イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (966レス)
イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/
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63: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/05(月) 02:34:32.59 ID:wimMWMBG0 …数時間後… 提督「うぅ…ん……」寝心地の悪いベッドからマットレスを外し、直接砂の上に置いて寝ようと試みた提督……が、カビ臭いマットレスに湿っぽい岩屋のせいで、うなされるような夢ばかり見る… ……… … アンドレア・ドリア「あんっ…もう、提督ったらくすぐったいです♪」 提督「うふふっ、いいじゃない……あら、おはよう。ライモン♪」鎮守府の提督寝室に据えてある天蓋付きベッドで、むちむちの戦艦「アンドレア・ドリア」といちゃいちゃしながら朝寝をしている…と、ベッドの脇にライモンが立っている…… ライモン?「おはようございます、提督…ドリアさんと朝から添い寝ですか……良かったらわたしも交ぜてくれませんか?」急にずるりとライモンの身体が崩れ、緑色に腐乱した腕が提督の頬を撫でる… 提督「えぇと…いえ、だって……ライモンのその身体も悪くはないと思うけど…抱いたら崩れてしまいそうで……」 アッテンドーロ?「ふふ、遠慮なんてしなくていいわ……ほら、わたしとも仲良くしましょうよ♪」反対側には青ざめてぬるぬるとした深海棲艦のような姿をして、手招きするムツィオ… 提督「え、ちょっと待って…あぁぁっ!」 ……… … 提督「……えぇ…と、みんな揃ってどうしたの?」今度は白いマーメイド・スタイルのウェディングドレスに身を包んで白百合の花束を抱え、どういう訳か鎮守府の食堂に立っている……周囲に立っている艦娘や提督たちも全員ウェディングドレス姿で、それぞれ手を差し伸べている… カヴール「うふふっ、今日は私と提督の結婚発表会見の日ではありませんか……すでに大統領と首相もいらしておりますよ♪」 ドリア「あら、カヴール…提督は私と結婚するんですよ?……何しろヴァチカンのサン・ピエトロ寺院の真ん中でえっちした仲ですし…///」 ライモン「お二人とも、今日はわたしと提督の結婚式ですよ?…見て下さい、全イタリア海軍の艦艇が白塗りになって……新婚旅行はどこにしましょうか♪」 アヴィエーレ(駆逐艦「ソルダティ」級)「ふふっ…悪いけど提督は「操縦士」の私が連れて行くよ……式は成層圏であげて、イタリア中に結婚報告のビラをばら撒こう」 エクレール提督「あら、フランチェスカはわたくしと結婚するんですのよ……結婚式の引き出物として、フランスからコート・ダジュールとコルシカ島を差し上げますわ♪」 百合姫提督「フランチェスカ、子供の出生届けに書く名前はどうすればいい?…やっぱり「雪風」がいいかしら?」 ミッチャー提督「あははっ、相変わらずモテモテだね…でも大丈夫、うちの大統領からマリーン・ワン(大統領専用ヘリ)とシールズの連中を借りてきたから……ここから「ゲッタウェイ」としゃれこむわよ♪」 提督「え、えぇと……」 足柄「…まさかうちの提督を袖にする気じゃないでしょうね?」 龍田「あらぁ…そんなことをしたら……うふふっ♪」まさに「抜けば玉散る氷の刃」…すらりと白鞘の日本刀を抜き放つ龍田…… ……… … 提督「ひぃっ!……はぁ、はぁ、はぁ…」心臓をどきどきさせ、汗をびっしょりとかいて目を覚ました提督…海の匂いがする湿っぽい空気は相変わらずで、洞窟の中なので時間も分からない……と、やせこけて真っ白な肌をした深海棲艦がのしかかるようにして提督にまたがっている… 提督「ひぅ…っ!?」 深海棲艦「起きなさい、朝食の時間よ……しかも陛下が同席を求めているわ」 提督「あ、あぁ…そうだったのね……すぐ準備するわ」 深海棲艦「ん、それでいい…あまりお待たせしない事ね」 提督「ええ……うわ、なんだか身体がぬるぬるする…」昆布やめかぶのようなぬるぬるが全身にまとわりついていて、さらわれた時に着ていたナイトガウンがぐっちょりと張りついている…… 深海棲艦「何をしているの…?」 提督「いえ…少しだけ向こうを向いていてもらえる?…身体を拭きたいから」 深海棲艦「それならシャワーでも浴びたらどう…あんまり時間をかけないなら連れて行くわ」 提督「シャワーがあるの?……それならお願いするわ」 深海棲艦「いいわ…ついていらっしゃい」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/63
64: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/07(水) 01:18:40.47 ID:fQ2G4qtM0 …洞窟の一角… 深海棲艦「さぁ、どうぞ」 提督「えーと…これ?」 深海棲艦「これが何か?…真水よ?」 提督「あー…そうね、海水じゃないだけでも贅沢よね……はぁ…」水が流れている岩の間に木箱が挟んであり、箱にはじょうろのハス口のような細かい穴があけてある…下に立ってかたわらにある紐を引くと、箱から冷たい水が降りかかる仕組みになっている…… 提督「その…見ないでいてもらえると助かるのだけど……」 深海棲艦「…脱走しないよう監視せよとの命令を受けている」 提督「…分かったわ……よいしょ……」しゅるっ… 深海棲艦「…」 提督「あの…そんなにじっと眺めることもないでしょう///」 深海棲艦「…その身体は実に興味深いわ」…よく見ると何人かの深海棲艦が食い入るように提督を見つめている…… 提督「…わ、冷たっ……」青白かったり蒼白だったりとどれも血色の悪い深海棲艦たちに見られながら冷たい水を浴び、ぶるぶるっと身を震わせる提督… やせこけた深海棲艦「…先端のサクランボは桃色ね……くふふっ…」 青白い深海棲艦「…ふふ、マカロニの女は柔らかそうね…「アレ」を見た後だとなおの事興味深いわ……」 提督「…もう」身体を舐めまわすような視線を浴びつつそそくさとシャワーを浴びると、用意されていた着替えに袖を通す… 深海棲艦「準備できたわね…ついて来なさい」 …大広間… クィーン「グ・モーニン……よく眠れました?」豪奢なドレス…あるいはそう見える外装に身を包み、ずらりとそろった深海棲艦たちにかしずかれている… 提督「寝具に着替えと、数々の親切痛み入ります…慣れないベッドでしたがどうにか眠れました……」あてがわれた席に腰かけ、目の前の皿を眺めた……どうやら最近沈没した客船から拾い上げたり、航行中の貨物船から分捕ったりしたものらしく傷んではいない… クィーン「それは結構…普段はあまり空腹を感じないのですが、今朝は余も朝食の席をお付き合いしましょう」上品にスプーンを取り上げ、料理を口に運んだ… 提督「…あ、ありがとうございます……んむっ…」皿に載せられていた茶色の「何かを煮込んだもの」にスプーンを入れ、おそるおそる口に運ぶ…味は大豆のようだが、もはや形も残らないほどに煮えている…… 提督「あー、その…喉ごしのいい食べ物ですね……」皿の上にぐしゃりと盛られている「豆のペースト」を眺め、どうにか失礼でない感想を探す… クィーン「ふふ、イングリッシュ・ブレックファーストは美味しいでしょう」冗談なのか本気なのかも分からないポーカーフェイスで、口角だけかすかに吊り上げて微笑みらしいものを見せている… 提督「さ、さようですね…」小ぶりなボウルには白いお粥状のものが入っている…そーっとしゃくって慎重に食べる…… クィーン「オートミールはいかがですか?」 提督「え、ええ…」(甘くもしょっぱくもない……おまけに燕麦がごそごそする…) 大柄な深海棲艦「…美味しいでしょう?」 提督「ええ…まぁ……」 大柄な深海棲艦「これこそ我が英国海軍の力の源ですからね…捕虜とはいえ海の者同士で遠慮は無用、うんと食べなさい」ほとんど減っていない朝食のプレートへさらにおたま一杯分の泥土…のようなペーストを盛った… 提督「…」それだけでも十分げんなりしているところへ追い打ちをかけるように、大皿の脇には脂がギトギトで、しかも焦げてチリチリになっているベーコンが数枚と、火をくわえ過ぎてすっかり固くなっている卵二つ分の目玉焼きが載っている…… クィーン「…朝はあまり食が進みませんか?」 提督「……ええ、まぁ」パンも湿っぽい洞窟の中にあったせいか磯臭い臭いがする上にかなり焦げ、そこにこってりとバターが塗りたくってある… 大柄な深海棲艦「さぁさぁ、遠慮はいりませんよ?」 クィーン「…無理強いはいけませんよ、カウンティ級……」 「州」級重巡の深海棲艦「はっ。…申し訳ありません、陛下」 クィーン「分かればよいのです…ですが彼女の言うとおり、捕虜であっても遠慮はいりませんよ」 提督「は、はい…もう充分堪能いたしました」(…全く「イギリス料理らしさ」を充分に味わわせてもらったわ……下手な尋問よりよっぽど効果があるんじゃないかしら…) クィーン「そうですか、なら食後のお話をしていただきましょう」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/64
