作戦に参加した58騎のうち、18騎が護衛。24騎が対艦爆裂光弾を搭載しており、残り16騎は魚雷を抱いている。 このうち、爆裂光弾搭載騎が2騎、雷装騎2騎が米軍の迎撃機によって撃墜されていた。 損害は同僚部隊である第402空中騎士隊にも出ている。 こちらは護衛騎18、対艦爆裂光弾搭載騎22、雷装騎18、照明隊6騎が出撃しているが、このうち、爆裂光弾搭載騎3騎と雷装騎2騎が犠牲となっていた。 攻撃前に撃墜された9騎の火力は、外れ弾を考慮しても、正規空母1隻は傷物にして後方に突き返すことが出来るほどであり、戦力の少ない彼らにとって、 この損失は小さくない。 だが、アスフラムとしては、攻撃時に必要となる照明隊が1騎も欠けずに残ってくれた事にやや満足していた。 「照明隊が全騎生き残っている事は、まさに不幸中の幸いだ。暗視魔法で視界を明るくしているとはいえ、明かりが無くては攻撃はやり辛いからな。」 アスフラムはこの幸運に感謝しつつも、味方攻撃隊を率いて敵機動部隊目指して進み続ける。 程無くして、先行した照明隊が敵輪形陣の外輪部にさしかかった。 その直後、敵艦隊が発砲を開始した。 輪形陣外輪部に位置する敵駆逐艦が、上空を行く照明隊を全て叩き落そうとしているのであろう。 しばしの間、敵艦が盛んに両用砲弾を撃ちまくる。 砲撃開始から1分が経った時、唐突に敵艦隊の上空で青白い光が輝いた。 「隊長!先に行きますぞ!!」 彼の頭の中で、部下の発した魔法通信が届く。 彼の率いる雷撃隊を、計22騎のワイバーンが追い越していく。 「期待しているぞ!」 アスフラム少佐は、対空艦掃討隊を率いる指揮官騎を見つめながら返答する。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/12
13: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 「しかし、流石は新式の照明弾だ。今までの奴と違って、敵が見やすく感じる。」 敵艦隊は、落下傘付きの照明弾によってその全容を曝け出されていた。 陣形の外輪部には、分かるだけでも7、8隻の駆逐艦がいる。そのやや内側に巡洋艦が2、3隻確認できる。 そのまた内側に、アスフラム達が目標とする敵主力……エセックス級正規空母やインディペンデンス級軽空母が、 夜間であるにもかかわらず、堂々たる姿を現せている。 空母群の右、または左斜め前方には、護衛艦群の顔役である戦艦が航行していた。 (フン、いつ見ても立派な隊形だな!) アスフラムは眼前の敵機動部隊に対して、憎しみと敬意の混じった心境で呟く。 アスフラム隊が敵輪形陣から離れた所で突入隊形を整えている中、照明隊に続いて先行した対空艦掃討隊が、小隊ごとに別れ、高度40メートルの 低空で出せる限りの速度を維持したまま突入していく。 この攻撃には、第402空中騎士隊の20騎のワイバーンも同行していたが、一足先に第409空中騎士隊が米機動部隊との戦闘を開始した。 輪形陣左側を行く複数の米駆逐艦は、射撃目標を照明隊から対空艦掃討隊に切り替えた。 アレン・M・サムナー級と思われる米駆逐艦は、猛烈な対空砲火を撃ち出してきた。 先頭のワイバーン小隊が最初の対空砲火を浴びる。 VT信管付きの高角砲弾は、まず、初弾でワイバーン小隊の3番騎を粉砕した。 至近距離で炸裂した砲弾の破片は凄まじい勢いで魔法障壁をぶち抜き、その次に竜騎士とワイバーンが夥しい破片を受けてミンチにされる。 操縦者と、操られるワイバーンが同時に絶命し、そのまま海面に叩き付けられた直後、今度は2番騎が同様に撃墜される。 生き残った1番騎と4番騎は、必死に対空砲火を掻い潜り、目標に定めた敵駆逐艦へ向けて突進していく。 距離が1400メートルを切った直後、敵駆逐艦から夥しい量の機銃弾が放たれた。 機銃弾のいくつかが魔法障壁に当たり、ワイバーンの周囲で金色に似た光が点滅する。 85年型ワイバーンは、従来のワイバーンと違い、魔法障壁の強化が本格的に実行されている。 