アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 (1000レス)
アメリカ軍がファンタジー世界に召喚されますたNo.14 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/
上
下
前
次
1-
新
通常表示
512バイト分割
レス栞
このスレッドは1000を超えました。
次スレ検索
歴削→次スレ
栞削→次スレ
978: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「しかし!このような状況下でこそ、後任は素早く決めねばなりません。それでも躊躇われるのならば、今はひとまず、総司令官代行と言う形を取り、 その間、幾人か総司令官として適任者を選びましょう。その後、この候補者の中から総司令官に任命し、着任して頂くというのはどうでしょうか」 「レンス提督のご意向に背く形ではあるが……モルクンレル次官が躊躇われるのならば、それも致し方ないと、私も思う」 それまで黙っていた、総司令部主席参謀長が口を開く。 「次官、魔道参謀の言う通り、一時的に総司令官代行に就任して頂きたいと、私は思います。その旨を皇帝陛下にお伝えし、早急に候補者を探しましょう。 私としては………第4機動艦隊のワルジ・ムク大将を候補にあげます」 「ムクか………確かに、彼なら総司令官の任を全うできるかもしれないわね」 リリスティは主席参謀長の言葉に頷きつつ、心中では (ムクとはまた、上司と部下の関係に戻ってしまうかな) と、幾分のんびりとした思いを抱いていた。 ワルジ・ムク大将は、リリスティが竜母機動部隊を率いていた時の部下であり、先の海戦では第4機動艦隊を率いて米第5艦隊と激戦を繰り広げた。 そのムク大将とリリスティは、リリスティが士官学校を出て、軍艦に着任した時の上官であり、その頃から部下と上官として、あるいは逆の立場で 共に現場を渡り歩く事も多かった。 「ムク提督は軍政系統の経験も豊富です」 「主席参謀長に私も同意するわ」 「私はマレングス・ニヒトー中将を推します。ニヒトー提督はまだ若いですが、ムク提督と同様、軍政系統の経験も豊富であり、戦略眼は優れております」 作戦参謀はニヒトー中将を推した。 マレングス・ニヒトー中将は巡洋艦部隊の指揮官であったが、今年の1月からは、西部方面海軍区司令官としてシェルフィクル基地に異動しており、 先の米機動部隊のシェルフィクル襲撃の際には、その模様を海軍総司令部へ克明に伝えている。 今は壊滅したシェルフィクル工場地帯の後始末を担当しているが、ニヒトー提督の能力も非凡な物があり、彼が海軍総司令部造船課に所属していた時には、 帝国海軍の近代化を誰よりも強く唱え、その原案を短期間で作成して上層部を瞠目させたことは今でも有名である。 「作戦参謀。確かにニヒトー提督は優秀だが、年齢の問題は別として、階級は中将と、まだ低い。せめて、大将クラスの候補者を挙げてほしい」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/978
979: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「いや……このさい非常時であるから、例え中将であっても、その器があるのならば、飛び級をさせてでも総司令官に任命していい」 「飛び級ですか……他の将官連中から苦情が上がりそうですが」 主席参謀長は難色を示すが、リリスティは躊躇わなかった。 「構わない。総司令官代行の命令よ」 「……ならば、推挙するしかありませんな」 主席参謀長は諦めた表情を浮かべつつ、ヴィルリエの案を受け入れる事にした。 「この他にも、海軍総司令官に相応しいと思う者が居れば名前を挙げてもらいたい。そして、候補者が決まり次第、皇帝陛下にご報告する。次官…… いえ、総司令官代行。それで良いですね?」 「ええ、それで行く」 リリスティは深く頷いた。 「あと……レンス元帥の遺書も届けよう。そして、後任の総司令官が決まり次第、それも陛下にご報告する。その後は、帝国宮殿において 総司令官新補式が行われ、それを経て海軍の新体制が始まる」 「代行……その新体制の下で、戦争は終わるのでしょうか?」 