[過去ログ] うつ病は精神科医が作る 5【鬱病】 (147レス)
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119: 2014/03/23(日)22:55 ID:TkQGPHf3(2/2) AAS
・精神疾患は脳の病気か? 「薬で治る」を冷静に批判 エリオット・S・ヴァレンスタイン著
いったいいつから、精神疾患の治療が、対話を軸とした心理療法から、投薬中心にとって代わられたのか。
独自の技量を誇っていた精神科医は、なぜ薬剤師のように振舞うようになったのか。現代の精神医療がかかえる
根本問題を正面に捉え、検証しようとした重い著作である。
現在、多くの医学書には、精神疾患は脳内の神経伝達物質のバランスの欠如に困る、と書いてある。統合失調症
はドーパミンの、うつ病はセロトニンの多寡や活性・不活性が、神経細胞に影響を与えるから、と言うのである。
だがそもそも、患者の脳内の生科学的状態を調べる方法などありえない。精神疾患の生化学説は、偶然、向精神薬が
見つかったことに対する一解釈にすぎず、有力な薬でも患者の半分以下にしか効かないし(効果にも個人差がある)、
薬効も数日服用しないと現れない。薬理学的なメカニズムは不明なのである。
著者は専門誌の総括を精査し、精神疾患の生化学説が1970年代を境に受け容れられ、臨床の光景が塗り替えられて
いった過程を明らかにする。しかし同時に、薬効を過大に宣伝し、巧妙なマーケティングで巨額利益を上げる製薬会社
を一方的に非難はしない。説明が空疎ものだとしても、現実に一定の患者は治癒しているからである。そして社会の側
にも、これを受け容れる素地が十分すぎるほどある。原因は家庭環境や遺伝にはなく、服用すれば救済されるかもしれない
ことを匂わす科学的な装いの説明は、患者本人、家族、製薬会社、医師、保険会社など、関係者にとって好都合なのだ。
精神現象はなお巨大な謎である。それを良いことに、皆にとって抵抗感なく金が回転しさえすれば、これを是とする強弁
がまかり通っている。著者の批判は、危うい生化学説に社会全体が傾き過ぎている一点にある。単なる告発や非難ではない、
落ち着いた現状批判を行ったところに真価がある。腰の据わった良質の科学論とも言ってよい。功刀浩監訳、中塚公子訳。
評・米本昌平(科学史家)
Elliot S.Valenstein 米ミシガン大教授。専門は心理学、神経科学。
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