[過去ログ] 勇者「王様が魔王との戦争の準備をしている?」 (970レス)
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1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(北海道) 2012/07/11(水)18:07 ID:yFuxTM2h0(1/67) AAS
道具屋「あくまで噂だけどな。ウチにも聖水や満月草の注文が大量に入った。信憑性はある」
道具屋「兄ちゃんも、下手に旅なんかするよりは、兵士として雇ってもらったほうがいいかもな。はっはっは!」
道具屋「で、薬草と毒消し草だ。ほら」
勇者「ありがとうございます」
道具屋「このご時世に二人旅とは大変だな。しかも、随分と別嬪さんじゃないか」
省11
951: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:15 ID:wBktaGLT0(13/26) AAS
グローテ「行くぞ、クレイア!」
クレイア「はい、師匠!」
莫大な魔力を感じた。それは当然九尾も感じたようで、地を蹴って横っ飛び、その後空間転移で私のそばまで戻ってくる。
虚飾に満ちた空っぽな世界に、一瞬、光が満ちた。
グローテ、クレイア「「ザオリク!」」
九尾「……」
アルプ「……」
省6
952: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:16 ID:wBktaGLT0(14/26) AAS
みな甲冑を身に着けていた。しかしその意匠はばらばらで、同一国家なら統一されているはずの紋章すらばらばらである。
周辺諸国の連合? そこまで考えて、固定されている首を脳内で横に振った。あれは事実として、同一国家の兵士じゃない。
ならば一体何か。老婆はザオリクで、一体どんな集団を蘇生させたのか。
グローテ「さっき、たった二人と言ったな。わしらは二人ではない! わしらの目的のために犠牲になった者たちが、全員背後にいるのだ!」
グローテ「わしが殺したその数一六八九人! これだけの人数を――いや! これだけの意志を相手に、それでも九尾、お前はまだ軽々と勝てると言うか!」
老婆が眼を血走らせて叫ぶ。魔力の消費が尋常ではないはずだ。これだけの魔法……ザオリクとは言っているが、厳密には完全な蘇生ではなく、召喚の類。
この陣地内でのみ、彼らはもう一度生を受けられる。
がふ、と音を立てて、女性が血を吐いた。地面についた両膝ががくがく震えている。完全に魔力枯渇の症状だ。
老婆はそれよりも比較的症状は軽微だったけれど、血涙を垂れ流しながら歯を噛み締めている。力を籠めねば生きていけないとでもいうつもりだろうか。
省4
953: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:17 ID:wBktaGLT0(15/26) AAS
いや、何よりも人外なのは、二人の凄絶なまでの意志。あそこまで体を傷つけても、私たちを倒さなければいけないと思える精神が、すでに人のものではない。そして目的は自分たちのためではないというのだから驚きだ。
誰かのために、ましてや国のために全身全霊を捧げられる人間が、どれほどいるというのか。
そんなのいるはずがないと思う。思った。思っていた。事実、私はずっとそうだった。ずっと私の娯楽のために全身全霊を捧げていて、それ以外は知ったこっちゃなかったのだ。
しかし、どうだろう。勇者は、少女は、何よりあの腹立たしい狩人の娘は、そして目の前にいる二人の女は、まるで自分のことなど意に介さない。人間とは果たしてそんな生き物だったか。私の人物評が、間違っていたのか。
楽しい。
心の奥からふつふつと込み上げてくるただ一つの感情がそれだった。
真っ黒な色。翳っているのではなくて、もともと漆黒なのだ。光を反射することしかない、どす黒さ。
省2
954: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:18 ID:wBktaGLT0(16/26) AAS
四肢はまだ固定されている。かなり頑丈な封印だ。濃縮された固定の陣地。やはり、あの二人はどっちもかなりの手練れらしい。
だけど。
アルプ「私の衝動を止められるなんて、馬鹿言っちゃだめだってば!」
私でさえ止められないというのに。
寧ろこの程度で止めてくれるならどれだけ幸せだったか!
ぶちぶちと関節が音を立てて引き千切れていく。痛い痛い痛い痛い! 肺から息が全部毀れていく!