65: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2018/02/07(水) 02:23:55.34 ID:fQ2G4qtM0 …昼食時… 提督「これも信じて頂けませんか…」 クィーン「ええ、証拠にはなりませんね」どうやら提督に議論を吹っ掛けるのを楽しんでいるらしいクィーン…と、そこにティーセットが運ばれてきた… 改バーミンガム級「陛下…お茶の時間です」 クィーン「おや、もうそんな時間ですか…よかったらご一緒にいかが?」 提督「はい、ありがとうございます」(イギリスのお茶は美味しいし、きっとこれなら…) クィーン「さぁ、スコーンをどうぞ?」 提督「いただきます…んむ……んむ…」朝食よりはずっと美味しいスコーンではあったが、どういう訳か入っているドライフルーツにシナモンが効きすぎていて、提督の好みではなかった…痛みかけているらしく多少酸っぱいクローテッド・クリームをつけてどうにか口に入れる提督… G級「給仕をします……どう、英国の味は?」小声で聞いてくるG級… 提督「世界で一番薄い本の題名が「英国の美味しい料理」なのがよく分かったわ……」 G級「さすが無知なイタ公ね。衛生って言うものを知らないのかしら?…生焼けや生煮えは食中毒の危険があるからよくないのよ?」 提督「…だからって焦げるまで焼く必要はないでしょう?」 G級「ふん、まぁいいわ…しばらくはごちそうを出すんだからクィーンに感謝して欲しいわね」 提督「ごちそうねぇ……何だか不安でしかないわ…」 改バーミンガム級「…ところで、紅茶の味はいかがですか?」 提督「ええ、美味しいです…ダージリンですね?」 改バーミンガム級「いかにも。勝利の味とダージリンの香り……まさに紳士の特権ですからね」真っ白な髪をいじくりつつ、ちょっと高慢な表情を浮かべた… 提督「なるほど…ごちそうにあずかり感謝しています」そう言って湿っぽいきゅうりのサンドウィッチをぱくついた…海水のせいで今一つの食感になっているが、味の方はほどほどに塩気が効いている… クィーン「ふふ、朝はあまり食べられなかったようですからティータイムがあってよかったでしょう…ですがせっかく来ていただいたのですから、伝統あるイギリスの晩餐に期待していて下さいね?」 提督「ええ、楽しみです……はぁ…」 ……… …夕食時… 提督「…見事な装飾ですね」 クィーン「お気に召しました?」 …大広間にはしまってあったらしい銀の燭台や拾い物らしいキャンプ用のランタン、古い木箱を薪に使った暖炉の火が揺らめいて、そこに白や灰色、淡い緑色の地中海仕様の迷彩になった服(甲殻?)をまとった深海棲艦たちがずらりと居並んでいる……クィーンの脇にはもう一人、昼には見かけなかった大柄で高貴そうな深海棲艦が座り、じっと提督を眺めている……岩壁には「ホワイト・エンサイン」(イギリス海軍旗)が掲げられ、きらきらと銀の食器が火に照らされて輝いている… クィーン「…さぁ、どうぞ」 提督「感謝します……」どこかから手に入れてきたらしい古めかしい白いドレスを着せられ、多少カビ臭い白手袋をつけている提督…食卓につくと目の前に埃をかぶったワインの瓶が置かれ、切子細工のワイングラスに注がれると、年代ものらしい見事な紅色をしたワインが香りを放った… クィーン「それでは、わが方の勇敢なる「T」級潜水艦、「トーベイ」「タリスマン」がお連れしたイタリア王国海軍のアドミラル…カンピオーニ少将に乾杯いたしましょう……彼女は燃料不足の中、劣勢のイタリア艦隊をもってよく戦いました…今や囚われの身となりましたが、その戦いぶりに惜しみない称賛を与えようではありませんか…それでは、乾杯♪」 深海棲艦たち「「乾杯…!」」 提督「…感謝いたします、クィーン」 クィーン「いいえ。破れた敵とはいえ敬意を表すべきところには称賛を惜しまない…それがロイアル・ネイビー(英国海軍)のやり方ですので……さぁ、うんと召し上がれ」給仕係らしい駆逐艦クラスの深海棲艦が次々と皿の蓋を開ける… 提督「………」深海棲艦の提供するイギリス料理とはいえ、「ごちそう」と聞いて多少は期待していた提督…が、目の前にある料理は見た目からしてかなり衝撃的だった…… 提督「これは…その……」 クィーン「イール(ウナギ)のゼリー寄せですね…お取りしましょうか?」灰色のぶるぶるしたゼラチンの塊の中に、ぶつ切りのウナギが散らばっている… 提督「いえ…別のものにさせていただきます……これは…」やはり灰色で、ふくれた風船のようなものを凝視している…… 軽巡らしい深海棲艦「こいつはハギスだ…スコッツ(スコットランド人)がよだれをたらす料理さ……食うか?」…牛の胃袋に細切れの臓物やひき肉を詰めて茹でた料理…と聞いていた提督は現物を見てさらに食欲をなくした……隣には固いパンかタルトの底だけを焼いたような「ヨークシャー・プディング」が山ほど置いてある… クィーン「何か取って差し上げましょうか…?」 提督「え、えぇと……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/65
66: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/07(水) 03:14:24.69 ID:fQ2G4qtM0 …今日はここまでで、しばらくは提督がイギリスの「ごちそう」に悪戦苦闘する予定です…食べたことがないのにイギリス料理を悪くえがいてしまい申し訳ないですが、深海側の調理が悪かったとか、美食に慣れた提督からの主観が入っていると言うことで…… …あと訂正を一つ…(どうでもいいかもしれませんが)ハギスは牛ではなく羊の胃袋に詰めるものらしいです……どちらにせよ美味しそうには見えないですが…他には「まずい」カレーやローストビーフが提督に出されるイギリス料理の候補になっています、ご期待ください… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/66
67: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/08(木) 01:34:24.99 ID:DJ44GQDx0 軽巡「カヴェンディッシュ」級(改バーミンガム級)「ならローストビーフは…?」 提督「ええ、では数枚下さい…」(ローストビーフなら不味いなんてことはないはず…) カヴェンディッシュ級「…どうぞ」 提督「センキュー…あむっ……」 カウンティ(州)級重巡「で…どうだ?」 提督「…ごくん……美味しいですよ」(お洒落なソースも飾りもなし、おまけにすっかり脂が抜けきってパサパサだけど…他の物よりはまぁ美味しいわね…) カウンティ級「そうかそうか…もっと彼女にローストビーフを!」 提督「あ、いえ…」 カウンティ級「なに、遠慮はするな…さようですな、陛下?」 クィーン「いかにも…さ、ワインを注いであげなさい……それともスコッチ・ウィスキーにしますか?」…と、別の席で騒ぎ声が上がる…… 見た目の整った深海棲艦「ふざけないでよ、アイルランドの酒がないじゃない!」 同クラスらしい深海棲艦「落ち着きなさい、ベルファスト…ギネスの黒ビールがあるでしょう」 軽巡「ベルファスト」の深海棲艦「ん、ならよし…うぃ……ひっく」適当にハープを奏でつつ詩を口ずさみ、時折周囲の深海棲艦に絡んでいる… 軽巡「エディンバラ」の深海棲艦「やれやれ…」 提督「…」 クィーン「お見苦しい所をご覧に入れてしまいましたね……さ、もう一杯いかがですか」 提督「感謝します…」 …しばらくして… 駆逐艦「チーズをどうぞ…」 提督「ありがとう…ふぅ、何だか暑くなってきたわね……」 …食べ物がどれも絶望的な中でワインとウィスキーだけは上等だったことと、クィーンの杯を断ったらどうなるか分からないこともあって、ついグラスを重ねてしまった提督…晩餐も終わりに近づき、見た目も固さも薬用せっけんそっくりなレッドチェダー・チーズを食べる頃にはかなり量を過ごしていた… カウンティ級「ふふふっ、貴官はロンドン橋を見たことがあるまい…ビッグ・ベンの鐘の音も!」わめいているのはどうやら重巡「カウンティ」クラスの一グループ「ロンドン」級のネームシップ「ロンドン」のようで、しきりに自慢話を聞かせてくる… 提督「…そうですか。でもロンドンがいかに素晴らしくとも、ローマほど古く美しい都市はありませんよ……何しろイギリスが未開の原野だったころからありますし♪」酔いが回っているせいか、つい切り返してしまう… ロンドン「…ぐっ」 ベルファスト「ははっ♪…そうだ、いまいましいイングランドの街なんぞアイルランドにはかなうまい……!」 ロンドン「何を…アイリッシュのくせに」 ベルファスト「それのどこがいけないって言うんだい、少なくともここには熱いアイリッシュの魂があるのさ…装甲もペラペラの「重巡」とは訳が違うのよ」 ロンドン級「なにやら…失礼な軽巡ね」 ベルファスト「へぇぇ、ならどうする?」 ロンドン「…余人は手を出すな、さしでケリをつけてやるから……さぁ、どうした?」 G級「あーあ…またイングランドとそれ以外の喧嘩が始まった……酒が入るとすぐこれなのよね…」 提督「ねぇ…そう言えばデザートは何かしら♪」 ベルファスト「え?」 ロンドン「えぇと、そうだな…きっとパウンドケーキだろうが……いったい何が用意されているのか、アドミラルにお答えせよ」 駆逐艦「はっ…パウンドケーキかジャム入りプディングです」 ロンドン「よろしい…ではアドミラル・カンピオーニに持ってくるように」 提督「…良かったら一緒にいかがですか」 ロンドン「あ、あぁ…ではご一緒しようか」 ベルファスト「ふんっ…イングランドのくだらないケーキなんぞ欲しくないわ……アイリッシュ・ウィスキーを持ってきなさい!」 クィーン「…では、余も一切れいただきましょう」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/67
