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カレル・ヴァン・ウォルフレンの日本分析 第3巻 (624レス)
カレル・ヴァン・ウォルフレンの日本分析 第3巻 http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/
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1: 名無しさんの主張 [age] 2013/03/24(日) 17:58:40.43 ID:??? K.V.ウォルフレンは舌鋒鋭く、日本社会、政治構造などを鮮やかに分析、全く新しい視点を 提供してくれた。 今日においても、価値の高い彼の日本社会分析について考える。 ●カレル・ヴァン・ウォルフレン Wolferen,Karel van 一九四一年オランダ生れ。十八歳より世界各国を巡り、八二〜八九年、オランダの「N RCハンデルスブラッド」のアジア特派員。現在アムステルダム大学教授。 89年に『日 本/権力構造の謎』を出版し、国際的ベストセラーになる。 その他の著書に、人間を幸福にしない日本というシステム、なぜ日本人は日本を愛せな いのか―この不幸な国の行方 、ウォルフレン教授のやさしい日本経済 、日本という国を あなたのものにするために、ブッシュ/世界を壊した権力の真実 、支配者を支配せよ―選 挙/選挙後 、アメリカを幸福にし世界を不幸にする不条理な仕組み、怒れ!日本の中流階 級、アメリカからの“独立”が日本人を幸福にする、民は愚かに保て―日本/官僚、大新 聞の本音、快傑ウォルフレンの「日本ワイド劇場」、日本の知識人へ など多数。 http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/1
605: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/01(土) 17:49:16.28 ID:6uyB/Jny /// 支配する権利 43 /////// 高潔なアドミ二ストレーターの選別 日本を選挙で選ばれた者が国民を代表して統治する国にはしないという寡頭政治家の決定に 伴い、支配階級を構成し、強化するという次の議題が浮上した。彼らの採用した方式が、 今日の日本でも権力配分を決している。当時、世襲制の原則がくずれ、能力評価の原則が とってかわろうとしていた。維新の後何年も、寡頭政権とその延長である官界に加わるための 重要な資格は、クーデター(明治維新)に発展した運動に参加したか、あるいは薩摩と長州の 武士階級出身者だった。その後、できればヨーロッパかアメリカで吸収した"西洋の知識"を 持つことが、重要視されるようになった。しかし、二〇世紀が始まる前後には、国を管理し、 "情報を握る"階級に入りこむもっとも確実でほとんど唯一の方法は、東大〔東京帝国大学〕 法学部を卒業することだった。すでに見たように、これは今日においても日本の学校教育の 特徴を決定づける伝統である。 ////// K.V.ウォルフレン著 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/605
606: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/01(土) 22:46:32.69 ID:6uyB/Jny /// 支配する権利 44 /////// 日本が治外法権を規定する条約を西洋諸国とむすんだ結果、東大が正統性を授けるという ことに関して要の位置を得ることになった。先に述べたように、外国政府は、日本が資格を そなえた司法が法に則った裁判を実施できるようにさえなれば、明治政府の深い憎しみの 対象だったこれらの条項を破棄するつもりだった。このため、なんとしても東大法学部に 近代版のサムライに資格を授ける機能を与える必要があった。当初、最高位のポストを埋める ため、東大法科の卒業生は公務員試験に合格する必要がなかった。一八九〇年までに東大 法学部が送り出した人材は、行政官職のほぼすべてのポストと司法職の半分以上を埋める ほど多人数になっていた。 一八八○年代の東大卒業者の半分以上が高い地位に達し、四人に一人がエリート階級入りを 果たした。これに比べ主要な私立大学の早稲田や慶応の卒業生の場合、二五人に一人であった。 一九〇一年から一九二六年までに、八つの省で七六人の次官が任命されたが、そのうち、 七〇人が東大出であった。 ////// 「日本/権力構造の謎」 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/606
607: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/02(日) 19:31:30.95 ID:OY0sVHBk /// 支配する権利 45 /////// 今では、この支配エリートの資格を与える方式は固定化しているが、知力と技能という 側面に関するかぎり相当に独断的である。過去に言えた事は、現在でも言える。官僚の 役割にふさわしい正統性らしさをそえるのは特別な"知識"、ひいては"実力"とされるが、 実はそれは結局のところ、きわめて難解な入学試験に合格する技を身につけた階級の一員 であるということにすぎないのである。日本でのエリートの選び方に関する西洋人の一般的な 誤解については、4章で触れた。エリートは主にスタミナと熱心さゆえに選ばれてきた。 東大卒業生は"頭がよい"ことはそうであるが、知的にひじょうに優れていながら別のタイプに 属する多数の日本人は社会の主流から外されて永久に外辺で働くことを運命づけられる。 こうして、独創的な考えを生み出す才能の多くが浪費される。日本の支配階級は、教育が あるというより、徹底的に仕込まれているといったほうがよい。これは日本の管理者の 国際社会に対する態度やアプローチの面から見て、相当に重要な事実である。 ////// 原書1989年刊 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/607
