イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (965レス)
イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/
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830: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2022/04/17(日) 02:36:41.50 ID:XwueR7TO0 ラーセン「ところで、スウェーデンで何かご存じのことはありますか?」 提督「そうですね……スウェーデンと言うと、サーブの戦闘機に「ヴィズヴィ」級フリゲート、Strv.103(Sタンク)のように、ユニークで優秀な兵器を持っているイメージですね……他に知っている事と言えば、恥ずかしながらグレタ・ガルボやイングリッド・バーグマンのような綺麗な女優が多いことと、警察小説の「刑事マルティン・ベック」シリーズ……そうそう「ニルスの不思議な旅」も子供の頃に読んだことがあります」 …提督は自分でも知識が偏っていることに苦笑いをしながら、運転席でハンドルをさばいているラーセンにそういった… ラーセン「なるほど、「ニルスの不思議な旅」ですか。 あれは子供のためにスウェーデンの地理と歴史を楽しく学べるよう書かれた児童文学ですから、あれを読めばスウェーデンの大まかなところが理解できますよ……あとでゆかりの場所もご案内しましょう」 (※ニルスの不思議な旅……セルマ・ラーゲルレーヴの児童文学。動物をいじめていたり親の言いつけを守らない悪童ニルスが妖精をいじめたために小さくされてしまい、ガンの群れについて行こうとして飛び立った家のがちょうを捕まえようとして飛び立ってしまい、そこから渡りの中で様々な経験をして成長するお話。スウェーデンの地理や歴史を物語として楽しみながら学べるようになっている) ラーセン「……それにしても時間の都合でカールスクルーナに寄れないのは残念ですね。私の鎮守府もカールスクルーナにあるので、ぜひご覧になって欲しかったのですが」 (※カールスクルーナ…スウェーデン南部に位置する軍港都市で世界遺産。冷戦中の1981年、ソ連の「ウィスキー」級潜水艦が座礁した「ウィスキー・オン・ザ・ロック」事件が起きた場所でもある。「ニルスのふしぎな旅」ではカール十一世のブロンズ像と、カールスクルーナ提督教会にある有名な老人型の寄付箱「ローゼンボム」の像が出てくる) 提督「ラーセン大佐はカールスクルーナ鎮守府の司令なのですね」 ラーセン「ええ……生まれたのは南部のマルメですが。 マルメはストックホルムよりも暖かですし、住んでいる人も穏やかな良いところですよ。それにコクムスの造船所もあります」 (※コクムス……スウェーデンの造船会社。1840年からあって、所有していたガントリークレーンはマルメの名物だった。潜水艦の建造にたけており「ゴトラント」級を始めとするAIP(非大気依存)システム搭載の通常動力潜水艦では高いノウハウを持つ。海自の「そうりゅう」型にも技術が導入されている) 提督「そうですね」 ラーセン「ええ。夏場は避暑を兼ねて多島海にある小島の別荘に行って、日光浴をしたり冷たいアクヴァヴィットを飲みながらのんびりしたりして時間を過ごすんです」 提督「自分の島があるなんて素敵ですね♪」 ラーセン「まぁ、スウェーデンは島が多いですから……それと先ほどからのお話を伺っている限りでは少将は映画がお好きなようですが、それで言うとマルメはアニタ・エクバーグの出身地でもありますよ」 提督「やっぱりスウェーデンはきれいな人が多いんですね。ラーセン大佐もとてもきれいな方ですし……それもぎらぎらした太陽ではなくて、静寂の中で輝きを放つ月のようです」 ラーセン「お上手ですね……何かお飲み物でもごちそうした方がよろしいですか?」 提督「いいえ、むしろ私からごちそうさせて下さい♪」 フェリーチェ「カンピオーニ少将」ラーセンに色目を使い始めた提督をたしなめるように、事務的な声を出した…… 提督「あー、こほん……そう、映画は好きですよ」 ラーセン「そうですか。他にもスウェーデンと言えばイングマール・ベルイマン監督や俳優のマックス・フォン・シドー……イタリアと言えば「ヴェニスに死す」に出演した美少年タジオを演じたビョルン・アンドレセンもスウェーデン人ですよ」 提督「ルキノ・ヴィスコンティの映画ですね……幼い頃に見た時は分かりませんでしたが、ある程度大人になってから見ると感情や描写の奥深さに驚かされます」 ラーセン「そうですね、中年の作曲家が名前も知らない美少年に心を奪われてしまう……それだけで済ませることのできない人間の心や、美しいものに心惹かれる感情の機微というのでしょうか……」 提督「ええ。それにヴィスコンティ自身も美少年が好きだったようですから、一層リアリティがありますね」 ラーセン「たしかにその話は聞いたことがあります……そろそろホテルに着きますよ」 …ストックホルム市街は古き良き石造りの建物も多いが、同時にガラスとコンクリートで出来た現代的なビルディングも数多く立ち並んでいる……どちらにもいい点はあるのかもしれないが、淡い黄色や落ち着いた白色の壁の古い建物の方が好ましく思えた… 提督「きれいな街ですね」 ラーセン「ありがとうございます……ですが、私からすると堅苦しくてよそよそしい感じがしますね。もっとも、それは私がストックホルムの人間でないせいかもしれませんが」 提督「いえ、その気持ちはよく分かります。イタリアでもローマはせわしなくて慌ただしい感じですから……どこでも首都というのはそういうものなのかもしれませんね」 ラーセン「かもしれません……さぁ、着きましたよ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/830
