[過去ログ] 「都市伝説と戦う為に都市伝説と契約した能力者達……」 Part5 (1002レス)
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489: 彼はこうして片目を失った 2012/01/15(日)21:26 ID:F+d00OjT0(1/2) AAS
あの幼い少年を養子として引き取った時に気がつくべきだった。
あの男が、自分の損得でしか動かない男がどのような意図を以て私にこの少年を預けたのか。
「お母様、見てください。この本に書いてあった通りにしたら“契約”というものができました。これで僕も魔法使いですよね?」
右の眼窩から血を流しているのに笑う少年。
「申し訳ございませんお母様、床はすぐにきれいにします」
少年はまるで当たり前のように自分の右手を治めるべき目玉の消失した眼窩に当ててぼそぼそと小さく呟く。
すぐさま血は止まり、少年の青白い顔も見事に健康的な色に戻っていく。
しかし、彼の目はもう無い。
「どうしたのですかお母様?」
「あれー?二人共また何か……」
魔術の練習を終えて部屋から出てきた娘が悲鳴をあげる。
「お姉ちゃん見て見て!本に書いてあるとおりにしたら“ルーン文字”と契約できたよ!」
娘と少年はそのまま気絶してしまった。
私はこの少年をとりあえず医者の所につれていくことにした。
「やはりそうなりましたか……」
嬉しそうに笑う医者、この男が私にこの子供を養子にするように依頼したのだ。
魔術の手伝いには丁度いい頭の良い子だと。
母親を亡くして世話できる人間が居ないのだと。
容量も中々、言葉遣いもしっかりしていて私は魔術の助手に二重の意味で向いていると思って子供を引きとった。
一つ目は純粋に助手として契約者としての能力、二つ目は古くから契約者を多く輩出している家の子供ということで種馬としての役割。
「どういうことかしら?誰にも教えられずルーンが読める子供なんておかしいわ、異常よ。貴方が仕込んだのでしょう!
あんな幼い子供にこんな酷い真似させるなんて信じられないわ!」
「知りませんよ、私も確かにルーンは使いますが……」
「じゃあなんだって言うのよ!他所様から預かった子供をこんなにしてしまって、どう責任をとれば良いの!」
「あー、そこらへんも含めて今彼の実の親を呼んでます」
「え?」
ちょ、ちょっとまって。心の準備が……心の準備がまだできてない。
土下座で済まないレベルだわ、どうしましょう本当に一生をかけて償うくらいじゃないともう……
実の娘もちゃんと教育できず、他所様から預かった子供は傷物にしてしまうし……
「あー、ヨツバさんですか?」
「この度は本当に申し訳ござい……」
「いや、あいつが勝手に読んだんでしょう?その本。完全に自業自得ですよ。片目を代償にして契約もきっちり成立しているならたいしたもんです。さてあの年でどれほど強くなったか……」
そう言って少年の実の父親はニヤニヤと笑っていた。
……バケモノだ、何故笑っていられるんだ?
「俺の知り合いにも剣術の修行中にオヤジに片目潰された奴が居たんですよ、いや強かったなあ……」
「明久さん、それよりも彼が何故ルーン文字に関する本が読めたか説明を」
「おっとすまねえ」
その少年の父によれば、少年は“異常”に言葉が早く、大人が読むような本もパラパラと眺めるだけで理解してしまう上に外国語まで教えるとすぐに覚えるのだそうだ。
だから自分で本を読んで“なんとなく”で読めてしまったのではないかとのことだった。
異才だった。魔術関連の都市伝説と契約した人間や私達のような都市伝説“魔女”の家系にあるものからすれば喉から手が出るほど欲しい才能だ。
サンジェルマンが私にこの少年を送りつけた理由はそれか。
私の家は確かに日本に帰化した魔女の一族で、ルーンや密教の真言、さらにはクトゥルフに関係する魔術書など解読自体難しい本が大量にある。
それらを全てあの子供に解読させればサンジェルマンは知識を得られるし、あの男は自分の息子が強大な魔術師になると思ってるのだろう。
この二人は……子供のことをなんだと思っているんだ。
だが怒った所でしかたない、何の得にもならないことと一族を大切にすることが魔女の流儀。
それに感情に任せて怒鳴り散らすほど私は子供ではないのだ。
その場を丁寧に辞去して私は少年を家に連れ帰り、尋ねた。
「なんであの本を読んで儀式の真似をしようと思ったの?」
「だって、読んだら褒めてくれると思ったんだもん
本をいっぱい読んでその話をして褒めてくれるのってお母様だけだったんだもん」
私は何も言わずに彼を抱きしめた。
その日から彼は手伝いの少年などではなく、本当の意味で私の息子になったのだと思う。
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