アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/
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950: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] エルファルフは、冷めたい口調で参謀たちに言う。 「戦って死ぬか……敵に降伏するか……だな」 「ライバスツ閣下はどのように判断されますかな」 エスフォレウヲ大佐の問いに、エルファルフは首を振って答える。 「俺にもわからんが……どちらにせよ、命令に従うまでさ」 「現時点で、我が軍集団は各軍共に、損耗が大きすぎます。敵が航空支援を受けられる状態となった今、包囲網の突破も不可能となっています」 この日、第1親衛石甲軍を始めとする第34軍集団の各軍は、天候が回復し始めた正午頃から、連合国軍航空部隊の猛烈な空襲を受けた。 最初に空襲を受けたのは、解囲攻勢を行っていた第3親衛軍団と第49軍団で、アメリカ海兵隊航空部隊の空襲を皮切りに、実に8波、 2000機もの航空機が各軍に襲い掛かった。 これにより、損害を積み重ねつつも、曲がりなりにも余力を残していた第34軍集団は、この一連の大空襲によって予備の石甲戦力、 並びに歩兵戦力に大打撃を被り、包囲網突破を図っていた第3親衛軍団、第49軍団は攻勢に必要な戦力を瞬く間に消失し、米第15、第29軍の 猛攻を受け、包囲されていた第20石甲軍も同様に防衛戦力を粉砕され、全滅か、降伏かの瀬戸際に追い込まれていた。 シホールアンル軍の航空部隊は、敵の大空襲をただ黙って見過ごしていた訳ではなく、ありったけのワイバーン部隊やケルフェラクを動員して 果敢な迎撃戦闘を行ったが、圧倒的な敵空軍部隊の前には衆寡敵せず、逆に270騎のワイバーン、ケルフェラクを失う有様であった。 第34軍集団司令官であるムラウク・ライバスツ大将は、移動司令部で逐一戦況報告を聞き、各軍に対して防戦に徹せよ、という命令を発した 以降は、何ら命令を出していない。 「ライバスツ閣下にご決断して頂きたいところですが」 「それは私も同感だが……4個軍中3個軍、総計30万名以上が包囲され、脱出不可となってしまった現状……ライバスツ閣下も相当応えていそうだ」 それも、軍の最精鋭とも言える部隊丸ごとだからな。 エルファルフは心中で、その一文を付け加える。 この時、一際大きな爆発音が外で鳴り響いた。 第1親衛石甲軍は、米第15軍の部隊と今も戦火を交えているため、外から聞こえる砲声や爆発音は時間が経つにつれて、徐々に近づきつつある。 各隊とも、不利なこの状況でよく戦っているが、その頑張りも、そう長くは持たない。 何かしらの事情があるにせよ、一刻でも早い決断を下してほしい。 エルファルフは常に、その思いで胸がいっぱいであった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/950
951: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「司令官、軍集団司令部より魔法通信が入りました」 「内容は?」 「は……少々お待ちを」 エスフォレウヲ大佐は、部下の通信員が魔法通信を受信し、その内容を書き記すのを待つが、途中で、通信員の筆が止まった。 その魔導士は一瞬、目を大きく見開いたが、気を取り直して内容を書き記していく。 どういう訳か、その魔導士は目に涙を浮かべていた。 通信員は目を赤く腫らしたまま、紙をエスフォレウヲ大佐に渡す。 「閣下。軍集団司令部より命令です…………」 「どうした?内容を読んでくれ」 「………第76軍を除く第34軍集団所属の各軍は、直ちに連合軍との交戦を取りやめ、降伏するべし。全責任は、本職が取る…… 第34軍集団司令官 ムラウク・ライバスツ大将」 「そうか……」 エルファルフは、何故か安堵していた。 「閣下!徹底抗戦です!」 ヴェフル参謀長が唐突に叫び始めた。 「我が軍は確かに大損害を受けました。ですが、武器も兵員も丸ごと全滅したわけではありません。ここは、最後の一兵まで戦い、 1日でも長く敵軍を拘束し……1人でも多くの敵兵を倒すべきです!」 ヴェフルは机の上の地図を右手で叩いた。 「敵は帝国本土まで、指呼の間ともいえる距離まで近づいています。その敵の進軍を1日でも遅らせ、例え本土への侵入を許そうにも、 幾らかでも時間を稼ぐべきです!」 「いや……参謀長」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/951
