アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
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525: 『背負いもの』 2015/12/04(金)22:08 ID:RdMeM99M0(6/21) AAS
(久々に兄貴の『アレ』が始まったか。昔から新商品や新しいデザインやらを考えだすとこうなっちまうんだよなぁ……とりあえず準備だけでもしておくか)

心のなかでそう独語すると、作業に必要になりそうな道具や材料を揃えるべくその場を離れるウォルツ。行き先は工房の隣にある倉庫(盗難対策のため頑丈な造りをしており、分厚い扉には複数の錠が取り付けられている)だ。
そして彼が倉庫にあった材料と道具箱を抱えて戻ってくると、そこにはしわの寄った数枚の紙切れにちびた鉛筆で一心不乱にデッサンを書きなぐる兄の姿があった。どうやらアイデアがまとまったらしい。

「ああ来たか……まずはこいつを見てくれ、本体の改造はこんな感じだ。それとこいつが物入れでこっちがその蓋だ。俺は本体の方に手をつけるからお前はまず物入れの方をを頼む。出来上がったら知らせてくれ」

早口でそう言いながら紙切れを押し付け、替わりにウォルツの持っている道具箱を半ばひったくるように受け取ると取り出したチョークでハバーサックのあちこちに線を引き始めるボズ。一方ウォルツはため息を一つつくと手渡されたメモに目を通しつつ作業台の上に布地を広げ、定規とチョークで線を引き始めた。
静まり返った工房に二人の職人の出す物音が響く。布地を切るハサミの出す音、その布地を縫い合わせるミシンの作動音、そして顔を寄せあって話す二人の声。しばらく現場から遠ざかっていたとはいえ、元々は腕の良い職人である二人が力を合わせたおかげで程なくしてハバーサックの改造は終わり、アメリカ製の出来損ないの背嚢はこの世界の職人の手によって見違えるような姿となっていた。
作業台に載った自分たちの力作を眺める二人、やがてボズが口を開く。その目にはいぶかるような色が見える。

「しかし理解できないな。なんで背嚢なのに袋型じゃないんだ? 荷物を布で包むのは分かる、だがなぜその包みをこんな妙な形で背負うようにしたんだ? だいたいストラップ3本で締め付けた程度じゃ歩いてるうちに包みが解けるのは当たり前だぞ。アメリカ人は何を考えてこんなものを軍用の背嚢にしたんだ?」
「こいつを預けた軍人さんも言ってたよ『アメリカ軍の連中と付き合いがあるんだが、彼らの考え方が未だによくわからん』って。とりあえず考え事は後にしてさっさと後片付けを済まそうや兄貴、だいぶ暗くなってきた」
省4
526: 『背負いもの』 2015/12/04(金)22:12 ID:RdMeM99M0(7/21) AAS
投下終了です
WWⅡの米軍装備を語る上で避けては通れないハバーサック、しかしのその実態は旧式の上に欠陥だらけの装備だったりします。
昔サープラスショップで試着した時「なんでこんな使いづらいものを作ったんだろう?」などと疑問に思ったものです。

しかしヨークタウン氏、モチベ崩壊ですか……かく言う私も外伝として書いてみたいネタが色々あるのに形にできないでいる状態です。
ロスアラモスを舞台に実在の科学者たちと留学生たちがあれこれやらかす話とか、パルプマガジンを読んだ留学生がR・E・ハワードやH・P・ラヴクラフトにはまる話とか、アメリカン・ギャングと盗賊ギルドのボス同士の出会いとかアイデアだけは山程あるのですが……。
527: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2015/12/05(土)00:13 ID:RFdlCuco0(1) AAS
おお・・・お久しぶりあります!
今回も良きSSを読ませていただきました。

モノの作りが悪いと、苦労するのは人ですからなぁ。
自分もアメさんがなぜ、ハバーサックを作ったのかと今も疑問に思いますね・・・
しかし、使い辛い装備をきっちりと治す彼らも腕が良いものですな。

>モチベ崩壊
いやはや、本当に自分でも情けない限りです。hoiマルチやらwows等に手を出しすぎですな・・・
今後は何かを切り捨てることも考慮しなければいならないかも。
528
(1): 2015/12/05(土)23:47 ID:RdMeM99M0(8/21) AAS
遅くなりましたがヨークタウン氏、感想ありがとうございます
>手を出しすぎ
実を言うとそれがネタをなかなか形にできない原因だったりします
あるアイデアをネタに書き始めて詰まるとそれをほっぽり出して他のアイデアをネタに書き始め
詰まるとまた他のアイデアをネタに……(ry
やりたいこと、書きたいことはたくさんありますが、時間は有限なんですよね
仕事は段取り八割とか言いますが、SS書くのも(いや、生活全てにおいて)段取りが大事ということでしょうか
529
(1): 2015/12/07(月)00:53 ID:NIxThEz.0(3/29) AAS
あまり長く続かないだろうけど話題作りもかねて新作でも。

