【愛媛】[新居浜市]新居浜太鼓祭り[2019/10/15-18] (319レス)
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94: 2023/11/11(土)03:53 ID:idgA56Wt(1) AAS
人の死は千差万別で、予測のつかないことが起こることも少なくありません。
いや、人の死ばかりでなく、動物の死でも同じです。動物の安楽死で、
思いもかけない状況を体験しました。三十代のはじめに外科医として勤務していた病院で、
技師さんの研修にウサギの解剖を実演することになったときのことです。
生きたままのウサギを解剖するので、クロロホルムで眠らせましたが、それでもかわいそうで、
先に安楽死させたほうがいいと思い、メスを入れる前に塩化カリウムを心腔内に注射して、
心臓を止めました。これで安らかに死ぬと思ったら、ウサギが突然、
ヒィィーッという甲高い声を繰り返し出したのです。下顎呼吸によるうめきだったようです。
まさに断末魔の叫びのようで、私は焦りと動揺で息が詰まりそうでした。まさか、
そんなことになるとは思っていなかったからです。尊厳死や安楽死でも、似たようなことが起こり得ます。
一九九八年に発生した川崎協同病院事件の場合がそうです。喘息の重積発作で心肺停止になったあと、
蘇生処置で人工呼吸器をつけていた患者さんが、脳死に近い状態になったとき、
主治医はこのまま延命治療を続けて生きたまま身体が腐っていくような悲惨な状態になる前に、
治療を終えたほうがいいと判断し、家族の同意を得た上で、気管チューブを抜きました。
家族にも病室に集まってもらい、最後のお別れをしてからの処置です。
そのまま安らかに亡くなるはずだったのに、患者さんが背中をのけぞらせて苦しみだしたのです。
予想外の事態に、主治医は同僚医師のアドバイスで、筋弛緩剤を投与して患者さんを看取りました。
主治医の予測が甘かったとも言えますが、それは結果論で、
脳死と思われる患者さんがそんな反応をすることは、ふつうは考えられません。
それでも主治医は懸命に対応し、なんとかその場を収めたのです。家族も驚いたでしょうが、
最後は主治医に礼を述べて帰って行ったそうです。この事件の発覚は、
発生から四年たった二〇〇二年です。なぜそんなに時間がかかったのか。
事件当初、主治医は病院長に経緯を報告し、注意は受けましたが、公表はされませんでした。
ところが三年後、主治医を嫌う麻酔科医が、何かのきっかけで古いカルテを見て、
筋弛緩剤が使用されていたことを知り、院長にカルテのコピーを見せて、これは安楽死事件なので、
やめさせなければこれをばらまくと迫ったのです。この内部告発を受け、事態を重く見た病院側は、
調査の上、主治医に退職を勧告。主治医が退職したあと、病院は患者遺族に謝罪し、
記者会見を開いて事件を公表しました。マスコミは事件をセンセーショナルに報じ、
患者遺族は病院側から多額の賠償金を得、警察は主治医を殺人容疑で逮捕しました。
裁判では主治医は有罪とされ、一審では家族の意思を十分に確認せずに気管チューブを抜いたとして、
懲役三年執行猶予五年の判決が下されましたが、二審では家族の同意があったことが認められ、
懲役一年六ヵ月執行猶予三年に減刑されました。主治医は自らの行為の正当性を主張すべく、
最高裁に上告しましたが、最高裁は二〇〇九年にこれを棄却しました。この事件には病院側の対応や、
賠償金がもらえるとわかった患者遺族の態度の変化など、さまざまな要素が絡まっています。
本件をモデルにした小説を執筆する際、二度、当事者である元主治医に取材しましたが、
善意のみに基づいた医療行為に、殺意などあるはずもないのに、
殺人罪の判定には大いに疑問を感じました。危惧していたことですが、
心肺停止で運ばれてきた患者さんに蘇生処置をして、悲惨な延命治療になりかけたとき、
それを中止したら殺人罪になるのなら、医者ははじめから蘇生処置をしなくなるのではないでしょうか。
そのことで、助かる命も見捨てられる危険性も生じます。人間関係のこじれによる安楽死・尊厳死の発覚は、
病院の事例でもありました。こちらは当事者の外科部長と、病院長の間に確執があったようです。
善意の判断で治療を中止し、家族も納得していても、あとで病院内の人間関係がこじれると、
いつ内部告発されるかわからないとなると、医者はおいそれと尊厳死や、
ましてや安楽死に手を出せないことになります。それでつらい目を見るのは、患者さんでありご家族です。
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