952: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] エルファルフは、彼の言葉を心底残念そうな心境で聞き、そして、彼の言葉を否定した。 「君の認識は間違っているな」 「な……何故です!?」 「君は忘れたのか?首都ウェルバンルが、その敵に侵入を許してしまったことを」 「あ……あ……ぁ」 「帝国東海岸の制海権は、アメリカ海軍に奪われた。例え、君の言うとおりにここで敵を拘束しても……アメリカ軍はそれを尻目に、 首都の近くに上陸作戦を行う事もできる」 エルファルフは、俯きがちだった顔を上げ、ヴェフル参謀長を真っ直ぐ見据えた。 「包囲までされた上に、戦力の多くを消耗した我々には、敵を拘束する事すらできん。徹底抗戦などは無意味だよ」 「閣下………閣下………私は……ぐっ!」 参謀長は両手の拳を力の限り握り、やがて、机に前のめりに覆い被さって号泣し始めた。 12月12日 午後8時30分 シホールアンル軍第34軍集団に属する3個軍は、軍集団命令に従い、連合国軍に対して降伏を申し入れた。 第1親衛石甲軍の一部の部隊は、命令に服従せず、そのまま森林地帯に逃走してゲリラ化したが、大半の部隊は命令に従い、連合軍へ降伏した。 こうして、シホールアンル軍の起死回生の大反撃作戦は失敗に終わり、最精鋭の機動集団は包囲殲滅された。 その5日後、東方より進撃していたパットン第3軍は、帝国本土領に侵攻。 西方より進撃中であった米第6軍と合流し、シホールアンル南部と本土領への繋ぎ目を抑えた。 ここにして、帝国本土南部領に駐留するシホールアンル軍は11個軍、150万の将兵を連合軍によって包囲されたのであった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/952
953: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] カイトロスク攻防戦両軍死傷者 シホールアンル軍(第34軍集団) 戦死者51820人、捕虜・負傷者259087人 アメリカ軍(第2軍集団・戦略予備軍並びに別動隊) 戦死者21822人、負傷者49433人、捕虜48227人 グレンキア軍(第19装甲軍団) 戦死者6790人、負傷者21834人 ミスリアル軍(第4軍団) 戦死者5877人、負傷者19827人 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/953
954: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] SS投下終了です http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/954
955: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 乙です、 あれ・・シホールアンル側は首都とシギアル港が大被害を受けたってのを知らないのか? なおかつシギアル港は港が軍港含めて壊滅的被害で海軍はほぼ全滅に等しいってのを知ってれば反抗作戦はすぐ諦めて降伏しただろうに http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/955
956: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 久々の地上戦投下乙でした。 もう一度前の話を読み直さないと忘れていた名前や設定などが色々… http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/956
957: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 更新お疲れ様です。 ・・・これでもはやまともな一線級部隊は消えてしまったかな…。 精鋭部隊も消え、頼みの決戦兵器も消え、安全な後方地帯も消え…。 今まで武器の質や数ともに劣りながらも頑強に粘っていた帝国陸軍ですが、それもとうとうなくなってしまったんですね。 もはや前線指揮官、本部司令部要員、帝都住民でさえ敗戦のときが近いことを感じましたが、皇帝はどこまで頑張れるのだろうか。 もしかしてこれが帝国初めての敗戦になるのかな…。 ともかく次回をキッチンとトイレに爆弾積めながら期待してます! http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/957
