[過去ログ]
「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part4 (1002レス)
「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part4 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/
上
下
前
次
1-
新
通常表示
512バイト分割
レス栞
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
次スレ検索
歴削→次スレ
栞削→次スレ
過去ログメニュー
633: 赤い幼星 † 最悪の展開を迎えない為に:後 ◆7aVqGFchwM [sage saga] 2011/11/14(月) 01:18:34.35 ID:s2ikNXWR0 「ッハァ、ハァ………くそっ、数が多すぎる…………!」 東区某所―――― 右手にスケッチブック、左手にペンを構えた少年――R-No.3、栄 日天は、 喉を唸らせるジャガー人間の群れに囲まれていた 彼の服などからは、幾つか引っかき傷のようなものが垣間見える 「「「ババリバリッシュ!!!」」」 「っく…新たな絵を描く暇も無い………使える龍は全て使ってしまった……… 冗談で言ったつもりだったが…真実になるかも知れないな」 清太に言った言葉を思い出しながら自嘲する日天 ふと何気なくスケッチブックを開くと、手の代わりに大きな翼の生えた細身の西洋竜――「ワイバーン」が描かれていた 「……「ワイバーン」………こいつが召喚出来れば…………」 「画竜点睛」は、元々中国の故事から生まれた言葉であり、都市伝説 故に、彼は中国等の伝承に由来する東洋龍しか召喚出来なかった 他の上位メンバーと違って、彼にはそれを捻じ曲げる力が――――“幼気”が無かったから ぎり、と彼は強く歯軋りした 「……チェックメイト、か……」 眼を瞑る スケッチブックを閉じかける 彼の戦意は、完全に崩れ去った――――――― ―――もしかしたらまた会えるかも……知れないねぇ 突然、脳裏に少女の声が過った それは彼が愛した、ある少女の言葉 「………ルート……そうだ」 目を開き、スケッチブックを開いて再びペンを構える 「ここでオレが死ねば……あいつはまた一人になる…… 絶対に死ねない…オレは生きなきゃならないんだ あいつを護ってやれるのは…オレだけなんだ!!」 スケッチブックに描かれた「ワイバーン」の右の白眼に瞳を描き入れ、 彼はそれを高々と頭上に掲げ、腹一杯に叫んだ 「応えてくれ……俺の我侭に! 画竜点睛!! 現れろ、「ワイバーン」!!!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/633
634: 赤い幼星 † 最悪の展開を迎えない為に:後 ◆7aVqGFchwM [sage saga] 2011/11/14(月) 01:19:02.09 ID:s2ikNXWR0 雷鳴が轟く 一瞬辺りが光に包まれたその瞬間に、絵の中から黒い影が飛び出した 描かれた姿と、全く同じその怪物は正しく、「ワイバーン」そのものだった 「ギゴガゴォォォォォォォゴォォォォォォォォ!!!!」 「「ワイバーン」……有難う、ルート……助けられてしまったな」 「ワイバーン」に飛び乗り、日天は地上を指差して指示を行なった 口から火球が放たれ、ジャガー人間達をあっという間に焼き払う それでも、ジャガー人間は民家の屋根から飛びかかろうとしていた 「避けろ「ワイバーン」!」 錐揉み旋回しては火球を放ち 宙返りしては火球を放ち ヒット&アウェイを繰り返して少しずつ、確実に敵を潰してゆく 「やはり数が問題だな……よし、「ワーム」を呼び出そう」 ペンを取り、白い紙にその先端を押し当てた 力を入れて僅かな線が引かれた、その時だった 「―――――――――ぐぅ……!?」 左手を抑え、苦悶の表情を浮かべる 瞬間、彼の心の器が不安定になった所為か、「ワイバーン」の身体が歪んだかと思えば、 姿が完全に消滅し、日天はそのまま地上に打ちつけられた 「あがっ……く、そ……腕が…………」 たらり、と血が流れ出る ジャガー人間との戦闘で出来た引っかき傷が開いてしまったようだ 血の臭いを嗅ぎつけ、野性を丸出しにしたジャガー人間達がまたもぞろぞろと集まってきた じゅるりと涎を舐め取る音が、連続して響いた 「ふざ、けるな………こんな…ところで…………!!」 腕に力を入れるが、うまく動かない 「蝦蟇の油」を常備していなかった事を、彼は心底悔やんだが、時既に遅し ――――すまない、ルート 獣の爪が、鮮血に染まった http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/634
