【小説版】提督「鎮守府一般公開?」 (32レス)
【小説版】提督「鎮守府一般公開?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/
上
下
前次
1-
新
通常表示
512バイト分割
レス栞
抽出解除
必死チェッカー(簡易版)
レス栞
あぼーん
16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:41:57.65 ID:er2aAZLw0 続きです http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/16
17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:43:49.19 ID:er2aAZLw0 *** 「…そんなことがあったんですか」 静かにため息をつく榛名。苦笑交じりに、金剛が後を引き取った。 「今も司令官室を掃除してたらたまにBB弾が出てきマスよ」 「まあでも……提督が昔から私たち艦娘のことを本当に慮ってくれていたのはよく分かりました」 「私もあの時は嬉しかったデース」 「そ、そうか」 満更でもなさそうに頭をかく提督。 「ですが、相手も悪いとはいえ、提督も提督ですよ?」 榛名は少し強めに言った。鋼鉄の頃、榛名は、有能だが融通の利かない若い士官が孤立するのを幾度となく見てきた。そういった類は特に甲板士官に多いきらいがあったが、それで将来を閉ざしてしまうのは、目の前の提督には是非とも回避してほしいという願いが榛名にはあった。 「そ、それはその通り…面目ない」 「こういうことは後を引いてしまうんですからね」 「ま、その後特に何事もなく今に至っているのデース」 「……しかし、海軍省と陸軍省の衝突にならなくて良かったですね」 あくまでも冷静な榛名。 「まあ、海軍将校と憲兵将校が口論の末にBB弾で撃ち合ったなどと公になれば陸海軍の恥だからな」 「その恥の一端を担ったのはどこの誰ですか」 「憲兵さんのピストルも玩具だったデスからそりゃ公にもできないデース」 それだけこの町が平和だという事なんですけどネ、と続けて場を和ませようとした金剛だが、榛名はそれでも提督に釘を刺すのを忘れない。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/17
18: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:44:58.86 ID:er2aAZLw0 「……御召艦だった榛名としては、陛下の心痛は察して余りあります。今度陛下にお会いしたら謝って下さいね」 「そんな機会があればの話だな」 旧制防衛大学の頃ならまだしも、戦時下の今では、閲兵式や観艦式を行うような余裕は軍にはおろか政府側にもない。ましてや俺が陛下からご褒章や感状を賜ることはまずないだろうな……と提督は密かに嘆息した。 「ふぅ……そもそも何の話だったデス?」 「とにかく、問題は会場の警備の人員を集めることですよ」 「憲兵隊もやはりあの時のことを根に持ってるだろうし……素直に協力してくれるとは……」 「もう何年も経つんですからほとぼりも冷めたんじゃないでしょうか?」 「いやぁ…それはないだろ…」 「とにかく頼んでみないことには分かりませんよ。提督、憲兵隊に電話してみてください」 「気が進まんなぁ…」 榛名に促された提督は不承不承、固定電話のダイヤルを押して受話器を取った。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/18
19: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:47:33.02 ID:er2aAZLw0 *** その頃、港町憲兵分遣隊。珍しく鳴った外線を、分遣隊長がタイミングよく受けた。 「はい、こちら港町憲兵分遣隊です……は?鎮守府?」 鎮守府、と聞こえた瞬間、この分遣隊の副官を務める憲兵中尉は事務机から顔を上げ、分遣隊長を務める憲兵大佐は受話器を置いて通話を終えた。 「隊長、今のは鎮守府からですか?」 「提督おん自らだ。あまりにも畏れ多くて切っちまった」 「あの提督が?まったく、どの面を下げて…」 この二人にとって、例の鎮守府とのトラブルは苦い記憶となっていた。あの後、実際に海軍大臣次官から陸軍大臣次官を通じて東北憲兵隊司令官へ、非公式にではあるが遺憾の意が伝えられ、それを受けた憲兵司令官から訓告処分がなされたからだ。……怒りの矛先を向ける先を誤ったと言われれば自分達も立つ瀬がないのは自覚しているが、それでもあの後、鎮守府との関わりは無意識に避けるようになったというのが憲兵分遣隊の実情であった。 「……それにしても、一体何の用だったんでしょうね」 「分からん。……ただ、えらいへりくだった物腰だったな」 「何かの頼み事……でしょうか?」 「海軍が我々に?そんなことあるか?第一、逆の立場なら、何か頼み事をしようと思うか?」 「いや、さすがに……」 そこまで言った時、分遣隊の扉がノックされた。 「失礼します!」 入ってきたのは、白いスクール水着を着た小さな少女が一人。 「はいはい……ん?君は?」 憲兵中尉が立ち上がりかけて、少女の姿に面食らって固まった。 「あ、あの、すみません道に迷っちゃって…」 申し訳なさそうにする少女。憲兵大佐も立ち上がる。 「ん?その恰好は海水浴かな?ごめんねお嬢ちゃん、この辺りの海岸は、まだ立ち入り規制が解けてないんだよ……」 「むっ、失礼な!私は子供じゃなくて、陸軍の軍属です!」 可愛らしく憤慨するスク水少女。 「え……?我が軍の軍属?」 いよいよ立ち尽くす二人の憲兵に、少女は気を取り直して口を開いた。 「実は、お願いがあるんです……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/19