958: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 投下乙です 塹壕戦のお供スコップはいかがですか? 散開してゲリラ化したシホールアンル兵に携帯型対戦車兵器でもあればもっと活躍できただろうに 今までのシホールアンル軍が他国にしたことを見ると 首都への攻撃=敗戦フラグ といった印象が強い感じがしますが 「海軍と首都がやられた今ここで踏ん張らねば」と思うのも自然だと思います 映画硫黄島からの手紙の 「我々の子供が日本で一日でも長く安泰に暮らせるならば、 我々がこの島を守る一日には意味があるんです!」 というセリフを思い出しますね 戦力がなくなった状態で包囲から脱出なんて無理だろうから抵抗したところで殲滅されるのが目に見えてますし 降伏したほうがいいね連合軍は捕虜取ってくれるから 逆に負け続けているシホールアンルが捕虜に何かしでかさないことを祈ろう 精鋭部隊を失ってしまうのは、これから本格的に末期戦が始まるフラグ 天気が回復して連合軍の航空隊が暴れるようになり 航空予備戦力を海戦・首都防空に使い果たしたシホールアンル航空部隊の明日はいかに そしてついに登場はしてたけど実戦には出てなかったP-80とB-36が出るんですか やったー! これから行われるだろう首都近辺への爆撃 敗戦を感じるきっかけに爆撃されたことと答える人が多かったと言われますが 都市部では敗戦を感じ始めた人たちが先に避難し始めた結果 戦争に負けるとは思わない人の割合が増えるという不思議な現象が起こるようです 特に政治機能が集中する首都では役人や軍人が負けると考えるのが国民に伝わるとやばいので ますます戦争に負けるとは思わない人の割合が多くなるとか 次回の投下もお待ちしています http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/958
959: 名無し三等陸士@F世界 [sage] ヨークタウン氏投下乙です >その前に……私は以前から、君の事は高く評価していなかった。無論、今もそうだ >私は、君が行うその突発的で、衝動的ともいえる作戦がいつ、取り返しのつかぬ失敗を生むか気が気ではなかったのだよ >その危なっかしい君の勇気が、予定している次の作戦で必要になるのだ ブル・ハルゼーに面と向かってこんな言葉を吐くとは、流石はニトログリセリン まあ能力面では合衆国海軍トップクラスではあるが、人望面では最下位確定な彼らしい物言いではあります そして陸の戦いもついに決着 最後の反攻作戦が失敗に終わり、虎の子の精鋭が失われた以上、シホールアンル側にはもはや打つ手はないようですね あと南部領に取り残されたシホールアンル軍150万、これからどうするのだろう 降伏か、南部領での徹底抗戦か、それとも本土への帰還を試みるのか… http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/959
960: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 数十万人の精兵達は、兵器を取り上げられ、俯いたまま敵兵の罵声を浴びながら捕虜収容所への道を歩む 屈辱、絶望、失意、反感、失望 無敵の祖国を信じて戦った彼らはこれ以上なく敗北した 輝ける帝国兵から惨めな虜囚と転落した彼らの心中に渦巻いてた言葉はこれだけだった 『何故?』 と ……こんな感じで戦後の帝政に続くファシズムへの温床になったのでしたとかになったらこえぇー しかし、思ったよりはシホットの損害は少なく、連合軍の損害が多い。やはり天の采配がそっぽ向いてたせいでしょうか なんだかアルデンヌ攻勢で始まって、ファレーズ・ポケットで終わったような 包囲範囲はシホールアンル軍の兵器や死体が山の様に散乱して、後世で怪談話に事欠かなそうですねぇ…… そして今度は150万、キエフ大包囲 あっちは大包囲に拘り過ぎて貴重な時間を浪費してしまいましたが、こっちは一方面軍離脱したら予備戦力すらもなくなる? 現在のポケットの損害で30万近く失ったのすら痛すぎるのにそれの五倍 加えてそれだけ取り残されるのはもう本土の防衛企画ですら破綻してるって事で まさに陸の終わりの始まり http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/960