635: 赤い幼星 † 最悪の展開を迎えない為に:後 ◆7aVqGFchwM [sage saga] 2011/11/14(月) 01:19:37.25 ID:s2ikNXWR0 「………なっ…!?」 どさ、とジャガー人間が力無く、その場に倒れた 攻撃したのは、同じジャガー人間 仲間を攻撃したその裏切り者は、己の首を引き裂いて自害した 日天には、その光景に見覚えがあった 「こ、これは……!」 突如、彼の前に何者かが現れた 黒いミニスカートを穿き、黒い上着を羽織った、灰色の髪の少女 その肩には、白いふさふさの毛並みのネコがちょこんと乗っかっていた 「全く、人類滅亡だなんて…Traum(夢)もHoffnung(希望)もありゃしないわぁ」 怒りを露わにして襲いかかるジャガー人間 しかし、少女はそれ以上の怒りを以て、 「『ギフト・トロプフェン』!!」 周囲に黒い液体を展開し、それを無数の細長い針にして射出する ジャガー人間は身体中に赤い班模様を作り出して、悶え苦しみながら絶命した 「る、ルート……お前なのか?」 「ごめんね日天さん、遅くなって………後はアタシに任せてぇ!!」 少女は――ルート・ライフアイゼンは、液体を黒い刃に変えて、 高らかに、そして勇ましく、戦闘参加を宣言した ...To be Continued http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/635
636: シャ ◆7aVqGFchwM [sage saga] 2011/11/14(月) 01:29:44.41 ID:s2ikNXWR0 誰もいない 上げるなら今の内 だろうと思って 2文字目縦読み 凛々ちゃんの戦闘シーン描く筈だったのにKONOZAMAだorz 今度書くよ今度、うん書くよ多分(ぁ まずは『神力秘詞』書いて『邪気殺し』だな それで『赤い幼星』で「水晶髑髏」収集作戦開始してようやくあの馬鹿が起きると ここまで妄想したので何とか今週中にはあの馬鹿を殺s(影に飲まれました >>629 >柳「知ってる?しゃっくりがひゃkk」 やめてwwwwwwww >実は未だ何も考えてな… 何……だとwwwwww >柳「待ってください!確かに皆さん可愛いけど、俺のノイちゃんだって!」 (裂邪>このロリコンが!! (理夢>…あの事件の後、こいつは平気でこんな事を言える奴になるってのが怖ぇ (シェイド>ダガコレハ酷イ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/636
637: 吸血鬼、拾いました ◆nBXmJajMvU [sage saga] 2011/11/14(月) 16:51:53.32 ID:HnsuFLMP0 気付いた時には、己は家族と自由を奪われていた 手に入れた、手に入れさせられた力で、命を奪う訓練だけをさせられた 命乞いする相手を切り殺す 泣き叫ぶ相手を切り殺す ただただ、それ以外は何もさせられなかった 命を奪う為の道具 ただ、その為だけに育てられた 心と精神は少しずつ摩耗していき、そのうち、自分は本当に人形のようになっていたかもしれない 「なぁ、お前、どうしてそんなところにいるんだ?」 ……あの時 「そんなとこいないで、出てこいよ。一緒に、ここから逃げよう」 あの笑顔を向けられなかったら 手を差し伸べられなかったら きっと、自分はとうに連中の道具に成り果てて もしかしたら、この世にもいなかっただろう 意識が覚醒する …風夜は、まだ隣で寝ているようだ むくり、体を起こす 「……ぁ」 「…おはよう」 「お、おは、よう」 己の反対隣で寝ていたギルベルトも、目を覚ましていたようだ …いや、もしかしたら、寝ていないのかもしれない 昨晩は風夜によって半ば強引に三人で寝る羽目になったが、ギルベルトは明らかに誰かと共に寝る事に慣れていないように見えた …と、言うより、他者と関わる事、触れ合う事自体に、慣れていない 虐げられ、痛みだけを与えられ続けてきたのであろうこの吸血鬼は、人の温もりに慣れていない 風夜は、ギルベルトにその温もりを与えようとしているようだが …果たして、うまくいくのだろうか そんな事を考えながら、隣で寝ている風夜の体を軽く揺さぶる んん、と小さく声を上げて、風夜が瞼を開いた 「…も、朝…?」 そうだ、と頷いてやる ん〜、と、風夜は意識が完全に覚醒していないのか、もぞもぞと蠢き …ぎゅう、と 「え」 …ギルベルトに、まるで抱き枕にでも抱きつくかのように、抱き着いた 驚いたのだろう、ギルベルトの血のように赤い瞳が、大きく見開かれる 「ぁ、え……?」 「………風夜。ギルベルトが驚いている。やめてやれ」 「んん〜……まだ眠いし、寒い……」 ぎゅう、と 強く、ギルベルトを抱きしめているらしい風夜 …これは、ダメだ そう簡単には放さないだろう 小さく、ため息をつく …ギルベルトがいなかったら、抱きつかれていたのは恐らく自分だ 「………」 助けを求めるような赤い瞳 どうすればいいのか、わからないのだろう …安心してほしい 風夜との付き合いは長いが、自分もどうすればいいのかわからない 「………しばらくすれば気が済むだろうから、すまないが、耐えていてくれ」 そう告げて、寝台から抜け出す さっさと、朝食を作ってしまおう そうすれば、風夜も目を覚ますはずだ おろおろと、狼狽えている様子のギルベルトを残す事に後ろめたさを感じながら、足早にキッチンへと向かうことにした http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/637
