白雪千夜「私の魔法使い」 (111レス)
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104: 27/27 ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:34 ID:ldlfMP+C0(104/110) AAS
そこにいたのが求めていた人物ではなかったからか、とっくに涸らしていただろう涙の跡にまた雫が流れていく。頬をつたった涙が2つのネックレスへとこぼれていく。
「…………。お前がここに来たということは……お嬢さまはもう、戻ってこないのですね?」
掠れ切った千夜の声が胸に深く突き刺さる。憔悴しきった目の前の少女が、昨日あれだけのLIVEをこなしたアイドルとは到底思えない。
千夜はちとせがいなくなったことだけは理解しているらしい。そして、それの証左となったのがプロデューサーの到来、そのような口ぶりだ。ちとせはどんな手紙を書き残したのだろう。
プロデューサーはどう返したものか言葉に詰まる。目を離した隙に消えた、なんて本気で信じる人間はいない。ただの人間であれば、だが。
省23
105: ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:35 ID:ldlfMP+C0(105/110) AAS
27/0
白へと落ちていった先には、黒が待っていた。
正確には夜の世界だ。頭がぐらつきながら、桜もこれから色めこうとしている気候を肌で感じ、だんだんとはっきりしていく視界には――
「……ねぇ、聞いてる? ボーッとしないで」
聞き覚えのある声の主は、いなくなったはずの少女のものだった。
省25
106: 27/0 ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:37 ID:ldlfMP+C0(106/110) AAS
一転して、あの全てを見透かすような瞳になった。やっと記憶にあるちとせの雰囲気に近付いてきたが、それはそれで緊張する視線でもある。
「大丈夫、もう取って食べようなんて思ってないから。そんな寂しそうな顔されてても美味しくなさそうだし、ねっ」
早くも見透かされたものの、この瞳さえあれば何とかなるような気がしてくる。何とかしなくては、悪夢は覚めないままになってしまう。
……取って食べるとは文字通りの意味なのだろうか。得体が知れないままなのはいろいろよくない、そう直感するプロデューサーだった。
「なあ、君の……その。正体? 教えてくれないか?」
省14
107: 27/0 ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:38 ID:ldlfMP+C0(107/110) AAS
翌日、プロデューサーは朝早くから事務所の自室に訪れていた。
部屋にアイドルの痕跡が何もなくなった時間へと戻ってくるのはこれが初めてなので、失ったものの大きさに胸が押し潰されそうになる。何度失くしては拾い上げてきたかも覚えていない。
いや……本当は覚えている。それだけ失いかけた輝きを、やり直すことで取り戻してきた。敏腕プロデューサーなどではなく、ズルをしていただけなのだ。
プロデューサーとしてアイドルに夢を見せ、魔法使いとして悪夢をなかったことにする。
省20
108: ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:40 ID:ldlfMP+C0(108/110) AAS
27/0.5
お嬢さまの指示により、足を運んだ先は芸能事務所だった。
何の前触れもなくアイドルになったと昨晩に宣言され、私を戯れに巻き込むためこんなところまで行ってこいという。いつものことながら、勝手なものだ。
私に拒否権はないので、否が応でもアイドルとやらになることは決定している。突き返されたらその時はその時だ。どうせお嬢さまが何とでもしてしまうに違いない。
せいぜいお嬢さまがこの戯れに早々に飽き、平穏な日々に帰れたらいい。私はお嬢さまの僕であり、アイドルなど務まりようもないのだから。
省12
109: ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:51 ID:ldlfMP+C0(109/110) AAS
なんとか生誕祭に間に合わせたかった……疲れた……
なんでこんな長くなっちゃったんだろう……千夜好き……ちとせも好き……
一応続きとか考えた上でのこれなんで、余力があれば11/10までにまた書きたいですね
それではここまでお読みいただけた方、本当に、本当にありがとうございました
110: ◆KSxAlUhV7DPw 2020/02/04(火)21:52 ID:ldlfMP+C0(110/110) AAS
あ、それと別スレ放置したままでした……ごめんなさい
111: 2020/02/05(水)00:55 ID:0Jdck1vAO携(1) AAS
乙。
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