だけど、これで抜けた!
既に眼前では軍勢が始動していた。とてつもない圧力を持った個々が、集団として九尾に襲いかかろうとしていたのだ。
戦闘には中年男性。先ほど老婆が持っていた彎刀を握り締め、苦い顔をしながらも、真っ直ぐに視線は九尾。
省5
955: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:18 ID:wBktaGLT0(17/26) AAS
火炎が手のひらに集まっていく。
「全軍、よぉおおおおおおおおおい!」
後方に控えていた儀仗兵たちが障壁を築いた。数百人がまとめて作った、まさに戦術級の特大障壁。九尾でもこれを破壊するのは難しい、か?
アルプ「だけど!」
あぁ――楽しい!
デュラハンみたいに戦闘狂いなつもりはないんだけどなぁ!
省7
956: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:19 ID:wBktaGLT0(18/26) AAS
高射砲撃が九尾を狙う。同時に打ち上げられた数人の魔法戦士が足元に起動力場を生み出しながら、それを蹴って九尾へと迫った。
二人の首が一瞬にして落ちる。それでもあちらに戦意の喪失は見えない。寧ろ発奮を促したかのようだった。
アルプ(そうかい、そこまで私らは、敵ってことかい)
そうじゃなくちゃ「面白」くない。
ルニ「お噂はかねがね」
優男風の青瓢箪が言った。瓢箪が喋るほどに世界は進んでいたらしい。
省6
957: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:20 ID:wBktaGLT0(19/26) AAS
毒霧の噴霧。羽ばたきながらそれを全体に拡散させていく。高射砲撃をなんとか回避しながら。
ルニ「ぐっ……」
青瓢箪の胸を九尾の腕が貫通する。向こう側にとおった九尾が握っているのは、恐らく彼の心臓だ。
青瓢箪が倒れ、九尾はそれを打ち捨てる。
そこへさらに襲いかかる二人。手にした短刀が僅かに九尾の髪の毛に触れていくが、次の瞬間にはその腕が根元から消失する。そうしてバランスを崩し、地面へ落ちた。
九尾「老婆、貴様は本当に見境がないな!」
省4
958: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:21 ID:wBktaGLT0(20/26) AAS
炸裂。
大量の肉片が長い滞空時間を得て、ぼたぼた降り注ぐ。
九尾「き、さまぁ……!」
イオナズンを唱え、なんとか制空権を確保しなおした九尾は、這いつくばりながら舌打ちをした。
九尾「バギクロス!」
省7
959: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:21 ID:wBktaGLT0(21/26) AAS
ビュウ「ポルパ! そっちはどうなってる!」
ポルパ「今のバギクロスで負傷者多数! でも、死んだ奴は少ない! まだいける!」
コバ「あまり無茶な攻めをするな! 相手は九尾の狐と夢魔アルプ、城砦を落とすように攻めるんだ!」
ルドッカ「教官、七時の方向よりアルプが突っ込んできます!」
コバ「全員気張れ! 間違っても目を見るんじゃあないぞ!」
省8
960: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:22 ID:wBktaGLT0(22/26) AAS
アルプ「燃えて狂って死んじゃえ!」
眩惑の炎を投下する。
それはれっきとした炎だけれど、焼くのは肉体よりもむしろ精神。じりじりと蝕むように、相手の心を焦がしていく。
頭が痛い。息切れが激しい。視界がちかちか瞬いて、今自分がどの高度を飛んでいるのか判然としない。
それでも前方は見える。宙に浮かんだ魔方陣から氷が生成されていて、それはきっちりと、ざくざく人間をなぎ倒している九尾に向けられている。
九尾に群がる大軍。さまざまな角度から迫る刃を、九尾は紙一重で回避し、もしくはなんとか致命傷を避け、手の一振りで五人の頭をまとめて潰す。
だけどその後ろにも兵士は控えている。その後ろにも、その後ろにも、その後ろにも。
唯一大立ち回りを演じているのは、人間では二人。彎刀を持った中年男性と、九尾を叩き落とした青瓢箪。彼ら二人が跳びぬけて強い。
九尾が負けるとは到底思えなかった。ただ、この先の見えない戦いが、まるで人類の総力を結集してぶつけてきたような数の暴力が、九尾を追い詰めることはあるとも思った。
省4
961: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:23 ID:wBktaGLT0(23/26) AAS
衝撃を体が襲う。不時着ではあるが、チャームで全てを誤魔化して、敵軍の中央へと落下。周囲数メートルの兵士が肉片と化したのがわかる。