638: 吸血鬼、拾いました ◆nBXmJajMvU [sage saga] 2011/11/14(月) 16:53:37.29 ID:HnsuFLMP0 …風夜と共に寝台の中に残されたギルベルトは、どうしたらいいのかわからず、ただ、硬直していた 抱きしめてくる風夜の腕から、その体温が伝わってくる …暖かい 「…ギルの体、冷たいな」 ぽつり、風夜が呟いた びくっ、と、ギルベルトは体を跳ねらせる 「ぁ…お、俺は、吸血鬼だから………その、ごめんなさい……」 己は、吸血鬼だ 死体が起き上がった姿とも言われる吸血鬼 その体温は、人よりも冷たい 謝罪の言葉を口にしたギルベルトに、風夜は小さく笑ったように見えた ぎゅう、と、ギルベルトを抱きしめる力を強めてくる 「謝らなくてもいいんだよ。お前の体温が低いのなら、俺やアーサーが温めてやるから」 優しい言葉 この言葉を向けられる価値が、自分にはあるのだろうか …あるはずがない ギルベルトは、そう考える 化け物でしかに自分に、そんな価値があるはずがないだろう 俯くギルベルトに、風夜はどこか困ったような表情を浮かべて そっと、頬を撫でてくる 触れてくる指先は、暖かい 「……そもそも、俺の方が、お前に謝るべきなのに」 「…ど、どうして…?………謝る、事、など、何も……」 「………だってさぁ」 笑う、風夜 どこか、自嘲気味な笑い 「お前と契約する事で、俺はお前を殺してしまっていたかもしれないんだよ?」 ………卵がそろそろない いい加減、買いに行くべきだろう と、言うか、今度からはギルベルトもいるのだから、食料の買い出しペースなど、考え直さなければならない 風夜が、そこまで考えているかどうかはわからないが ギルベルトと契約できて、嬉しいのだろう アーサーには、それがわかる 今まで、風夜がどんな思いをしてきたのか、すぐ隣で見てきたのだから 朝食を作る為に手を動かしながら、しかし 「……………………許さない」 口を突いて出たのは、憎悪の言葉 己の人生を奪った「組織」の「過激派」、「強行派」への そして 風夜に都市伝説との契約を難しくさせた……「組織」の狂科学者への、憎悪 口をついて出たその憎悪は、どこまでもどこまでも深く、重たかった 「俺は、ね。赤ん坊の頃から、ってか、母親の腹の中から取り出された瞬間から、体の中を弄繰り回されていたらしくてね」 ギルベルトをまっすぐに見つめながら、風夜は話す 「ある特定都市伝説との契約相性を高める実験に使われたらしいんだよね。ついでに、その都市伝説と契約させて、俺を使おうとしていたらしいよ」 クリネックスティシューのCMとの相性を高められたんだったかな?と そう語る、風夜の表情が 「特定都市伝説との相性がよくなる代わりに、他の都市伝説との相性は悪くなっちゃってさ」 どこか 泣き出しそうに見えたのは、気のせいか http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/638
639: 吸血鬼、拾いました ◆nBXmJajMvU [sage saga] 2011/11/14(月) 17:01:13.02 ID:HnsuFLMP0 「………契約、しようとするとさ………相手が、消えちゃうんだ。俺に「飲まれて」」 「…飲まれ、る?」 都市伝説が、人間に飲まれる? 人間が、都市伝説に飲まれるのではなく? 「そうだよ。今までも、何人かの都市伝説と契約しようとしてきたんだけどさ……全部、ダメだったよ。口裂け女も、トイレの太郎君も。赤マントも、ジャック・ザ・リッパーも。注射男も火竜そばもひきこさんも赤い部屋もメリーさんもリュパンもモンゴリアン・デスワームも首なしライダーもこっくりさんもみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな…………!」 一気に、言い切って 「…みんな、俺に飲まれて、消えちゃったよ」 自嘲するように笑いながら 風夜は、そう言った 「だから、ね……ギルベルトと契約する時、恐ろしかったよ。お前も消えてしまったら、どうしようかと」 「………」 そんな、風夜を ギルベルトは、じっと見つめる 戸惑っているような、少し混乱しているような、そんな表情で 「幸い、お前は消えないでくれたけど」 でも、と 風夜は、改めてギルベルトの体を抱きしめてきた ここに、ギルベルトが存在する事を、かみしめるかのように 「でも……俺はお前に何も告げないで、そんなリスクを背負わせていたんだよ」 「………」 「御免な、ギルベルト」 御免、と ただただ、謝罪してくる風夜 ……いつも、謝罪してばかりだった 生きていてごめんなさい 御免なさい、ごめんなさい、と 人間ではなくなって数百年、ただ、謝罪する側に立ち続けて …謝罪されたのは 果たして、何百年ぶりだったろうか 「……あ、謝ら、ないで、くれ……」 おろおろと 泣き出しそうになりながら、ギルベルトは風夜に告げた 確かに、風夜は、ギルベルトに何の説明もせず、命を落とすかもしれないリスクを背負わせた だが 「……俺、は…………本当は、生きていては、ダメで………でも、死ねなくて……」 生きていて、御免なさい 謝罪の言葉を口にするだけで、死ぬことはできなかった 臆病すぎる己は、死ぬことが怖くてできなかった 「…お前に、飲まれて死んでいたならば……俺、は。それでも、構わない」 殺してくれたのなら それでも、良かったのだ 「……死んでいた方が、良かった?」 「………わ、わからない……御免なさい………」 飲まれて死ぬべきだったのか その方が良かったのか 自分には、わからない ただ 「…でも………俺、は消えずに……お前と、契約できたから」 風夜と契約できた 契約により繋がりが発生し、己は風夜に力を貸し与える存在になった …だから http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/639