これまでのワイバーンは、83年型ワイバーンを見ても防御力は向上していたが、現場の視点から見れば性能はワイバーンの速度が速くなっただけで 性能に大差は無いと酷評されていた。 だが、85年型ワイバーンの防御力、特に魔法障壁の耐久度は格段に上がっており、実質的に、防御力は空中戦に関して言えば1.5倍。 対艦攻撃では約2倍となっていた。 この時も、ワイバーンはしばしの間、40ミリ機銃弾の直撃に耐える事が出来ていた。 しかし、魔法障壁の効用時間も長くは続かない。 小隊の指揮官騎が目標艦との距離600メートルまで接近し、対艦爆裂光弾の発射を行おうとした時、唐突に魔法障壁が消滅した。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/13
14: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] その次の瞬間には、指揮官騎は機銃の集束弾によって吹き飛ばされていた。 だが、4番騎は撃墜される事なく、無事に光弾発射を行う事が出来た。 ワイバーンから2発の緑色の杭が投下された直後、それが緑色の光を発して米駆逐艦に向かって行った。 2発の爆裂光弾は、米艦の生命反応を探知し、1発は一度上昇してから艦橋へ、もう1発は敵艦の中央部付近に命中した。 対艦爆裂光弾が爆発した瞬間、敵駆逐艦の艦橋上部と中央部付近で爆炎が吹き上がった。 この時、駆逐艦ウィラード・キースは2発の爆裂光弾によって、艦橋トップのMK12射撃レーダーを爆砕された他、爆発エネルギーがすぐ後ろにある マストまでも叩き折った。 マストは耳障りな響きを立てながら右舷側に落下し、その際に射手ごと20ミリ機銃座を踏み潰した。 中央部に命中した光弾は、2番煙突のすぐ横で炸裂し、その周囲に居た20ミリ機銃座1つと40ミリ連装機銃座1基が損傷し、火災を発生させた。 幸運な事に、ウィラード・キースは魚雷発射管への命中を免れたため、魚雷に誘爆して爆沈という大惨事を避ける事が出来た。 だが、機銃座を複数粉砕された上に、マスト上の水上レーダーが失われた事は非常に痛手であり、ウィラード・キースの対空火力は著しく衰えてしまった。 TG58.4の駆逐艦群は、ウィラード・キースの他に、ヘンリーとバックが被弾していた。 ヘンリーは後部付近に3発の爆裂光弾を食らい、後部機関室と推進器に損傷を負い、速力が低下。次第に艦隊から落伍し始めた。 バックは1発だけの被弾に留まったが、不運にも後部の魚雷発射管に爆裂光弾が命中してしまった。 そのため、バックは魚雷の誘爆によって艦体後部が切断されてしまい、大爆発を起こして停止した。 第402、409空中騎士隊のワイバーン隊は、手始めに駆逐艦1隻撃沈、1隻大破、1隻中破の戦果を挙げた。 次に、別のワイバーン小隊が全滅と引き換えに駆逐艦2隻に損傷を与えた。 最終的に駆逐6隻が撃沈破された時、対艦掃討隊は402隊で7騎、409隊5騎が残っており、他は撃墜されるか、爆裂光弾を使い果たして 戦場から離脱しつつあった。 対艦掃討隊は、大穴の開いた防空網を突破し、次に巡洋艦の攻撃へと向かった。 そして、その後ろを雷撃隊が続いて行く。 先の攻撃を免れた米駆逐艦や、未だに無傷である巡洋艦や戦艦が猛烈な阻止弾幕を撃ちこんで来る。 真冬の夜の海面は、米艦艇の放つ対空砲火で地獄さながらの様相を呈している。 盛んに放たれる高角砲弾は、ワイバーン隊の周囲で断続的に炸裂し、シホールアンル兵が見れば眩暈がするほどに詰め込まれたボフォース40ミリ機銃や エリコン20ミリ機銃が休みなく撃ちまくられ、機銃弾は曳光弾を煌めかせながら、突入するワイバーン群目がけて殺到する。 海面は着弾する機銃弾や高角砲弾の破片で真っ白に沸き立ち、そこに1騎、また1騎と、致命傷を負ったワイバーンが墜落して行った。 空母レイク・シャンプレインの左舷側第2機銃群の給弾手を務めるフィッツ・ウィルコックス2等水兵は、左舷側1000メートル手前を行く 軽巡洋艦アンカレッジが、左舷側を真っ赤にして対空射撃を行っている様を見つめていた。 「アンカレッジが全力射撃を開始して1分以上経つのに、まだ敵は全滅しねえのか!」 「アホ!あれだけで全滅するもんか!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/14
