くーちゃん「しょくぶつさんとおはなししてたらびょういんにつれていかれました」 (425レス)
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265: [saga] 02/13(火)19:04 ID:RYXcxsNH0(7/34) AAS
くーちゃんは目を開きます。
いつの間にか船から降りていたハナちゃんが、トンネルの絵を畳んで、手に持ったまま隣に立ってました。
くーちゃんは体を起こします。
ほっぺについていた砂が、ぱらぱらと落ちましたが、まだ何粒かくっついたままです。
でもかまいません。
省8
266: [saga] 02/13(火)19:06 ID:RYXcxsNH0(8/34) AAS
くーちゃん「ハナちゃん、ききたいこと、あります」
くーちゃん「その絵、どうして描いたですか?」
くーちゃん「どうして、描けたですか?」
ハナ「・・・・・・・・・・・」
くーちゃん「大丈夫です。変なこと、ちがいます」
省10
267: [saga] 02/13(火)19:10 ID:RYXcxsNH0(9/34) AAS
島の中
くーちゃん「しょくぶつ、ずいぶんのびてますね」
ペタペタ
くーちゃん「虫さんもたくさんです」
くーちゃん「秋にこれなら、夏はもっとすごそうです」
省4
268: [saga] 02/13(火)19:11 ID:RYXcxsNH0(10/34) AAS
くーちゃん「ハナちゃん、だいじょぶですか!」
ハナ「…大丈夫、おい、つく」
くーちゃん(…ハナちゃんも、必死です)
くーちゃん(きっとハナちゃんも、くーちゃんと同じように、トンネルの呼び声に応えたいのでしょう)
くーちゃん(あの絵を描いて、ここまでついてきてくれたです)
省3
269: [saga] 02/13(火)19:12 ID:RYXcxsNH0(11/34) AAS
ハナ「」プルプル
ガシッ
ハナちゃんを引っぱりながら、くーちゃんはずんずん、島の中を進んでゆきます。
途中でぼろぼろになった木造のお家や、昔使われた階段のようなものがありました。
もしかしたらこの島も、昔、人でにぎわってたのかもしれません。
省3
270: [saga] 02/13(火)19:13 ID:RYXcxsNH0(12/34) AAS
一歩一歩、踏みしめてると、森の香りが強くなってきます。
時折、くーちゃんは地面にまた顔をすりつけ、トンネルの片鱗を感じました。
くーちゃん「もう、ちょっとです」
長い長い階段を登って、今度は下りに差し掛かりました。
階段を一段、一段と降りてると、違和感がありました。
省3
271: [saga] 02/13(火)19:14 ID:RYXcxsNH0(13/34) AAS
ハナちゃんが久しぶりに声をだして、指をさしました。その方向にそれはありました。
大きな木でした。ただ、大きいだけじゃありません
見上げると首が痛くなるほど、とても、とてもとてもとても
高く、静かに、そびえたっていました。
272: [saga] 02/13(火)19:15 ID:RYXcxsNH0(14/34) AAS
くーちゃん「…ハナちゃん、しゃべりたいこと、あります」
ハナ「」コクリ
くーちゃん「今までくーちゃんはいろいろな御神木さんで感じたことを、歌や舞にしてました」
くーちゃん「ですが、この木は、今までの御神木さんとは全く違います」
くーちゃん「楠だと思います。大きな楠なので、大楠さんです」
省1
273: [saga] 02/13(火)19:17 ID:RYXcxsNH0(15/34) AAS
くーちゃんは走って近づきました。
とても太い幹は、蜘蛛の足みたいに枝分かれしてます。
柔らかい地面には、深く深く、長い根っこが伸びていることでしょう。
大楠さんの伸びてしまった枝を支えるため、古びた鳥居が何個か作られています。
くーちゃん「…大楠さんだけで、体、支える、たいへんです」
省6
274: [saga] 02/13(火)19:18 ID:RYXcxsNH0(16/34) AAS
ゴロゴロ
ポツンポツン
くーちゃん「…あめ、ですね」
くーちゃん「別にもう関係ありません」
くーちゃん「くーちゃんの目的に、天気なんてどうでもよいです」
省5
275: [saga] 02/13(火)19:19 ID:RYXcxsNH0(17/34) AAS