831: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/04/18(月) 01:42:06.03 ID:5ZxYdCGc0 …翌日… ラーセン「さてと、手荷物は大丈夫ですか?」 提督「ええ」 ラーセン「分かりました、それでは行きましょう……王宮周辺は車が乗り入れられないので近くで車を停めて、あとは歩きです」 …ガムラスターン(旧市街)と王宮は、ストックホルム市街の周辺に広がる多島海の一つ「スターズホルメン島」に集中している……周囲はクリスマス前とあってバザールが開かれていたりと賑やかで、灰色の冬の空を押し戻そうとしているかのように、あちこちに鮮やかな青と黄色のスウェーデン国旗が翻っている……ラーセンは旧市街の入り口でサーブを停めると、提督とフェリーチェを案内して旧市街を連れ立って歩いた… …ストックホルム宮殿前… 提督「あ、始まったわ……」 …王宮前の広場で行われる衛兵交代式を見学する提督一行……青を基調にした凜々しい礼装姿のスウェーデン近衛兵達が、白馬にまたがり石畳の広場で見事な行進を披露する……およそ半時間あまりにわたる式典を見終えると、周囲の観光客と同じように惜しみない拍手を送った… …しばらくして… ラーセン「……いかがでしたか?」 提督「とても素晴らしかったです、まるで物語に出てくる騎士達のようですね」 ラーセン「気に入ってもらえて何よりです……失礼、少々よろしいですか」 …新市街に戻ってくる途中で広告のついた青色のトラックを見かけると、いささか唐突に車を停めたラーセン大佐… 提督「どうかしましたか?」 ラーセン「いえ……つかぬ事をお尋ねしますが、少将はアイスクリームがお好きですか?」 提督「ええ、どちらかと言えば好きな方ですよ」 ラーセン「そうですか、それはよかった……では行きましょう!」 提督「ラーセン大佐?」 ラーセン「ああ、そういえば少将はご存じないですね……あの車は「ヘムグラス(Hemglass)」のアイスクリーム販売車ですよ」 …妙にのんきなオルゴールのようなメロディを響かせながら道端に停まった青色のトラック……と、たちまちあどけない子供たちから、ネクタイを締めた生真面目そうな会社員、杖をついたお年寄りまで、ありとあらゆる年齢層の人がトラックの周りに集まってくる……どちらかと言えば落ち着いていてあたふたすることの少ないスウェーデン人が、我先にとトラックの周りに集まってくるのに何とも言えない違和感を覚えた提督… 提督「えーと……」 ラーセン「あぁ、スウェーデン語で書かれているからどれがどの味が分かりませんか? 英語でよろしければ翻訳しますよ?」言うよりも早く自分のアイスクリームを注文しているラーセン…… 提督「そうではなくて……」 ラーセン「では何か……もしかしてお好みの味がありませんか?」 提督「いえ、そういうわけでも……」 フェリーチェ「……噂は本当だったようね」提督の横に立っているフェリーチェが小声でつぶやいた 提督「どういう事?」 フェリーチェ「あぁ……北欧やロシアの人間はアイスクリームが大好きだって話よ。空気が乾燥しているから、飲み物よりも時間をかけて舐めることが出来るアイスクリームが好まれる……って」 提督「そういうこと……それにしてもこの気温でアイスクリームね。まぁいい経験かもしれないわ」財布からアストリッド・リンドグレーンが描かれた20クローナ札を取り出すと、ラーセンに通訳を頼んでアイスを買おうとする…… (※アストリッド・リンドグレーン……「長くつ下のピッピ」の作者。それ以前の20クローナ札は「ニルスの不思議な旅」と作者のラーゲルレーヴだった) ラーセン「あの、カンピオーニ少将……」 提督「何でしょう、ラーセン大佐」 ラーセン「いえ……スウェーデンのたいていのお店では現金が通じないので。電子マネーかカードの類はお持ちですか?」 提督「あぁ、そういえばそうでしたね……逆にイタリアでは現金以外は信用されないものですから、つい♪」額に手を当てて少しおどけたような身振りをすると、改めて財布からプリペイドカードを取り出した…… …数分後… 提督「……ミカエラは何味にしたの?」 フェリーチェ「普通のバニラ味ね、フランカは?」 提督「キイチゴ味ね……普通のイチゴよりも甘酸っぱいわ」 ラーセン「無事に買えたようで何よりです……出遅れるとすぐなくなってしまいますから」 提督「ふふ……スウェーデンの方はアイスクリームが好きなんですね」整っていて「格調高い」とも言えそうな顔立ちのラーセンが、子供のようにアイスクリームをなめている姿を見ると、何となくおかしさがこみ上げてくる…… ラーセン「ええ、子供の頃から家にはアイスクリームがたくさんありましたよ……どうかしましたか?」 提督「いえ、何でもありません♪」ある意味で面白い体験が出来たと、気温がひとケタの寒空の下で暖かいコートにくるまってアイスをなめた…… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/831
