[過去ログ] シベリアSS投下スレ (428レス)
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280: 2011/07/30(土)01:18 HOST:114.51.43.84 AAS
後編2です。後編1は、>>267-272にあります。よろしければどうぞ。

プレアロウズ(グラハム編)後編2

そんな嘘と欺瞞と陰謀が交錯する世界で裏切られ傷つけられても、信じたことを悲しみ嘆いても
最後には相手を許すことを、人間はこれまで止めることはなかった。
確かに、相手の考えが読めたり未来の出来事が分かれば、それは自分が損をしないといった点
でも便利だろうが、そんなものがなくても人間は相手の立場に立って思いやることが出来る。
だから分からないことは、必ずしもデメリットではない。他者に喜びを分け与え、他者の痛みを
共有することで、例え遠回りであろうとも人類は次の段階に進めるとホーマーは信じている。
そして、例え許すことが出来なくても、死というタイムリミットが否応なしに人間を入れ替え、
憎しみも悲しみも思いの全てを時間が押し流し、時代が飲み込んでいくのである。
省5
281: 2011/07/30(土)01:20 HOST:114.51.43.84 AAS
「不甲斐ない私は、貴方を失望させるだけですね」
グラハムは自嘲した。無様だった。感情が揺さぶられ、戦わない自分が酷く惨めに思えた。
こんな風に哀れまれる位ならば厳しく処罰されたかった。いっそ蔑まれたかった。
ホーマー氏が今まで庇ってくれていたのは、自分を手駒として使う為だと分かっている。
その信頼を裏切るばかりの自分が詰問もされずに許されるのは気味が悪く、あまりに過分すぎる
扱いを受けている理由が分からない。軍人として何一つ期待に応えようともせず、なのに戦えと
強制されない自分の待遇に対して、改めて疑問を持つ。

ふとそれが、グラハムの口から『戦う』と言わせようとしているのだと気付く。
当事者意識をはっきり自覚させ実行の確約を取り付けるために、ホーマー氏は決して論理的に
説得したり無理強いする事なく、自分で判断し自分で決断できるだけの情報を滔々と与え続け、
省9
282: 2011/07/30(土)01:21 HOST:114.51.43.84 AAS
「戦いから逃げる事は、君が考えるほど悪い事ではない。心を自衛し自分を大切にすることは、
卑怯でも何でもない。誰も君を責めたりはしない。君を責めているのは他でもない、君自身だ。
失った事に苦しみ、自らも傷つき、それでも尚、自分を責め続けるのは、あまりに辛すぎる。
死んだ者も生き残った者も、みな等しく戦争という厄災の被害者だ。死んだ者の犠牲を無駄に
しないためにも、その悲しみを乗り越え幸せになるために前進する事が、生き残った者の使命
ではないのか?」
ホーマーは、グラハムの迷いに一つの道を指し示す。
自分の生き方が正しいのか?義務や名誉、国の意味とは何か?軍人とは、戦うとは何か?
それらに疑いや問いを抱くのは勿論、悩みを抱えるのは人として自然なことだろう。
しかし彼は、そんな軍人として抱くべきではない疑念や、投げかけるべきではない問い、
省8
283: 2011/07/30(土)01:22 HOST:114.51.43.84 AAS
実際には、他国との力関係を睨んだユニオン軍が、世間に名が通り見栄えのするアメリカ人
パイロットを都合良く隊長に据えただけかもしれない。
彼は非凡な戦闘技術は持ち得ても、精神的に不安定な所から一人で暴走しがちであり、正直、
組織する才や統率する才。秩序を整備する才など隊長としての資質は特筆するほどではない。
しかし、
質問に答えられても、自ら何かを問う術は知らない。目標は達成できても目標を設定する術は
知らない。物事をやり遂げる方法は考えても、それがやるに値するものかどうかは考えない。
それでは、連邦軍に並み居るただ優秀な隊長の一人である。
だが、賢明ではない命令や誤った方針に異議を唱える知恵や強さを持ち、自分で考え信念に
従って行動できるという希有なリーダーシップは、ひときわ異彩を放つ。そんな彼が信頼し
省9
284: 2011/07/30(土)01:23 HOST:114.51.43.84 AAS
グラハムは、奥歯をかみしめる。
まだホーマー氏が何を考えているのか分からないというのに、自分の信念を正確に伝えよう
とする過程の段階で、カタギリを相手にするように思いを吐き出すわけにはいかない。
自分が間違っている。それでも、もうどうしたら良いのか分からない。
世の中は、自分の思い通りにならないことばかりである。それがわからないほど子供ではない。
ただ自分に優しくない世界など、どうでもいいと考えるような子供であった。
ままならない、こんなどうしようもない世界に、自分が礼を尽くす必要があるのか。
人間は神ではない。だから勿論、自分だけに都合のよい未来を作ることなど出来はしない。
それでも、こんな自分の思い通りにならない世界を憎むのではなく、折り合いを付けて世界を
受け入れて生きなければならないのなら、そのために自分が変わればいいというのならば…
省9
285: 2011/07/30(土)01:23 HOST:114.51.43.84 AAS
エピローグ

