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配当金・株主優待スレッド 525 [無断転載禁止]©2ch.net (231レス)
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222
: 2016/05/18(水)17:04
ID:4uTcWgUe(133/142)
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222: [sage] 2016/05/18(水) 17:04:45.78 ID:4uTcWgUe も言葉少なに食事を済ました。 午後は手が慣なれたせいか、朝に比べると仕事が少し果取はかどった。しかし二人の気分は飯前よりも かえって縁遠くなった。ことに寒い天気が二人の頭に応こたえた。起きた時は、日を載のせた空がしだい に遠退とおのいて行くかと思われるほどに、好く晴れていたが、それが真蒼まっさおに色づく頃から急に 雲が出て、暗い中で粉雪こゆきでも醸かもしているように、日の目を密封した。二人は交かわる交がわる 火鉢に手を翳かざした。 「兄さんは来年になると月給が上がるんでしょう」 ふと小六がこんな問を御米にかけた。御米はその時畳の上の紙片かみぎれを取って、糊に汚よごれた手 を拭いていたが、全く思も寄らないという顔をした。 「どうして」 「でも新聞で見ると、来年から一般に官吏の増俸があると云う話じゃありませんか」 御米はそんな消息を全く知らなかった。小六から詳しい説明を聞いて、始めてなるほどと首肯うなずい た。 「全くね。これじゃ誰だって、やって行けないわ。御肴おさかなの切身なんか、私わたしが東京へ来てか らでも、もう倍になってるんですもの」と云った。肴の切身の値段になると小六の方が全く無識であった 。御米に注意されて始めてそれほどむやみに高くなるものかと思った。 小六にちょっとした好奇心の出たため、二人の会話は存外素直に流れて行った。御米は裏の家主の十八 九時代に物価の大変安かった話を、この間宗助から聞いた通り繰り返した。その時分は蕎麦そばを食うに しても、盛もりかけが八厘、種たねものが二銭五厘であった。牛肉は普通なみが一人前いちにんまえ四銭 で、ロースは六銭であった。寄席よせは三銭か四銭であった。学生は月に七円ぐらい国から貰もらえば中 ちゅうの部であった。十円も取るとすでに贅沢ぜいたくと思われた。 「小六さんも、その時分だと訳なく大学が卒業できたのにね」と御米が云った。 「兄さんもその時分だと大変暮しやすい訳ですね」と小六が答えた。 座敷の張易はりかえが済んだときにはもう三時過になった。そうこうしているうちには、宗助も帰って 来るし、晩の支度したくも始めなくってはならないので、二人はこれを一段落として、糊や髪剃かみそり を片づけた。小六は大きな伸のびを一つして、握にぎり拳こぶしで自分の頭をこんこんと叩たたいた。 「どうも御苦労さま。疲れたでしょう」と御米は小六を労いたわった。小六はそれよりも口淋くちさむし い思がした。この間文庫を届けてやった礼に、坂井からくれたと云う菓子を、戸棚とだなから出して貰っ て食べた。御米は御茶を入れた。 「坂井と云う人は大学出なんですか」 「ええ、やっぱりそうなんですって」 小六は茶を飲んで煙草たばこを吹いた。やがて、 「兄さんは増俸の事をまだあなたに話さないんですか」と聞いた。 「いいえ、ちっとも」と御米が答えた。 「兄さんみたようになれたら好いだろうな。不平も何もなくって」 御米は特別の挨拶あいさつもしなかった。小六はそのまま起たって六畳へ這入はいったが、やがて火が 消えたと云って、火鉢を抱かかえてまた出て来た。彼は兄の家いえに厄介やっかいになりながら、もう少 し立てば都合がつくだろうと慰めた安之助の言葉を信じて、学校は表向おもてむき休学の体ていにして一 時の始末をつけたのである。 九 裏の坂井と宗助そうすけとは文庫が縁になって思わぬ関係がついた。それまでは月に一度こちらから清 きよに家賃を持たしてやると、向むこうからその受取を寄こすだけの交渉に過ぎなかったのだから、崖が けの上に西洋人が住んでいると同様で、隣人としての親みは、まるで存在していなかったのである。 宗助が文庫を届けた日の午後に、坂井の云った通り、刑事が宗助の家の裏手から崖下を検しらべに来た が、その時坂井もいっしょだったので、御米およねは始めて噂うわさに聞いた家主の顔を見た。髭ひげの http://potato.5ch.net/test/read.cgi/stock/1455832213/222