68: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/08(木) 02:57:48.74 ID:DJ44GQDx0 …食後・廊下… クィーン「先ほどは場をしずめて頂いて感謝しております…」 提督「いえ…私も巻き込まれるのは遠慮したいところでしたから」 クィーン「ふふふ…さてと、それでは食後にまたお話を聞かせてもらいましょうか……大広間は彼女たちが飲んでいますから、別の場所で」…そばに控えている軽巡「カヴェンディッシュ」級と一緒に階段を上るクィーンと提督… 提督「はい……っと…」ドレスの裾で足が隠れているせいか目算を誤り、石の段差にけつまずいてクィーンに腕を押さえてもらった提督…ぬるりとした氷のように冷たい手が腕をつかみ、思わず背筋に寒気が走る… クィーン「…貴女はずいぶんと熱いのですね…まるで焼けてしまいそうなぐらい……」 提督「ええ、イタリアの女は情熱的なのです…」ぞっとするほど感情のないクィーンの目を見て、慌てて冗談めかしたウィンクを投げる提督 クィーン「ふふ…さ、どうぞお入りなさい……下がってよろしい」 カヴェンディッシュ級「…では失礼します、陛下」 …クィーンの部屋… クィーン「…いかがですか、余の部屋は」 提督「ええ…大変豪華なお部屋でいらっしゃいます」…映画の幽霊船のようにホコリにまみれクモの巣が張っている部屋を想像していた提督だったが、岩をくりぬいたような部屋には立派な執務机、金の六分儀に宝石を散らしたサーベル、それにふっくらと柔らかそうな布団が敷いてある天蓋付きベッドが鎮座していた… クィーン「さようですか…さてと、それではお話を聞かせてもらいましょう……」灰色のマントを椅子にかけ、白骨のように真っ白な笏と宝石をちりばめたティアラ(宝冠)を所定の場所らしい台の上に置いた… 提督「えぇ…と、どのような話がよろしいですか?」 クィーン「何でも構いませんよ…イタリア王国海軍、地中海の暮らし……貴女のいる司令部の話でも…いずれにせよ、余が信じるにはそれなりの証拠が必要ですが」 提督「ふぅ…ここに連れて来られてからと言うもの、そうしたことは毎日のように説明している気がするのですが……とはいえ私も身体一つで来てしまったので、何か証拠になりそうな物を示すことが出来ないのがもどかしいです…」 クィーン「さようですか…ところで、この写真ですが……」提督があられもない姿になっている合成写真を卓上から取り上げた… 提督「…うわ///」 クィーン「…帰投してきた折にG級から、そなたの艦隊にいる「艦娘」とやらの話を聞きました……どうやら余、あるいは余の部下たちと同じように娘の姿をしていながら、そなたと夜も共にしているとか…どうも聞き違いでもなさそうですが、説明してもらえますか?」 提督「説明…と、言いますと?」 クィーン「つまり…それは指揮官に対する「信頼」と言う意味なのですか?」 提督「ええ、まぁ…それもあります///」 クィーン「それで寝床を共にする…あるいは情を交わす……どうも理解できかねます…」 提督「えぇと…それはつまり……」 …言い回しの難解なイギリス英語と、提督の言うことを信じようとしないクィーンの頑固な態度…まずい食事のせいもあってワインや高級なウィスキー、ブランディと言ったお酒を飲みすぎた提督は、クィーンの取り澄ましている貴族的な様子にいい加減飽き飽きしてカーッとなっていた… クィーン「…つまり、どういうことですか?」 提督「つまり……こういうことです…っ!」 クィーン「…んむっ!?」 提督「んっ、んんっ…ぷはっ……分かって頂けましたか?」クィーンの青ざめた冷たい唇に自分の唇を重ね、キスを済ませると手の甲で唇を拭った… クィーン「…なるほど…確かに余の時代にこんなことは滅多にありませんでした……」 提督「…やっと信じてもらえましたか」 クィーン「ええ…それにしてもなかなか大胆ですね……捕虜が敵国のクィーンたる余の唇を奪うとは」かすかに笑みを浮かべて見せるクィーン… 提督「ここまでしないと信じて下さらないのですから…仕方ありません」 クィーン「…とはいえ、貴女は捕虜の身でありながら余の唇を奪ったのです……それ相応の罰を与えねばなりませんね」 提督「あっ…」(罰ね……きっとマストに吊るしたりするつもりなのね…ごめんなさい、ライモン…もう会えないかもしれないわ……) クィーン「では、刑を申し渡します……もう一度口づけしてみて下さい。どういうものなのか一瞬では理解できかねましたので」 提督「…え?」 クィーン「聞こえませんでしたか?」 提督「いえ、よく聞こえましたが……本気で…?」 クィーン「余に二度も繰り返させるつもりなのですか、アドミラル?…イタリア人は色恋の戦術には優れていると聞きますが、それも敵国向けの宣伝ですか?」 提督「…いいえ、イタリア人は恋も海戦も一流です♪」ちゅっ、ちゅぅっ…♪ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/68
69: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/10(土) 02:05:20.17 ID:3w0OVfKG0 …しばらくして… クィーン「ん…んちゅぅ……ちゅぅぅ…ん///」蒼白な舌から唾液を垂らし、さっきまでの冷たい表情も崩れて目をとろんとさせている… 提督「はぁ、はぁ……どう、なかなか気持ちいいものでしょう…?」(味は…痛みかけた貝類みたい……さっきのイギリス料理といい勝負ね…) クィーン「いいえ…今が大戦中でない事は信じてもよろしいですが、余が捕虜の小娘ごときにいいようにされるようでは艦隊に示しがつきませんので……そちらこそあきらめて「お得意の」降伏をなさったらいかが?」 提督「あら、そうですか……それなら私も女としての意地をかけて、クィーンがはしたなく喘ぐまでやってあげます…っ♪」 …カビたシルク生地が傷んでいて、あちこちに擦れもある古いドレスの胸元を引っつかむと力いっぱい引き裂く提督…ビリッ…ビビィィ…ッ……と音を立てて生地が破れると、「たゆん…っ♪」と白いもっちりした乳房が弾んだ… クィーン「…何をなさるつもり……?」 提督「…私の愛がこもった乳房に包まれたら、その皮肉で冷たい態度もどうにかなるかと思いまして…っ!」むにっ…♪ クィーン「んぷっ…んむっ、むぅ……」提督の谷間に顔を埋めさせられ、後頭部を押さえられているクィーン… 提督「はぁぁ…お酒のせいで身体が火照っていたのだけど、冷たい顔が当たって気持ちいいわ……それで、私の谷間はいかが?」 クィーン「…んぅ……むぅ…っ!」頭を押さえつけていた提督の手を振り切り、提督をじっと凝視する… 提督「…で、ご感想は?」 クィーン「……がした」 提督「んっ?」 クィーン「…あ、アップルティーのような甘い香りがしました……余が忘れていた感覚を思い起こさせるような…///」 提督「そう…よかった♪」 クィーン「よくありません…こんな気持ちは国王陛下に仕える者には不要…むしろ判断を鈍らせ、雑念を招きます……こんな感情は一体どうすればよいと言うのです…///」ふいっ…と提督から目をそむけた途端、卓上に置いてあった提督の合成写真が視界に入り、また視線を動かした… 提督「んー…それなら一度、思い切り発散してみたらいかがですか?」 クィーン「そしてそれを「艦隊中に知られてしまえ」と…?」 提督「うふふっ……でしたら私とならいかが?」 クィーン「……物好きにもほどがあるようですが」 提督「いいえ…えっちの事になると急におどおどしているクィーンを見るの……結構愉しいですから♪」 クィーン「…余をおもちゃにしようと言うか……面白い。海戦であろうと夜伽であろうと余は「クィーン・エリザベス」…小娘、そこまで言うならイタリア女らしく余を愉しませてくれるのでしょうね…?」固いコルセットのようになっているドレス、あるいは「殻」を脱ぐと、ぬるりと粘っこい糸を引いた真っ白な身体が出てくる… 提督「…ええ、きっとクィーンがアレクサンドリアでなったように、腰が砕けてベッドに着底することでしょう♪」 クィーン「あとでその言葉を思い出させてあげましょう…!」提督を引きずり、布団に押し倒すクィーン… ……… …数時間後… クィーン「あふっ、ひぐっ……こんな………はぁぁぁっ…」ギシッ…キシィ……ギィ… 提督「ふふっ……クィーンの指ったら冷たくって、私の花芯もきゅうきゅう疼きました…♪」クィーンの身体をすみずみまでこねくり回し、ぬらぬらした身体をいじくり倒す提督…傷んでいるベッドをきしませながら、甘ったるい笑みを浮かべてクィーンにまたがっている… クィーン「余は…余はクィーン・エリザベスです……レナウンたちに見つかったら、あなたは八つ裂きにされてもおかしくないのですよ?」 提督「あー…クィーンの隣に座っていた深海棲艦は「レナウン」でしたか…「アーク・ロイヤル」はいました?」 クィーン「余の右側にいた背の高い…んんっ、余の話している時に……」 提督「ふふ…だってクィーンの胸が話すたびにふるふる揺れて……先端は青っぽいのね♪」いたずらっぽい笑みを浮かべ、固い先端を指でピンッ…と弾く提督 クィーン「んんっ…どうして……余がこんな、マカロニの提督ごときに…///」 提督「うふふっ…イギリス海軍はいつも不意打ちには弱いようですから……ね、クィーン♪」にちゅっ…ぐちゅ、ぐちゅ…っ…♪ クィーン「あっ…あ゛あ゛ぁぁっ!」 提督「んふふっ、ほら…腰が砕けてベッドに着底するって言ったでしょう♪」 クィーン「んはぁ、はぁ、はぁ、はぁ…ふぅ、はぁ……」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/69