「終わらせなければならないでしょうね」 主席参謀長の問いに、リリスティは淀みなく答える。 「悔しいけど……この現実を受け入れるしかないわ」 「そう言えば、陸軍の方でも総司令官が変わるようですな」 「……あの惨状では、ギレイル元帥が辞めたくなるのもわかる気がするかな」 主席参謀長の言葉に、リリスティはやれやれと言った口調で答える。 「反撃部隊30万が包囲殲滅され、その挙句に……陸軍11個軍、将兵150万が大包囲されているからね。でも、陛下が果たして辞めさせてくれるかな」 「辞めざるを得ぬかと思われます。噂では、ギレイル元帥も相当参られており、幕僚達は元帥閣下がいつ暴発するか気が気でないようでしたが、 そこに辞職を希望する……ですから、幕僚の中には安堵する者もおるようですな」 「後任となりますと、総司令官代行のラヴォンソ将軍がそのまま総司令官になるのでしょうか」 リリスティは眉を顰めつつ、首を捻りながら主席参謀長に言う。 「陸さんの事に関しては、なんとも。まぁ、あちらはあちらで任せた方がいいね。そんな事よりも、まずは、海軍総司令官を決める事がかな」 彼女は主席参謀長にそう返してから、幕僚達と共に総司令官選定の準備に励みつつあった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/979
980: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 12月16日 午前9時 シホールアンル帝国ウェルバンル リリスティ・モルクンレル大将は、皇帝陛下直々の命令で帝国宮殿に呼び出され、今は謁見の間の前で、紫色の礼服に身を包みつつ、制帽を 小脇に抱えながら入室を待っていた。 リリスティは、帝国宮殿に到着し、皇帝陛下の謁見を待つ中、心中では何故?と言う言葉を延々と吐き続けている。 (なぜ………なぜ、あたしが………) リリスティは確かに、海軍総司令官代行という役目を担う事に同意した。 それは、亡きレンス元帥の意思でもあった。 だが、それは一時的な意味での話であったはずだ。 リリスティとしては、海軍の頂点にずっと居座るつもりなど毛頭なく、いずれは前線に復帰したいと考えていた。 こうして中央にいるのは、今後のために視野を広げるという意味合いもかねての事だ。 まだ体が若い内は、前線で働きたかった。 (最も……モルク族の血と特徴を濃く受け継いだと言われるあたしが、若いだの、老後だのと言っても説得力がないと言われそうだけど) リリスティは、幼少の頃に、いつになく真剣な表情で事実を打ち明ける両親の顔を思い出す。 (一族の中で、希代の英傑と同じ特徴を受け継いでいる……か。そんな特徴を受け継いでおきながら、結果は散々なんだけどね) リリスティは自嘲気味にそう思うと、自然と苦笑してしまった。 それを見た衛兵が、彼女に声を掛ける。 「提督、如何されましたか?」 「いや……何でもない。気にしないでくれ」 「はっ!」 リリスティは、すぐに無表情で返すと、衛兵は直立不動の姿勢を維持し、彼女から目を離した。 (そんな、失敗だらけの軍人が、なぜ、海軍総司令官なんかに……どうして……) http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/980
981: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 彼女は再び、心中で自問自答を続ける。 そこに、後ろから近づく足音が聞こえてきた。 その足音は、重々しくも、どこか安心感を与えるような物だ。 リリスティは、その足音に聞き覚えがあった。 「もしや……リリィか?」 その声にも、聞き覚えがあった。 リリスティは振り返ると、驚きの余り一歩後退してしまった。 「え……エルグマド閣下!?」 「おお、やはりリリィか。久しいな」 その初老の男性将官は、紛れもなく、ルィキム・エルグマド予備役大将であった。 リリスティは慌てて敬礼する。 「こちらこそ、お久しぶりです!」 「まぁまぁ、そう固くならんでよろしい。同じ大将ではないか」 エルグマドは答礼しつつ、柔らかい口調でリリスティにそう言い放った。 