も言葉少なに食事を済ました 午後は手が慣なれたせいか朝に比べると仕事が少し果取はかどったしかし二人の気分は飯前よりも かえって縁遠くなったことに寒い天気が二人の頭に応こたえた起きた時は日を載のせた空がしだい に遠退とおのいて行くかと思われるほどに好く晴れていたがそれが真蒼まっさおに色づく頃から急に 雲が出て暗い中で粉雪こゆきでも醸かもしているように日の目を密封した二人は交かわる交がわる 火鉢に手をかざした 兄さんは来年になると月給が上がるんでしょう ふと小六がこんな問を御米にかけた御米はその時畳の上の紙片かみぎれを取って糊に汚よごれた手 を拭いていたが全く思も寄らないという顔をした どうして でも新聞で見ると来年から一般に官吏の増俸があると云う話じゃありませんか 御米はそんな消息を全く知らなかった小六から詳しい説明を聞いて始めてなるほどと首肯うなずい た 全くねこれじゃ誰だってやって行けないわ御肴おさかなの切身なんか私わたしが東京へ来てか らでももう倍になってるんですものと云った肴の切身の値段になると小六の方が全く無識であった 御米に注意されて始めてそれほどむやみに高くなるものかと思った 小六にちょっとした好奇心の出たため二人の会話は存外素直に流れて行った御米は裏の家主の十八 九時代に物価の大変安かった話をこの間宗助から聞いた通り繰り返したその時分は蕎麦そばを食うに しても盛もりかけが八厘種たねものが二銭五厘であった牛肉は普通なみが一人前いちにんまえ四銭 でロースは六銭であった寄席よせは三銭か四銭であった学生は月に七円ぐらい国から貰もらえば中 ちゅうの部であった十円も取るとすでに沢ぜいたくと思われた 小六さんもその時分だと訳なく大学が卒業できたのにねと御米が云った 兄さんもその時分だと大変暮しやすい訳ですねと小六が答えた 座敷の張易はりかえが済んだときにはもう三時過になったそうこうしているうちには宗助も帰って 来るし晩の支度したくも始めなくってはならないので二人はこれを一段落として糊や髪剃かみそり を片づけた小六は大きな伸のびを一つして握にぎり拳こぶしで自分の頭をこんこんと叩たたいた どうも御苦労さま疲れたでしょうと御米は小六を労いたわった小六はそれよりも口淋くちさむし い思がしたこの間文庫を届けてやった礼に坂井からくれたと云う菓子を戸棚とだなから出して貰っ て食べた御米は御茶を入れた 坂井と云う人は大学出なんですか ええやっぱりそうなんですって 小六は茶を飲んで煙草たばこを吹いたやがて 兄さんは増俸の事をまだあなたに話さないんですかと聞いた いいえちっともと御米が答えた 兄さんみたようになれたら好いだろうな不平も何もなくって 御米は特別の挨拶あいさつもしなかった小六はそのまま起たって六畳へ這入はいったがやがて火が 消えたと云って火鉢を抱かかえてまた出て来た彼は兄の家いえに厄介やっかいになりながらもう少 し立てば都合がつくだろうと慰めた安之助の言葉を信じて学校は表向おもてむき休学の体ていにして一 時の始末をつけたのである 九 裏の坂井と宗助そうすけとは文庫が縁になって思わぬ関係がついたそれまでは月に一度こちらから清 きよに家賃を持たしてやると向むこうからその受取を寄こすだけの交渉に過ぎなかったのだから崖が けの上に西洋人が住んでいると同様で隣人としての親みはまるで存在していなかったのである 宗助が文庫を届けた日の午後に坂井の云った通り刑事が宗助の家の裏手から崖下を検しらべに来た がその時坂井もいっしょだったので御米およねは始めて噂うわさに聞いた家主の顔を見た髭ひげの
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