[過去ログ] 佐藤心、安部菜々「「朧月」」 (19レス)
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1: [sage saga] 2017/02/01(水)17:55 ID:Rb1owe170(1/18) AAS
アイドルマスターシンデレラガールズ、しゅがーはぁとさんこと佐藤心さんと、一応ウサミンこと安部菜々さんのお話です。

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2: [sage saga] 2017/02/01(水)17:56 ID:Rb1owe170(2/18) AAS
「お疲れ様です☆ 菜々先輩♪」

「はい! はぁとちゃんもお疲れ様です♪」

 菜々先輩とのミニライブを終えて挨拶を交わす。今でもまるで夢みたいに思える。

「いやー、こうして菜々先輩と一緒に歌えるなんて……☆ はぁとは幸せものだぞっ☆」

 憧れの菜々先輩とこうして一緒のステージに立つなんて、少し前のはぁとでは考えも出来なかった。
省7
3: [sage saga] 2017/02/01(水)17:56 ID:Rb1owe170(3/18) AAS
「じゃあ、俺は外に居るんで着替え終わったら呼んでください」

「「はーい」」

 菜々先輩と私は声を揃えて返事をする。次の仕事は握手会だったかな。

「いやー、それにしても売れっ子って大変ですね☆」

「そうですねぇ。でも、こうしてたくさんお仕事もらえるなんて、昔を考えたら本当にありがたいです」
省6
4: [sage saga] 2017/02/01(水)17:57 ID:Rb1owe170(4/18) AAS


 一日の仕事を終え、プロデューサーの運転で事務所に戻る。さすがに朝から働きづめだと疲れてしまう。

 菜々先輩も同じなのだろう、先ほどからぼーっと外を眺めている。

 もうちょっと元気があればいつものようにおしゃべりに花を咲かせるのだが、さすがに今日はそれも難しそうだ。

 プロデューサーもこんなはぁと達を気遣ってか、無言で車を走らせている。
省6
5: [sage saga] 2017/02/01(水)17:58 ID:Rb1owe170(5/18) AAS
「い、いえ……なんか、泣いてたみたいだから……」

「え?」

 私がそう言うと菜々先輩は手で目の端についた水滴を拭う。

「あはは……ナナも疲れてたみたいです。あくびしちゃっただけですよ」

「そうですか?」
省4
6: [sage saga] 2017/02/01(水)17:58 ID:Rb1owe170(6/18) AAS


「ねぇ、プロデューサー」

「はい?」

 あの帰りの日から半月ほどが過ぎた。あれからもしょっちゅう私は菜々先輩と一緒に仕事をしているのだが、どうも最近の菜々先輩はちょっとおかしい気がする。

「菜々先輩ってさ、なんかあった?」
省7
7: [sage saga] 2017/02/01(水)17:59 ID:Rb1owe170(7/18) AAS
「心さんは菜々さんに違和感を感じるんですか?」

「うん……ちょっと具体的にどこが、とは言えないんだけど、こう、何ていうか寂し気に見えるんだよね」

「最近、俺も忙しくて菜々さんとはあんまり話が出来てないですからね……。もしかしたら何か悩みでもあるのかもしれません」

 悩み……か。

「俺もなんとか時間作って菜々さんと話してみるんで、心さんも気にかけてもらっていいですか? 悩みがあるなら聞いてあげてほしいんですけど……」
省2
8: [sage saga] 2017/02/01(水)17:59 ID:Rb1owe170(8/18) AAS


 しかし、菜々先輩にどれだけ聞いても「悩みなんてないですよ」とか、「そんなことないですよ」なんて返事しかもらえなかった。

 プロデューサーも同じみたいで、何にも進展はしなかった。

「「うーん……」」

 二人揃って事務所で腕を組み、頭を捻る。捻ったところで良い考えは浮かばないのだが、何もしないよりはマシだろう。
省5
9: [sage saga] 2017/02/01(水)18:00 ID:Rb1owe170(9/18) AAS
「なんだったかな……たしか、ウサミン星がどうのとか、時間がどうのとかって言って頭抱えてたはず……」

 ウサミン星。言わずもがな、菜々先輩の出身地という設定だ。

「ウサミン星って事は自分のキャラに悩んでた感じ?」

「あー……確かそんな感じです。デビューしたての頃はあまりのイロモノ扱いに悩んでたみたいで、その時にあんな顔をしていたんじゃなかったかな……」

 となると、今も何か自分のキャラ設定に悩みを感じているのだろうか。
省12
10: [sage saga] 2017/02/01(水)18:03 ID:Rb1owe170(10/18) AAS