832: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/04/26(火) 11:35:50.37 ID:t2dgCduN0 …しばらくして… ラーセン「カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉。よろしかったら「フィーカ」をご一緒しませんか?」 提督「フィーカ……たしかコーヒー休憩のことでしたっけ」 ラーセン「ええ、よくご存じですね……いかがですか?」 提督「そうですね、ぜひ♪」 …前日にスウェーデン入りしたばかりだと言うのに、すでにコーヒーを飲み続けている気がしている提督……フィンランド人の次にコーヒーを消費し、EU(欧州連合)平均の倍はコーヒーを飲んでいるとされるスウェーデンだけあって「フィーカ(コーヒー休憩)」というと、もはや息をするのと変わらないほど生活に染みついている… …カフェ… ラーセン「カンピオーニ少将、マザリン・ケーキをどうぞ」 提督「ありがとうございます」 …濃く淹れた苦くて熱いコーヒーにたっぷりと牛乳を入れたミルクコーヒーに、小さいタルトのような台にアーモンドのペーストを詰めて、上から粉砂糖でコーティングした甘い「マザリン・ケーキ」を添えた提督……フェリーチェもマザリン・ケーキを取り、ラーセンはしばし考えてスイートロールを取った……カフェとペストリーを売る菓子店を兼ねている「コンディトリー」は、ガラス張りの陳列棚に甘い菓子がいくつも並び、コーヒーの香ばしい香りが漂っている… ラーセン「ええ……ふぅ、やはりこれがないと落ち着きません」きりりとした表情を少しゆるめて、満足げなため息をついたラーセン…… 提督「スウェーデンの方はコーヒーがお好きですね」 ラーセン「そうですね。同じように牛乳も好きですが……ところで昨夜の夕食はいかがでした?」 提督「ええ、美味しかったですよ」 ラーセン「それは何よりです」 …前夜・レストラン… 提督「……わざわざありがとうございます」 ラーセン「いえ、どのみち私も夕食を取りに出かけようと思っていたところでしたから」 …提督たちをホテルに送ってくれた後で「夕食でもいかがですか」と誘いに来てくれたラーセン……提督としては美しいラーセンにそう言われて一瞬わくわくしたが、ラーセンとしては他意はなく、単に外国の将官に気を遣ってそう言ってくれたのだと思い、少しがっかりすると同時に、その気配りを嬉しく感じた……制服から私服に着替えてきたラーセンは淡いグレーのスカートとクリーム色のセーター、それとライトグレイのコートに合わせて、袖口に白い毛皮の縁取りを施したライトグレイの手袋をしていて、脱いだコートと手袋は横に置いてある… 提督「そうだとしても、わざわざ誘って下さるなんて嬉しいです♪」 …いかにもスウェーデンらしいゆでジャガイモとベリーソース添えのミートボールを食べながら、にっこりと微笑みかけた提督……ストックホルムのぴりっと冷たい寒さに対抗して、黒いウサギの毛皮帽に黒革の手袋、それに暖かなクリーム色のラップコートで、下にはふんわりした淡い桃色のセーターとひざ丈のスカートをまとい、ストッキングに黒革のニーハイブーツで足元を固めている……フェリーチェは黒のハイネックセーターに控え目な金のネックレス、割とぴっちりした地味なスラックスを合わせていて、カブのピューレをそえた小ぶりなヒレステーキを味わっている… フェリーチェ「私もスウェーデン語はおぼつかないので、助かりました」 ラーセン「いえ、どうぞお気になさらず……後でクリスマス前のマーケットも寄ってみましょう」 ……… … 提督「……それにしても、うちの艦娘たちも、スウェーデン海軍の「プシランデル」級や「ロムルス」級に会えれば良かったのですが」 ラーセン「そういえば、もともとそちらの艦(フネ)でしたね」 提督「ええ。プシランデル級がもとのセラ級駆逐艦、ロムルス級がスピカ級の水雷艇です……あとは戦後の「トレ・クロノール」級軽巡もアンサルド社のデザインですし、親近感があります」 ラーセン「当時、ソ連やドイツに備えるために艦艇を整備していた我が国にとってみれば、必要な性能があって固いことを言わずに売却してくれるイタリア艦は貴重な戦力でしたからね……何しろ軍艦を建造すると言っても、造船所には限りがありますから」 提督「それに、長い半島と陸地に囲まれた穏やかな海という部分でもイタリアに似ていますし、スペックや性格の部分でも扱いやすかったのではないかと思います」 ラーセン「おっしゃるとおりです……それに数隻とは言え、独ソ両方から中立を守るという意味ではいい時期に艦隊へ編入することが出来ました」 提督「スウェーデンの中立維持は今も昔もなかなか舵取りが難しいですね」 ラーセン「ええ。とはいえ、バルト海の深海棲艦も活動がかなり下火になりましたから……失礼」 提督「……そういえば、スウェーデンの人って歯磨きの後にうがいをしないわよね」化粧室に向かったラーセンの後ろ姿を見送りながら、ふと気になったことを口に出した…… フェリーチェ「ええ……なんでもフッ素の成分をうがいで流してしまわないためだそうだけど。キシリトールガムがやたら多いのもそのためだって聞いたわ」 提督「なるほどね……理屈は分かるけれど、私は遠慮しておくとするわ」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/832
833: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/04/27(水) 17:09:45.16 ID:EOgtssco0 …そういえば4月26日は「海上自衛隊の日」で、海自の創設70周年でしたね。近年ますます世界の情勢が混迷を深める中、活躍している海自の皆さまには頭が下がります……平和で海難事故もなく、金曜カレーの味を競うような穏やかな日々が続けば良いのですが… …それにしても旧帝国海軍の駆逐艦や海防艦、米軍のお下がりといった寄せ集めの艦艇群だった当時に比べ立派な護衛艦を持つようになって、本当に隔世の感がありますね… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/833