640: 吸血鬼、拾いました ◆nBXmJajMvU [sage saga] 2011/11/14(月) 17:07:09.99 ID:HnsuFLMP0 「………だ、だから…………お前、が望む限り……………お、俺は……お前の、傍に、いる、から」 生まれて初めて、契約者を得る事ができた 死んでいたか、契約者を得ていたか どちらにしても……己にとって、それはきっと、「幸福」なのだろうから 「幸福」を与えてくれる相手に謝罪されても、困ってしまう 「……だから、どうか…あ、謝らないで……」 「ギル…」 御免、と もう一度だけ、風夜は謝罪の言葉を口にして しっかりと、ギルベルトを抱きしめ、告げる 「お前は、俺が護るよ。お前もアーサーも、俺が護る。お前達を怖がらせる奴らも、傷つける奴らも。全部、俺が排除して、「なかった事」にしてやるから」 優しい声 そして、力強い声 「お前達の過去の苦しみも何もかも、全部「なかった事」になるくらいの幸せを、俺が与えて見せるから」 その声は まるで、麻薬のように、ギルベルトの心にしみ込んできて 「……だから。お前はもう何も怖がらなくていいし、謝り続けなくていいんだからね」 ……あぁ きっと、この人と出会えたのは、幸運なのだ、と そう、心から、感じたのだった 彼らの出会いは、彼らにとっては「幸運」でも 誰かにとっては「不幸」でしかないのだが それでも 彼らは、彼ら自身が「幸運」なのだから きっと、その事実に気づく事はないだろう Red Cape to be … ? http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/640
641: 吸血鬼、拾いました ◆nBXmJajMvU [sage saga] 2011/11/14(月) 17:08:20.65 ID:HnsuFLMP0 野郎三人組をマヤ編にかかわらせたくて急いでいるが間に合うかどうかが激しく不明なこの現実よ >>624 >周囲までダメなのかよwwwwかぁいいなぁ(ぁ 周囲のいうことはなんとなくわかったけど、でも結局風夜の言う事は理解できなくて泣きそうになる >>625 っちょ、おまwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww >>629 >柳「待ってください!確かに皆さん可愛いけど、俺のノイちゃんだって!」 圧倒的突っ込みの足りなさ 都市伝説スレには全てに突っ込みきれるだけの突っ込み役が足りない さて、ジャンプ求めて旅立ってくる http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/641
642: やる気なさそうな人 ◆HdHJ3cJJ7Q [sage] 2011/11/14(月) 21:22:05.10 ID:tpn/YcSDO ―――学校町某所 疾走し鋭く爪を突き出すジャガー人間。 しかし突き出されたその腕は、肉を潰す音とともに縦に裂けた。 突きに合わせて閉じられた口裂けの大鋏によって、腕の先から肘まで断ち切られたのだ。 口裂けは挟んだ腕ごと鋏を捩りながら振り上げ、ジャガー人間の頭に振り下ろした。 頭の潰れたジャガーには見向きもせず、口裂けは虚空から鎌を取り出し、真上に向かって投げつける。 それは口裂けを飛び越えようとしたジャガー人間へと刺さったが致命傷にはならない。 着地しそこから逃げようとしたジャガー人間だが、風切り音をともなって飛来した鎌鼬に切り裂かれ倒れた。 鎌鼬を飛ばした三尾はジャガー人間が倒れた事を視界の端で確認すると視線を前を戻した。 自分に向けて振り下ろされる鋭い爪を最小限の動きで避けつつ、距離を詰める。 そして腕に幾重にも纏わせた鎌鼬で深く斬りつけ、横をするりとすり抜ける。 数体のジャガー人間を確認すると彼らの足元の地面に向け鎌鼬を放つ。 「風陣」 するとジャガー人間達を囲むように地面に円形に線が走り、風が渦を巻き始める。 それを見た口裂けが、円の中にジャガー人間を蹴り飛ばすと同時に、鎌鼬が渦を巻き竜巻が形成された。 「収束」 竜巻は細くなっていき、内側にあるものを切り刻んでいく。 竜巻が消えたときには内側にいたジャガー人間はすでに消滅していた。 すでにこの場所に居たジャガー人間は半数以下に減っており、全滅するのも時間の問題である。 「一応場所は連絡したんですけど、増援は来ないですね」 「そうだな。この調子だと他でもこいつらが涌いてそうだしな」 「手が回らないんでしょうか」 「個別に動いてんだろ」 「集団行動が苦手な人多いですしね」 会話をしながらも的確にジャガー人間に止めを刺していく二人。 ジャガー人間を倒す合間に、口裂けが通信端末に入った連絡を見て三尾に告げる。 