多くの市民が「壁」に向けて走り出していた。「壁が崩れた」と言う噂を聞きつけた人々は我先に壁へ殺到し、「兄弟」達との再会を祝おうとした。
公園の中央を走る通りの先には壁によって行くことが出来なかった門が見えていた。しかし熱狂に包まれた群集はその門に起こっていた異変に気付くことはなかった。
それに気付いた時には何もかもが遅すぎた。歓声が悲鳴に変わり、人の動きが180度変わったとき、目の前には大きな口が開いていた。
その次の瞬間に映像に写っていたのは御伽噺に出てくるような生物とカメラの持ち主であった者の足だけであった。
『東西ベルリンの境界線において何らかの事件があった模様です。続報はこのあとのZDFニュースで・・・』
『西ベルリン市内は悲鳴に包まれ大勢の負傷者が発生しているとの情報が・・・』
『ベルリンで起こっている事態に関して米ソ両国は現在のところ何の声明も発表しておらず・・・』
『・・・落ち着いて屋内に留まってください。ラジオを常に携帯し、緊急放送をいつでも聴けるようにしてください。・・・』
530
(1): 2015/12/07(月)00:54 ID:NIxThEz.0(4/29) AAS
ベルリンは世界有数の大都市であったが、その区域は「政治的都合」から完全に分断され、その半分は鉄のカーテンから100km以上離れた飛び地となり、その周辺は悪名高き「壁」によって中世の都市よろしく囲まれている。
この「東西の境界」となっていた欧州の中心都市が「世界の境界」となることをその時が来るまで市民たちは気付くはずもなかった。
1989年11月9日、日付が変わるころに突然起こった東ドイツ高官の「失言」という全く予期し得ない出来事によって、「壁」は突如としてその意味を成さなくなってしまった。
そのことを聞きつけた市民たちが隣人たちとの再会を求めて壁に殺到するまでにそれほど時間はかからなかった。要領のいいものにはハンマーやツルハシをもって壁へ向かう人もいた。
東西双方の警察は突然の事態に混乱し、機能不全に陥りつつあった。そしてその時、ブランデンブルク門から突如として「それ」が現れたのである。
531: 2015/12/07(月)00:58 ID:NIxThEz.0(5/29) AAS
とりあえず冒頭だけ投下終了。
アメリカ軍、というより厳密にはNATO軍ですが細かいことは気にしないように。
個人的な趣味から設定は90年代にしておきました。この時代なら軍隊が有り余ってますからね。
532: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2015/12/07(月)12:27 ID:GB5IdYgc0(1) AAS
>>528氏 いや、まったくその通りです。
時間を有効に活用しなければいかんですね…

>>529氏 おお、投稿お疲れ様であります!
これは、まさか、ベルリンの壁崩壊からの……!?

GEAT方式に似たような物のようですが、異世界軍がどんな感じなのか早くも気になるところです。
異世界国は色々ありますが、アカメが斬る!という漫画にあるような軍隊がやってきても、壁周辺
は大惨事になりそうな予感ですね。
まぁ、あの漫画は帝具とかいうチート兵器がキーパーソンみたいな物でしたが、軍自体はなぜか
機械化されていない不思議なものでしたね・・・

あと、ベルリンの壁関連でですが、ニコ動でIF戦記のような物もありましたね。
省6
533: 2015/12/08(火)20:45 ID:NIxThEz.0(6/29) AAS
感想ありがとうございます。
紹介された動画ですが既に確認済みですね。というより米軍が門を越えるまでの部分はこの作品を参考にする予定です。
F世界行く前の政争について延々と書きたくないのでダイジェストでお送りします。
534: 2015/12/13(日)10:46 ID:DtEp6bOc0(2/2) AAS
モチベ復活まで、じっくりお待ちしておりますので、英気を養ってください>ヨークタウン氏
535: 2015/12/24(木)20:32 ID:s.DYOAA60(1/3) AAS
イザナミ零
fx.easytradefx.net/ifff
536: 2015/12/28(月)02:16 ID:NIxThEz.0(7/29) AAS
>>530 の続き。需要はさておき

「11月10日の出来事はよく覚えています。」と当時のベルリンの警察署長は語る。
「情報が錯綜していました。共通していたのは『西ベルリン市民が大勢殺されている』ということだけで、ある市民は爆弾テロだと通報し、警察官は暴徒が暴れていると報告し、ソ連軍が攻めてきた、という通報や報告もありました。
そこで我々は最悪の事態である最後の報告に従い、駐留軍に出動を要請すると共に『何故か』まだ攻撃を受けていない市の西部に市民を避難誘導することを決定したのです。」

アメリカ軍のスティルウェル中将は言う。
「ラムシュタイン空港で警察署長からの出動要請を聞いたとき、在ベルリン米軍の指揮官だった私はこう言いました。
『落ち着きたまえ、騒動はブランデンブルク門の周辺だけで起こっている。ソ連軍が動いたわけではない。
暴動か東側の国境警察の流れ弾が飛んできたのだろう』と。しかし『だから君達だけで対処するように』とは言えませんでした。
それを言おうとしてブランデンブルク門の方向を見たとき、都市の明かりに浮かび上がったドラゴンがベルリンの町を襲っていたのですから。
それを見た私はすぐさまベルリン中の地上部隊をブランデンブルク門に急行させるように指示しました。」
省11
537: 2015/12/28(月)02:19 ID:NIxThEz.0(8/29) AAS
3日後東ベルリンに周辺のドイツ人民軍部隊が到着し、夜明け前には反撃の態勢が整いつつあった。しかし西側では少し状況が違っていた。