15: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] ウィルコックス2等水兵の言葉に反応した機銃手の同僚が叫ぶ。 「だがな、アンカレッジは5インチ砲8門と20丁以上の機銃を敵に向けられるんだぜ?それに、敵はアンカレッジだけじゃなくて、アムステルダムや トライデントからも撃たれまくっている。」 「だから何だってんだ!?“あれっぽっち”の射撃で全滅したらどんだけ楽になるかね。」 以前、別の空母に乗っていた機銃手はそう吐き捨てながら、40ミリ機銃の発射ペダルに足を置いた。 それから2分後、唐突にアンカレッジが被弾した。 「くそ!アンカレッジがやられたぞ!!」 同僚の機銃手が、悔しさを滲ませた口調で叫ぶ。 ウィルコックスはアンカレッジに顔を向けた。 アンカレッジは左舷側から火災を起こしていた。被弾箇所はレイク・シャンプレインの位置からは見えないが、どうやら、左舷側中央部付近に敵弾を受けたようだ。 「ああ……両用砲と機銃座の一部がやられてやがる。」 ウィルコックスは、アンカレッジが吐き出す対空火力が明らかに減っている事を、自らの目で確認した。 被弾前は、指向できる5インチ連装砲4基8門と40ミリ4連装機銃2基、並びに同連装2基、20ミリ機銃12丁を撃ちまくっていた。 アンカレッジは今も尚、対空砲火を放っているが、5インチ砲の発砲は軸線上の物と舷側に設置された4カ所から、艦橋前と後部艦橋前の軸線上に 配置された2カ所に減り、吐き出される曳光弾の数も少ない。 敵ワイバーン隊は犠牲を出しつつも、その任務を全うしたのである。 更に、アンカレッジの前方を航行していた、巡戦トライデントも被弾し、舷側から爆炎を噴き上げた。 「トライデントもやられた!」 「シホットのファック野郎共が!調子に乗りやがって!!」 相次ぐ僚艦の被弾を前にして、ウィルコックスを始めとする機銃員や給弾員達は、無意識の内に罵声を吐き出していた。 「貴様ら静かにしろ!アンカレッジとトライデントに気を取られている場合か!?見ろ、新手のシホット共が現れたぞ!!」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/15
16: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 機銃分隊の指揮官が怒鳴りながら、左舷側海面に向けて指をさした。 「目標!左舷方向の敵ワイバーン隊!撃ち方はじめぇ!!」 ヘルメットにヘッドフォンとマイクを付けた機銃群指揮官が声高に叫んだ。 ウィルコックスのすぐ側にある40ミリ機銃座が待ってましたとばかりに射撃を開始する。 4本の銃身がリズミカルに射弾を放ち、曳光弾がアンカレッジを飛び越そうとしていた敵ワイバーン編隊に向かって行く。 高角砲弾の炸裂の瞬間、敵ワイバーンの姿が露わとなる。 距離が1000メートル前後に縮まった事もあり、舷側の20ミリ機銃座も全力で応戦する。 40ミリ弾の図太い曳光弾と共に、一際小さな火箭が勢いよく弾き出される。 海上がオレンジ色と青のシャワーに覆われたのかと思わんばかりだ。 レイク・シャンプレインの舷側の5インチ砲も猛々しく撃ちまくる。 砲手が給弾員を急かし、力自慢の給弾員は威勢の良い返事を送りながら、重い5インチ砲弾を手慣れた手つきで詰め込む。 ウィルコックスもまた、5インチ砲ほどではないが、幾らか重い40ミリ機銃弾の給弾作業に没頭した。 同僚の水兵が、クリップで4発ずつに纏められた40ミリ弾を彼に手渡し、ウィルコックスは機銃の給弾口にそのクリップをはめ込んでいく。 