961: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] レスありがとうございます。 >>955氏 首都圏襲撃の報は全部隊に伝わっていますが、各隊の指揮官は、まずは目先の事を優先し、以前と同じように 任務遂行に全力を尽くせと厳命していますので、表面上は何ら変わらないように思えます。 ですが、解囲攻勢失敗後には、意外とあっさり降伏し、兵の大半もそれに応じていますので、実際はかなりの衝撃を受けています。 恐らく、南部領の将兵達の士気もかなり下がっていますので、包囲下に置かれた軍の中では、軍単位で降伏する部隊も現れる かもしれません。 >>956氏 地上戦は本当に久しぶりなので、かなり四苦八苦しますね。 陸戦を存分に書ける人は本当に尊敬します。 >>957氏 本当に頼りになる精鋭部隊がほぼ丸ごと失われましたからね。 シホールアンル側の防衛計画も完全に破綻しています。 陸軍に関しては、南大陸戦や北大陸戦開始当初は、膨大な犠牲を出しながらも何とか後退し、ヒーレリ戦では初めて包囲殲滅を受けて いますが、今回のような大敗は、帝国陸軍創立以来初めての事です。 今までは、海軍側を陰で嘲笑っていた陸軍首脳部も、今回の大敗で顔を真っ青に染めています。 >>958氏 叩くどころか、切る事も突く事も出来るスコップは本当に便利な物です。 >負け続けているシホールアンルが捕虜に何かしでかさないことを祈ろう 上層部がエルグマドさんに変わらん限りは厳しいですが、余ほどのことが無い限りそれはなさそうですからなぁ… 戦後の戦犯法廷に立たされるシホールアンル将兵の数は多くなりそうです >精鋭部隊を失ってしまうのは、これから本格的に末期戦が始まるフラグ 陸海軍の主力が、この1カ月足らずの間にそっくりそのまま失われてしまいましたからね… 上層部の首脳が絶望のあまり、自殺してもおかしくないほどの歴史的大敗っぷりです この後、シホールアンル軍にできる事と言えば、上手く戦えても、ずるずると下がり続ける事ですね その前に、制空権奪取も不可能となった現状では、上手く戦う事すらも困難になるでしょう >>959氏 キングさんは海軍実戦部隊のトップですから、自分の思ったことは容赦なく言いまくります。 それどころか、定期的にニミッツ提督にも細かく指示を下していて、やりたい放題です。 その辺は本当、史実と同じですね。 >降伏か、南部領での徹底抗戦か、それとも本土への帰還を試みるのか… 現実的には、降伏か、徹底抗戦の2つしか選択肢が無いという現実 そして、切り離された南部領を尻目に、徐々に進軍していく連合軍。 ヒーレリ領が完全に失われ、シホールアンル帝国が本土領だけになるのは、もはや時間の問題ですね。 >>960氏 今回の敗北は、シホールアンル帝国陸軍創設以来の大敗北ですから、中央も激しく動揺しています。 >しかし、思ったよりはシホットの損害は少なく、連合軍の損害が多い。やはり天の采配がそっぽ向いてたせいでしょうか 航空支援が全く受けられない状態で、激戦に次ぐ激戦を繰り広げましたから、連合軍側の被害もなかなかに酷いです。 反撃部隊の中では、敵反撃部隊主隊に猛攻を加えた第15軍と第29軍の損害が最も多く、(包囲殲滅された米第78軍団より 戦死者が少ない)この辺りはソ連式のドクトリンを取り入れた場合の戦訓として後に生かされる事になります。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/961
962: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 乙です もう帝国=旧日本陸海軍に思えてきましたね 残された戦法は神風か竹槍突撃しかないんじゃないかと思うぐらいに惨敗状態 あとは上がどれほど犠牲を少なくして講和に持ち込むかだけど 帝国のプライドが許さないので戦いが終わらず 無駄に国民の犠牲が増えそうで怖い。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/962