「いや、大将ではもうなくなるか。あと少しで、2人とも元帥じゃな」 「と、申されますと……エルグマド閣下が新しい陸軍総司令官に?」 「うむ。話せば長くなるが……まぁ、そういう事じゃ」 エルグマドは、老いを感じさせぬ邪気の無い笑みを浮かべながら、リリスティの右肩を片手で叩いた。 そこに、エルグマドの到着を報告した衛兵が謁見の間から姿を現した。 「お待たせいたしました。それでは、お入りください」 2人は、衛兵の案内を受けながら謁見の間に入室していく。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/981
982: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 謁見の間に入ると、皇帝であるオールフェス・リリスレイが玉座に座っていた。 この日のオールフェスは、いつもは肩肘に頬杖を置いた気楽な恰好ではなく、背筋を伸ばしたままの姿勢だ。 リリスティは、心なしか、オールフェスが緊張しているようにも思えた。 エルグマドとリリスティは、互いに横に並んだまま玉座の前まで歩き、赤い絨毯が途切れる一歩前の所で止まり、共に頭を下げた。 数秒ほどが経ち、オールフェスが口を開いた。 「両名とも、面をあげよ」 静かながらも、威厳のある声が響く。 2人の将官は顔を上げ、オールフェスに視線を合わせた。 「今回、陸海軍の首脳が相次いで死去、または辞職した事に関して、私としては非常に残念に思う反面、戦局の悪化に伴う重圧に、レンス提督と ギレイル将軍に職務を任せすぎたという責任を、私自身、痛感している。2人の高官が相次いで離脱するのは、帝国の未来を暗示しているようで、 誠に不安を感じざるを得ない。しかし」 オールフェスは、表情を一層険しくしながら、言葉を続けていく。 「戦争はまだ続いている。連合軍は、我が帝国の首都を踏むその日まで、進軍を続けるだろう。そうなる以上、終戦までの道のりは険しく、遠いと 確信せざるを得ない。陸海軍から送られた候補者の一覧は、私も既に目を通した。確かに………優秀ではある」 彼は2度頷く。そして、目を細めながら2人の顔を交互に見た。 「だが、私が判断するに、これらの候補者の中で、この難局を乗り切れる人物はいないと確信した。そして、熟慮の上で……2人にそれぞれ、 後任を務めて貰いたいと確信した次第である」 オールフェスは玉座から立ち上がり、ゆっくりとした足取りで階段を下り始める。 「モルクンレル提督は、戦術的な指揮ぶりは無論の事、中央に来てからは、初めて軍政系統の任を担うにもかかわらず、類まれな指揮ぶりを発揮し、 総司令部を纏めて上げて来た。そして、エルグマド将軍は、先のレスタン戦では惜しい結果となってしまったが、その実績は過去に例を見ない物だ。 中央での経験も豊富にある」 オールフェスは5段ある階段を下り、2人から3歩前まで歩み寄った所で止まった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/982
983: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「総司令部で決めた意向にそぐわぬ形になるが、そこの所は、どうか理解してもらいたい。だが……今は非常時だ。帝国存亡の危機にある今、 陸海軍を任せられるのは……貴君らしかいない」 オールフェスは言葉を区切ると、最初はリリスティを、次に、エルグマドの顔を見る。 「私はここに、リリスティ・モルクンレル提督と、ルィキム・エルグマド将軍両名を、海軍、ならびに、陸軍総司令官職に任ずる。そして、同時に…… 両名に対し、帝国元帥の称号を与える事を宣言する」 オールフェスの言葉が室内に広がる。 室内には、重苦しい空気が充満していたが、オールフェスはそれに構うことなく、玉座の隣で待たせていた侍従を呼び寄せた。 2人の侍従は、オールフェスの前に歩み寄る。 オールフェスは、侍従が持っていた元帥剣を手に取り、まずはエルグマドに手渡す。 シホールアンル帝国軍では、元帥に任命されると、必ず帝国宮殿で、皇帝から元帥剣を手渡される。 シホールアンル帝国国旗にも使われている赤紫色の鞘に、銀色の柄の付いた剣は煌びやかな装飾等は無く、どちらかというと質素な印象を受ける。 