834: 以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage] 2022/05/06(金) 18:32:27.55 ID:ihDcxAkHO SS避難所 https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/ http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/834
835: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2022/05/09(月) 00:43:40.42 ID:9fHPSI/e0 …艦娘紹介(スウェーデン)… ゴトラント…航空巡洋艦。単艦 世界的にも珍しい航空巡洋艦(水上機運用巡洋艦)。平甲板で構成された船体と、前部主砲として「ボフォース・M/30」152ミリ連装砲、および艦橋両舷のケースメイトに同単装砲一基ずつを備え、後部甲板には75ミリ60口径連装高角砲、および中央部両舷に同単装高角砲、また533ミリ魚雷発射管や機銃少々を装備した。 巡洋艦としては低速で、あくまで武装を強化した水上機母艦といった立ち位置ではあるが、アイデア自体はフランスや日本に影響を与え、「リシュリュー」級戦艦や「利根」型一等巡洋艦の設計、また「最上」型二等巡洋艦などの「航空巡洋艦」化につながったとも言える。 後に搭載機の「ホーカー・オスプレイ」(1928年初飛行の複葉軽爆「ホーカー・ハート」の艦載型)が旧式となり、戦時下にあってカタパルトの変更や代替機の調達がかなわなかったことから、ボフォース製の大傑作である40ミリ60口径「ボフォース・m/36」高角機銃を後甲板に増備し防空巡洋艦となった。 大戦中、スウェーデンは武装中立を維持したので戦績という戦績はないが、ドイツ・ソ連の双方にニラミを利かせ、またドイツ戦艦「ビスマルク」の出撃時にはこれを発見、イギリスに通報することで撃沈の端緒を作っている。艦名はスウェーデンの「ゴトラント島」から。 艦娘「ゴトラント」は軽巡と言いつつも小柄で、火力、防御、速力いずれもそこまで高い能力があるわけではないが、当時のスウェーデン王国海軍でほぼ唯一の巡洋艦ということで頑張っている。「ゴトラント」の名前に影響を受けてか、南部スウェーデン人らしく気さくで人のいい性格をしている。 …… トレ・クロノール級軽巡…二隻。 イタリア艦「R・モンテクッコリ」級や「アブルッツィ」級など、デザイン的に優れていた「コンドッティエーリ(傭兵隊長)」型軽巡の設計案を売り込まれたスウェーデンが、これをベースに設計した新型軽巡。 武装は全てスウェーデンのボフォース製に換装されており、特に当時としては先進的な自動装填機能、仰角70度まで指向できる152ミリ高角砲を主砲とし、同時に高角機銃として高性能を誇るボフォース製「m36・40ミリ60口径」機銃を装備して対空戦に備え、専用の高角砲を持たない所に特徴がある。 一番艦の「トレ・クロノール(三つの王冠)」は43年に進水、就役は戦後の47年。64年には除籍されたが、同じく戦後に就役した二番艦「イェータ・レヨン(黄金の獅子)」はスウェーデン海軍除籍後チリに売却され「アルミランテ・ラトーレ」として1984年に除籍されるまで長く活躍した。 艦名の「トレ・クロノール」「イェータ・レヨン」はいずれもスウェーデン王家の紋章から。 大戦には間に合わなかったことから活躍の機会もなかった「トレ・クロノール」級だが、艦娘として活躍の機会が得られたことから張り切っている。スウェーデン王室のシンボルを冠しているだけに高貴な印象を与えるが、国民とも積極的に関わり合うスウェーデン王室を体現してか、意外と気さくで付き合いやすい。服はスウェーデンらしい青地に黄色のワンポイントが入ったお洒落な礼装。 …… プシランデル級駆逐艦…イタリア海軍の「セラ」級駆逐艦のうち二隻を購入したもので、砲や機銃はスウェーデン軍に合わせてボフォース製のものに換装され、450ミリ魚雷も53.3センチ魚雷に換装された。 塗装もスウェーデン独自の灰色と白にグリーン系の三色で構成された迷彩を施し、イメージがかなり変わっている。 元の「セラ」級は小柄な船体に過剰とも言うべき兵装を搭載していたが、波穏やかなバルト海ではそこまでの影響がなく、航続距離(アシ)の短さも防衛を主とするスウェーデンでは欠点とならず、沿岸防衛や哨戒に活躍した。 服は迷彩服のような色味で、小さいが何でもそれなりにこなせる器用なところがある。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/835
836: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2022/05/21(土) 00:55:46.56 ID:JH8ZyRRw0 …フィンランド・ヘルシンキ空港… 提督「はー、ここがヘルシンキ……って、寒いわね」 フェリーチェ「無理もないわ。気温を見てみなさいよ」それぞれ現地時間とロンドン時間を表示している二つの時計や各種施設の案内が書かれている大きな案内板……そしてそれに付いているデジタル温度計を軽く指し示した…… 提督「うわ、外は氷点下なのね……道理で」 フェリーチェ「暖かいコートで正解ね」 提督「ええ……それにひきかえフィンランドの人ときたら、寒くないのかしら」 …暖房の効いていたフィンエアーのサーブ機から降りてきた提督とフェリーチェは当直(ワッチ)にも使える厚いダブルの軍用コートをきっちり着込んでいたが、それでもなお沁みこんで来るフィンランドの冷気に軽く身震いした……にもかかわらず辺りを行き交うフィンランド人はさして寒そうな様子もなく、一応コートや毛皮の帽子は身に付けているが、当たり前のように歩き回っている… フェリーチェ「きっと慣れっこなんでしょう」 提督「そのようね……それで、お迎えの士官さんはどこかしら……?」 