963: 名無し三等陸士@F世界 [sage] >>962 ただ帝国側にも一定の戦力を残しとかないと戦後を考えた際に確実にあの大陸が荒れに荒れるからな・・ http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/963
964: 名無し三等陸士@F世界 [] >>962 国民総動員で戦争になったらさすがに厭戦広がって終戦派が増えるだろうな 増えるよね?そこまでガチムチじゃないよね? http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/964
965: 名無し三等陸士@F世界 [sage] >>962 帝国が降伏しても 認めない残党が残りテロやゲリラが増えて戦後もひたすら非正規戦が増えそうな予感 終わりなき面倒な戦いに巻き込まれる米国 あれ?なんかどこかで見たような構図だー http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/965
966: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] >>962氏 本当に歴史上、稀に見るほどの惨敗を喫してしまいましたからね。帝国陸海軍の首脳がこの一件で…… >>963氏 巡り巡ってアメリカに…と言う事も考えられますからな。史実の再来となったら本当に酷いもんです >>964氏 普通に終戦を公言する者も出始めていますね。 >>965氏 この世界でも、史実のようになったらまた面倒になりそうです それでは、SS投下いたします http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/966
967: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 第280話 望まざる頂点 1485年(1945年)12月13日 午後2時 シホールアンル帝国首都ウェルバンル リリスティ・モルクンレル海軍大将は、葬式の参加を終え、午前11時に邸宅に戻った後、一息入れてから海軍総司令部へ 向かおうとしていた。 馬車は、通り道であるウェルバンル市街地を行くのだが……人通りはまばらであり、歩く人の姿は数えるほどしか見えない。 いつもは通りの両側に露店が立ち並ぶ区画も、今は露店が全く無く、固く閉ざされた家々が、寂しく見えるだけだ。 これに、冬の暗い寒空が覆われている事もあり、通りの寂しさ……もとい、首都ウェルバンルそのものの雰囲気を如実に表している。 (噂では、首都を脱出した臣民の数は50万にも上ると言われている。そして、今もなお、人口の流出は続いている。 過去の華やかしき帝都の姿は、もはや過去の物……か) リリスティは、寂し気な通りを馬車の窓から無言で眺めながら、この国の置かれた実情が予想以上に厳しい物になりつつあると、 心中で痛感しつつあった。 午後2時15分には、馬車は海軍総司令部に到着した。 「……いつみてもみすぼらしい物ね」 リリスティは馬車から降り、目の前に聳え立つ横に長い、3階建ての建物を見ながら、ぼそりと呟く。 海軍総司令部は、12月9日のアメリカ機動部隊による空襲で施設が破壊された為、今は旧総司令部から西に1ゼルド(3キロ) 離れた元魔導兵士官学校に移転している。 建物は、3年ほど使われていなかったため荒れ放題であり、昨日、やっと中の片付けが終わったばかりだ。 リリスティは衛兵に答礼しながら、総司令部の中に入っていく。 そこで、リリスティは総司令部魔道参謀を務めるヴィルリエ・フレギル大佐と出くわした。 「あ……これは次官。おはようございます」 ヴィルリエは、仕事口調でリリスティに挨拶を送る。 「おはよう魔道参謀。遅めの出勤になってしまって申し訳ないね」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/967
