[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part5 (1002レス)
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(1): 単発ネタ◆W5H6Y5Rl3M [sage saga] 2012/01/14(土)21:13 ID:bxxIIiSso(2/3) AAS
「今一度、報道を利用すれば、私の能力で逮捕してみせる。全国放送規模の報道で、『逮捕された』という情報を流せば、どこに隠れている犯罪者でも二十四時間以内に逮捕ができる。それが『高○名人逮捕説』の能力だ」

 想像以上の効果的な能力に、青年は一瞬絶句し

「おいおい……何でその能力、もっとバンバン使わないわけ?」
「一介の刑事に、そうそう報道機関に働きかけて、未確定の情報を流させる事はできんよ。都市伝説の契約能力など、契約者しか理解しないだろうからな」

 その言葉に、青年はやれやれと肩を竦める

「今回はできんの?」
「今回だけだがね」
「何でだよ」
「金さ」

 老刑事は、自重気味に笑った

「マスコミを動かすにゃあ金がいる。定年間近のジジイが用意できたのは、たったの一回分だけだ」
「じゃあ最後の質問だ」

 笑みの消えた顔で、青年は老刑事をまっすぐに見据える

「何で、この事件を解決しようと選んだ?」
「一度関ったから、じゃあ駄目かね」
「ふぅん……それじゃま、決めるのはそっちだな」

 青年はそう言うと、それまで黙って話を聞いていた夫婦を振り返る

「こっちの刑事さんに任せりゃ、逮捕される。ただし犯人は……初犯で計画性は無しときたらまあ死刑は無ぇわな、加害者様の人権が大事で大事で仕方ない今の日本の司法じゃな」

 夫婦は、やや狼狽した様子で青年と老刑事を交互に見る

「刑事さんを突っぱねて俺に任せたままにしておけば……一週間後、犯人は罪の報いを受けてあの世逝きだ。勿論、殺すのは俺でもあんた達でもない。人一人殺して逃げ回ってる奴が、逃亡先でたまたま死ぬだけ、有る意味で天の裁きってやつだね」

 あからさまに死を誘う青年の言葉に、老刑事は何も反論しない

「あんた達は選ぶわけじゃない。ただ、どうあって欲しいかを口にすればいい。娘を殺した奴が、どう裁かれるべきかを」

―――

 逃亡を続けた殺人犯の最後は、あまりにも呆気なかった
 ネタの無い頃合だったワイドショーは大々的に食いつき、その有様は一週間が経った今でも世間を賑わせている

「マスコミは結果にだけはよく食いつくね。警察の捜査の邪魔ばっかりしやがる癖にな」

 ワンセグでニュースの映像を見ながら、青年は小馬鹿にしたように笑う

「あんたも大変だったね」
「私は金を出しただけだよ。犯人が捕まって欲しいと願ったのはあの子の親だし、報道での呼び掛けで集まった情報で動いたのは潜伏先の所轄の警察達だ」
「あんたの能力が無けりゃ、その情報も入らなかったり、警察がドジ踏んだりしたかもしれないだろ?」
「私の契約能力なんてもんが、ただの妄言かもしれんだろう?」
「だが、あんたは経過を語り、結果が残った。まあ今回は俺の負け……いや、まあポイントでいきゃあ勝ちなのかな」

 青年が見ていたワイドショーの内容は、先程までの殺人犯逮捕のものとは比べ物にならない大騒ぎのものだった
 逮捕された男の親族だったという大物政治家の急死に、マスコミはこぞって喰らいついていたのだ
 その大物政治家は一年程前に違法な献金の問題で公の場から姿を晦ましており、様々な方面から手を回してマスコミ各所を黙らせていたのだが

「お前さんが狙ってたのは、最初からそっちだったのかい」
「献金問題のついでに親戚の犯罪の話題まで押さえつけてたんだ。警察にまで圧力を掛けて、担当の刑事を捜査から追いやったりもしてたしな」
「罪の無い者や、罪のはっきりしない者には手を下さないんじゃなかったのか?」
「はっきりしてるぜ? あのジジイを告発しようとして変死した秘書、俺の親父だもん」

 そう言って青年はけらけらと笑う

「まあ、大事な証拠を息子に盗み見されるような警戒具合じゃ、当然の結果だったのかもしれんけどね。だからまあ、アレだ。『被害者遺族の意思確認』はしっかりしてあるぜ?」
「殺人事件の犯人は、ついでだったとでも言うのかい」
「まとめて片付けた方が後腐れ無いかなと思っただけだよ。片方だけ始末すると、関連報道が賑わって狙うチャンスが先送りになるしな」

 ワンセグの映像を切り、携帯電話をポケットに押し込み
 青年は老刑事の肩をぽんと叩いて、そのまま擦れ違うように歩いていく

「お前さん、その都市伝説との契約を解除する気は無いのかい」
「警察と裁判所がもっとまともに機能するようになったら、そもそも使う機会は無いかもな」

 ひらひらと手を振りながら去っていく青年を、老刑事は黙って見送る
 それは青年の行動を認めたためか、己の不甲斐なさを認めたためか
 老刑事は何も語らず、静かにその場を去るのみだった
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