フェリーチェ「……ゲートの所に二人いるわ、きっとあれがそうでしょう」そう言っている間にも丁寧な雰囲気のフィンランド海軍の士官が歩み寄ってきて、ぴしりと敬礼した…… フィンランド軍士官「お待ちしておりました。ようこそフィンランドへ……本官がお二人を送迎することになっております。どうぞこちらへ」 提督「感謝します」 士官「お荷物は下士官に運ばせますので、どうぞお楽に」 提督「ありがとうございます」スーツケースを運んでくれる下士官にも礼を言うと、メルセデスの後部座席に腰を下ろした…… …所帯が小さいフィンランド軍は、陸・海・空・それぞれの司令官を少将が務めていることもあり、「はるばるイタリアからやって来た将官」という立場である提督に対して、わざわざ前部のフェンダー部分に軍のペナントを立てた立派なメルセデスのSクラス乗用車と随伴車が一台ついた車列で迎えに来てくれていた……ぜいたく自体は嫌いではないが、仰々しいのが苦手な提督としては別にタクシーでも構わなかったが、車内が暖かく乗り心地がいいのはありがたかった… フィンランド軍士官「それでは、本官がヘルシンキのホテルまでお送りいたしますので」 提督「お願いします」 …滑らかに走り出したメルセデスのシートに深々と腰かけ、窓からの景色を眺めつつフェリーチェに話しかけた… 提督「それにしても北欧は色が少ない感じね。 白と灰色と針葉樹の緑……建物に赤や黄色を使いたくなる気分も分かるわ」 フェリーチェ「同感」 提督「フィンランド海軍の艦娘たちと会う機会はあるかしら? スウェーデンの娘たちとは会えなかったし」 フェリーチェ「それなら会議には随伴として来ているはずだから、きっと会えるわ」 提督「そう、良かった♪」 フェリーチェ「ええ……ところでストックホルムで買い込んでいたクリスマス飾りは鎮守府へのお土産?」 提督「そうよ。スーツケースには着替えくらいしか入っていないし、いざとなったら宅配便で送っちゃえばいいものね」 フェリーチェ「なるほど、フランカも色々と考えてきたのね」 提督「ええ、ミカエラほど旅慣れてはいないけれど……♪」 フェリーチェ「何事にも初めてはあるものよ。 それと、会議の出席者だけれど……」さっと資料を取り出すと、手早くブリーフィングを行った…… 提督「ええ」 …数分後… フェリーチェ「……ざっとこんなところね」 提督「よく分かったわ」 フィンランド軍士官「……少将閣下、もうそろそろホテルに到着します」 提督「ええ、ありがとう」 士官「ホテルではこちらの代表である鎮守府司令官がお二人を出迎える手はずになっております……わが軍のおおよその態勢や状況はその士官からお聞きいただければと存じます」 提督「分かりました、ありがとう」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/836
837: ◆b0M46H9tf98h [saga] 2022/06/13(月) 01:08:13.44 ID:VtVpfAb50 …ヘルシンキ・ホテルのラウンジ… 色白の女性士官「ようこそ「森と湖の国」フィンランドへ、お会い出来て光栄です……クリスティーナ・ニッカネン少佐です」 提督「フランチェスカ・カンピオーニ少将です。こちらこそ、暖かいもてなしに感謝しております」敬礼を交わすと、軽く握手をした…… ニッカネン少佐「我々フィンランド人は「ペルソナ・ノン・グラータ」(好ましからざる人物)でもない限り、いつでも旅人を歓迎しますよ。 イタリアの方にこの寒さはこたえたと思いますが……コーヒーでもいかがですか?」 提督「ええ、いただきます」 …コーヒー好きのフィンランド人らしく、早速コーヒーを注文したニッカネン……運ばれてきた銀色のポットからカップにコーヒーが注がれるのを見ながらも、ついニッカネンを観察してしまう… 提督「……」 ニッカネン「どうかなさいましたか?」 提督「あぁ、いえ……」 …ニッカネンは色白で、淡い琥珀色の髪に色素の薄いブルーの瞳をしていて、髪を頭に巻き付けるように結っている……すでに結氷期で艦娘側も深海側もお互い活動が低調な東部バルト海とはいえ、フィンランド海軍の持つ戦力はごく小さく、哨戒や指定海域での機雷敷設、あるいはフィンランド湾を封鎖しようと深海側が敷設する機雷の掃海と忙しいらしい……カップを持つ指は多少骨張った感じではあるが白くすんなりとしていて、帰投してから急いで金モールと略綬付きのきれいな制服に着替えてきたらしく、髪にほのかな潮の匂いが残っている……また、それがどんな香水よりもニッカネンのすっきりした美しさを引き出している… ニッカネン「それにしても少将がいらっしゃるとは思いませんでした……フィンランドは初めてですか?」 提督「ええ。北欧自体が初めてなので、何もかもが目新しくて興味深いです」 ニッカネン「そうですか……少将は何かご趣味を?」 提督「ええ。映画や絵画の鑑賞、読書など一通りは……それに射撃も少し」親指と人差し指で小さなすきまを作り「ほんのたしなむ程度に」と身振りをつけた提督…… ニッカネン「射撃ですか、それなら私もたしなんでいます……時期になると鹿撃ちや鴨猟をやりに田舎の方へ出かけますよ。猟のシーズンならご一緒出来たのですが」 提督「まぁまぁ、休暇で来たわけではありませんから……少し残念ですけれど」 ニッカネン「他にフィンランドでご存じのことは?」 