[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part4 (1002レス)
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954: さよなら  、また    ◆W5H6Y5Rl3M [sage saga] 2011/12/21(水)23:48 ID:XAAGwKPNo(5/6) AAS
 いつものようにソファに転がっていた『友達』が、何かを察知したようにぴくんと身動ぎする

「どしたの?」
「なんか失敗したっぽい」
「ほら、だから言ったじゃない。横着してると駄目だって」
「葉鳥のターゲットがおかしいんだって、きっと」

 ぶつぶつと呟きながら、『友達』はソファから身を起こす

「ちょっと様子見てくるね」
「ん、気をつけてね」
「まあ僕が気をつけるようなものなんて、そうそう無いけどね」

 葉鳥の認識内、主に視界の中では『ただ一人の友達』であるため、『何処にでも居て何処にも居ない』という能力は使えない
 面倒臭そうに玄関から出て行く『友達』に、葉鳥はいつもの調子で声を掛ける

「あ、帰りに何か飲み物買ってきて。炭酸じゃないやつ」
「はいはい。僕のも何か買ってきていい?」
「合計1000円ぐらいまでで」
「了解」

 ただ近所のコンビニに買い物にでも行くような調子で、鼻歌混じりで部屋を出る『友達』
 マンションを出た辺りで、周囲の都市伝説の気配を探ろうとした、その時

「よう、久し振りだな」
「え?」

 その声には聞き覚えがある
 かつて自分を探っていた黒服の女を始末しようとした時に、割り込んできて邪魔をした黒服の男、広瀬宏也
『友達』の思考が、止まる
 この男は『友達などいない』と公言しており、彼の前では自分は存在しないはず
 意図的に近付いてこなければ出会う事は無く、認識する範囲に入った瞬間に自分はどこか別の場所に移動しているはずなのに

「やあ、友達ができたのかい?」
「まさか。お前こそ、友達が居ない奴のところにも現れるようになったのか?」

 目の前の男が、葉鳥と同じように自分を『ただ一人の友達』として認識している様子も無い
 そして『友達』は、一つの可能性に思い至り
 はっとしたように頭上を見上げた
 そこには、ベランダから身を乗り出して自分を見下ろしている葉鳥の姿

「出会う事は無いと思ってはいたがね、出会えるなら話は別だ。お前さんの被害者は相当な数が居るし、まあ黒服としての仕事をさせてもらおう」
「ちょ、待っ、て」

 その言葉は目の前の黒服に向けられたものではない
 その声が届くはずもない、遥か頭上から見下ろしている葉鳥に向けられたもの
 葉鳥に認識されている限り、葉鳥の『ただ一人の友達』として存在は固定されてしまっているのだから

「待てって言われても、俺も割とスケジュールが押してるんでな。ヤバい奴を見逃してる余裕なんざ、これっぽっちも無いんだよ」

 あっさりと
 とてもあっさりと
 この町に居座る最強にして最悪の化物は、ばらばらの細切れにされて消滅した

「随分あっさり倒せたな。俺の事を知ってたようだし、あの時の奴と別って事は無さそうだが」

 あまりの手応えの無さに首を捻りながらその場を後にする宏也に、気付かれる事なく
『友達』が消え果た場所へ、ベランダから軽く手を振っている葉鳥

「まあね、ダメだったらこういう風になるように、仕込んではいた訳だけど」

 葉鳥にとって、『友達』は間違いなく親友と言っていい存在だった
 ただそれは、どうでもいい他人というドミノ牌と、大事な親友というドミノ牌というだけの、絶対的にして無意味な違いだけ
 葉鳥にとって他人は等しく価値が無いという認識なのではなく、価値は様々にあった上で等しくドミノ牌であるという認識なのだ

「君と過ごした日々も、君を巻き込んだドミノ倒しも楽しかったよ。じゃあね、僕の『ただ一人の友達』」

 そう言って葉鳥は、冬の寒空に身を震わせて、温かい部屋の中へといそいそと戻っていき

「あ、買い物どうしよう。自分で行かなきゃいけないや」

 何事も無かったかのように、日常生活へと戻っていったのだった
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