高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」 (45レス)
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39: [sage saga] 2020/12/25(金)21:02 ID:mOMWMpAw0(39/45) AAS
「あいこちゃん!」
ふと、そーちゃんが叫んだ。
「なにかな、そーちゃん」
「じゃあ、あのねっ。わたしも、いっぱいさがすから、あいこちゃんもおしえて!」
「え……」
「たのしいこと、いっぱいおしえて! もちろん、かれんちゃんも! あのね、そうしたらわたし、しろちゃんにもがんばっておしえてあげる! かれんちゃんみたいに!」
言い切ったそーちゃんは、けほ、と咳き込んだ。血相を変えた看護師さんが駆け寄る――体温が、少し高くなってる。歌っても疲れなくなったとは言ってたけど、まだまだ入院中の2人。楽しい時間が流れ続けていたから、忘れちゃってたのかも。
不安に唇を噛み締める藍子は、溜め込んだ息を真下へと吐ききった。
焦点を不安定にさせつつも、しっかりと顔を上げるそーちゃんの両目を見つめ返してあげて……表情はそのままに、後ろに回した手が逡巡を挟む。
アイドルらしくないとか。
自分にできるかどうか分からないとか。
そんな迷いや悩みは、今もきっと、藍子の中に燻っている。
藍子としては、幸せの種を蒔いてあげるつもりだたんだと思う。
その先を見つけるのは、そーちゃんやしろちゃん自身。
間違った考えじゃない。
だけどそーちゃんは、藍子に教えてほしいって叫んだ。
花が咲いたら、また自分も種を蒔くんだって――私に憧れてくれているからこその言葉で。
藍子は。
「はいっ――私も、何度だって言って、何度だって教えます。この世界は、とっても素敵だよって……♪」
いつかカフェで私に言った言葉を、何度だって言うという言葉の通りに繰り返した。
私達が共有し尽くしていることだって、まだ伝えられていない相手がたくさんいる。
今日、12月25日の私達にとっては、それがそーちゃんとしろちゃん、そして看護師さんの3人。
……ううん。私にだって、何度も届けようとしているのかな。
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