提督「そうですね……」 提督「やはりフィンランドと言えばマンネルヘイム将軍と「冬戦争」ですね……それに子供の頃に読んだ「ムーミン」や、船舶用ディーゼルのヴァルティラ……電子機器のノキアにアパレルのマリメッコ、銃火器のヴァルメ……」 ニッカネン「なるほど」 提督「それから作曲家のシベリウスに建築家のアルヴァ・アールト、ライコネンのような有名レーサーたちに、パーヴォ・ヌルミを始めとする陸上競技の「空飛ぶフィンランド人」や、クロスカントリースキーといったスキースポーツの選手……そうそう、実家にはイッタラのグラスもいくつかありますよ」 ニッカネン「これはこれは……私がイタリアについて知っている事よりも多いですね」 提督「そうですか? ふふっ♪」眉を持ち上げて驚いた様子のニッカネンを見て、思わず笑みを浮かべた提督…… ニッカネン「ええ。それと、この後の予定ですが……会議は翌日から始まる予定ですから、それまでの間に基地の艦娘たちを紹介する機会や、ヘルシンキ市内をご案内する時間も持てると思います。「スオメンリンナ要塞」(世界遺産)の見学や、市街の散策もできるかと思います」 提督「まぁ、それは嬉しいです」 フェリーチェ「ニッカネン少佐、お気遣いありがとうございます」 ニッカネン「いいえ。大尉もぜひ楽しんで下さいね」 フェリーチェ「そうさせていただきます」 ニッカネン「ええ、ですがその前に当地の情勢について軽く説明を……」 提督「ええ、ぜひお願いします」 …無愛想というわけではないが、あまりおしゃべりではないニッカネンが慎重に口を開く……提督もノートとペンを取り出し、あらためて椅子に座り直す… ニッカネン「我々フィンランド海軍ですが……現在はフィンランド湾口を押さえるハンコ半島を拠点に、深海側の活動を抑え込んでいるというのが現状です」横に置いてあった書類鞄から様々な書き込みが加えられた地図を取り出し、ディバイダーと定規を当てて説明に入った…… 提督「なるほど」 ニッカネン「フィンランド湾の最奥はクロンシュタットやサンクトペテルブルクといったロシアの都市があり、同地には黒海艦隊(バルチック艦隊)の基地があります」 …深海棲艦という「人類共通の脅威」を前にしてある程度協力関係にあるとは言え、過去にフィンランドへとしてきた仕打ちを考えるとお世辞にも「味方」とは言いにくいロシア海軍の事だけあって歯切れが悪い… 提督「ええ」提督も察して、そこは軽く相づちを打つだけでとどめた…… ニッカネン「……基本的に我々はフィンランド湾から深海棲艦がバルト海へ進出するのを抑え、同時にこちらの活動が制限されないよう、ハンコ半島や周辺海域を封鎖されないよう機雷の掃海に当たっています」 提督「なるほど」 ニッカネン「とはいえ冬期はフィンランド湾が結氷し、日照時間も短くなるので活動は低調になります」 提督「そのようですね」冬とは言えまだ日差しのある南イタリアのタラントに比べて薄く弱々しく、それすらもすぐに沈んでしまう北欧の太陽を経験している最中なので気持ちがこもる…… ニッカネン「ええ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/837
838: 以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage] 2022/06/14(火) 03:17:20.56 ID:kXMqWcJ80 VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/838
839: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/06/30(木) 00:38:09.54 ID:VDMzgJCv0 いよいよ「リムパック2022」が開催されましたが、現役の方はぜひ事故のないよう気を付けて下さい……世界がきな臭くなっている中での演習ですから緊張も増していると思いますが。 それと一つ間違いの部分を……サンクトペテルブルクはバルチック艦隊の根拠地ですから当然ながら黒海艦隊ではなくバルト海艦隊ですね。 また、この後ロシア連邦海軍のキャラクターを登場させるつもりでいます。ウクライナのことがあるのでどうかとは思ったのですが、登場させること自体はウクライナ以前に考えていたので……あくまでもテンプレートな冷血ロシア人キャラという事で、特段の意図を持っているつもりはありません。 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/839
840: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/07/16(土) 11:17:46.30 ID:KE82mUTN0 …しばらくして… ニッカネン「それではそろそろキルッコヌンミの鎮守府を案内しましょう」 …ホテルのラウンジで美味しいコーヒーをお供に情勢説明を受けた提督とフェリーチェ……カップの濃いコーヒーを飲み終えると、ニッカネンが切り出した… 提督「楽しみです」椅子から立ち上がると制服を軽くはたき、さっと身体を見回してお菓子の食べこぼしやコーヒーの染みがないか確かめる…… …ホテルの玄関先… ニッカネン「では、おいてきた車を取ってきます……本官が先行しますから、どうぞ後からいらっしゃって下さい」 提督「ええ、お願いします」提督とフェリーチェが送迎用のメルセデスに乗り込んでいると、ニッカネンが自分の車を運転してきた…… フェリーチェ「あれじゃない? ……またずいぶんと年季が入っていそうな車ね」 提督「フィンランドの人は物持ちがいいって言うけれど、本当みたいね」 …黒塗りの後部座席におさまり待っていた二人の横を、ニッカネンが乗った車がすり抜けて前に出た……彼女が乗っているのはその真四角なデザインと、外見のイメージを裏切らない頑丈さで一世を風靡したスウェーデンの「ボルボ240」ステーションワゴンだったが、かなり使い込まれているらしく見た目はずいぶんとくたびれている……ニッカネンのボルボが走り出すと、後ろに付くようにしてメルセデスが滑らかに走り出す… ……… … …ヘルシンキ郊外・キルッコヌンミ鎮守府… ニッカネン「お疲れさまでした、少将。 