だが、これは歴とした元帥剣であり、軍の証でもある。 陸軍の場合は、鞘に小さく盾を構えた歩兵の彫刻が施され、海軍の場合は船と重なる錨の彫刻が施されている。 エルグマドは、頭を垂れながら、両手で陸軍の元帥剣を受け取った。 エルグマドの後は、リリスティの番となった。 オールフェスは同じように、元帥剣をリリスティに手渡す。 彼女もまた、頭を下げ、両手で元帥剣を受け取る。 オールフェスは侍従を下がらせると、再び階段を上がり、玉座に座った。 「モルクンレル提督、エルグマド将軍。元帥就任おめでとう」 「ありがたき幸せでございます」 エルグマドが慇懃な口調でオールフェスに言う。 それを聞いたオールフェスがゆっくりと頷く。 次に、リリスティも礼を述べる。 「陛下自らの授与。感謝いたします」 リリスティはエルグマドが横で頭を垂れている中、唐突に顔を上げ、オールフェスの顔を真っ直ぐ見据えた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/983
984: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「………何か申したいことがあるか?」 「いいえ、ございません」 リリスティは、幾分張りを感じさせる声音で、オールフェスに返した。 「先にも申した通り、戦況は芳しくない。しかし、戦争はまだ続いている。栄えある終戦を迎えるためにも、私は、両名の率いる軍の活躍を、切に願う物である」 オールフェスは、言葉の最後の部分を強調する。 「今日は急の呼び出しにもかかわらず、この帝国宮殿に来てくれたモルクンレル提督、並びに、エルグマド将軍に深く感謝する。今日はこれにて以上だ」 彼はそう言うと、玉座から立ち上がり、謁見の間から退出していく。 2人の元帥は、皇帝の退出まで頭を伏せたまま見送り、扉が閉まる音が聞こえると、顔を上げた。 「リリィ……お互い、どエライ役目を仰せつかってしまったな」 「そのようです……」 エルグマドは苦笑しながらリリスティに言うが、彼女は無表情のまま答えた。 12月19日 午後7時 シホールアンル帝国首都ウェルバンル その日、海軍総司令官を務めるリリスティ・モルクンレル元帥は、陸軍総司令部で行われた陸海軍合同会議に参加した後、陸軍側が用意した 休憩室で休息をとっていた。 休憩室には、リリスティと、相方であるヴィルリエ・フレギル少将が、前のテーブルに右手を伸ばし、体の上半身を乗せていた。 傍目から見れば、授業中に居眠りをする学生のような姿だ。 「……今日は……いや、今日も疲れたといった方が正しいのかな」 「それが正しいね」 彼女の右隣の椅子に座っているヴィルリエも、コップの水を飲みながら相槌を打つ。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/984
985: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「どう?肩の調子は?」 ヴィルリエは、リリスティの肩を指差しながら聞いてきた。 「どうもなにも、次官と違って、総司令官という仕事は、えらい重圧を感じる物ね。この階級章の重みは、想像以上……と言った感じかな」 「その割には、口調が軽いまんまね」 「重くする必要はないからいいの」 ヴィルリエの無粋な突っ込みに、リリスティはやや顔を膨らませて言い返した。 リリスティの肩の階級章は、それまでの3つ連なった紋章と違い、十字に交わる2つの剣と盾が重なった大きな印が1つだけ付いている。 この印こそ、シホールアンル帝国軍元帥の階級章である。 「それにしても……まさか、陸軍総司令官にエルグマド閣下が就任されるとは思わなかったなぁ」 「リリィ、それ何回目よ」 姿勢を起こし、頬杖をつきながら喋るリリスティに、ヴィルリエはうんざりとした表情で言いつつ、彼女の背中を軽く叩いた。 「あ、元帥の体を叩くとは。無礼者め。そんなんだから万年佐官なのよ」 「え?万年佐官って誰の事ですかぁ?」 ヴィルリエはこれ見よがしに、自分の肩を叩いた。 「あなたの目の前にいるのは、紛れもなく将官です。そう、提督ですよ、提督。