70: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/10(土) 02:55:34.38 ID:3w0OVfKG0 …しばらくして… クィーン「…余も明日の執務があります。そろそろ部屋に戻りなさい…それと、このことは口外しない事……よろしいですね?」 提督「はい、クィーン…それと、こちらの約束もお忘れなく♪」ぱちりとウィンクをして、びりびりに破いたドレスを取り繕いながら着る提督… クィーン「余は約束したことは守ります…さぁ、行きなさい」 提督「ええ、それでは…グッドナイト♪」 …廊下… カヴェンディッシュ級「……部屋に戻るのだな?」 提督「ええ…♪」 カヴェンディッシュ級「…それで」 提督「なぁに?」 カヴェンディッシュ級「……その、陛下があんなになるとは…「情を交わす」とはそんなにいいものなのか…」(陛下があんな獣のような声を…それに何ともみだらな光景だった……) 提督「もう…「下がれ」って言われていたはずでしょう?それなのにのぞいていたの?」 カヴェンディッシュ級「バカを言うな。ただ、陛下のただならぬお声が廊下に聞こえてきて……それで、陛下の身を案じて…」 提督「非力な人間の提督が深海棲艦のあなたたちにかなう訳ないじゃない…それなのにのぞくなんて」 カヴェンディッシュ級「し、仕方あるまい…軽巡は索敵が任務の一つなのだ……」 提督「…キスだけでよかったら」 カヴェンディッシュ級「なに?」 提督「私も疲れたし…キスだけでよかったら、してみる……?」 カヴェンディッシュ級「……では」 提督「了解、それじゃあ…んっ…んっ、んっ……んちゅっ///」 カヴェンディッシュ級「んんっ!?……ん、んんぅ…んはぁ」 提督「どうだった…?」 カヴェンディッシュ級「…お、おかしい……私は地中海艦隊の一隻として、それに「エリザベサン」級ともされるこの級名に恥じぬよう陛下にお仕えし、大英帝国の勝利の日まで任を全うすることこそが本義のはず……なのに…」 提督「愛は任務なんかよりもずっと大事よ?…それじゃあ、着替えて寝るから……ドレスは片づけてもらえる?」 カヴェンディッシュ級「ああ、承知した…」(…今までこの女が着ていたドレスか……) ……… …翌朝?… 提督「うぅ…ん…」妙に肌寒い気がした提督は眠気にあらがって薄眼を開けた…と、なぜか寝巻き代わりに渡されたはずのキャミソールと湿ったブランケットが引きはがされている……その上、数人の深海棲艦が周囲を取り囲むようにして立ち、提督の裸体を食い入るように見つめている… 提督「…え!?」慌てて跳ね起きると毛布で身体を隠した… 駆逐艦クラス「!?」 軽巡クラス「…!」 提督「…ちょっと、どういうつもりなの?」 軽巡「ふん、少しイタ公の身体を眺めてみたくなったのだ…安心しろ、別に取って食ったりはしない……」 提督「ねぇ…もしかしてこの間私の身体がねとねとだったのもそういう訳なの?」立ち上がると腰に手を当てて問い詰めた… 軽巡「…捕虜に答えてやる義務はない」 提督「私とクィーンでお話しする機会はまだまだありそうだけど…今度は何を話題にしようかしら♪」 軽巡「あ、あれは私ではない…駆逐艦の数隻が……だいたい、あの宣伝写真のせいなのだから、そちらにも責任の一端はあるのだ…」 提督「え…あれをみんなで見たの……?」 軽巡「ウェ…ル(えーと…)」 駆逐艦「まぁね…出撃がない時は手持無沙汰だし、ここの酒保には大して買えるものもないから……触ったりした連中はいたってことよ…」 提督「あー、もう…信じられないわ///」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/70
71: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/11(日) 02:30:11.42 ID:5DDzoYWB0 …朝食… 提督「それはそうと…」周囲にそっと視線を走らせる… …連れてこられた時は敵意を持った視線や「マカロニの捕虜」に対する冷笑をひしひしと感じていた提督…が、この数日は深海棲艦同士で回して見たらしい「例の写真」やクィーンとの「交流」があったせいか、食卓に並んでいる深海棲艦たちの視線が心なしか欲情したような、どこかぎらぎらしたものに変わっている……時折胸やふとももに向けられた視線を感じて、別な意味で危険を感じている提督…… G級「…なにか?」 提督「…いえ」あきらめて食卓に視線を戻す提督…相変わらず縁がチリチリになったハムと、ゴムそこのけに固くなった卵で出来たハムエッグス……そこについている焼きすぎのトーストに煮込みすぎて形もないベイクドビーンズ……おまけに卓上には黒い樹脂のようなものが鎮座している… ケント級「…あむっ…むしゃむしゃ……」あまり空腹を感じないらしい深海棲艦たちは数日に一度の食事で済むらしく、今朝は三人の重巡「カウンティ」級とC級軽巡グループでも「ケープタウン」級に属する「カイロ」、パース級軽巡「シドニー」、大型の駆逐艦「トライバル」級が数人座っている… 軽巡シドニー「カイロ、それを取ってくんなよ」 C級軽巡「どうぞ」 シドニー「おーし、やっぱり『ベジマイト』がないと始まらないってもんよ…ずずずぅ…」マナーもへったくれもない様子で片脚を上げたまま「ベジマイト」を塗りたくったパンをがつがつと胃に放り込み、イギリス海軍伝統のホットココアで流し込む… (※ベジマイト…野菜と酵母を発酵させて作るオーストラリア特産のスプレッド。ビタミンが多いらしいが味は「オーストラリア人専用」とのこと……) 提督「………」 G級「…早く食べないと冷めるわよ、アドミラル?」 提督「…ええ」 ……… …昼食… クィーン「今日はインド風昼食ですか、カイロ…見ているだけで「タージ・マハール」が目に浮かぶようです」 カイロ「ありがたきお言葉…どうですか、本場で仕込んでイギリス風にアレンジしたカリーは美味しいでしょう…」 提督「え、ええ……」辛さも今一つで水っぽく、風味もピンとこない不味いカレーを前にげんなりしている提督…仕方なしに濃いストレートティーを飲みながら黙々と食べる… デリー(D級軽巡)「美味しい、これこそ故郷の味ね…」 クィーン「ふぅ…美味でしたよ、カイロ」 カイロ「恐縮です、陛下…」 ……… …夕食… ロンドン「…さて、我々の捕虜とはいえせっかくの機会ですから…アドミラルには世界の中心地、ロンドンの味を食べてもらわないと」 提督「…」目の前にドシンと置かれた大皿には、種類も選ばずぶつ切りにして焦げそうなほどガリガリに揚げた数種類の魚と、油っぽいポテトフライが載っている… 提督「えーと…これは「フィッシュ・アンド・チップス」でいいのかしら?」 ロンドン「いかにも…高尚な食べ物ではないが、ホワイトホール(イギリス海軍省)に行くまでの小腹ふさぎにと、若手の士官たちもつまんでいたものよ」 提督「…い、いただきます」ひくひくと口もとを引きつらせながら、魚のフライに取りかかる… ロンドン「どうだ、ロンドンっ子の力の源は?」 提督「…あの、この魚ってウナギ?」ぶつ切りにされたウナギをぬめりも取らずに衣をつけ、すっかり固くなるまで揚げてある…… ロンドン「知らん。とにかく魚を揚げればいいのだからな」 提督「……ちょっといいかしら」 G級「何?」 提督「ここにも厨房とか食料庫はあるのよね?…明日必ずそこに連れて行きなさい。いいわね?」 G級「わ、分かったわよ…ずいぶんな剣幕だこと……」 提督「…ごちそうさまでした、もういいわ……」 ロンドン「そうか、なら私が……んぐ…何だこの魚は、えらくマズイな……」 提督「あー…きっとそう言う魚なんでしょうね…」(…ウナギを「フィッシュ・アンド・チップス」に使うからでしょうが…やっぱりイギリスの深海棲艦はセンスもイギリス流なのね…きっと永遠に分かり合えないわ……) ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/71
72: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/12(月) 02:29:44.84 ID:K8G9/ZQi0 …翌日… 提督「それじゃあ昨日言った通り、厨房に案内してもらうわね」 G級「全く、捕虜のくせにいちいち面倒な事を……せっかくクィーンが許可してくれたのだから、脱走を試みたりしないことね…」 提督「はいはい…どのみち出口の場所も知らないのに脱走も何もないわ」肩をすくめて案内されるままに廊下を進む提督… G級「ほら、ここよ…」 提督「えーと…なにこれ……」 G級「厨房よ。私たちはそんなにお腹もへらないし、これだけあれば充分なの…」 …洞窟の一角にある「厨房」の天井には煙突のような空気穴が抜けていて、提督の目の前で数人が何かを作っている……が、置いてある厨房用具は岩の張りだしの上に置いてあるまな板らしい板切れとナイフ数本、明らかに拾い物のアルミ鍋とフライパンがいくつか…水道代わりにちょろちょろと流れている水をためている隅っこのドラム缶、それに海岸から流れてきた…あるいは捨てられたものを拾ったかしたキャンプ用のグリル台と、暖炉のような直火の調理台だけしかない… 提督「…」 G級「で…ご感想は?」 提督「とりあえず使える道具の種類は分かったわ…今度は食料庫に案内して?」 G級「はぁ、面倒ね……出来上がったら私にも分けるのよ?」 提督「ええ、これは相当頑張らないといけないわね…」 …食料庫… G級「で、こっちはどう?