608: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/03(月) 22:10:39.75 ID:/gE8rglu /// 支配する権利 46 /////// 政治の非政治化 戦後日本において、統治権の正統性は、公式には国民の委任によって政府に与えられる。 たしかに、選挙と議会がある程度、天皇にかわって現行の仕組みに正統性を与える制度と なっている。しかし、主権在民の概念は日本人の大半に理解されていないし、権力保持者が この概念を生きた原理にしていないのはたしかである。マスコミが主権在民を訴えるのは 美麗字句をもてあそぶにすぎず、その原理の実現を体系的に阻んでいる広汎な非公式権力の 行使について、首尾一貫した分析を伴っていない。国会と選挙は現存する政治秩序に正統性を 与える機関と見なされていないのだ。国民の頭の中では、国会も選挙も、古い組織や仕組みに 取って代わったものではない。というのは、天皇が正統性を公式に授与していた時代においても、 国会と選挙は存在しており、その時代にその両者は、日本国民の穢れのなさと道徳的健全さを 傷つけるものとして広く厳しく批判されていたのだった。 ////// 邦訳 早川書房発行 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/608
609: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/04(火) 21:30:58.02 ID:bt/gmo9y /// 支配する権利 47 /////// 一九四五年まで、天皇の名によって発せられた法律と勅令はすべて、公益のためになる とされていた。したがって、官僚は、本来公明正大とされた。対照的に政治家は明らかに 政治的なおもわくによって行動し、それが日本では利己的な動機と区別されなかった。 政治的動機をもつ行動は、公益のための(すくなくとも公益のためとされる)動機をもつ 行動に比べて、それほど良いはずがないと今日でも思われがちである。官僚が自己の利益に よって導かれ、国民にいっさい相談もせずことを進めているのはあまりに明白であるのだが、 どういうわけか彼らの努力は政治家のすることより正統性があるように見られている。政治家は、 愚かで利己的な日和見主義者だという以前からの評判を完全に払いのけられないでいる。戦後の マスコミも政治家への自分たちでそうとは認知していない偏見で充満している。マスコミは 明快に表現しないものの、懐疑的で否定的な政治観を国民に毎日のように提供する。日本では 政治的な地位が金で容易に売買され、そのため自民党の派閥間に根強い不安定がかもされる 事実を知って国民は疑念と政治家嫌いをさらに深めることになる。 ////// 篠原 勝 (翻訳) /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/609
610: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/05(水) 20:07:09.93 ID:MhGzbseI /// 支配する権利 48 /////// ところが、日本は政治家なしでやっていげない。理論的には、彼らが社会と政治総体を つないでいるからである。政治家なしでは、〈システム〉最強の構成員は官僚と経済人だけ となり、官僚的権威主義があまりにもあからさまになるだろう。明治の寡頭政権にとっての 天皇と同様に、国会審議は、管理者がことを運ぶために掲げるおもて向きの顔である。 政治家というものは"利己的な動機"を持つものだという、国民の政治家への嫌悪感は 消えそうにない。この状況に対抗するため、自民党は自分たちを思いやりのある管理者の 集まったものに過ぎないという印象を与えようとする。自民党議員のおよそ三分の一―― そのうち通常、最有力な議員たち――は東大法学部かそれに相当するところを出て、省庁に 勤めるというエリート官僚コースを経てきている。個人としての自民党議員が権力に関心が ないと言えば、信用されないだろうし、選挙区に政府の補助金を引っばってくる能力がない のではないかと疑われてしまう。しかし、自民党は、党全体としては、高潔な官僚出身者の 集まりなのだから、カネや権力という存在理由によっているのではないというふりがしやすい のである。 ////// The Enigma of Japanese Power /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/610
611: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/06(木) 22:19:34.72 ID:nQZKG3iV /// 支配する権利 49 ///////// 自民党はこの権力行使否定というイメージとともに非政治化された政治という構図を描いて みせる。ここで大いに役に立つのは、権力者は権力のない者より倫理的であり、権力をふるう がゆえに正統な権力者であるという、太古の考え方である。マスコミは自民党の"金権政治"、 横暴さや政治的な優先順位のつけ方の誤りをついてキャンペーン記事で叩くのだが、それにも かかわらず、自民党には他の政党にない敬意を書じさせる雰囲気がある。始終避難を浴びる のに、この与党は、新しい政治的意見をもって政治の土俵に入ってくる集団と異なる部類として 扱われる。新しい集団は、日本人全体でなく非常に限られた数の市民の利益に関心をもって いるとして、簡単に見くびられる。自民党の力の一部を我がものにしたいという新しい政党は、 その欲望のために、自動的に"利己的な政治家"という烙印を押されてしまう。 ////// Karel Van Wolferen /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/611