三尾は鎌鼬を両手に纏っており手が使えないためである。 「情報入って来てんぞ、『ジャガー人間にはキウイが効く』だとさ。どっかの馬鹿が噂いくつか流したらしい」 「八百屋さんが大繁盛しちゃいますね」 最後の一匹を倒し終えた三尾が、両手の鎌鼬の能力を解いて口裂けの側へ来て通信端末を覗く。 そこには、ジャガー人間にキウイで逃げる、怯む、毒が回って死ぬなど噂の一覧が表示されていた。 「むぅ、けっこういっぱいありますね」 「ああ。噂が悪い方向へ行かなきゃいいんだがな」 「さて、もう片付いちゃいましたね。増援まだ来ませんけど」 「仕方ねぇ、隠蔽なんかは後回しにして移動するか」 「仕方ないです、そうしましょう」 続かぬ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/642
643: 俺は幻牙 [sage saga] 2011/11/14(月) 23:51:20.72 ID:s2ikNXWR0 「もう、しっかりしてよね光陽……小学生じゃないんだから、忘れ物は無いかくらいいつも確認してよ」 「美菜季ごめん! 後で何でも言う事聞いてやるから!」 「ん〜、それじゃあ今日のお風呂掃除は光陽の番ね♪」 「っちょ、今日は美菜季が当番だろ!?」 「さっき何て言ってたかな〜?」 「くっそぅ…覚えとけよ」 日が落ち、月が明るくなり始めた頃 中学の制服を着た男女のカップルが、楽しげに家路を辿っていた 刺々しいやや奇抜な髪型の少年、名は仲橋 光陽(ナカハシ コウヨウ)、15歳 幼くして両親を亡くし、現在は今一緒に歩いている幼馴染の松葉 美菜季(マツバ ミナキ)の家に居候している 話を聞くに、どうやら学校に忘れ物を取りに行った帰りらしい 美菜季の怒り具合からして、帰宅する寸前か、した後に思い出したのだろう 「しっかし遅くなっちまったなぁ、おやっさん心配してないかな」 「…ところでその、“おやっさん”って言うのそろそろやめて欲しいな……」 「えー何で? おやっさんは喜んでるけど」 「喜び方が尋常じゃないのよ…お父さんったら、『おやっさんと呼んでくれ!』って常連さんにも言ってるし 黄昏くんはノリノリで言いなりになってるし……」 「良いじゃん、微笑ましい光景で」 「それは良いけど、でも黄昏くんはお父さんの機嫌を取ってお代を値切ってくるのよ!?」 「ははは、あいつらしいや」 「笑い事じゃないってばぁ……」 ぶつぶつ文句を垂れている美菜季と、それを笑って聞いている光陽 とても微笑ましく、温かな光景だった しかし 「…なんか今日、すげぇ静かじゃないか?」 「そう? いつもこんな感じだと思うけど……」 平和な時間は、長くは続かない 何故なら今日は ――――――ずざっ 「ん? 何だ今の音――――――――――ッ!?」 「どうしたの光陽――――――――っな、何あれ!?」 ――2011年10月28日金曜日、「マヤの予言」襲来 振り返った2人が見たものは、この世のものではない不可思議な生命体 見た目はジャガーなのだが、人間のように二本足で立ち、しかも歩いている それが、1匹だけに留まらず、5匹、10匹……まだまだ増えてゆく 「「「「ババリバリッシュ!!!」」」」 「お……お化け…!?」 「嘘だろ、お化けなんてあり得る訳が!」 「じゃああれは何よ!!」 半狂乱状態で意見をぶつけ合う2人 じり、じりと歩み寄るジャガーの怪物を見て、すぐに正気に戻ったのは光陽だった http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/643
644: 俺は幻牙 [sage saga] 2011/11/14(月) 23:51:56.55 ID:s2ikNXWR0 「―――――逃げるぞ、美菜季!」 「へっ?ち、ちょっと光陽!」 彼女の手を引いて、光陽は全速力で走った 同時に、獲物を捉えた肉食獣人達も、腹を空かせて逃げる食物を追う 人型とはいえジャガーはジャガー、常人が脚で勝てる訳が無い しかしこの獣達は、全力で走っているようには見えない まるで、逃げまどう2人を見て愉しんでいるかのように、にたにたと笑いながら引き離されない速さで駆ける そうしていると見え始めるものと言えば 逃げる2人の疲労である 「くっ……く、そ…………このままじゃ…………」 「光、陽………私、もう、ダメ……光陽、だけで、も、逃げ……」 「ッバカ言ってんじゃねぇ! お前だけ置いていける訳が――――――――――」 彼が気づいた時、獣人の1匹が宙に浮いていた 否、美菜季に狙いを定めて、爪を立てんと飛びかかったのだ 咄嗟に光陽は、彼女を抱き寄せて守ろうとした 瞬間、視界が反転して、目の前の世界がぐるぐると回転し、明滅を繰り返した 「痛たたた…」と、美菜季は彼に伸しかかるような形で起き上がった 「美菜季…大……丈夫……か……?」 「うん、平気…それより早くッ――――――こう、よう?」 彼の背の下、アスファルトには、血の海が広がっていた げふっ、と光陽は咳き込んで血を吐き出しながら、彼女を突き放した 「に……げろ、美菜季………お前、だけでも…………生きて、くれ………」 「そんな……そんなの嫌よ! それじゃ光陽はどうなっちゃうのよ!?」 「俺は…もう………無理、だから………」 「無理じゃないよぉ!! 