「無様な」
蔑むでもなく悲しむでもなく指南役は低く吐き捨る。もう自分の声は届かないと知りながらも、
言わずにはおられなかった。人として迷い、人として抗う事もなく修羅の道を選んで鬼の面を
被り、異形と化した愚かな弟子を静かに見つめる。まるで追儺の鬼のようである。
人として危うい所で保っていた彼の精神は、ホーマーの諦観と、それに伴う虚無の前に堕ちた。

確かに精力的で才気煥発、そして野心家な軍人である事は若き日のホーマー以上かもしれない。
しかしながら一介の軍人風情が、思い上がりも甚だしい。
大切な仲間を失い嘆く気持ちは分かるが、決してグラハムの為に犠牲となったわけではない。
皆が軍人として自分で考え、自分で戦う事を決め、それでも力及ばず死んでいっただけである。
省3
286: 2011/07/30(土)01:24 HOST:114.51.43.84 AAS
地球連邦軍ではリボンズ・アルマークを中心とした自らをイノベイターと自称するイノベイド
(人造人間)らが、人類に反旗を翻し世界を牛耳ろうとしているという。
同じ人間同士でも根深い問題が山積しているのに、人類は人間よりも優れた能力を持つ人外と、
これから相対さなければならない。
もちろん未来がどうなるかなど誰にも分からないが、この事態に対応できる強さを全ての人々
に課すのは、余りにも非現実的である。
では人類の進むべき新たな道を見つけ先導するのは彼のような信念を持つ人間たちだと考えた
ホーマーは、自分の目指す恒久和平の実現に必要な軍人をイノベイドらにマークされないよう
画策を始めた。
彼らを表舞台から外し、組織の体制が整ってから呼び戻して、その時まで自分の支配下で保護
省8
287: 2011/07/30(土)01:28 HOST:114.51.43.84 AAS
「…」
グラハムは、その場で両膝をつき指南役の足下に低く額ずく。
指南役からは、怒りはおろか何の感情も窺い知れなかったが、今更申し開きなど、何一つする
つもりもなく。また出来るとも考えていなかった。
ただ高潔な指南役の前に、己の至らなさを恥じる矜恃だけは、未だ持ち合わせていた。

指南役は、懐剣を取り出すと、グラハムの前に置く。
彼の誇りを守ってやれるものは、もうこんなものしかない。退くも地獄、進むも地獄の世界。
この場で死を選ぶのならば、自分が介錯くらいしてやってもいいとさえ指南役は思う。

グラハムは、長い間そのままの姿勢であったが、懐剣を掴むと無言で立ち去った。

プレアロウズ(グラハム編)後編 了
省5
288: 2011/09/07(水)00:12 HOST:223.133.48.100 AAS
たのしみにまっています
289: 2011/10/06(木)15:09 HOST:60.44.151.65 AAS
「成程、一人用だ」

そう呟いた僕の言葉に、妹はうん、と小さく頷き――
ながらもその目は眼前の肉塊から片時も離れてはいなかった。
頃合いを見計らいながら、僕はジュウジュウと焼ける肉を返しつつ、口を開いた。

「争奪戦か……」

「兄妹だからって遠慮はしないよ」

目尻を下げ、少し楽しそうに妹が返してくる。
そういえば昔、父母と4人で暮らしていた頃もこんな会話をした覚えがあった。
省8
290: お題:消灯時間 ◆O7UREK3bSQ 2011/10/11(火)00:48 HOST:180.148.202.155 AAS
午前零時 玄関のドアを激しく叩く音がした。
一体誰だろう こんな夜遅く

「あなたねえ!!何考えてるんですか!!」
僕がドアを開けるや否や、その男はわめいた。
「午前零時だというのに部屋の電気点けっぱなしにして!いますぐ消しなさい!」
「なんで部屋の電気のことなんかでお前の指図ば受けんばいかんと?」
僕は言い返した。

「あなた、何も知らないんですか!!」
その男は僕の一言で、さらに怒り狂った
「今は電力不足で大変なんです!少しの電力も無駄にできないんですよ!
省12
291: お題:世界チャンピョン ◆O7UREK3bSQ 2011/10/11(火)00:50 HOST:180.148.202.155 AAS
午前零時 玄関のドアを叩く音がした。
誰だろう こんな夜遅く