スティルウェル中将
「西ベルリンをソ連から守るために駐留していた我々ですが実際のところ200万人の市民を守るのに十分な戦力ではありませんでした。
100マイルも遠くの飛び地に大軍を置いても壊滅することが分かっていたからです。歩兵部隊が中心で重火器や戦車は少なく、ソ連の本格的な攻撃の前に持ちこたえることは不可能でした。
我々は『そこにいる』だけでその目的を達成できると考えていました。そこに突如敵が現れたのです。
我々駐留軍単独ではブランデンブルク門まで押し戻すだけの力が無いことは明らかでした。
しかし、だからといってソ連や東ドイツ軍を西ベルリンに入れることは我々も政治家も市民たちも完全に拒否していたのです。」

『数日前より発生しているベルリンの混乱は、大規模な暴動であり、アメリカ、フランス、イギリスは西ベルリン当局の要請にしたがって一時的にベルリンの軍隊を増強する措置を行っています。』
『ブッシュ大統領、それは世界が危機に直面しているということでしょうか?』
『違います、この動員はすでにソ連から確認を取ったうえで行っており、我々はソ連と連携して事態の収拾に当たっています。これはベルリンのみの問題であり、少なくともこれが世界の危機に直接繋がることはありません。』
省1
538
(1): 2015/12/28(月)02:23 ID:NIxThEz.0(9/29) AAS
投下完了。演出や人物は例の動画に強く影響を受けています。
539: 2015/12/28(月)10:29 ID:kZZexEL60(1) AAS
>>538
投下お疲れさまです。とても面白く読ませていただきました。続きが楽しみです。
540: ヨークタウン◆.EC28/54Ag 2015/12/28(月)21:51 ID:ID1MKYvQ0(1) AAS
投稿お疲れ様です!
唐突な事態に、市民の犠牲もなかなかに多そうですな。
東側は西側よりも武装の質が良かったようですが、西側はそうでもない影響で、
被害も東ベルリンよりも多い感じなのかな。
541: 2015/12/28(月)21:58 ID:RdMeM99M0(9/21) AAS
投下乙でした
次回は東独軍の反撃が見られるかな?
その一方で防戦一方の西ベルリン駐留部隊…応援は果たして間に合うのだろうか
続きを楽しみにお待ちしております
542: 2016/01/02(土)02:04 ID:NIxThEz.0(10/29) AAS
あけましておめでとうございます。今年も自由と正義を確立しつつ異世界の蛮族を駆逐しながら過ごしましょうね。

前口上はこれぐらいにしてベルリンの話の続きを投稿します。
543
(1): 2016/01/02(土)02:07 ID:NIxThEz.0(11/29) AAS
11月14日、戦車部隊の増援を得た東側で反撃が開始され、二日後には13日時点での東側における敵勢力圏の70%を奪還することに成功しつつあった。
しかし敵が境界を越えて西ベルリンへと撤退すると東ドイツ軍は手を出すことが出来なくなっていた。そしてそれは壁の反対側に対して予期せぬ状態を引き起こしていた。

スティルウェル中将
「16日、突如現れた敵の大部隊によってヴィルヘルム通りの橋が突破されたという知らせが入ると我々は危機に陥りました。
ヴィルヘルム通りの南にはテンペルホーフ空港がありました。クレムリンとワシントンの合意により陸空から増援部隊が少しずつ到着しつつありましたが、彼らが2kmも前進すれば、我々は増援部隊や物資と共に補給路を失う危険があったのです。
私はやむを得ず輸送機から降りた兵士たちをそのまま・・・ライフルの照準調整もしないうちにヴィルヘルム通りへと投入することにしました。我々はそこまで追い詰められていたのです。」

また最前線でも問題があったとアメリカ軍中尉だったパーカーは述べる。
「強固に隊列を組んだ敵兵や、敵の大型のモンスター相手に我々のM16は威力不足でした。西ベルリン警察の少数のG3のほうが頼もしく思えたほどです。
同じ弾薬を使うM60機関銃は十分な威力がありましたが、数が少ないために酷使されました。実際あの事件のあと部隊のM60の4分の1が、その銃身にいたっては半分が廃棄処分になっています。」

アメリカ軍の迅速な行動により、敵の前進は500m程度で止まることになった。そして増援部隊がある程度揃った17日、ようやく西側でも反撃が開始された。
省6
544: 2016/01/02(土)02:11 ID:NIxThEz.0(12/29) AAS
というわけでやや巻き気味に東西双方の反撃をお送りしました。
需要があれば本編とは違うタイミングでパーカーかディートリッヒ視点の小話を書くかも。

戦闘シーンはすっ飛ばしましたがこの事件はまだ終わってはいません。もう少しだけ続く予定です。
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