そこの所、間違えないで頂きたいです」 「あたしがさっさと提督にしてやったのよ。そこんところも忘れないで、どうぞ」 「あー、そうですねー………って、あたしも疲れて、元気でないね」 ヴィルリエは疲労をにじませた口調でリリスティに言う。 ヴィルリエは、リリスティが海軍総司令官に任命された後、リリスティの命で海軍少将に昇進し、そのまま魔道参謀のポストに就いている。 ただ、このまま将官が1人で魔道参謀を務めるのは、仕事柄多忙を極めるため、ヴィルリエの希望で魔道副参謀のポストを新たに用意し、 これによって魔道参謀を補佐し、時には代理を立てられる体制を整えた。 魔道副参謀には、元母艦通信員であり、ヴィルリエの部下であったロイネ・ミナタンヴィ中佐が就任し、ヴィルリエと共に全海軍の情報収集に努めている。 ただ、新体制が発足してからは多忙な日々が続いており、ヴィルリエもリリスティも疲労困憊であった。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/985
986: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「こりゃ、レンス元帥も大変だったろうなぁ」 「色々と、陰口を叩いていた頃が恥ずかしいかな?」 「そりゃ、まぁ………」 リリスティは過去に自分を恥じてか、思わず口ごもってしまった。 「ほう……随分とお疲れのようじゃな」 唐突に出入り口の扉が開き、面白い物を見たと言わんばかりの口調で誰かがそう言った。 休憩室の机でだらけていた2人は、慌てて立ち上がった。 「え、エルグマド閣下!」 「失礼しましたぁ!」 「ハッハッハ!まぁまぁ、そう固くならんでよろしい。ささ、席に座ってくれ」 陸軍総司令官を務めるルィキム・エルグマド元帥は、笑顔を浮かべながら席に座るように促した。 苦笑したリリスティとヴィルリエは、促されるままに席に座る。 「しかし……堅苦しい会議の後に、こうして2人の美人さんと話ができるとはな。これぞ役得というものかね」 「閣下、ご冗談もほどほどに」 「おっと、これは失礼した」 エルグマドはリリスティの注意を受けると、頭を掻きながらそう言った。 ヴィルリエがコップに水を入れ、それをエルグマドに渡す。 「おお、フレギル提督。かたじけない」 エルグマドは礼を言うと、水を一口飲んでからコップを置いた。 「それにしても、まぁ……よくもここまで事態が悪化したものだ」 彼は、それまで浮かんでいた笑みを消して、真剣な表情で自らの心境を語り始めた。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/986
987: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 「先の会議でも言ったが、現状の軍編成では、敵の進撃を食い止めることなど、夢のまた夢だ。皇帝陛下としては、私にこの状況を何とかしろと 縋ってきたようだが、幾らわしでも、無理な物は無理だ」 「海軍も同様です。第一、連合国海軍……特にアメリカ海軍との戦力差は隔絶しています。できる事と言えば、沿岸部の掃海ぐらいですが、 それもまた、いつまで出来る事やら」 リリスティは溜息を吐いた。 「このようなポストなぞ、なりたくなかったものだ。リリィもそうであろう?」 「ご明察の通りです」 リリスティがそう答えると、エルグマドも深いため息を吐きつつ、気晴らしに水を飲む。 「望まぬ頂点を、ほぼ強引に押し付けられたわしらだが、それでもやれるべき事はやるしかない」 「と、言いますと。やはり、現有戦力で徹底抗戦するしか、方法はありませんか」 「今のところは、な」 ここで、エルグマドの語調が変わった。 「わしらがこれからやるべき事は山積みではあるが、その中でも……帝国を、いや……シホールアンル人がこの先、この世の中で生き残る事を目標に、 わしらはこの戦争の指揮を取らねばならんぞ」 「難しい問題ですが……やるしか、ないみたいですね」 リリスティは表情を暗くしながらそう言う。 そこに、彼女を見たエルグマドは、再び笑みを浮かべ始めた。 「リリィ」 「は……」 「まぁ、そう気落ちせんでもよろしい。リリィの悪い癖は、必要以上に自分を追い込んでしまう事にある。まーここは、成るように成れだ。陸海軍の 違いはあるが、同じ元帥同士、仲良くやっていこうじゃないか。な?」 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/987