612: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/07(金) 22:44:19.03 ID:VIg1wtHB /// 支配する権利 50 /////// 西洋の立憲民主主義国では、正統性の問題は起こらない。政治的決定をおこなう手順が、 法的に認められたコースから始終それるようであれば、市民はいつでもそれを正す機構に 訴えることができる。日本では法律が行政側を制御するのではなく、行政的制御の道具として 法律が働くのだから、訴える手だてもない。日本では、民主主義は実際に政治過程を導く 実用的な概念とは見なされていない。日本思想史家として著名なシカゴ大学のテツオ・ナジタが 言うように、民主主義は、日本では、抽象的、規範的な意味で評価される急進的な概念である。 民主主義は、日本人にとって現存する政治や歴史の枠外にあって、合理的な人道主義にもとづいて 物事を判断する枠組みとして使われる。「民主主義は、歴史的傾向や現在の文化的、政治的 内容を批判する際の倫理的規範として利用される。一九二〇年代のように……民主主義は 立憲政治に力を与えるための思想ではなく、むしろ批判用の思想で、しばしば反政治的と みなされる」 君主政治、貴族政治、民主政治というアリストテレスの有名な分類に従えば、日本は "民主政治"といえる。「アリストテレスが民主政治と言ったのは、かなり幅広い参加者の ある貴族政治にすぎなかった」からである。また、日本の"民主主義"は憲法にもとづくが、 憲法を擁護するものではない。最高裁が官僚に握られているかぎり、憲法にある民主主義的な 規定は結局は実施できないからである。 ////// K.V.ウォルフレン著 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/612
613: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/08(土) 09:26:07.29 ID:Xn4VHKpa /// 支配する権利 51 /////// 不毛の反体制勢力 西洋の立憲民主主義国では政治的方策を正統化する法的秩序を維持することが"悪者を追い出す" 機能をはたす。有権者の選択が、権力をひとつの権力集団から別のグループに移せるかぎり、 政治体制が、法的に規制されずに権力が濫用される仕組みの〈システム〉になるのを防げる。 この目的のために、政治体制は、制度化された健全な野党の存在を許容しなければならない。 先に見たように、すぺてを抱きこむ日本〈システム〉のもっとも本質的な特徴のひとつは、 本ものの対立者を許さないことである。〈システム〉の日教組に対する反応と日教組の悲運が この特色を劇的に見せてくれた。 ////// 「日本/権力構造の謎」 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/613
614: 名無しさんの主張 [sage] 2015/08/08(土) 10:11:05.69 ID:??? 作家の百田尚樹氏 勇気ある発言! 反日マスコミは百田氏に 言論弾圧 第四の権力(反日マスコミ)が寄ってたかって 何の権力も無い私人を袋だたきにする異常! http://goo.gl/eq6LXa http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/614
615: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/08(土) 15:03:34.13 ID:Xn4VHKpa /// 支配する権利 52 /////// 健全な野党――政府の方針に効果的に反対することを許され、完全に正統性をもつとみなされる 組織――という概念は、中国の伝統的な政治理論に則って権力の行使を正当化した国ぐにでは特に 厄介視された。韓国の政治問題はこの点に関係がある。敗戦前の南ベトナムの"民主主義"を妨げた のも、伝統的な中国の政治理論だった。現在の中国と台湾のケースも好例である。南ベトナムの ゴ・ジンジエム大統領は、儒教的な考えから対立者を許容できなかったので、ジョン・ケネディ 大統領やヘンリー・ロッジ大使との交渉が難航した。儒教の伝統では、統治者は本来、高潔だと される。したがって、統治者に反対することは、自動的に彼らの正統性を質すことを意味する のである。 ////// 原書1989年刊 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/615
616: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/08(土) 16:42:25.43 ID:Xn4VHKpa /// 支配する権利 53 /////// 今の日本も本質的には、同様である。自民党と官界の管理者は政権をとろうとしたり、そこまで いかなくとも政策メニューを変えるだけの可能性を持つ、本ものの対立グループを容認しない。 彼らはそのような反対に直面するのを不快に思うというだけでは、この問題をあまりに過小評価 することになってしまう。本格的な対立者は、管理者たちがよって立つ主義主張すべてを無効に してしまうであろう。というわけで、日本の公式の政治体制は人脈間の取引という現実を被い隠す 立派なマントを着ているだけで、実質的に一党体制なのである。 ////// 邦訳 早川書房発行 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/616