20: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:49:02.73 ID:er2aAZLw0 *** 鎮守府。 「って切りやがった!!まだ何も言ってないのに切りやがったぞこの野郎!!」 思い切り受話器を電話機に叩きつける提督。 「ダメでしたか…」 残念そうにする榛名に、さもありなんと頷く金剛。 「榛名か金剛が掛けてくれたら良かったのに!」 「だとしても、結果はいずれ同じだったはずデス」 「困ったなあ、どうしよう…」 いよいよ打つ手なしと見て、頭を抱える鎮守府のトップ3であった。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/20
21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:50:19.56 ID:er2aAZLw0 *** 「本当に助かりました!ありがとうございます!」 憲兵将校二人に挟まれるようにして真新しい海岸通りを歩きながら、陸軍潜水艦・まるゆは、眩しそうに二人を見上げて礼を言った。 「いやいや礼には及ばないよ。鎮守府への道案内くらい訳はないさ」 憲兵大佐が柄にもなく優しげに応える。 「工廠を出るとき、技術将校殿が『困ったことがあれば憲兵隊を頼れ』って言ってくれたんです。その通りにしてよかったです!」 「お役にたてて何よりだよ」 憲兵中尉も、いつになく優しい気持ちになってまるゆに応えた。 憲兵隊という男だけの世界の中に、予期せず入り込んできた陸軍の艦娘。そんな状況に何かしら思うところがあるのか、憲兵大佐が憲兵中尉にそっと耳打ちをしてくる。 「それにしても、我が陸軍もひそかに艦娘を建造していたとはな……」 「一見しただけじゃ分からないですよ。本当に普通の女の子ですね」 「しかも可愛らしいしな……」 「ははは」 憲兵中尉は、憲兵大佐が冗談を飛ばしたのかと思って相槌のように笑ったが、しかし憲兵大佐がそのままじっと難しそうな顔をしたのを見て、笑うのを止めた。 「どうされました?」 「いや、なんでもない。ただ、あの時の島風とかいう艦娘も、色眼鏡なしで見れば普通の可愛らしい少女だったなと思ってしまってな…」 「……」 憲兵大佐の思わぬ言葉に、憲兵中尉は黙り込んだ。……憲兵中尉にしても、同じことを考えていたからだ。 「実は自分も、今おなじ事を考えていました」 時を経て、あの島風という少女に対しての自分たちの振る舞いを思い出し、二人の憲兵は今さらながらに苦々しく自省した。そうとは知らず、少女の身体を得てから初めての海を眩し気に見るまるゆが、明るくはしゃいでいる。 「それにしても、海も空もきれいな町ですね!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/21
22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:52:21.92 ID:er2aAZLw0 鎮守府近くの防波堤で、重雷装巡洋艦の木曾が、腰を下ろしていた。身にまとうマントが、穏やかな潮風に揺れている。 「暇だな…」 鎮守府の雷巡ファミリーの末妹である彼女は、非番のときはよくこの防波堤に来て海を眺める。大井や北上、球磨や多摩といった姉達とはまた異なる性格を持つ彼女は、少女の年相応に騒いだりはしゃいだり、はたまた誰かへの憧れを持つこともなく、一歩下がって周りの幸せを眺めている方が性に合っていた。 沖合を見ると、午前中の哨戒を終えた大井と北上が、波頭を上げて入港してくる。木曾に気づいて手を振ってくれる二人の姉に手を振り返しながら、木曾はぼんやりと考え事をしていた。 ……これじゃ、鋼鉄の頃と何も変わんないな。 やや自嘲気味にそう思いつつ、木曾は、出港時以外は波止場に繋留されていた半世紀以上前の自分の姿を思い返していた。 今の自分に不満を持っているわけではない。少女の身体を与えられて生まれ変わった運命を迷惑に思っているわけでもない。青臭いが人として信頼し得る提督のもと、姉妹達を始め、軍艦旗を背負って共に戦った少女達との再会、新たに課せられた役割……一度は海に没して朽ち果てた己自身に、再び陽の光が当たるようになったのは本当に幸せな事だと思う。 だが、鋼鉄としてではなく、少女として第二の生を与えられたということに、木曾が戸惑いを感じ続けているのは、木曾自身が否定しようのない事実でもあった。 重油の代わりに食事とパフェ。防弾装甲の代わりにセーラー服とマント。電探の代わりに……透き通る翠色の瞳。 持て余しているんだろうか、俺は。この身体を。この新たな運命を。 照り付ける陽光に、木曾の白い胸元を一筋の汗が流れた。 ……何を迷っている、いや何を戸惑っている。とりあえず、今は敵をやっつけるだけだ。あの戦争で、米艦船がどれだけの我が艦艇や輸送船、そして日本の人々を傷つけた?そして今、深海棲艦とかいう化け物どもが、どれだけの人々を今なお苦しめている? 俺の本質は兵器だ。たとえ生身の少女の身体を持たされていようとも、俺は、俺の運命は……!! 不意に湧きあがった思いに、木曾は衝動的に手元に転がっていた石ころを掴み、海に向かって放り投げた。白い腕から放たれた石は、沖合200メートルほど彼方にある浮標の傍らに、小さな水柱を作った。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/22