けたたましい轟音が鳴り響き、同時にはめ込んだばかりの40ミリ弾があっという間に無くなっていく。 その頃には、新しい40ミリ弾がウィルコックスに手渡され、彼は素早く弾をはめ込んでいく。 機銃座がやや左に向きを変え始めた。 装填作業に集中しているウィルコックスには前方に目を配る余裕が無いため、戦闘がどのような感じで推移しているかまでは分からない。 時折、ちらりと前方を見る事が出来るが、それも一瞬であるため状況を把握するには情報量が乏しかった。 (俺達が切れ間なく弾を込め続けてやるから、シホット共を全部叩き落してくれよ) 彼は心中で思った。真冬の寒い夜(この時の気温はマイナス4度だ)であるにもかかわらず、体は激しい運動のため、たっぷりと汗をかいている。 そのおかげで体は温まっている物の、防寒着が汗を吸って重くなっているように感じた。 給弾作業を始めて4分ほどが経った時、唐突に誰かの叫び声が聞こえた。 「来るぞ!」 彼はハッとなり、顔を左舷側に向けた。 その瞬間、3頭のワイバーンが大きな翼を広げた姿で、すぐ真上を飛び去って行った。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/16
17: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 「うわ!?」 ウィルコックスは、40ミリ弾を抱えたまま大きくしゃがんだ。 直後、艦体が左舷に回頭し始めた。 「な……まさか、魚雷を回避しているのか!?」 彼はこの時、レイク・シャンプレインが危機的状況に陥っている事に気が付いた。 この時までに、レイク・シャンプレインは敵ワイバーン16騎に襲撃されていた。 レイク・シャンプレインは左舷側の機銃と、艦橋の前側と後ろ側に取り付けた8門の5インチ砲を撃ちまくって雷撃の阻止に努めた。 レイク・シャンプレインの他に、損傷を受けた巡戦トライデントと軽巡アンカレッジも無傷で残っていた右舷側の機銃座を使って敵雷撃隊の殲滅を図った。 後日、レイク・シャンプレインの艦体に数十発の弾痕が発見され、この夜戦での同士討ちが発覚する程の凄まじい対空弾幕の前に、敵ワイバーン隊は アンカレッジの前方を飛び越える前に3騎が撃墜され、アンカレッジの右舷側に飛び出た瞬間には5騎が叩き落された。 85年型ワイバーンの強化された魔法障壁も、激烈な対空砲火の前にはちょっとした誤差程度であった。 だが、それでも8騎のワイバーンがレイク・シャンプレインまで1000メートルにまで迫った。 そこからレイク・シャンプレインは、自身の対空砲火と僚艦の援護射撃を受けて、新たに2騎を撃墜した。 だが、残り6騎が距離800メートルに迫った所で、一斉に魚雷を投下した。 単横陣の隊形で投下された魚雷は、扇状に広がる形で迫っていた。 敵の魚雷投下を予測していたレイク・シャンプレインの艦長は、即座に取り舵一杯を命じ、艦を回頭させた。 しかし、タイミングが一歩遅かった為、レイク・シャンプレインが回頭を始めた頃には、4本の魚雷が左舷側目がけて突き進んでいた。 ヨークタウン級空母の軽快な運動性能を引き継いだエセックス級の同型艦であるレイク・シャンプレインは、この時の回頭でその特徴を発揮した。 命中コースに乗っていた4本の内、まず、艦尾に向かっていた1発がギリギリの所で艦尾側へすり抜けて行った。 続いて、艦首へ突進していた魚雷はレイク・シャンプレインが急回頭したために、艦尾から30メートルほどの所を空しく通り過ぎっていた。 しかし、レイク・シャンプレインの強運はここまでであった。 最後の2本は、過たずレイク・シャンプレインの左舷側艦首部と後部付近に突っ込んで来た。 最初に、左舷側艦首部に高々と水柱が上がった。 この時、基準排水量27500トンを誇るレイク・シャンプレインの艦体が激しく振動し、28ノットで航行していた艦体が一瞬、停止したかと思われた。 それから5秒後には、中央部の舷側エレベーターから20メートル程後ろに離れた部分から巨大な水柱が立ち上がり、レイク・シャンプレインの艦体が更に揺れる。 ウィルコックスは、余りにも強い衝撃に死を覚悟した。 (くそ!これは死ぬかもしれんぞ……!) http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/17