諦めないで!! 私と一緒に生きて逃げて!! 何でも言う事聞いてくれるってッ……約束………したじゃない…………」 ぽろぽろと、彼女の目から涙が零れる 無情にも、彼の死の時間とジャガー人間は刻々と近づいてくる 「……悪ぃ……約束、守れそうにねぇ………もう、分かっただろ………早、く」 「嫌! 絶対嫌!! 光陽が来てくれないなら私だって逃げたくない!! ずっと、貴方と一緒にいる!!」 「っ……この、分からず屋……!! 何でそうまでして―――――」 「だっ、て……私っ……光陽のこと……好き、なんだもん………」 ハッとして目を見開く光陽 驚きを隠せない彼に構わず、美菜季は泣きながら話を続けた 「幼稚園のっ、時から………ずっと……ずっと、光陽のことばかり考えてた………… 光陽の両親が事故に遭って、貴方が一人ぼっちになったって聞いて 私はお父さんに頼んで、貴方は私の家にやってきた…… 最初は、全然心を開いてくれなかったけど…その内、どんどん打ち解けていって いつしか、本当の家族みたいに接してくれるようになった… 凄く嬉しくかった……あの時の笑顔、まだ覚えてるよ? また、貴方の明るい笑顔、見たいの……これからも………ずぅっと………」 しゃくり上げ、尚も大粒の涙を零し続ける その時彼は状態を起こし、数度咳をして喉に詰まった血を吐き出した 「っ…光陽……」 「ケホッ……俺だって…同じだよ……」 「え…?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/644
645: 俺は幻牙 [sage saga] 2011/11/14(月) 23:52:25.59 ID:s2ikNXWR0 「初めて会った時から……お前の事が好きだった…… あの時……お前とおやっさんに、誘われて……俺も、すげぇ嬉しかった…… 親父とお袋が死んで、心にぽっかりと空いた穴を埋めてくれたのは…お前だったんだよ……」 「…ぐすっ………こうよぉ………」 「今までありがとう、大好きだよ美菜季――――――さよなら」 最後の力を振り絞って、光陽は彼女を突き飛ばした あ、と言う間もなく、彼の身体をジャガーの爪が貫いた 「―――――――――――――――――――――!!!!!!」 美菜季の声にならない声が響いた 目の前で、愛する人を殺された悲しみ 目の前で、愛する人を殺した者に対する恐怖 そして、こちらに歩み寄る悪魔への畏怖 「ぁ……ぁぁ…………」 一歩、また一歩と下がり、その場から逃げようとするが 未だに、光陽への想いが彼女をそうさせない 遂に彼女は、足を縺れさせて尻餅をついてしまった 「……こ、来ない、で……」 彼女の声を聞いてか否か、げらげらと笑うように唸るジャガー人間 じゅるりと涎を舐め取ると、鋭い爪の生えた腕を振り上げた 「ひっ……!?」 終わった、と彼女は心底そう思った それでも心の何処かでは、強く願っていたのかも知れない ―――――――――助けて、と 願いが、叶う http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/645
646: 俺は幻牙 [sage saga] 2011/11/14(月) 23:53:18.43 ID:s2ikNXWR0 「ババリッ!!??」 断末魔をあげ、ジャガー人間の上半身が吹き飛んだ 美菜季が呆気に取られている間に、周りのジャガー人間達が次々と何者かに倒されてゆく 混乱している彼女だったが、僅かながらに、希望が芽生えた そして、その希望が姿を現したのだ 「――――――――あ、れ?」 それを見た時、彼女は絵本の世界―――否、ゲームの世界に入った気分に陥った 目の前に立っていた、というより“浮いて”いたものは、紫色の生き物だった 1.5メートルくらいの高さで、全体的に丸みを帯びていて、頭部と背中には突起がずらりと並んでおり、 身体の割に手足は極端に短く、申し訳程度に尻尾が生えている それが振り返ってこちらをぎろりと睨んだ 目は真っ赤で鋭く、口角を限界まで上げて白い歯を見せて怪しく笑っていた 思わず噴き出してしまいそうになりながら、まじまじと見つめて、ようやく彼女は、ぽつり、呟いた 「……ゲンガー?」 ゲンガー、シャドーポケモン 現在でも絶大な人気を誇るゲームシリーズ『ポケットモンスター』に登場する、ポケモンの1種 それが何故、彼女の前に存在するのか 考え始めようとするより先に、声が聞こえた 【…だから、俺はゲンガーじゃねぇっての】 両手で口を抑え、ぶわっ、と涙を溢れさせる美菜季 無理のない、その声は今彼女が失った筈の、愛する人のものだったのだ 「こう…よう………光陽!!!」 ぎゅっと強く、彼女はゲンガーを―――光陽を抱きしめる おわっ、とバランスを崩しながら、ゲンガーは一瞬だけ黒い霧のようなものに包まれると、 見慣れた人間の姿に――元の光陽の姿に戻った 「…ごめん、俺、生きてたみたいだ」 「どうして……あの時、貴方は…………」 「うん、俺も分かんねぇんだよなぁ… 気がついたらあの姿で、力が湧いてきて…………うん、やっぱり分かんねぇ」 「何にも、分からないの?」 「あぁさっぱりだ。寄りにも寄って、何でゲンガーなんだよ… ま、1つだけ分かってんのは…あいつらと戦わなきゃならねぇってことだけだ」 ぞろ、ぞろ、ぞろ…… 新たに、ジャガー人間の大群が現れる 脅える美菜季を庇うように、光陽は一歩前に立った 「こ、光陽……」 「安心しろ美菜季。お前は絶対に…俺が守ってやるから!」 光陽は再び黒い霧に包まれ、 その姿は、紫の生物―――ゲンガーのものへと変わった 【行くぞ化け物共……必殺!『シャドーボール』!!】 漆黒のエネルギーの塊がゲンガーの手から幾つも放たれて、 現れたジャガー人間に命中し、木っ端微塵に粉砕した 【美菜季を悲しませたお前達を…俺は絶対に許さねぇ! 俺はゲンガー…仲橋 光陽だ!!】 ...Next Story http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/646