968: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「ええ。早速ですが、よろしくない報告が入っています」 ヴィルリエはリリスティの右横に並ぶと、持っていた紙を彼女に手渡した。 「帰還中だった竜母ランフックが、軍港へ入港する出入り口の前で、敵の放流した機雷に接触。ランフックは出入り口付近で着底しました」 「嘘でしょ……」 リリスティは、突然の凶報に右手で額を抑えた。 「申し訳ありませんが、嘘ではありません。幸い、乗員の戦死者はあまり多くは無く、海戦で生き残った乗員は艦を脱出し、大半が救助されました」 「船は沈んだけど、乗員が助かったのは不幸中の幸い……か」 リリスティは眉間に皴を寄せつつ、自らに言い聞かせるような口調でヴィルリエに言う。 「これで、帝国海軍が保有する高速正規竜母は、クリヴェライカ1隻のみ……あとは小型の高速竜母が3隻に、これに就役したばかりの竜母2隻のみか。 そして……肝心の中身は補充が見込めないという」 「まさに、どん詰まりですね」 平気な顔をしてヴィルリエはリリスティに言うが、リリスティとしてはこの状況下で、尚も平静さを装えるヴィルリエに感心していた。 「そうね……どん詰まりね」 「あと、他にも報告があります。中北部のパンスィヴィン海軍工廠より伝えられたものです」 「パンスィヴィンから?」 ヴィルリエは、意外なところから送られて来た報告に首をかしげながらも、ヴィルリエから渡されたもう1枚の紙に目を通した。 「……だから何なの、としか思えない私は国賊なのかな」 「いんや。至って普通の反応だと、小官は思います」 いつの間にか、3階に上がっていた2人は、作戦室に向かおうとしたが、ヴィルリエがその前にある人気のない休憩室に親指を指したため、 リリスティは彼女と共に休憩室に入った。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/968
969: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 互いにテーブルを挟み、体を向き合うようにして椅子に座ると、リリスティは持っていた紙をテーブルの上に置き、そのうちの1枚をもう1度読んだ。 「戦艦ロェリーネルスと巡洋艦ルェバルスティードが竣工した、か。正直、本土沿岸の制海権を握られた今じゃ、極寒の北洋海域で浮かべる だけしかできないわね」 「フェリウェルド級戦艦4番艦ロェリーネルスと、マルバンラミル級巡洋艦14番艦、ルェバルスティード、竣工して出番のないままお役御免、て事か」 「シュヴィウィルグ運河の南側に出せない以上は仕方ない。作ってくれた海軍工廠の工員達には申し訳ないけど、この2隻が出来る仕事言えば、 パンスィヴィン軍港を対空火器で守る事しかできないね」 「せめて、ロェリーネルスが先の海戦に間に合っていれば……戦闘の様相も変わった……かどうかは分からないか」 ヴィルリエが肩を竦めながらリリスティに言う。 「敵のアイオワ級は、帝国海軍一の重防御を誇っていたはずのフェリウェルド級すら沈めているからね。出しても敗北と言う結果は 変わらなかったかもしれない」 ヴィルリエは首を横に振ると、溜息を吐きながらキセルを取り出した。 帝国海軍が建造したフェリウェルド級戦艦は、これまでのシホールアンル戦艦の集大成とも呼べる最新鋭の大型戦艦であった。 全長は134グレル(268メートル)、幅18グレル(36メートル)、基準排水量は37000ラッグ(55500トン)を有する 大型戦艦であり、速力は15.2グレル(30.4ノット)を出すことができる。 この船体に50口径16ネルリ(41.1センチ)3連装砲4基12門、4ネルリ連装砲両用砲12基24門、魔道銃89丁を搭載している。 特徴は大型の船体でありながら、甲板装甲は6ネルリ(150ミリ)、主要舷側装甲部には14ネルリ(350ミリ)の前面装甲と、 3ネルリ(76ミリ)の後部装甲と、2重装甲にした事にあり、これによって耐弾性の向上が見込まれた。 満を持して建造されたフェリウェルド級戦艦は、しかし、先の海戦で参加した3隻全てが撃沈されている。 建造中であった5番艦はシギアル港の建造ドックごと爆砕された為、ロェリーネルスが、フェリウェルド級戦艦の中では唯一残存する艦となったのである。 「さっきの報告は、レンス元帥にはしたの?」 「ランフックの件については既に伝えてある。レンス提督もリリィと同じように落胆していたけど、それも一瞬で、あとはサバサバとしていたかな」 「ロェリーネルス竣工の件は?」 ヴィルリエはキセルに入れた葉に火をつけてから答えた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/969
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