降り注ぐ血液と肉片の驟雨の中を、私は一息で加速した。チャームと炎を振りまきながら、ただひたすらに同士討ちを狙う。
制御を失った頭上の氷塊が落下し、人間を、そして私の羽を穿った。もう空も飛べない。逃げることはできない。
もとより逃げるつもりもない。
例え魔力が枯渇していたとしても、人間より遥かに高い膂力を私は有している。なんたって魔族なのだ。魔王の眷属。身体スペックは段違い。
千切っては投げ、千切っては投げ……そんなふうにいっていたかは実際怪しいけれど、私は剣先を掴み折り、相手の腕を捥ぎ、腹を抉って、ひたすらに戦い続ける。
命の削れていく音が聞こえる。
ごりごり。
ごりごりごりごり。
省1
962: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:24 ID:wBktaGLT0(24/26) AAS
これは決して懺悔なんかじゃあない。私は九尾に許してもらいたくて、申し訳なくて、だからこんな特攻をしかけているのでは、決してない。
これは純粋な善意なのだ。私が善意だなんて、ちゃんちゃらおかしい。所詮衝動の前でははかなく消えてしまう灯のくせに、確かにその感情は、私のこのクソみたいな魂の中に息吹があるのだ。
胸を掻き毟りたい。そうして心臓を抉った先に、私の許されざる魂があるはずだ。それさえなければ、もしくは感情さえなければ。
いっそ魔物になりたかった。どうしてこんな、感情の欠片があるんだろう。
どうして両方を持ち合わせてしまったんだろう。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう!
辛いよぅ!
省4
963: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:24 ID:wBktaGLT0(25/26) AAS
グローテ「国のために戦い、死んでなお、国のために儂に力を貸してくれるのじゃ。それくらいはするさぁ」
老婆の声が聞こえた。その姿こそ見えないが、声
は……死にそうだ。私といい勝負かも。
そうか。死者は、死んでからも、国の行き先を憂うか。国のために再度死ねるか。
なら、きっと私も同じ。
私は九尾を憂うだろう。だからこそこんなことを、
アルプ「ひゃはっ! こんな無駄なことをして、馬鹿なやつだよ私ってばさ!」
さようなら、九尾。
私の最高の……友達? わかんないや。ひゃはっ。
省5
964: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/13(水)11:26 ID:wBktaGLT0(26/26) AAS
お待たせしました。
間が空きましたが、今回の更新は以上となります。
次回更新の際には新スレ建てようと思ってますので、よろしくお願いします。
965: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)11:28 ID:mcXeQgqZo(1) AAS
裸ネクタイ靴下正座して待ってた甲斐があった
乙乙
966: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)13:10 ID:7X4wSLEWo(1/2) AAS
次スレ誘導頼む
967: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水)13:16 ID:7X4wSLEWo(2/2) AAS
てか九尾ちゃっかりメドローア使えんだな
968: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/15(金)17:50 ID:0g3In59gO携(1) AAS
たっぷり更新すぎて乙が遅れちまったぜ(`・ω・´)キリッ
969: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/18(月)02:15 ID:gOTF/Q3go(1) AAS
正に乙
略して正乙
970: ◆yufVJNsZ3s [saga] 2013/03/20(水)02:03 ID:3mmpyc380(1) AAS
更新しました。それにつき、2スレ目建てました。
vip2chスレ:news4ssnip
2スレ目突入&三十万文字突破なんて、当初のプロットからは考えもしてませんでした。
読んでくださってる方々の乙、感謝してます。これからもよろしくお願いいたします。
展開とか設定の疑問があれば、スレの消化ついでに受け付けます。考えてないことも多いと思いますが。
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