…マカロニの提督ならきっとすごいものが作れるわよね」 提督「ええ、そうね…」相変わらず皮肉な言い方は変わらないG級をよそに、提督は箱や缶詰の間にしゃがみこんで周囲をごそごそとかき回している……まず拾い上げたのは難破した貨物船あたりから回収したのか、外箱がすっかり壊れているスパゲッティの青い袋… 提督「これでとりあえずパスタが作れるわね、後は…んー……あ、トマト缶♪」賞味期限は明らかに数年前ながら「まだどうにかなりそう…」と、拾い上げて小脇に抱える… G級「持っててあげるわよ…」 提督「ありがと♪……それに…わ、アンチョビがあるわ♪」しゃがみこんでアンチョビの缶を拾い上げる… G級「ふぅん…艦隊指揮はからっきしなのに、イタリア人って言うのは料理の事になると手際がいいのね」 提督「かも知れないわね…あとは……」G級のイヤミに生返事をしながら缶詰や瓶詰を選び取る… 提督「…うん、これでどうにかなりそうね♪」 G級「あらそう、よかったわね…」 提督「ええ、ようやく人間の食べるものが食べられるわ…♪」途端にきゅぅ…とお腹が鳴る…… 提督「もう、私のお腹ったら素直だこと…///」 …厨房… 提督「さてと…♪」与えられたよれよれのキャミソールを着ている提督は手を洗うと、深海棲艦に鍋を借りた……漂着物の拾い物らしい鍋は「取っ手が取れる」が売りのフランス製でもないのに柄が行方不明で、おまけにあちこちへこんでいる… 提督「…まぁいいわ、とにかくお湯を沸かしましょう♪」…久しぶりにまともな料理が食べられそうとあって、うきうきした様子の提督…深鍋にお湯を沸かしつつ、塩を小さじ二つほど入れる… 提督「それから…と♪」 …これもずいぶんゆがんでいるフライパンにオリーヴオイルを注ぎ、赤唐辛子と刻んだニンニクひとかけを入れて温める……赤唐辛子の辛さは油に溶け出すので焦げやすいニンニクよりも先に入れ、じっくりと風味を出していく…しばらくしてニンニクがカリカリといい音を立てはじめたら、食料庫にあったアンチョビの缶詰に黒オリーヴの輪切り、ケイパーの塩漬けを入れて木べらでほぐしていく… 深海棲艦「…ふんふん」冷たい表情は相変わらずながら、興味深そうに香りを嗅ぐ数人… 提督「んー…いい香り♪」 …ほど良くほぐれたアンチョビと黒オリーヴの所にトマト缶を空け、焦がさないよう注意しながら濃い赤が鮮やかな柿色になるまで火にかける……最後に茹で上がったスパゲッティを絡めて黒胡椒を振ると、恍惚の表情を浮かべながら香りを胸いっぱいに吸い込み、さっと大皿に盛りつけた… G級「へぇ…それで、この料理の名前は?」 提督「スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ(娼婦のスパゲッティ)…「水商売のお姉さんが活力を付けるために作った」とか、そう言うお姉さんたちと同じで「たまにならいいけど毎日だと飽きるから」とか言われるナポリの味よ……あぁ、空腹にはたまらない香りね♪」 G級「椅子ならここにあるわよ…」古いオレンジの木箱を持ちだしてきた… 提督「ありがとう。それじゃあさっそくいただくわね……んーっ、美味しい♪」身もだえしながらスパゲッティを口に運ぶ提督… G級「…ごくっ」 深海棲艦「…」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/72
73: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/13(火) 01:59:32.89 ID:FWz1EF2O0 …そのころ・提督の実家… チェザーレ「うむ、了解…大佐どの、改めてカンピオーニからもお礼を贈らせていただきます……それでは」受話器を置くと肩を回した… ライモン「…チェザーレさん、まだ提督の行方について手がかりはなしですか?」 チェザーレ「うむ…提督の手帳にあった名前からラ・スペツィア、ナポリ、サルデーニャ島のカリアリ…シチリア島のアウグスタとメッシーナ…イオニア海管区のレッジョ・ディ・カラーブリア、タラント……もしかしたらアドリア海方面に誘拐されたかもしれぬからブリンディシとヴェネツィアにも電話はかけた……後はパレルモ航空隊のアントネッリ中佐は提督の「親しいお友達」なのでな、色々調べてくれたぞ」 ライモン「なのにかいもく見当がつかないなんて…いったいどこにさらわれてしまったのか……うぅ、きっと今頃深海棲艦に取り囲まれてあれこれと厳しい尋問を受けているに違いありません…」 チェザーレ「まぁ落ち着け、ライモンド…提督はなかなか頭の回転が速い。きっと脱走の機会をうかがうか、さもなければここに返してくれるように深海の連中に掛け合っているはずだ……それにあの提督に限って愛しい女性を悲しませるような事をする訳があるまい。違うか?」 ライモン「…そ、それはそうですが///」 チェザーレ「そうであろう?……それにさっきムツィオが手伝っていたからな、そろそろあのナポリ鎮守府のカント水偵が離水できるはずだ…行ってその目で捜索してくるといい」 ライモン「はい。それでは留守をお願いします」 チェザーレ「任せておけ。…必要ならこのチェザーレが賄賂だろうが何だろうが用意してみせるから、後ろにローマ軍団が付いているつもりでいればいい」ポンと肩を叩き、口元に笑みを浮かべて見せた… クラウディア「…必要なものがあったら何でも言ってね?」 シルヴィア「もし銃がいるようならいくらでも出してあげるから、そう言いなさい…あと、これ」装填済みのベレッタ・M1938短機関銃を渡した… ライモン「これは?」 シルヴィア「お守り代わりに一応……「ウサギの脚」よりは効果があるでしょうし」 ライモン「ありがとうございます…それでは、しばらく上空から探してみます」 アッテンドーロ「姉さん、水偵の準備が出来たって」 ライモン「分かったわ…それでは、上空から捜索してみます」…ライモンは短機関銃を肩にかけると岸辺に着水している三発エンジンのフロート機、カントZ506「アイローネ」(※Airone…アオサギ)の後部席に乗り込み、しばらくするとカント水偵は浜辺に砂と波を巻き上げて離水していった…… チェザーレ「…提督、もし戻ってこなかったらライモンドに代わってチェザーレが怒るぞ……?」 ……… …一方・深海棲艦の洞窟… G級「…んむ……んむっ…まぁ美味しいんじゃないの?」提督にパスタを分けてもらうと勢いよく食べ、口の端にトマトの汚れまで付けていながら辛口の評価を下す… ケント級重巡「ふむ、なかなか美味い…」一方の重巡「ケント」級はさすがの貫録で、無表情ながら一応感心したような声を上げた…そのうちにいい匂いに誘われたのか、次々と厨房に姿を見せる大小の深海棲艦たち…… 提督「ふぅ…まさかせっかくの夏季休暇を深海棲艦の司厨長として過ごすになるとは思ってもみなかったわ……」次々と顔を出してくる深海棲艦たちに汗だくで「スパゲッティ・アッラ・プッタネスカ」をごちそうする羽目になっている提督… クィーン「…何事ですか」 C級軽巡「…陛下、このような場所にまでお越しになるとは……お気遣い、痛み入ります」 クィーン「余はあらゆるものに目を通さなければなりませんから。で、何をしているのですか…アドミラル?」 提督「えぇ…と、料理を作っておりました……良かったらいかがですか、クィーン♪」 レナウン(巡洋戦艦)「陛下に対してそのような口を利くなんて失礼よ…?」 クィーン「よいのです、レナウン…イタリア人の捕虜なのですから、礼儀を知らずとも致し方ないでしょう……?」さりげなく失礼なことを言うクィーン… 提督「む……クィーン、これは『娼婦のスパゲッティ』などと申す一品で、はなはだお口汚しかと思いますが…よろしければお召し上がりになられますか?」 クィーン「…そうですね、それでは味見程度に頂戴いたしましょう……」さっと用意された椅子に軽く腰掛け、ほんの少しだけパスタを巻きとって口に運んだ… 提督「…」 クィーン「……なかなか美味しいではありませんか」 提督「感謝します、クィーン」 クィーン「いいえ…ところでアドミラル」 提督「はい」 クィーン「あとで話がありますから、余の部屋へお越しいただければと思います……それでは…」しゃなりしゃなりと優雅な歩みで出ていくクィーン… 提督「…分かりました」(…まさか「『娼婦のスパゲッティ』なんて言うものを食べさせて、無礼だから処刑する」とかじゃないわよね……) http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/73
74: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/13(火) 02:45:06.18 ID:FWz1EF2O0 …しばらくして・クィーンの部屋… G級「連れて参りました、陛下」 クィーン「ご苦労様です…下がってよろしい……」 提督「…それで、私にどのようなご用でしょうか?」 クィーン「ええ…実を言いますと、そろそろアドミラルにはお帰りになって頂きたいと思っているのです……」 提督「そうですか」(ふぅぅ…これでようやくライモンに会えるし、深海棲艦の作るイギリス料理ともおさらば出来るわね♪) クィーン「はい……この一週間ばかりアドミラルを「捕虜」とはいえ我が方でもてなしておりましたが、あまりアドミラルにいられると余の部下たちに悪影響があると考えているのです…したがって、余はアドミラルを数日中に潜水艦に乗せてお返しするつもりです……」 提督「悪影響ですか…「あまり美味しいイタリア料理を食べさせるな」という訳ですね♪」 クィーン「ふふ……それもありますが、アドミラルもお気づきでしょう…彼女たちの態度を」 提督「…と、言いますと?」 クィーン「アドミラルの写真を回しては色欲を覚えている者たちがいるのですよ…なかなか刺激的な写真ですから……」 提督「あ、あれは…その…///」(もうあちこち触られたりしているけど…) クィーン「…存じております。とにかく余は地中海での勝利のために戦っているのですから、イタリア料理や数枚の写真のせいで戦意を失ったり、集中を乱されては困ります……それに、なかなかあのG級を手厚くもてなしてくれたそうですから、その礼として解放することに決めました……ついてはこれを」一枚の便せんとペンを差しだした 提督「…これは?」 クィーン「受け渡しに際して余の部下を攻撃しないようアドミラルの艦隊に伝えるのです…さぁ、お書きなさい」 提督「はい……これでよろしいですか?」 クィーン「よろしい…余に嘘をついていればわかりますから。では、どうぞお戻りなさい……」 提督「はい、クィーン」(…あぁ、やっと太陽の下に戻れるのね♪) クィーン「それと言っておきますが、ここにも日の当たる場所はありますよ…」 提督「…え?」 