647: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage saga] 2011/11/14(月) 23:58:08.62 ID:s2ikNXWR0 新参でーす、宜しくお願いしまーす ってのは嘘で 花子さんとかの人乙です〜 この狂科学者は某「エクスカリバー」の契約者と関係あるのかしらな まぁそれ以外にも沢山いそうだしなぁ(ぁ そして「赤マント」の詩は久しぶりですね、ちょっとドキッとしちゃったり やる気なさそうな人乙です〜 三尾たん可愛いし強いよハァハァ そして口裂けさん久しぶり過ぎるwwwwwww http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/647
648: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)(チベット自治区) [sage saga] 2011/11/15(火) 18:03:31.58 ID:K0o7xS2f0 思えばあれだな 都市伝説名を一切出してなかった……… 多分12月に書くであろう第2話で晒すんで、それまでお待ちを http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/648
649: ◆diJd5qb.8. [sage] 2011/11/16(水) 00:14:06.58 ID:DnzobbuH0 久しぶりに投下する気がする ということで投下します http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/649
650: ◆diJd5qb.8. [sage] 2011/11/16(水) 00:15:00.02 ID:DnzobbuH0 じゅるる、少しだけ粗暴な音で彼女が啜る 「成る程、貴方のとこにもこれが届けてあったと、面倒なことをするやつだねぇ」 「そうね腹立たしいわ、始めは誰かの悪戯かと思ったけれど、翌日にそれが本当だと判った」 じゅるる、行儀良く人物は啜る 近くの食堂コーナーにて、ラーメンを食す二人 華やかな模様の描かれた容器の隣に、怪しげな話の種達が置かれている 「選ばれたのよ、始めは意味が判らなかった、急に箱が周りを巻き込みながら潰れたのだから おかげで部屋は目茶目茶、気に入ってた机も今じゃ只のガラクタよ、全く」 「少なくとも安全な代物じゃ無さそうね、貴方のとこもそんな感じだったようだし、ロマンは有るのだけれどねぇ」 「・・・」 ずびっと同時に音が響き、一息、グビッと一杯水を飲みながら、人物が彼女の眼に焦点を合わせる 「貴方の所もそれに選ばれている、中に棒みたいなのが入っていたでしょう?」 「ああ、そういえば中に文字が浮かんでる奴が有ったね、何なのさこれ」 文字の刻まれた話の種の片割れに指が置かれ、人物に反応するかのように棒は 感応するよう朱色に輝き、液体の中に浮かぶ文字をなぞる 「よく判らない、唯、これらが一対で私達一人一人にしか反応しないことは判る、それに」 「それに?」 「之を挿した時変な装甲纏ったじゃない、私は狼の姿になった、貴方は何になったの?」 「さぁ、全体像を見たことがないからねぇ、使ったのも一回きり・・・多分狐だと思うのさ」 丸めた人差し指に顎を乗せて、思考する人物 「狐に狼、それなら之は何だと思う?」 懐からもう一本、黄色に発光する試験管 内部にはDの文字が浮かび人物のWの棒同様、異質な雰囲気を放つ、玩具っぽい所は変わらない 「一体、何本有るのさこの棒は、Wじゃあるまいし・・・」 「W、確かにアルファベットのWに見える、狼の頭文字もWね、たしか」 「いやちが・・・わないか、何でもない」 何か言いたげに口ごもる彼女、訂正しようとするが別にどうでも良い事だ 変な誤解を人物に与えなければ良いが・・・ 「ふぅん・・・まぁいいわ、その手の物には興味ないからね、子供じゃあるまいし」 「べ、別に、好きな物は好きなだけだよ、それと次私を見て子供と言ったら容赦しない」 「別に貴方のことを言っているわけじゃないでしょ」 話の種の造形のせいで彼女が何を言いたいのかがばれてしまった だが人物は気にせず話を続ける 「それで、貴方の棒のアルファベットは何なの」 「Fだよ、確か・・・狐?なのかねぇ、体が白くて尻尾が7本あった、首にも2本何か付いていたような」 首からマフラーを払うように腰から何か反り上がるように、椅子に座ったままジェスチャー http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/650