18: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 心中でそう叫んだ時、彼は無意識のうちに体全体を震わせた。 彼の耳には、対空砲火の喧騒と共に被弾時に発せられる警報ブザーが鳴る音も混じって聞こえていた。 レイク・シャンプレインが被雷してから2分後、その後方900メートルを航行していた空母キアサージが攻撃を受けた。 キアサージには、16騎の敵ワイバーンが殺到し、それをキアサージ自身と軽巡アムステルダム、重巡デ・モインが迎え撃った。 こちらもまた、激烈な対空砲火を前に被撃墜騎が相次いだが、生き残ったワイバーン7騎はキアサージへの攻撃に成功した。 7騎中2騎は対艦爆裂光弾を抱いた対空砲掃討隊であり、これらの放った光弾はキアサージの機銃座と飛行甲板に命中し、少なからぬ損害を生じさせた。 続いて、5騎が800メートルで魚雷を投下した。 キアサージは回避運動を行い、5本中3本を回避した。 だが、残り2本はキアサージの左舷側中央部に命中し、高々と水柱が吹き上がった。 この損傷で、キアサージは前部機関室付近に損害を受け、機関出力が大幅に低下した。 旗艦キアサージは、敵の攻撃で損傷を負ったため、左舷に5度傾斜していた。 「司令。現在、キアサージのダメコン班は全力で被害の拡大阻止に努めています。艦長の報告では、1時間以内に浸水は止まるとの事です。それから、 消火活動に関しては、あと20分程で火災は鎮火する見込みのようです。」 「レイク・シャンプレインはどうなっている?あっちも手酷くやられているようだが……」 ブランディは平静さを取り繕いながら、最も気がかりとなっていたレイク・シャンプレインの様子をワトソン大佐に聞く。 「レイク・シャンプレインも本艦と同様、新たな攻撃を受けぬ限りは沈没する事はありません。ですが、レイク・シャンプレインも艦腹に大穴を穿たれて おります。今の所、ダメコン班が懸命の復旧作業を行っていますが、控えめに見ても大破確実でしょう。速力も出せそうにありませんから…… 明日の決戦には参加できぬでしょう。」 「……前哨戦でTG58.4は航空戦力の50%以上を喪失、という事か。酷い話だ。」 「護衛艦艇の被害も無視できません。巡戦トライデントはまだ大丈夫として、軽巡アンカレッジは左舷側の両用砲を失っており、対空火力が大幅に 減じております。駆逐艦部隊は、第84駆逐隊がバック轟沈、ヘンリーとウィラード・キースが中破。第92駆逐隊は沈没艦こそありませんでしたが、 それでもウェンリー・ブリッジス、ケン・クランジェルが中破しております。第93駆逐隊も1隻が中破しており、駆逐艦部隊の被害は喪失1、 戦線離脱が5隻に上ります。1個任務群の駆逐艦定数は6個駆逐隊24隻ですが、我が任務群は既に、1個駆逐隊半の駆逐艦を戦列から失った事になります。」 「……恐らく、数時間後には大破したキアサージとレイク・シャンプレインも後方に下げる事になる。護衛には……最低でも1個駆逐隊は必要になるから、 TG58.4の戦力は大幅にすり減らされた事になるな。」 ブランディは深いため息を吐いた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/18