617: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/08(土) 19:01:17.72 ID:Xn4VHKpa /// 支配する権利 54 /////// いかなる反対者にも深い不信感を持つという点で、自民党と官界はまったく同様である。 中曽根首相は、一九八六年の選挙運動の際、野党はわがままな幼稚園児のように振る舞うと くり返し演説した。彼はこの時野党に国民の面倒を見るだけの器量がなく、自民党は責任を 果たす最高の党だという、根深い偏見をくり返し口にしたのである。野党へ投票することは 日常的に行われるが、それは止めさせようと思えばできる、軽いルール違反とみなされる。 中央政府の権力を共有することが許されるはずがないと分かっている野党に一票を投じるのは、 "意思表示"の行動であり、"手段"を求める行為ではないのだ。昼休みのストライキ参加や、 革命もどきののぼりを立てて国会周辺を行進することも同じ意思表示にすぎない。 ////// 篠原 勝 (翻訳) /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/617
618: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/08(土) 21:02:03.20 ID:Xn4VHKpa /// 支配する権利 55 /////// 一九四五年以前に存在した選挙にもとづく議会は、その本来の機能において、理論的に "国体"のイデオロギーと噛み合わない、輸入された制度であった。この制度は、政治的選択と 政治的衝突があり得るということを前提としてはいたが、一方"国体"は、慈悲深い天是に よって授けられ、衝突なき社会を維持するための政治的方策を提供するものであるとされた。 現在でも、状況は不変である。健全な反対党の持続という可能性を含めた本ものの議会政治は、 衝突なき社会を自明の理とする強力な日本主義的な信念とまったく相容れないのである。 ////// The Enigma of Japanese Power /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/618
619: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/09(日) 07:04:12.72 ID:diJ0IG70 /// 支配する権利 56 /////////// "大衆包括"の幻想 管理者は、日本が議会制民主主義の国であると世界と日本国民に向けて明言している手前 決して公然とは認めないが、彼らは政治における基盤そのものである多元主義を道徳的に 疑わしいものと考えている。自民党のいくつかの発言には、政治的現実を反映し、将来の 政策を講じるための理念を求めようとする努力が見られる。自民党が記録破りの議席を獲得した 一九八六年七月の選挙の一カ月後、中曽根首相は、勝利は彼の言う"一九八六年体制"の始まりを 示すものだと説明した。この秩序の誕生は、"柔軟性のある保守的な"都市部有権者の票を 勝ち取ろうとする新しい党戦略に後押しされた。(農村の人びとや中小企業のオーナーと 異なり、都市部の主婦、サラリーマンや学生は自民党の安定した支持者ではなかった)。 自民党支持者の増加は、"一九五五年体制"が終わりを告げ"一九八六年体制"の始まりを意味する、 と中曽根は言った。"一九五五年の政治秩序"とは、(保守合同による)自民党結成後、自民党と 社会党との間に生じたバランスを欠いた競争を指す簡潔な表現である。 ////// Karel Van Wolferen /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/619
620: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/09(日) 13:36:46.16 ID:diJ0IG70 /// 支配する権利 57 /////// 中曽根の発言は、勝利の感激のあまり口から出た誇張以上のものであった。その四年前に、 自民党のイデオロギー専門家たちが、党の機関誌にある重要な記事を書いていた。その記事は、 自民党は労働組合を社会党から離して自民党側にひきつけ、都市居住者や消費者の政治的 エネルギーを直接に吸収できる新しい政治組織を創造する運命にあるとの政治史的理論に もとづいていた。これら自民党の理論家と中曽根は、自民党の唯一の"ライパル"である日本 社会党さえ間もなく必要でなくなるだろうと、はばかることなく公言していたわけだ。 マルクス主義志向の学問が徐々に姿を消すのに伴い、〈システム〉の主義主張を支持する 学者が登場しはじめた。支持論の中で好んで使われる新用語は、村上泰亮の"新中間大衆"という 表現である。また、日本の政治分析者たちは"官僚主導型大衆包括体制"という用語を繰り返し 使うようになった。その意味するものは、国民がそれをコントロールできないにもかかわらず、 大多数に支持される官僚統制である。 ////// K.V.ウォルフレン著 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/620