651: ◆diJd5qb.8. [sage] 2011/11/16(水) 00:16:00.10 ID:DnzobbuH0 何か指す穴は?ほら、棒を差して変な音声が出たでしょう、玩具みたいな声で」 「玩具みたい言うな、ロマンが失せる」 「ん?」 「・・・速く続けなさいな、W、F、Dで何が判るの」 嫌味たらしい笑みを浮かべる人物、彼女は嫌そうに目を逸らすと つまらなそうに眼を瞑り、再び棒についての詳細を話し始める 「Fで狐、Wは狼それでこれ、Dはドラゴン」 「ドラゴン、だからDか」 「オブジェの方では反応はしなかったけれど、挿したらドラゴンと発音されたの」 黄色の棒に記されているのは確かにDの文字、棒を指先で持ち上げ強調する 「他にこれを持っている人たちが居るかもしれない」 「・・・どういうことかもう少し詳しくお願い」 「貴方が装甲を纏った時、之を挿す穴がこのオブジェの他に有ったでしょう」 「随分それっぽく考えるねぇ、あまり興味無さそうにしてたのに・・・」 先程のを煽り返すように、頬を吊り上げ笑みを見せる彼女 人物は誤魔化すように咳払いをし、話を続ける 「それはさて置き、調べてみて少なくとも穴は9個づつ空いていた、貴方のも話を聞く限りオプションの数だけ穴が開いている」 「まさか・・・」 「だから、空いている分全部埋めるだけ存在する可能性が有る」 「意味も無く空ける訳無いだろうからねぇ、でも何の為に?」 コップに入った水を一口分飲み込み、真剣な表情で答える 「知らない」 「え?」 耳を疑う彼女、なら何故態々話し合ったのだろうか、まだ会って数分の仲にも拘らず 「なら何の為に呼び出したのさ、会って数分だってのに」 「情報収集と警告、そして見事に勘は中ってこの通り、之が何の為の物なのかを探る手掛りは少しだけど手に入った 貴方にとっても悪くは無い話だったでしょう、自分の過去に興味を持ったら偶然、他に居そうも無い同じ髪色の人を見つけて共通点を見つけた これを辿れば貴方の素性が見えてくるんじゃない?」 確かに、さほど気にしてなかったとは言え、生活の中で多少の疑問はあった自身の素性 全く手掛りがない中、こうして偶然にも情報が手に入ったのだ 少し出来過ぎていたとしても、今まで知りたかった違和感を暴く断片がその先に有るのなら 「確かに手掛りは手に入った、今日帰ったら家のにでも相談してみる、それでもう一つ、警告って何さ」 「今後余りそれに頼らない方が良い、この先のことを考えるのなら」 「どういう事さね」 「そうね、その時が来たら教えるよ」 席を立ち、食器を片付けに行く人物と彼女、歯切れの悪い答えに後姿が何かを隠すように怪しげに感じられた 「そうね、念の為名前教えとく」 そして何事も無かったかのように人物は戻り帰り支度をする http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/651
652: ◆diJd5qb.8. [sage] 2011/11/16(水) 00:18:03.14 ID:DnzobbuH0 「文よ、覚えておいて損は無い筈よ」 「咲、それが名前さね、唯一覚えてたのもそれ」 「益々似てるのね・・・私たち」 お互い荷物を手に取り別れの挨拶代わりに、互いの名前を教えあう 去り際に文と名乗った少女は、二手に別れ一時の別れである合図をお互いの背中で語った 「まず一人見つけた次の奴も探さないと、まだ数日持つだろうけどあの子はどうするのか」 何処か深刻そうに自分のオブジェを眺める文、怒りを表すようにオブジェを強く握り締め睨みつける 「まぁいいや、そろそろ造らないとこっちも持たない・・・余計な邪魔が入らなければ良いけど」 ・ ・ ・ 午後昼間の真っ只中、帰る人行く人も疎らな時間、怪しげな路地裏に入る荷物を持った小さな影 普通なら誰も立ち寄りそうにも無い何処か物騒なその道を、慣れた様子で平然と進んで行く 暫く進んでゆくとその冷たい場所に不釣合いな格好の、雰囲気が暖かい綺麗な建物が建っていた 「創真ぁ、ただいまー」 明かりで照らされた咲は、この場所では奇妙である建物に嬉しそうに入っていった ・・・少し靴が多い気がするが気のせいだろう、それより先に気になる事が有るらしく 「あぁ、お帰り」 「所でこれ何に使うのさ、家じゃいろいろと厳しい気がする」 咲は突っ込んだ 「なに、問題は無いよ、明かりなら有る」 「電気代は?育てるとなると結構馬鹿にはならない気がするけどねぇ」 「電気代なら心配要らないと君も判っているだろう、全部実家負担だ・・・清々するね」 少し自慢げに話す創真、その言い草には何処と無く愚痴のようなものも混じっているような気がする http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1318689302/652
上
下
前
次
1-
新
書
関
写
板
覧
索
設
栞
歴
あと 350 レスあります
スレ情報
赤レス抽出
画像レス抽出
歴の未読スレ
AAサムネイル
Google検索
Wikipedia
ぬこの手
ぬこTOP
0.013s