クィーン「…聞かれませんでしたから余も言いませんでしたが、廊下の石段を登って行けば見張り台があります……」 提督「…では後で日光浴をさせてもらいます」 クィーン「ええ、ご自由に…」 ……… …その日の夜・カンピオーニ家の海岸… ライモン「…ふぅ」青っぽい明るい月を眺めながらため息をついているライモン…横には提督にもらった豪奢なナイトガウンを羽織ったチェザーレが立っている…… チェザーレ「ライモンド、今日はもう疲れたろう…もう休むことだ」 ライモン「ええ……ですが提督もどこかであの月を見ているかもしれないと思うと、なかなか戻れなくて…」 チェザーレ「うむ、気持ちは分かるが……ん?」ふと視線を落とし、波打ち際に揺れている瓶を見つけたチェザーレ ライモン「どうしました?…あ、瓶ですね……中に何か入っています…」 チェザーレ「うむ、手紙のようだが……ちょっと待て、ライモンド。この字は提督のものではないか?」 ライモン「!?」慌てて瓶の外から見える字を月明かりにかざす… チェザーレ「どうだ?」 ライモン「…はいっ、間違いありません!……ムツィオ、クラウディアさん、シルヴィアさん!」瓶をしっかり抱えると、家に通じる小道を駆け上がっていく… チェザーレ「…ふふ。それにしても、さすがチェザーレたちの提督よ…「瓶に入った手紙」とはなかなかロマンティックではないか……ライモンド、そう慌てると転んでしまうぞ?」ライモンの後を追って小道を上るチェザーレ… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/74
75: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/13(火) 11:14:23.51 ID:FWz1EF2O0 …居間… アッテンドーロ「…それじゃあ姉さん、内容を読んでよ」 ライモン「ええ……「愛しのみんなへ…」もう、こんな時にまでこういうことを言うなんて提督らしいですね///」 シルヴィア「ふふ、それだけ愛されているのよ」 ライモン「///」 アッテンドーロ「で、続きは?」 ライモン「ちょっと待って…「今、深海棲艦たちの巣窟の中でこれを書いています。ずっと太陽の見えない場所にいたので何日経っているのかもわかりませんが、とりあえず身体に問題はありません…どうやら深海側は、以前の作戦で鎮守府が「捕虜」にした「G」級の扱いに感謝し、お礼を言いたかったようです」…と書いてあります」 チェザーレ「全く。深海棲艦の奴ばら、いらぬところで律儀な真似を…心配で夜も眠れなかったというのに……」 ライモン「えーと…「とりあえず数日中に帰してくれるそうなので、私を乗せた深海棲艦を攻撃したりしないよう手はずを整えておいてください。搭乗するのはおそらく深海側の潜水艦「T」級になるはずです…」ですって!」 クラウディア「まぁまぁ…フランカが無事でよかった、うんとごちそうを用意しないと♪」 アッテンドーロ「じゃああのふざけた連中を沈めたりしないように準備しないとね…チェザーレ、また電話することになりそうですね?」 チェザーレ「提督が無事に帰って来るなら電話くらいお安いものだ…他には何か書いてあるか?」 ライモン「はい…「みんなにうんと心配をかけた分、休暇の残りは好きなだけわがままを聞いてあげるつもりでいます…とにかく無事にみんなに会うこと、それと温かいお風呂、美味しい食事が待ち遠しくてなりません」…だそうです」 クラウディア「ふふ、そうだろうと思ったわ♪」 シルヴィア「ふぅ…これでようやく安心して過ごせるわね」提督のいない間寂しげに鳴いていたルチアの頭を優しく撫でる… ルチア「クゥーン…?」 ……… …数日後・深海棲艦の洞窟… クィーン「…数日前に申し上げた通り、準備していた捕虜返還の手続きが整ったので…本日をもってアドミラル・カンピオーニをイタリア側に返還することとなりました……」 タリスマン「それは残念だ…せっかく捕虜にしたのに」提督の側に座っている「タリスマン」がぼやく… トーベイ「仕方あるまい……まぁまた捕虜にすれば良いではないか。わが軍はこれまでもイタリアの将官など網ですくえるほど捕えているのだから」 提督「…陸軍はともかく、海軍は別よ?」 クィーン「皆、静かに。それでは乾杯するとしましょう……アドミラル」 提督「あぁ、はい」グラスを持って立ち上がった… 提督「えーと…なにはともあれ、イギリス地中海艦隊のもてなしに感謝しております。少なくとも今回は砲弾ではなくウィスキーでしたから」提督の冗談にそこそこ笑いらしいものが漏れる 提督「それでは、お互いに武運長久を願って…げほっ、ごほっ!?」グラスを持ち上げ透明な液体を一気に流し込んだ提督…と、カッとするような味が喉を焼いた…… ベルファスト「…へへっ、うまくいった」数人が底意地の悪い笑みを浮かべている… 提督「…なに、これ……!?」 クィーン「…三倍量(トレブル)のジンに純アルコールを数滴……そうでしょう?」 ベルファスト「ええ、クィーン…どう、アドミラル。ダイナマイトでしょう…?」小さいハープを片手にイェーツの詩か何かを口ずさんでいる… 提督「うぇぇ…ひどい味……」顔をしかめている間にも意識がぼんやりして、目の前が揺らぎ始める提督 クィーン「…余も出口の場所を見られるのは好ましくありませんので……許しなさい、アドミラル…」今度はいきなり背後から目隠しをされ、ひょいと誰かに持ち上げられた… 提督「えっ、もう出発ですか…?」 クィーン「いかにも…それでは、よい航海を……」 提督「うぅ…ん」…急に持ち上げられたりしたせいでアルコールが回り、ふっ…と意識を失くした提督 クィーン「それでは頼みましたよ…」 トーベイ「了解…トーベイ、出撃します」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/75
76: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/15(木) 01:17:59.12 ID:8UcHvThF0 …数日後・深夜… ライモン「それにしても…深海棲艦たちは本当に約束を守ってくれるでしょうか?」ざぁぁ…っ、と波音だけが響く浜辺に立って合図の懐中電灯を持ち、不安げな表情のライモン…… チェザーレ「…ブリタニアの二枚舌が信用できないか、ライモンド?」 ライモン「ええ…いきなり提督をさらっていくような相手ですし」 アッテンドーロ「まぁね、姉さんの言うことも分かるわ。でもわざわざ瓶入りの手紙まで送りつけておいて「嘘でした」って言うことはないんじゃない?」 ライモン「うん…わたしもそう思うけど……」 アッテンドーロ「じゃあ姉さん、合理的に考えてみましょうよ…私たちに提督を返すふりをすることで、あちらさんが何か得をすることがある?」 ライモン「うーん……わたしたちがショックを受けるとか」 アッテンドーロ「それだけならこんな回りくどいことなんてしないわよ…ね?」 ライモン「そう言われてみればそうかも…でも提督が戻って来るまでは安心できないわ」 アッテンドーロ「まぁね……って姉さん、あれ!」…沖合に浮上した潜水艦のぼんやりしたシルエットが霞んで見え、豆電球のようなぽっちりした明かりが点滅した チェザーレ「合図で間違いないようだ…ライモンド」 ライモン「は、はいっ…!」懐中電灯を点滅させ、合図を返す… チェザーレ「…さて、どこから来るのやら」 ライモン「そうですね……あ!」浮上した潜水艦とは別の方向から一隻のゴムボートが近づいてきて、砂浜に乗り上げると誰かが降りてきた… タリスマン「……捕虜の返還に来た」 ライモン「…提督、提督っ!」 提督「…」くしゃくしゃで染みだらけになったナイトガウンを羽織り、タリスマンに担がれてきた提督… アッテンドーロ「…提督におかしな真似はしていないでしょうね?」 タリスマン「ああ…少し気を失っているだけだ、すぐ回復する……それと…」 チェザーレ「何だ?」 タリスマン「陛下からのアドミラル宛ての親書がある…後で渡してもらいたい」 チェザーレ「うむ、なら受け取っておく…これでよいな?」 タリスマン「結構だ……では失礼する、次に見るのは照準器越しだろうな…」 アッテンドーロ「それはこっちの台詞よ…もう用はないからとっとと海の底にでも帰りなさい」 タリスマン「言われなくとも……それでは…」ゴムボートを押して浜から出すとひらりと乗り込み、そのまま沖合に消えて行った… チェザーレ「なかなか素早かったな…ところで提督は?」 ライモン「いま起こしています……提督、提督っ!」 アッテンドーロ「ちょっと、本当に無事なんでしょうね……」 提督「…う、うぅん……」 ライモン「提督…っ!」抱きついて砂浜に押し倒し、あたり構わず身体中にキスを見舞いつつ涙をこぼした… 提督「…ただいま、ライモン……泣かないで、ちゃんと私は戻ってきたわ…ん、ちゅ…っ……」提督は綿のように疲れ切っていたが、それでもライモンにキスを返し、アッテンドーロとチェザーレにもうなずいた… ライモン「あぁ、よかった……本当に心配で心配で…わたし、どうにかなっちゃいそうでした……」 アッテンドーロ「本当よ、まったく…姉さんったら自分を責めるわ、艦隊のみんなに電話をかけようとしたりで、もう大変だったんだから」 チェザーレ「まぁ、何はともあれ「終わりよければすべてよし」と…しかし、よく返してもらえたものだな?」 提督「あー…うん。それがどうも、私が料理を作ったり現代の事を色々教えたりしたら「戦意高揚の邪魔」になるって思ったみたい」 チェザーレ「なるほど…確かに美味い物を食って、恋だの愛だのを知ったら深海暮らしなどやってられんだろうからな……」 提督「ええ、そう言うことだったみたい……ライモン、んーっ♪」 ライモン「はいっ…ちゅぅぅっ……んっ?」 提督「…どうかしたの?」 ライモン「…何だか今日の提督は変な味がします……もしかして深海棲艦ともしたんですか?」 チェザーレ「あー…ところで提督よ、ひどく磯臭いな……クラウディアが風呂を沸かしているはずだから、汚れを落としてさっぱりしたらどうか?」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/76