23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:55:01.73 ID:er2aAZLw0 少し息を乱した木曾の耳に、横合いから若い男の声が無遠慮に割り込んで来た。 「あれ?あそこの波止場に座ってるの、もしかして鎮守府の艦娘じゃないですか?」 振り返ると、陸軍の憲兵将校二人……と、スクール水着の少女が、いつの間にかすぐそばに来ていた。どうやら、鎮守府に用があってやって来ているものらしいが、それにしても、いったいどういう組み合わせなんだろうか? 「本当だ、服装からして間違いないな」 顔だけそちらに向けて眉をひそめる木曾。そうとは知らずか、スクール水着の少女が能天気な声を上げた。 「えっ?鎮守府の艦娘さんですか!?」 キラキラと目を輝かせるスクール水着が、まるで憧れの異性でも見るように、眩しい視線を木曾に向けている。 「……お前、何者だ?」 警戒心を含んだ声でストレートな疑問を投げかける木曾。 「はい、まるゆは陸軍の潜水艦です!」 「……え?陸軍?」 「はい!」 「??!??」 木曾は混乱していた。こんなちんちくりんな少女が、まさか自分と同じ艦娘だとは……いやそもそも、所属が陸軍って……?そんな冗談があるか? 「……えっと、お前……潜れるのか?」 木曾のまたもや率直な問いに、今度はまるゆもさすがにムッとして答えた。 「……そんなこと、答えるまでもありません!」 その言葉を聞いた瞬間、木曾の脳裏に、電流のように過去の記憶が走った。鋼鉄の頃のその記憶と、その時自分が抱いた感情を想起して、木曾は思わず苦笑交じりの微笑が浮かんでしまうのを抑えられなかった。 「……そっか」 あれはマニラだったか。また会ったな、陸軍のちんちくりん。そっかその取り巻きの二人は、そう言う訳でってことか。 懐かしさと親近感とで警戒心を拭い去った木曾は、微笑を浮かべて立ち上がり、まるゆに向き直った。 「こっちはまだ名乗ってなかったな、まるゆ。俺は重雷装巡洋艦の木曾だ」 「木曾さんっていうんですね!まるゆは本日付で鎮守府に配属されました!よろしくお願いします!」 陸軍式の片肘張った敬礼に、木曾は慌てて立ち上がってまるゆに向き直り、小脇を締めた海軍式の敬礼を返した。 つられるように、憲兵大佐と憲兵中尉もまた、木曾に対して敬礼する。 「……で、そっちのおっさんたちは?」 「道案内をしてくれた憲兵さん達です!」 聞くまでもなかったな。どこか気まずそうにしている二人の憲兵を、木曾は余計な存在とばかりに見やった。 「あとは俺が連れてってやるよ。今から鎮守府に着任するんだろ?」 そう言った木曾に、憲兵大佐が慌てたように声を掛ける。 「ま、待ちなさい。自分らも、最後まで同道する」 「いや、俺が一緒だから大丈夫ですよ?」 別に個人的な嫌悪感はないが、海軍に籍を置く木曾にも、陸軍憲兵に対する本能的な反感が全くないといえばそうでもない。 「え、遠足は家に帰るまでって言うだろ?」 とぼけたようなズレたような言い訳をする憲兵中尉にも首をかしげる木曾。 「…まぁ、別にいいっすけど。じゃあ行こうか」 「わあ、あれが鎮守府ですね!赤煉瓦に洋光がゆらめいて綺麗です!」 まるゆの言う通り、鎮守府司令部と居住空間のある赤煉瓦の建物が、海面で反射した光の揺らめきをその壁面に映している。憧れの遊園地に来た子供のように、まるゆが無垢な感嘆の声を上げる。 「おう、あれだ。うちは東日本大震災のときの臨時の援助物資集積所が、数年前に再編されてできた鎮守府だ。だから規模もそんなに大きくない。いやはっきり言っちまえば小せえな」 へぇ、と声を上げるまるゆ。 「それにな、うちの提督もまだ佐官だ。俺たち艦娘もまだ保有数は少ない。ま、要するにうちはまだまだ未熟ってことだな……そんな鎮守府に、ようこそって訳だ」 自然にまるゆの手を握る木曾。 「は、はい!」 まるゆも、生まれて初めての艦娘の先輩の手を、嬉し気に強く握り返した。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/23
24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage] 2022/02/24(木) 23:55:39.87 ID:er2aAZLw0 今日はここまで お休みなさい http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1642429012/24
上
下
前次
1-
新
書
関
写
板
覧
索
設
栞
歴
スレ情報
赤レス抽出
画像レス抽出
歴の未読スレ
AAサムネイル
Google検索
Wikipedia
ぬこの手
ぬこTOP
0.157s*