621: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/09(日) 16:31:58.48 ID:diJ0IG70 /// 支配する権利 58 /////// つまるところ、非政治化された"大衆包括"政治体制が一様に支持されるという主張は、 信憑性がない。まず、支持は当然視されているだけで、実際には測定されていない。さらに 政党間の活気ある競争が日本に健全な民主主義をもたらすと期待したのは、米占領軍の"改革者" だけではなかった。多くの日本人もそう願っていた。そして、一九七〇年代に自民党支持率が はっきりと漸減をたどったとき、この後退とメディアの予測する"多党"時代の到来をリベラルな 日本人は歓迎した。官界のさまざまな部門の力関係について論じる日本のジャーナリストや 学者の数は多く、さらに、〈システム〉の威圧を肌で感じとっている一般民衆もかなりの数に およんでいるから、そのことをみても〈システム〉がいくら自己のもつ権力を否定しようと しても、その議論は説得力を欠いてしまう。 ////// 「日本/権力構造の謎」 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/621
622: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/09(日) 22:32:30.85 ID:diJ0IG70 /// 支配する権利 59 /////// 正統牲のある"健全な野党。という概念の受け入れを妨げるような、儒教的政治文化を有する 他のアジアの国ぐにには、強力な中心的指導者がいる。韓国の例で分かるように、支配権が だれにあるかという問題が、権力者を多くの国民から分離させてしまうこともある。日本の 支配権の正統性の問題は、このような政治的分離の原因にならない。日本人らしさを信奉する イデオロギーが政治的反抗力を全国規模で弱めるからだ。しかしこれで支配エリートの問題が 解決されたことにはならない。前にも見た部分的解決法、特に権力の全面否定は、問題を さらに大きくしている。 ////// 原書1989年刊 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/622
623: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/10(月) 00:11:44.71 ID:SnxuQytw /// 支配する権利 60 ////////// 政治体系を非政治化できるという考えは、いうまでもなく幻想である。本来、権力が何らかの 役割を果たして成立している仕組みや社会的過程には政治的な意味がないというふりをすることは、 問題の本質をぼかしてしまうことである。そのため、普通、政治的な領域の外におかれているはず の生活の多くの分野が、逆に大いに政治化されてしまうのだ。〈システム〉はあまりに非政治化 されていくので、西洋なら政治と見なされるものがしだいに減っていくと言ってもよい。しかし、 まさしくこれゆえに、すべてを含む〈システム〉は著しく政治的なのである。すでにふれたように、 日本人の生活に広く見られるこうした政治的状況は、"文化"という仮面で存続しつづける。 表向きに非政治化された社会は、そこにおいて深刻な紛争がないとし、全員一致の合意という 幻想をいつもつくっていなければならない。このような社会に生じるもっとも重大な問題は、 近代立憲国家なら当たり前に持っているはずの紛争解決の手段を社会が持っていないということ である。この影響は十分に認識されていないが、日本の国際関係も含め、広い範囲に及ぶもので ある。紛争解決のための公式機関を欠くということは、日本の社会関係に調停抜きの権力―― 別の言葉を使えば、おどし――が充満していることを意味する。 ・・・・ ////// 邦訳 早川書房発行 /// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/623
624: ◆0JFEyIQD1s [] 2015/08/10(月) 07:02:31.71 ID:SnxuQytw /// 早川書房 //////////////// カレル・ヴァン・ウォルフレン(Karel Van Wolferen) (著)、篠原 勝 (翻訳)、 原著1989年発行、邦訳 早川書房1990年発行 「日本/権力構造の謎」 The Enigma of Japanese Power 日本 権力構造の謎〈下〉 ハヤカワ文庫NF、972円(税込) ISBN-10: 4150501785 ISBN-13: 978-4150501785 http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784150501785 http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1101172636/subno/1 http://www.amazon.co.jp/dp/4150501785/ http://honto.jp/netstore/pd-book_01055139.html http://books.rakuten.co.jp/rb/650747/ http://www.junkudo.co.jp/mj/products/detail.php?product_id=0194197373 http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/90178.html //////////// 絶賛発売中!/// http://wc2014.5ch.net/test/read.cgi/soc/1364115520/624
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