988: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] SS投下終了です http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/988
989: 名無し三等陸士@F世界 [sage] レンス元帥…今までお疲れ様でした。 そして再び登場したエルグマド閣下。 穏健派(?)で現実が見えている閣下とある意味帝国側の主人公であるリリィが元帥になったんですね。 未だに諦めていない皇帝陛下ともう終戦後のことを見据えてるお二方…。 ある意味どう動いていくか少し読めなくなりました。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/989
990: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 投下乙 やはり首都周辺の部隊は広報部隊も兼ねていいところの人達を集めてしまった結果ですね 敗戦直前の薄暗い雰囲気を醸し出しています 今回新しく就任した2人はカール・デーニッツ、鈴木貫太郎ポジションに近いといった感じでしょうか そしてレンス元帥の息子が一番被害者じゃないですかいやだー! アメリカから哀悼の意を送ろう。鈴木貫太郎首相みたく 嫌味にしか聞こえなさそうだけど 皇帝陛下の言うように首都に連合軍が来るまでは時間がかかるかもしれない だが国民はそれまで持ちこたえることができるかな? 首都包囲でレニングラード化フラグが http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/990
991: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 投下お疲れ様です。 未だまだ「戦争」を諦めきれないオールフェスと、現実が数字以上に 見えている二人の元帥。 徹底抗戦というても海軍はまともに活動できないし、陸軍も末期戦 以上の終末感が漂う状況じゃあどうにもならんですわいね。 この世界でベルリン包囲が再現されるか、レニングラードの悪夢の ような状況がいでくるのかどちらにせよ帝国の明日は暗いですね。 立憲君主じゃなく、絶対君主制以上の独裁国家なシホールアンル帝国 だとまともに終戦工作出来るのかしら、ホント。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/991
992: 名無し三等陸士@F世界 [sage] >>988 乙彼様です。 リリスティは海軍トップになっても言動は変わらず、ぽややーんな方ですねw こういう方が戦後の政治で上手く国を立て直すのかもしれませんが オールフェスは末期の旧日本軍を連想させますが、 それと旧日本軍が違うのは講和など終戦迎えるためにいろいろと動いてる派がいたから ポツダム宣言までいけたのですが、F世界ではオールフェスが敗北を認めて降伏宣言は難しいのかもしれませんね。 政治体制が違い過ぎるってのもあるが、国民がただ避難するだけで皇帝非難があまりないってのも驚きですからね。 ですが、そろそろでしょうかね。 アメリカ側の最新鋭の初期型ジェット戦闘機の登場などWW2戦後の冷戦幕開けに伴う当時の最新兵器のオンパレード B-36等の登場で帝国は竜母があろうとうワイバーンがあろうと対処不可能な領域になりオールフェスが消される展開に持っていくのも楽しみではあります。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/992
993: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 投稿 乙です 本土&首都決戦なら国民総動員で血みどろの消耗防衛戦しかないような気がしてきましたね。 爆弾抱えて少年兵や老人兵が戦車に突撃するナチスドイツ末期の鬱な展開しか浮かばないという状況下。 原子爆弾投下されないあたりまだマシというべきか余計悲惨というべきか。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/993