「やった!やったよ!俺ついに世界チャンピオンになったよ!!」
僕がドアを開けるや否や その男はわめいた
「失礼ですが…どちら様でしょうか」
「俺はこの近所に住んでる鈴木だよ!今日ついに世界チャンピオンになったんだ!」
鈴木と名乗るその男は、全身あざだらけの酷い姿だった。

「俺は苛酷な特訓を積み重ねて、とうとう今日チャンピオンに勝ったんだ!!」
鈴木は興奮してまくしたてた。
「今日からは俺がチャンピオンだ!見てクレ!このベルトを!」
省12
292: お題:時間切れ  ◆O7UREK3bSQ 2011/10/11(火)00:52 HOST:180.148.202.155 AAS
午前零時 玄関のドアを叩く音がした
誰だろう こんな夜遅く

「時間切れです」
僕がドアを開けるや否や その男はそう言った
男のうしろでは外国人風の男がにやにや笑っていた
「時間切れ?」なんのことだかわからない
「そう時間切れです。あなたの部屋はもうあなたの部屋ではありません」
「ジカンギーレ!ジカンギーレ!」外人風の男がわめいた

「今日からこの部屋は このヂョンソンさんの部屋になります」
「はあ!?」ますます意味がわからない
省9
293: お題:駄菓子屋 2011/10/11(火)00:54 HOST:180.148.202.155 AAS
俺は家を出た。足が自然と近所の駄菓子屋に向かう。
駄菓子屋には、俺が求めているものがあるのだ。

「あ、兄ちゃん、いらっしゃい」
店長がいた。
「店長、ナッツボンあるか?」
ナッツボン。それは偽りの天国への片道切符。極悪な合法麻薬。
店長はため息をつきながら、カウンターの下からそれを取り出した。
「兄ちゃん。ほどほどにしとけよ」
俺は笑顔でそれを受け取った。ナッツボンをひとつ口にほうりこむ。
ああ、とても舐めてなどいられない。俺はそれをボリボリと食べた。
省11
294: お題:秘密 2011/10/11(火)00:55 HOST:180.148.202.155 AAS
午前零時 玄関のドアを叩く音がした。
誰だろう こんな夜遅く
僕がドアを開けると、見知らぬ女の人が立っていた。
とても悲しそうなその表情に、僕はちょっとどきっとした。

「私には、とても人には言えない秘密があるの…」
彼女はそういって ひとすじのなみだをこぼした。
「この秘密のせいで、男の人はみな私から離れて行ってしまう…」
「は、はあ そうなんですか」
僕は、あいまいな返事をした。彼女は僕の目を見すえながら、言った。
「私の秘密、知りたい?」
省9
295: お題:きのこ 2011/10/11(火)01:00 HOST:180.148.202.155 AAS
「海では、キノコが取れる」
鈴木さんはそういった。
「そんな馬鹿な!海でキノコが取れるはずがない!!」
僕は叫んだ。
「みんなも何か言ってやってくれ!」僕は周囲の人々に同意を求めた。
「しかし、鈴木さんは、海洋生物学の世界的権威だからなあ」
「その鈴木さんがそういうのなら、海でとれるキノコもあるのかも…」

「おめえら!何言ってんだよ!!」
僕はとうとうキレた。
「海で取れるキノコなんてないの!それが常識なの!!」
省11
296: 2011/10/29(土)13:40 HOST:202.229.177.41 AAS
保守しときます
297: 2011/10/29(土)19:15 HOST:119.105.198.41 AAS
ほしゅage
298
(1): 2011/11/05(土)01:31 HOST:122.27.15.156 AAS
四畳半ばかりの部屋で、年若い少女が卓上ランプの明かりを頼りに勉強していた。
「今日も父さんは大いに負けるのでしょうね」
娘は父とその悪友が麻雀をやっている部屋に目をやった。
隣の部屋からは時折悔しそうな声や歓声があがり大層な喧騒だったが、
慣れっこの娘には大して気になるものでもなかった。
娘のランプは父が珍しく賭け事で勝った時に、娘に買い与えてくれたものだった。

卓上ランプで冷えた手を温めたり、勉学を進めているうちにふと厠に立ちたくなった娘は顔を上げた。
「あら、声が消えているわ」
隣の部屋からは喧騒が消え、不思議に思った娘が振り向くと酒に酔った男が娘の部屋に立っていた。
「もし、厠は外ですよ?」
省4
299: あぼ [ん[あぼーん] あぼーん AAS
あぼーん
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