[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part4 (1002レス)
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528(1): 悪党と改造人間◆W5H6Y5Rl3M 2011/11/08(火)22:58 ID:bmabbc04o(2/3) AAS
「何故……生きている」
「私がですか? それともあなたがですか?」
「両方、だ」
鼻歌混じりに、手術道具に見えなくもない奇妙な器材をがちゃがちゃと片付けているのは、ヴィッキー
硬い感触の手術台のようなものに拘束されているのは、Z-No.592
「まず私について。私は別に一人じゃありませんでしたから。お出迎えは5人ぐらい出したはずですが」
「……なるほどな。事前に数も確認しておけば良かったよ」
「ちょくちょく増やしてますから、事前の調査はあまり意味が無いですよ」
死の淵で思考がまともに回っていなかったらしい、とZ-No.592は舌打ちする
例えあの場に居たものを皆殺しにしたところで、沢山居るのであればどこかしらに予備がいるのは当然である
「次に、あなたについて。私が、私や怪人の残骸を回収調査に来た折にあなたも見つけましたので。ついでに回収しました」
「何故、敵である俺を治す?」
「死体に敵も味方もありますか? 死体は私にとって、須らく『材料』ですよ」
がちゃりと器材を作業台の上に置いて、ヴィッキーは拘束されたままのZ-No.592に近付いてくる
「ちゃんと直したら魂が戻ってきちゃって蘇生しちゃいましたけれど。まあ頼まれた事に対しては上手くいったので結果オーライです」
「もう一つ質問だ……誰に、何を、頼まれた?」
ぺたり、と
Z-No.592の頬に、ヴィッキーの冷たい手のひらが触れる
「あなたの契約している都市伝説に、あなたを直してくれと」
禍々しい、期待に満ちた笑顔がヴィッキーの顔に浮かぶ
「あなたを直してくれるのなら、なんでもするというから」
眼前に差し出された結晶体は、白色、栗色、黄金色が綺麗に混ざり合った斑模様で
その色は、いつも周りではしゃいでいた、彼女達の毛並の色と同じで
「その構成エネルギーを差し出してもらいましたよ」
胸中にあった空虚感で、契約が失われている事には気付いていた
目の前に居る女の研究内容も、語られた分は理解していた
拘束されていなければ、即座にヴィッキーを殴り掛かっていただろう
「力を……都市伝説を取り出した後に残る『魂』をどうするか、お前は言ってなかったな」
「おや、そちらに出向いた私達は説明してませんでしたか。質にもよりますが、大抵はそのまま破棄しますがね」
結晶をちらつかせたまま、開いた手でZ-No.592の身体を艶かしく撫で回す
「都市伝説存在の構成エネルギーではなく、魂のエネルギーでも人体構成使えるか。そういう実験をやってみたわけです。結果はご覧の通り」
ぎしりと手術台に上がり、Z-No.592の上に馬乗りになるヴィッキー
「記憶だの意識だの、そういう不純物の除去に手間は掛かりましたが……人体の基礎部分があれば充分に使える事が判りました」
脇腹の辺りに手をついて、唇が触れ合いそうなほどの距離まで顔を近づけて
「というわけで、彼女達の『魂』はもう何処にも存在しません。あなたの身体を再構成し魂を引き戻すための燃料のなって燃え尽きて、煤ほどの滓すらも残っていません、完全消滅です」
興奮の混じった吐息に鼻腔をくすぐられ
Z-No.592は首を僅かに捻り、その稼動域を確認すると
頭を思い切り振り上げて、ヴィッキーの顔面に額をめり込ませた
無様にひっくり返り、そのまま手術台から転げ落ちるヴィッキー
「いい反応です。やはりそれぐらい元気でないと、ここから先で困りますからね」
「……先……だと?」
「それも説明してませんでしたか、私達は。都市伝説の構成エネルギー結晶を、消費する事なく力を引き出し、換装が可能となる改造人間の製作ですよ」
歪んだ鼻骨を直しながら、ヴィッキーは笑う
「あなたを直す傍ら、試しに人間でやってみたんですが……どうも人間は結晶体と混ざりやすくて。適度に都市伝説存在である『黒服』の方が、濃度というか浸透率というか、そういう意味で丁度良さそうなんですよ」
手にしたままの結晶体を、その手のひらの上で弄びながら
「大人しく従っていてくれれば……彼女達の力だけは、存在を確かなものとする最後の一欠片だけは、手元に残りますよ?」
人のかたちをした悪意は
嬉しそうに
楽しそうに
そう囁いた
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