77: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/15(木) 01:58:20.73 ID:8UcHvThF0 ライモン「むぅ…チェザーレさん、わざとですか?」 チェザーレ「何がだ、ライモンド?…とにかく提督を家まで運ぶのが先決ではないのか?」 ライモン「あっ、そうでした…提督、わたしにつかまって下さい」 提督「うん、ありがとう……よいしょ…」むにゅ…と提督の柔らかい乳房が背中に当たり、頬を赤らめながら肩を貸すライモン…… …カンピオーニ家・玄関… ライモン「よいしょ…ここまでくればもう大丈夫ですね?」 提督「ええ、チェザーレも、ムツィオもありがとう…ちゅっ♪」 チェザーレ「…なに、愛しい提督のためならこのくらい構わぬよ♪」 アッテンドーロ「ええ…姉さんにばっかりキスしてるから、私たちの事は忘れているのかと思ったわ」 提督「ふふ、そんな訳ないでしょう…」と、玄関先にシルヴィアとクラウディアが立っていて、足下に寄り添うようにルチアも座っていた…… クラウディア「…フランカ!」 提督「ただいま、お母さ…んむっ!」いきなり抱きつかれ、甘い匂いのする胸元に顔を押し付けられる提督… クラウディア「もう、無事でよかったわ…怪我はない?…お腹が減ったでしょう。お風呂も準備してあるわ…それより一晩寝たいかしら?」 提督「んー…んーっ……」 シルヴィア「いいけど、とりあえず放してあげたら?…フランカが窒息するわよ」 クラウディア「あら、いけない///」 提督「ぷはぁ……改めて迷惑をかけてごめんなさい、お母さま、シルヴィアおばさま…でもどうにか無事で済んだわ」 シルヴィア「いいのよ、ちょっとぐらい迷惑をかけるぐらい……クラウディア、これでようやく安眠できるわね?」 クラウディア「ええ。ところでシルヴィア…私、安心したら人肌が恋しくなっちゃったわ……///」 シルヴィア「はいはい、まずはフランカの面倒を見てからね」 ルチア「ワンワンワンッ…!」尻尾をちぎれそうな勢いで振り、提督に飛びつくルチア… 提督「あー、よしよし…ごめんね、ずっと心配させて」 ルチア「ワフワフッ…♪」 …しばらくして・浴室… 提督「…あいたた」洞窟の中で過ごしていたせいか、あちこちに擦り傷やちょっとした切り傷を作っていた提督…後ろからライモンに洗ってもらいながら、痛みに顔をしかめている… ライモン「大丈夫ですか?…深海棲艦たちに拷問とか、ひどい目に合わされたりしませんでしたか?」 提督「拷問はなかったけれど、ひどい目にはたびたびあったわね…」 ライモン「一体どういう目にあったんですか、提督?…今度深海棲艦を捕まえたら同じ目にあってもらいますから」 提督「ありがとう、ライモン…気持ちは嬉しいけど、イギリス料理じゃ深海棲艦には効果ないでしょうね」 ライモン「えっ?…あー、イギリス料理を食べさせられたのですか……」 提督「ええ、出来るものなら二度と経験したくない味だったわ…あっ、そこ気持ちいい……あふっ♪」優しく谷間を撫でるライモンの手に甘い吐息をもらす… ライモン「も、もう…あんまり甘い声を出さないで下さい……提督?」 提督「すぅ…すぅ……」 ライモン「あ、寝ちゃいましたか……仕方ありませんね…」そっと残りの部分を洗うと優しくタオルで拭き、寝室のベッドまでお姫様抱っこで運ぶ… 提督「…んぅ、ライモン……」 ライモン「はい、わたしはここですよ…///」そっと服を脱ぐとベッドにもぐりこみ、お風呂上がりでまだ暖かい提督の身体にぴったりと寄り添った… 提督「んふふ……すぅ…」 ……… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/77
78: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/15(木) 03:32:14.30 ID:8UcHvThF0 …思っていたよりずっと時間がかかってしまいましたが、これで「提督が深海棲艦に捕まる」ネタは完了ですね… …ちなみに深海棲艦たちのモデルになった艦はそれぞれ…… 戦艦…クィーン・エリザベス級 第一次大戦時の最新鋭高速戦艦。四隻の計画であったが英領マレーからの献金で建造された「マレーヤ」を含む五隻に。第一次大戦時には史上最大の海戦「ジュットランド海戦」などに参加し奮戦。 第二次大戦に際しては「長門」型のような舷側副砲を廃止して4.5インチ(11.4センチ)連装高角砲の搭載など近接対空火力増強の改修、一本煙突化による甲板の有効利用、ウォーラス水偵の格納庫を増設するなど航空艤装の強化を受け、ノルウェイ、地中海、インド洋と転戦。特に「ウォースパイト」の活躍が有名 巡洋戦艦…リパルス(レパルス)級 第一次大戦時の第一海軍卿(海軍司令長官)フィッシャー海軍卿の肝いりで建造された巡洋戦艦の一つ。 帝政ドイツ海軍の巡洋艦を捕捉・撃破できる火力と29ノットと言う高速を求めた分装甲は薄かった…が、ジュットランド海戦では戦艦隊到着までのつなぎ、あるいは高速戦艦の扱いを受けてドイツ主力艦隊と交戦。数隻が火薬庫の引火で轟沈するなど防御面の不足が目立ち、第二次大戦前に舷側装甲や航空艤装の追加など数々の近代化改修を受けている。 リパルスは極東艦隊の一隻としてマレー沖海戦に参加、「プリンス・オヴ・ウェールズ」と共に一式陸攻や九六陸攻の猛攻を受け戦没したが、その優れた指揮と高速で多くの魚雷をかわしてみせた。一方、二番艦の「リナウン」は本国艦隊や地中海艦隊などを歴任し無事に退役。 重巡…「カウンティ」(州)級 ワシントン条約の範囲内で七隻を建造した「ケント」級、その改良型で四隻建造の「ロンドン」級、最終型として二隻建造された「ノーフォーク」級と、「ロンドン」をのぞいていずれもイギリスの州から名前を取っている8インチ(20.3センチ)砲重巡。 広大な植民地警備のため安くて小型の軽巡を多数整備したイギリスながら、敵の軽巡や仮装巡洋艦を撃破するため8インチ砲を搭載し、長い航続距離を持つ重巡として整備したクラス。 通商ルート保護のための遠距離航海が多くなることを想定していたため居住性や航続距離はよかったが、予算や隻数の都合で「一万トン以内」に押さえようとしたことから防御を削り、重巡でありながら舷側装甲が25ミリという弱体な艦に…第二次大戦前にそれぞれ対空火器や装甲の増設を行っているが、どの艦もバランスが悪かったり、後発組だった日米独伊などの重巡に比べて能力が劣るので評価自体はあまり良くない スピットヘッド観艦式で日本の「足柄」と比較され、「客船」などと言われたのもこのクラス 軽巡…「C」級 第一次大戦から似たような艦を連続して建造していたイギリス「C」級軽巡のうち、第二次大戦に投入された「カレドン」級四隻に「シアリーズ」級五隻、「ケープタウン」級五隻。 4000トン余りの小ぶりな艦に6インチ(15.2センチ)単装砲をおおよそ5基、21インチ(53.3センチ)連装魚雷発射管4基と言った火器を搭載していた…が、第二次大戦時には旧式化していたため、当時は珍しい防空軽巡として改装、各国海軍の注目を浴びた。特に陸が近く空襲の激しい地中海方面に投入されて多くが戦没している 軽巡…「カヴェンディッシュ」(改バーミンガム)級 第一次大戦にイギリス海軍を振り回した仮装巡洋艦や通商破壊任務を帯びた艦を捕捉・撃破するために整備された巡洋艦。一万トン近い大柄な艦形に敵艦をアウトレンジ出来る7.5インチ(19.1センチ)砲を7基搭載し、速度も30ノットに届こうという強力な「軽巡」……だったが、第一次大戦後の海軍軍縮条約で「6インチ砲以上の艦」と言うことで「重巡」扱いを受けたり、大型の船型から何かと実験に使われ、ネームシップの「カヴェンディッシュ」が一時期空母「ヴィンディクティブ」になったりと忙しかった…第二次大戦では対空火器を増強して船団護衛などで活躍 クラス名もネームシップから「カヴェンディッシュ」級、二番艦から「ホーキンズ」級、軽巡「バーミンガム」級の改型と言うことで「改バーミンガム」級、エリザベス一世時代の提督名から来ていることから「エリザベサン」級などとさまざま… 軽巡…「エディンバラ」級 町の名前を冠した戦前の新型軽巡「タウン」級の最終グループで、「エディンバラ」と「ベルファスト」の二隻。 竣工が1939年と第二次大戦勃発時には最新鋭艦で、三連装6インチ砲を四基搭載した一万トンクラスの堂々とした軽巡。公称32ノットと言う速度に甲板防御、舷側防御を増した船体はマルタ島を救援する輸送船団の護衛役として最適だった。ネームシップ「エディンバラ」は戦没したが、「ベルファスト」は戦後も生き延び、テムズ川で記念艦になっている ちなみに深海棲艦「ベルファスト」が竪琴を持っているのは1586年に「アイルランドのシンボル」としてエリザベス一世が選んだ「ブライアン・ボル・ハープ」という竪琴から…モデルの竪琴はダブリンの「トリニティ大学博物館」にあるということで、アイルランド生まれのビール「ギネス」にも描かれている… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/78
79: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage] 2018/02/15(木) 17:20:11.82 ID:P/qRRQWGo 乙 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/79