994: 名無し三等陸士@F世界 [sage] 乙です。 不利な末期戦で軍のトップとして任命される…ある意味 「敗戦後の生贄用」 な場合もあるのでお二方の今後が心配で仕方ない。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/994
995: 名無し三等陸士@F世界 [sage] ヨークタウン氏乙です 竣工した新鋭艦が浮き砲台にしかならないとは、いよいよ末期ですね そしてお姫様砲兵連隊全滅の件、所属していた将兵の家族の今後の動向が帝国のこれからに地味に影響を与えそうだ 彼らは親族を奪った敵に対して報復を叫ぶのか、それとも厭戦感情に囚われ、戦争終結を目指すのだろうか それからレンス元帥、海軍トップとして責任を取るだろうとは思っていたが、まさか死を選ぶとは…合掌 後任はリリスティだが、彼女はこの危機的状況で海軍トップという重責を担えるのだろうか 見事に務めてみせるのか、それとも潰れてしまうのか、あるいは良かれと思って行動し、最悪の結末を招いてしまうのか… http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/995
996: 名無し三等陸士@F世界 [SAGE] >>995 カール・デーニッツみたいなポジになりそうなリリスティが今から心配ですね 戦後は一方的な解釈の軍事裁判で十年ぐらい刑務所にぶち込まれそうな予感がするな。 降伏しても地獄 抗戦しても地獄で どちらも悲惨な結末ルートしかないような(ノД`)・゜・。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/996
997: ヨークタウン ◆.EC28/54Ag [sage] 皆様レスありがとうございます。 >>989氏 レンス提督は色々と言われながらも、やるべき事はやってきたんですが……遂に限界が来てしまいましたね。 >ある意味どう動いていくか少し読めなくなりました。 どのような感じに動いていくは、後のお話でお楽しみを。 しかし、リリスティとエルグマドとも、最初に総司令官就任の話が来たときは大層驚いたようです。 本当に、望んでもいないのに軍のTOPになれ!!ですからね… >>990氏 戦死した将兵の遺族は、まさかの首都襲撃で自分の子が戦死していますから、もうかなりのショック状態です。 中には、後追い自殺を図ろうとした者もいるとか。 >レンス元帥の息子が一番被害者じゃないですかいやだー! 本当、息子さんは二重のショックを受けていますね……悲惨な物です。 >皇帝陛下の言うように首都に連合軍が来るまでは時間がかかるかもしれない だが国民はそれまで持ちこたえることができるかな? 相当無理しないと、と言う前に、持ち応える事は出来なさそうです。 >>991氏 2人の元帥と、皇帝オールフェスの意識の違いがまた痛いところです。 >終戦工作 そこの所は、今のままだとかなり難しいです。 最悪の場合……切れたリリスティが同調者を集めて決起する、と言う事もあり得そうですが、そうなったら内戦が起りかねないでしょうね。 >>992氏 性格的にはとてもマイペースな方ですからなぁw >治体制が違い過ぎるってのもあるが、国民がただ避難するだけで皇帝非難があまりないってのも驚きですからね。 ただ、くすぶっている物はあります。それも、そう間を置かぬうちに噴出するでしょう。 あと、そろそろ別の新兵器達の登場が近付いてまいりました。 これらを使って、アメリカはシホールアンルをどんどん追い詰めて行きます。 http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/4152/1380813462/997
上
下
前
次
1-
新
書
関
写
板
覧
索
設
栞
歴
あと 3 レスあります
スレ情報
赤レス抽出
画像レス抽出
歴の未読スレ
AAサムネイル
Google検索
Wikipedia
ぬこの手
ぬこTOP
0.007s