19: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] 「立派に整備された決戦兵力が、一度戦っただけで飴のように溶けていくとはね。」 「司令。先ほどは敵にしてやられましたが、あと1時間後には我が方が放った攻撃隊が敵機動部隊に辿り着きます。我々は損傷艦の構想準備を行いつつ、 夜間攻撃隊の奮闘を祈る事にしましょう。」 「君の言う通りだな。」 ブランディは頷くと、俯かせていた顔を上げ、参謀長に視線を向けた。 「参謀長。旗艦を変更しよう。TG58.4には無傷のゲティスバーグが残っている。群司令部は直ちにゲティスバーグに移動し、損傷艦の後退準備と 明日の攻撃準備に備える事にしよう。」 「アイアイサー。」 ワトソン参謀長は命令を受け取ると、すぐに通信参謀を呼び、ゲティスバーグと連絡を取らせた。 午前1時20分 レビリンイクル沖北方430マイル地点 TF58より発艦した夜間攻撃隊は、1機の脱落機が出る事もなく、順調に進撃を続けていた。 「隊長!艦隊より続報です。」 夜間攻撃隊の指揮官を務めるジョージ・ゲイ少佐は、愛機の操縦桿を握りながら無線手の報告に耳を傾けていた。 「敵編隊の攻撃は終了せり。先の攻撃でTG58.4所属の駆逐艦1隻轟沈、5隻大中破。空母レイク・シャンプレイン、キアサージ被雷、沈没の恐れ なきも損害大。他、軽巡アンカレッジ、巡戦トライデントも被弾せり……」 「シホットの奴ら……やってくれるじゃないか!」 ゲイ少佐は眉間にしわを寄せながらそう言い放った。 「連中も相当気合が入っているようだが、夜間奇襲が得意なのは、何もお前らだけじゃないぞ。今に見てろよ……」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/19
20: ヨークタウン ◆vpdKySpD2. [sage] ゲイ少佐は、沸き起こる激情を飲み込みながら、心中でTG58.4の仇討ちを誓った。 ジョージ・ゲイ少佐は、開戦以来、母艦航空隊のパイロットとして活躍して来たベテランパイロットである。 初陣は42年8月のレーフェイル大陸強襲から始まり、第2次バゼット海海戦、43年序盤から中盤の敵通商路破壊作戦とマルヒナス運河空襲に参加。 44年中は本国で教官配置となるも、45年1月に前線に復帰。 その月の下旬に発生したレーミア沖海戦にホーネット雷撃隊の一員として参加しており、敵竜母に魚雷を命中させている。 母艦ホーネットが沈没した後は、本国で3週間ほど休暇を取った後、今年5月にアンティータム所属のVT−37指揮官に任命された。 ゲイ少佐のVT−37は、TF58で最も練度の高い部隊である。 攻撃力の点から見て、VT−37の装備するアベンジャーは新鋭機であるスカイレイダーに及ばない物の、スカイレイダーが苦手な夜間攻撃を充分に こなせることが出来た。 このため、VT−37はレンジャーのVT−17と共に夜間攻撃隊の主力に選ばれ、1時間20分前に母艦アンティータムから飛び立った。 だが、夜間攻撃を企てていたのは敵も同様であり、VT−37が未だに進撃途上である中、シホールアンル軍は先手を打ち、TG58.4に大損害を 与えたのである。 これには、ゲイ少佐のみならず、夜間攻撃隊のパイロット全員が悔し涙を呑んだ。 とはいえ、戦闘はまだ始まったばかりである。 復仇の機会は間もなく訪れる……彼らはそう確信していた。 時間が午前2時10分に差し掛かった時、攻撃隊の前方を飛行しているS1Aから連絡が入った。 「ヴェルモットリーダーよりブラックファングリーダーへ!応答願います!」 「こちらブラックファングリーダー。どうした?」 ゲイ少佐は前を見据えつつ、レシーバーの向こう側へ返事を送る。 「機上レーダーに反応があります!位置はここから北北東方40マイル。方位25度!反応は増大しつつあります!」 「周囲に敵機はいないか?」 「敵ワイバーンらしき物の反応は……今確認しました!数は6ないし8以上。こちらに向かっています。」 「OK。どうやら、アタリを引いたようだな。」 ゲイ少佐は愁眉を開いた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/20
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