80: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/16(金) 01:47:49.79 ID:wqApxChN0 …翌朝… 提督「…ん、んんぅ……朝の光が眩しいわね」一週間近くもの間、ずっと洞窟のような場所にいたせいか日差しが目を射る……目を細めてサングラスを探す提督…と、ベッドで寝息を立てている可愛らしいライモンの姿が目に留まった… 提督「…♪」いたずらっぽい笑みを浮かべると化粧台をから何かを取りあげてライモンに近づき、それから下の階に下りて行った…… …食堂… 提督「おはよう。お母さま、おばさま…それにチェザーレ♪」ちゅっ…と頬にキスをすると、食卓についてコーヒーと新聞を取った… チェザーレ「うむ、おはよう…この何日かはチェザーレはなかなか寝つかれなくてな、昨夜は泥のように眠らせてもらった……アッテンドーロもまだぐっすり眠っているぞ♪」 提督「ごめんね…心配をかけたわ」 クラウディア「いいのよ、フランカが無事に戻って来ただけで充分…はい、朝ご飯よ♪」 提督「ありがと、お母さま♪」 シルヴィア「ま、いい刺激になったわね…」 提督「ふふっ…おばさまったら♪」 ライモン「…ふわぁぁ……提督、こちらでしたか…おはようございます♪」珍しく寝ぼけまなこで下りてきたライモンは、左右の頬にキスをしてから食卓につこうとする… チェザーレ「ほう…なかなか大胆だな♪」 クラウディア「あらあら…うふふっ♪」 シルヴィア「へぇ…」 提督「…くすっ♪」 ライモン「あの……わたしの顔に何かついてます?」 チェザーレ「ふふふ、鏡を見てみるといい…♪」手鏡を差しだすチェザーレ ライモン「…鏡ですか…って、あぁっ///」ほっぺたに濃い紅のルージュでキスマークが付けられている… 提督「くっ…ふふっ、あははっ♪」 チェザーレ「ははははっ、傑作だ♪」 ライモン「も、もう…提督がさらわれてからというもの、わたしが寝ずに頑張っていたのにこのいたずらですかっ……///」 チェザーレ「と、口で言う割にはにやけているな…♪」 クラウディア「もう、フランカったら……ほら、ライモンちゃん。メイク落としを貸してあげるから…」 ライモン「…そ、そうですね……でも少しもったいないような///」 シルヴィア「ふぅ…朝から甘いわね……」 …食後… 提督「はぁぁ…美味しかったぁ……幸せ…♪」 クラウディア「うふふ、お昼にはフランカの好きなものをいっぱい作ってあげるから…ね♪」 チェザーレ「うむ、無事に戻ってきたお祝いという訳だな…ところで……」名前が並んでいる紙を渡される… 提督「なぁに、これ…みんな私の知り合いばっかりだけど?」 チェザーレ「いかにも…このリストに書いてあるのは提督が連れ去られてから情報を聞き出したり、「損傷を与えた敵潜の撃沈確認」と言う名目で手を借りた軍のお知り合い方だ」 提督「こんなに聞いて回ってくれたの……本当にありがとう…///」 チェザーレ「うむ…が、間違っても公にすることも出来ぬ事ゆえこの方々には本当の事情は伏せておき、その上で「提督からの個人的な頼み」と言うことにして聞き出したのだ……つまり、「見返り」が必要という訳だな」 提督「…え、ちょっと待って」 チェザーレ「…夏季休暇の残り数日はプレゼントの購入とお礼の電話にかかりきりになってもらうのでな、よろしく頼むぞ…♪」 提督「…うぇぇ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/80
81: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/18(日) 01:46:25.00 ID:JBRTlGme0 …夏季休暇最終日… 提督「はぁ…ふぅ……ひぃ…」暑い夏の最中にランチアと自宅を往復する提督…隣にはシルヴィアのオープンクーペ、綺麗なイタリアンレッドの「アルファロメオ・ジュリエッタ」が停まっていて、クラウディアもリボンやおしゃれな包み紙に包まれた贈り物をトランクから降ろしている…… チェザーレ「やれやれ…これでようやく全部用意できたな」 アッテンドーロ「私たちに心配をかけたんだから、そのくらいはしてもらわないとね」 提督「それにしたって…お礼の電話と礼状、それにプレゼントのお買いもの…まったく、これじゃあちっとも夏季休暇にならないわ……」 ライモン「まぁまぁ、またお世話になることもあるかも知れませんし…ね?」 提督「ええ、そうね…はぁぁ……」 クラウディア「うふふっ、お疲れさま…それじゃあこれは宅配便にお願いしておくから、宛て名とあなたの任地だけ書いておいてね♪」 提督「はぁーい……お母さま、おばさま…買い物につき合ってくれてありがとう」 クラウディア「いいのよ、お買いものするの楽しかったもの♪」 シルヴィア「それにしても時間がかかったけれどね…ま、たまには「ジュリエッタ」も走らせてあげないといけないし」 提督「車を出してくれて本当に助かったわ、シルヴィアおばさま」 シルヴィア「別にいいわよ…さ、お昼にしましょう?」 提督「はぁい♪」 …翌朝… 提督「それじゃあ忘れ物はなーい?」抜けるような快晴の空の下、すっきりしたサマーワンピースとサングラス姿の提督 ライモン「はい、大丈夫です」 アッテンドーロ「同じく、ばっちり準備したわ」 ルチア「ワフッ…♪」後部座席の床に寝そべり、ムツィオに頭をかいてもらっている… チェザーレ「うむ…それに忘れていることに気づいたら忘れ物ではあるまい」 提督「そういうことを言わないの…それじゃあ、お母さま、おばさま……また冬の休暇の時にでも戻ってくるわ。あと、秋の初めに基地祭があるから、よかったら来てね♪」 シルヴィア「そうね、その時にはお邪魔するわ…」 クラウディア「ええ…あ、そう言えば♪」 提督「なぁに、お母さま?」 クラウディア「よかったらこれを持って行って?」口にテープを貼って閉じてある大きな紙袋を渡した… 提督「これ、なあに?」 クラウディア「ふふっ、それ?お母さまから可愛いフランカへ悪ふざ……フランカが艦娘の女の子たちと親睦を深めるのに使えるように用意したの♪」 提督「今、「悪ふざけ」って聞こえた気がしたのだけど…」 クラウディア「ふふっ、そんな訳ないじゃない♪…それじゃあ、タラントについたら電話をちょうだいね?」…ちゅっ♪ 提督「ええ、そうするわ…それじゃあ、行ってくるわね」 シルヴィア「行ってらっしゃい…♪」 提督「ええ、行ってきます♪」運転席から手を出してクラウディアとシルヴィアに手を振ると席に座り、滑らかにアクセルを踏み込んだ… ライモン「おかげで忙しい夏休みでしたが、なかなか刺激的でしたね…?」 提督「ええ、それにしても刺激的すぎたけど……さ、タラントまで飛ばして行きましょう♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/81
82: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2018/02/18(日) 02:23:29.99 ID:JBRTlGme0 …鎮守府… 提督「はぁぁ…着いたわね」電動ゲートに暗証番号を入れて門を開けると、ランチアを鎮守府の道に乗り入れる… ライモン「ふふ、なんだか懐かしいですね♪」 アッテンドーロ「あーあ、これで夏休みも終わりなのね…改めて実感しているわ……」 チェザーレ「そう言うな、ここでもたいていはゆっくり出来るではないか♪」 アッテンドーロ「まぁね…それより、施設の掃除とか電源の立ち上げとかしないといけないんでしょ……提督、私も手伝いましょうか?」 提督「お願いできる?」 アッテンドーロ「いいわよ…それに電気と水道なしじゃ困るのはこっちだもの」 提督「ありがと♪」 …そう言っている間にも提督のランチアは入り口側に建っている「事務棟」こと、無機質なコンクリート二階建ての建物を回り込み、一変して花の咲いている前庭と建物の明るい黄色が陽光に映える、両翼の広い別荘風の「本館」前に車を停めた……提督は三人と一匹に降りてもらうと横手の車庫にランチアを入れ、入り口の石段に荷物を降ろすと、大きな観音開きの玄関を開けた……途端にむっとした空気が押し寄せてくる… ライモン「うわ…!」 チェザーレ「むむむ……」 アッテンドーロ「ちょっと、ひどく空気が蒸れているわね…」 提督「本当ね…それじゃあ手分けして全部の窓を開けましょう、ルチアはゆっくりしてて良いわよ♪」 ルチア「ワンッ♪」提督の足下にまとわりついて尻尾を振る… 提督「あらそぉ?それなら一緒に行きましょうねぇ♪」 チェザーレ「相変わらずルチアと一緒になると甘ったるい話し方になるのだな…」 ライモン「…全くです」 …しばらくして… ライモン「ふぅぅ…全部の窓を開けてきました……やっぱり海風が入ってくると涼しいですね♪」 提督「そうね。それじゃあ次は蛇口を開けて水を流して、あと建物のブレーカーを入れないと」 アッテンドーロ「電源ってレーダーは別なのよね?」 提督「ええ、あれは別に電源があるし、通信室と冷蔵・冷凍室はいつも稼働状態だから…あくまでもみんなの部屋の分ね」 アッテンドーロ「だったらなおの事ね…とっとと入れて来るわ」 提督「あ、電源は私がやるから水道をお願い♪」 アッテンドーロ「了解…はぁ、みんなにも早く戻ってきてほしいわね」 提督「あら、誰に会いたいの?」 アッテンドーロ「そういうのじゃなくて、色々やることが多いからよ…とりあえず、水道の栓を開きっぱなしにすればいいのね?」 提督「ええ。…それと、手伝ってくれたムツィオたちには私の特製パスタをごちそうしてあげる♪」 アッテンドーロ「ならいいけど……格別美味しいのを頼むわよ?」 提督「はいはい♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/82
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