じんわり、じんわり、暗闇だらけの瞼の裏に、うっすらと世界が広がってゆきます。
トンネル独特の風の音。土の香り。
トンネルの中のくーちゃんは、トンネルを見るために、ゆっくりと目を開きました。
そこは、ハナちゃんが描いていた世界に、とても似てました。
少しだけ違いはありますが、匂いや温度は、とても近いです。
省2
276: [saga] 02/13(火)19:35 ID:RYXcxsNH0(18/34) AAS
くーちゃん「何千年も、大楠さんは見てきたんですね」
くーちゃん「たくさんの植物さんとの出会いと別れ」
くーちゃん「土砂崩れで埋まってしまった、たくさんのお友達。
くーちゃん「そして」
くーちゃん「大楠さんを、切る、切らないかの人の争いです」
省2
277: [saga] 02/13(火)19:37 ID:RYXcxsNH0(19/34) AAS
くーちゃん「ながくいきてたから、勝手にされたんです」
くーちゃん「とても、とても長い時間です」
くーちゃん「それは、きっとくーちゃんたち人間には、想像できないほど」
くーちゃん「くるしかったですよね。神様、しんどいです」
くーちゃん「いつも、勝手に期待されます。願い事なんて叶えられないのに、勝手に願われます」
省2
278: [saga] 02/13(火)19:39 ID:RYXcxsNH0(20/34) AAS
くーちゃんは、トンネルにいる意識の中
いつもならそこにとどまって、そのトンネルを全身に感じてました。
でも、同じ場所にとどまってては、大楠さんの芯に触れられません。
今まで知らなかったトンネルの深淵へ向かって、くーちゃんは進むことにしました。
足に力を入れてみました。
省8
279: [saga] 02/13(火)19:44 ID:RYXcxsNH0(21/34) AAS
くーちゃん「誰にも、わかってもらえないですね」
くーちゃん「人間に、あなたの言葉、聴こえませんもん」
くーちゃん「くーちゃんにも、大楠さんの言葉、わかりませんけど」
トンネルの奥まで、くーちゃんは進むことにしました。
一歩一歩、重たくて、苦しくて、その場で何度もうずくまりたくなりました。
省3
280: [saga] 02/13(火)20:06 ID:RYXcxsNH0(22/34) AAS
くーちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
くーちゃん「そですよね。こたえられませんよね」
キラッ
ポチャ、ポチャッ
くーちゃん「なにかみえます」
省8
281: [saga] 02/13(火)20:08 ID:RYXcxsNH0(23/34) AAS
くーちゃんは、沼に濡れた指先を見つめながら、顔を上げました。
その沼の中に、一本の木が生えています。
茶色くすすけてて、幹からいくつも、皮が剥がれています。
他には、茶色だったり緑色だったり、様々な葉っぱも、幹に張り付いてます。
胸の奥が切なくなるような、どことなく焦げた香りもしました。
省4
282: [saga] 02/13(火)20:11 ID:RYXcxsNH0(24/34) AAS
くーちゃん「大楠さん」
くーちゃん「くーちゃん、旅に出るとき、感じてました」
くーちゃん「この旅は片道切符です」
くーちゃん「この沼に入ったら、もう戻れません」
くーちゃん「でも、それでよいです」
省2
283: [saga] 02/13(火)20:14 ID:RYXcxsNH0(25/34) AAS
くーちゃんは、沼に、一歩足を踏み入れます。
冷たく、ぬめっとした感触が伝わり、今にも全身が飲み込まれてしまいそうです。
足もずぶずぶと、深く沈んでゆきます。
きっと、両足を突っ込んでしまえば、しばらくしないうちに、完全にくーちゃんは沈んでしまうでしょう。
一歩、一歩、歩きます。
省5
284: [saga] 02/13(火)20:16 ID:RYXcxsNH0(26/34) AAS
くーちゃん「大楠さん。これで、さみしくないです」
ずぶずぶ
くーちゃん「…ちから、ぬけてきました」
くーちゃん「あ、大楠さんも沈んでますね」
くーちゃん「そですよねっと、沼から体を浮かし続けるのは、難しいですよね」
省6
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