「さて……ついたぞ☆ ウサミン星☆」

「ち、違いますから! ここは千葉ですから!」

 私の軽口に菜々先輩が大袈裟な身振り手振りで訂正をする。

 夕方から始まるトークイベント。菜々先輩も私も午前中は別の現場で仕事を終えてからだったので、今日初めて顔を合わせる。
省12
11: [sage saga] 2017/02/01(水)18:04 ID:Rb1owe170(11/18) AAS


「……て、聞いてます?」

「……え? あ、ごめんなさい……」

 しかき、さっきまでの菜々先輩はどこへ行ったのやら。控室に入ると菜々先輩は途端に黙り込んでしまった。

 私がなんとか元気を出してもらおうとあれこれ色々と話しかけてみても生返事ばかり。
省7
12: [sage saga] 2017/02/01(水)18:05 ID:Rb1owe170(12/18) AAS
「ウサミン星に……帰らなきゃいけなくなりました」

 顔を上げた菜々先輩から出てきた言葉はまったくの予想外なものだった。

「は……?」

 まったくの予想外の言葉にうまく声が出なくなる。ウサミン星に帰るって……ここ千葉だし、帰ってきてるんじゃ……?

「あはは……えっと……引退するって事ですか?」
省8
13: [sage saga] 2017/02/01(水)18:05 ID:Rb1owe170(13/18) AAS
 駄目だ。どうしてかはわからないけど、これ以上、菜々先輩にしゃべらせちゃいけない。

「でも、ほんの少しだけワガママを許してもらって、次の満月までは猶予を貰えたんです」

「次の……満月って……」

「はい。今日です」

 今まで見た事ない程に、美しく儚く、そして寂しそうな笑顔を菜々先輩は浮かべていた。
省8
14: [sage saga] 2017/02/01(水)18:06 ID:Rb1owe170(14/18) AAS
「心さーん。そろそろですけど、準備出来てますか?」

 プロデューサーがそう言いながら控室に入って来た。

「……! ど、どうしました!?」

 一体そんなに慌ててどうしたのだろうか。何かに躓いたのかよろけながら駆け寄ってくる。

「どした?」
省4
15: [sage saga] 2017/02/01(水)18:07 ID:Rb1owe170(15/18) AAS
「あれ……なんでだろ……」

 拭っても拭っても涙はとめどなく流れてくる。原因がわからない。

「なんで、はぁと泣いてるんですかね?」

「心、さん……?」

 私が声をかけた方には何もなかった。引かれた椅子がひとつあるだけで、他には何もなかった。
省9
16: [sage saga] 2017/02/01(水)18:09 ID:Rb1owe170(16/18) AAS


「じゃ☆ お疲れ様っ♪」

「はい、お疲れ様です。気をつけて帰ってくださいね。

 今日も楽しく仕事を終え、家路に向かう。いつもはプロデューサーが送ってくれるのだが、たまにはこうして歩くのも良い物だ。

 だいぶあったかくなったし、そろそろ春物を出す頃かもしれない。
省8
17: [sage saga] 2017/02/01(水)18:11 ID:Rb1owe170(17/18) AAS
 ……でも、顔はあの朧月のようにかすんでぼやけているが、声だけは段々とはっきり思い出す。

『はい! はぁとちゃんもお疲れ様です♪』

『ナナもですよぉ〜。はぁとちゃんと一緒だと楽しいですからね!』

「あぁ……そうだ……菜々先輩……」

 声をはっきり思い出すと、今度は朧月のようだった顔も段々鮮明になってくる。
省10
18: [sage saga] 2017/02/01(水)18:16 ID:Rb1owe170(18/18) AAS
以上です。

ようやく今年入ってまともなのが書けた気がします。
前に書いてから一ヶ月ほど空いたのは久々でした。
書かなきゃ衰えるので何かしらは常に書いていたかったのですが、まったく書けなくなってて困りました。

ともあれ、最近暖かいですし、春はもうすぐ先まで来ているのかも知れませんね。
月は色々な顔があるので見ていて飽きないですよ。四季それぞれに月の良さがあります。名月は秋だけじゃないのです。

では、お読み頂ければ幸いです。依頼出してきます
19: 2017/02/13(月)03:21 ID:Nb1J8qxwO携(1) AAS
しゅがみんSS泣ける
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