ここが私の所属する「キルッコヌンミ鎮守府」です」 提督「なるほど、見事に整えられていますね」 …ゲートで守衛に敬礼され、提督たちのメルセデスは本部庁舎前にしずしずと滑り込んだ……先行したニッカネンは車を置いてきて、庁舎の入口で改めて敬礼し、握手を交わす……庁舎前の国旗掲揚柱にはフィンランド海軍旗、それにイタリア海軍旗が掲げられ、海から吹いてくるかすかな……しかしぴりっと冷たい微風に揺れている……ニッカネンの左右にはフィンランド国旗の白と爽やかな青色を基調にした服をまとった艦娘たちと、主計や軍医といった内勤の将校が並び、フィンランド海軍公報のカメラマンが左右に動き回り、しきりにフラッシュを焚いている… ニッカネン「それでは鎮守府をご案内します」簡単な式典を済ませると、ニッカネンが並んでいる艦娘たちを紹介してくれた…… ニッカネン「彼女たちが鎮守府の海防戦艦、イルマリネン級の「イルマリネン(鍛冶の匠)」と「ヴァイナモイネン(老賢者)」です」 イルマリネン「初めまして、少将」 ヴァイナモイネン「フィンランドへようこそじゃ、少将」 …イルマリネンとヴァイナモイネンは二人とも背は低く、イルマリネンはどこかおっちょこちょいな印象を、反対にヴァイナモイネンからは知恵や深い叡智といった雰囲気を感じる……お互いに性格は正反対のようだが、仲がいい様子はちょっとしたやり取りや雰囲気から伝わってきて、何とも微笑ましい… 提督「ええ、ありがとう。 可愛らしい娘たちですね」艦娘たちと軽く握手を交わしにっこりと微笑み、それから港内に停泊している「イルマリネン」級をじっくり観察した提督…… …灰色と灰緑色、それに白という冬のフィンランドにふさわしい迷彩塗装を施した海防戦艦が穏やかな湾内で揺れている……幅広でずんぐりした砲艦のような船体と、それとは不釣り合いなほど巨大に見える前後一基ずつの連装254ミリ主砲、そして中央部に高々とそびえるマストと各所に詰め込まれた高角砲や高角機銃という船型はかなり風変わりで、陸上兵器のような迷彩ということもあって独特な雰囲気をかもしだしている… ニッカネン「……見た目こそ小さいですが、強力なモニター(装甲砲艦)や防空砲台としてフィンランドの沿岸部を守っている、わが海軍の主力艦です」 提督「そうですね……艦名は叙事詩「カレワラ」の人物でしたか」 ニッカネン「ええ、その通りです。イルマリネンは鍛冶の匠で、ヴァイナモイネンは白髪、白髯(白ひげ)の賢者と言われております」 イルマリネン「そうそう、年寄りのくせに若い娘に求婚してフラれたんだもんね」 ヴァイナモイネン「やかましい、後から来て横取りしおって」 ニッカネン「こう見えても仲はいいのです……さ、少将に艦を案内してあげなさい」 ヴァイナモイネン「では、この賢者ヴァイナモイネンが……」白髪をさっとなびかせ、提督を案内しようとする…… イルマリネン「年寄りの冷や水はやめなって、私が案内するからさ」 ヴァイナモイネン「こら、そう年寄り扱いするでない!」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/840
841: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/07/29(金) 01:45:13.48 ID:7T6PnXRw0 …海防戦艦「イルマリネン」艦上… イルマリネン「ここが艦橋です」 提督「なるほど……ふむふむ」 ニッカネン「……いかがですか?」 提督「ええ、とてもきちんと整備されていますね……見事なものです」 …舷梯(タラップ)を上り、ニッカネン少佐とイルマリネン、ヴァイナモイネンの解説を受けながら艦内を軽く一回りした提督……真鍮や銅で出来ている金具はきれいに磨き上げられ、甲板や調度品の木材は艶やかで、塵のひとつ、汚れの一点もない……だがそれより提督の気を引いたのはきちんと前後の水平を保って繋止されているカッター(ボート)や、急な対空戦になっても即応できるよう満杯にしてあるボフォース40ミリ高角機銃の弾薬箱、とっさの時に凍り付いていて使えないことのないよう防寒用の布でくるまれている消火ポンプと消火用ホースなど、あちこちを磨き立てることよりも、いつでも戦闘に入れるよう準備が整っている事に感心した… ニッカネン「少将にそう言っていただけると嬉しいかぎりです……イルマリネンも少将にお礼を申し上げなさい」 イルマリネン「ありがとうございます、少将」 提督「いいえ♪」 ……… … 提督「貴重な時間に感謝します、少佐……フィンランド海軍の海防戦艦をつぶさに観察する機会はそうありませんから、いい経験が出来ました」 ニッカネン「そうおっしゃっていただけるとこちらも案内したかいがあります……この後は司令部でわが海軍の短い紹介映像と、最近の作戦行動を簡単にまとめた資料を用意してありますので、そちらをご覧になっていただければと思っております」 提督「ありがとうございます……と、あれは……」 …空冷エンジン独特の乾いた音を響かせて、曇り空をブリュースター・B239「バッファロー」戦闘機が飛び去っていく……どこかユーモラスでもあるずんぐりした機体は黄色く塗ったエンジンカウリング以外は濃淡二色の緑色で迷彩が施されていて、その飛行する姿はエンジン音といいシルエットといい、どことなくクマバチを思わせる… ニッカネン「わが軍の「ブルーステル(ブリュースター)」です……よほどの悪天候でなければ、ああしてフィンランド湾や沿岸部の哨戒に当たっています」 …太平洋では日本の「零戦」や「隼」といった格闘戦の得意な機体にいいように落とされ、評価の低い「バッファロー」だが、機体の頑丈さを活かしたフィンランド人の運用の上手さとソ連空軍の練度の低さから「冬戦争」では大いに活躍し、一部のフィンランド軍操縦士からは「空の真珠」とまで言われている……そのままフィンランド湾の沖に向かって飛行していったバッファローを見送ると、ニッカネンの案内を受けて基地施設に入った… …司令部… ニッカネン「どうぞおかけになって下さい」 提督「ええ」 …なまじ将官が座らないでいると室内の全員が座ることをためらってしまうので、勧められたら遠慮せず、すぐ腰かけることにしている提督……司令部施設のブリーフィングルームか会議室と思われる部屋にはプレゼンテーションの準備が整っていて、暖房も入っていて暖かい… ニッカネン「では、始めさせていただきます……」カーテンを引くと十五分あまりの短い広報用映画と、作戦行動中に撮ったと思われる映像がいくつか、そしてフィンランドの艦娘たちが基地でのんびりしたりにぎやかにしたりしている「日常のひとこま」といった映像も合わせて流れた…… 提督「……」メモ帳を机の上に置き、機雷掃海や対空戦の場面では真剣に、にぎやかな場面では微笑みを浮かべて映画を見た…… ニッカネン「……以上です」 提督「ありがとうございます、掃海の場面や対空戦の部分は非常に参考になりました……どの娘も手際が良くて、動きが身についていますね」 ニッカネン「そうかもしれません。 このあたりではこちらも深海側も勢力が小さく、お互いに決め手を欠くところがありますから」 提督「そこで機雷の敷設ということになる……と言うわけですね」 ニッカネン「その通りです。何しろ水路や湾口を塞いでしまえば相手は何もできなくなりますから……敵味方の本拠地が近いこともあって、機雷の敷設は結氷する冬期を除いていつでも行われております」 提督「なるほど、とてもためになりました……」そう言ってメモ帳を閉じ、礼を言おうとしたところでフェリーチェの携帯電話が震えだした…… フェリーチェ「……っ、失礼。 どうも急ぎの用件のようでして……」ちらっと発信者の番号を見ると、ニッカネンにわびて部屋を出る…… ニッカネン「構いませんよ、大尉……では少将、もう一杯コーヒーでも」 提督「ええ」 …しばらくして… 提督「……フィンランドと言えばやはり「ムーミン」とトーベ・ヤンソンでしょうか。彼女は同性のパートナーと仲むつまじくしていたとか。ムーミンに出てくる「おしゃまさん」はトーベ・ヤンソンのパートナーがモデルだと聞いたことがあります」 …フェリーチェが戻るまでの間、時間つぶしのおしゃべりを続けている提督とニッカネン……そこでフィンランドの有名人という話題から「ムーミン」で有名な女流作家のトーベ・ヤンソンの話になり、そこで何の気なしに同性のパートナーがいたことにも触れた提督…… ニッカネン「トゥーティッキ(おしゃまさん)ですね、確かにそう言われています……ですがフィンランドはその点立ち遅れていましたから、もったいないことに彼女の活躍は長い間認められずにいました。 今でこそそうした権利も認められるようになってきましたが、我が国では長らく同性愛は病気扱いでしたので」イタリア人の提督なら手を上に向け派手に肩をすくめるような態度で、小さく肩をすくめたニッカネン…… 提督「そうだったのですか、もったいないことですね」 ニッカネン「ええ」そう言って簡単に相づちをうったニッカネンだったが、提督に向けた視線がほんの少し長かった…… 提督「……?(気のせいかしら)」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/841
842: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/08/07(日) 01:28:36.38 ID:6gTvanY50 提督「……それにしても暗くなるのが早いですね」 ニッカネン「北欧の冬はいつもこうです……まぁ、慣れているとは言え少し嫌になりますね。 早く夏になって日光浴か、さもなければイナリ湖あたりの森でシカ猟でもしたいところです」 …イタリアならまだまだ午後の日差しが暖かく辺りを照らしているはずの時間だというのに、すでに辺りは夕闇に覆われ始め、埠頭の周囲を飛び回っていた白いカモメたちも家路についている… 提督「ああ、そういえばニッカネン少佐は猟をなさるそうですね」 ニッカネン「ええ、カンピオーニ少将も銃猟をたしなんでいるとおっしゃっておられましたが……」 提督「はい、子供の頃から家族に教わりまして……もっとも、任官してからはすっかりごぶさたですが♪」苦笑しながら肩を大きくすくめた ニッカネン「海軍士官ですし無理もありません……獲物は何を?」 提督「そうですね、場合にもよりますが散弾銃でカモ撃ちをしたり、実家にいたときはコムーネ(自治体)からの駆除依頼を受けてイノシシ撃ちをしたりしていました」 ニッカネン「いいですね……銃は何を?」 提督「そうですね、私はフランキかベネリの12ゲージ(番)や20ゲージが多いですね、ニッカネン少佐は?」 ニッカネン「私は……」 フェリーチェ「失礼、遅くなりました」 ニッカネン「大丈夫ですよ、大尉……用事は無事に済みましたか?」 フェリーチェ「ええ。ご迷惑をおかけしました」 ニッカネン「いいえ……それではそろそろホテルの方に戻りましょう」 ……… 提督「ニッカネン少佐、せっかくですしもう少し少佐のお話を伺いたいですね」 ニッカネン「それは光栄です……とはいえ明日からは会議が始まってしまいますし、そうなるとなかなか時間も取れないかと……」 提督「そうですね……もし少佐がよろしければ、ホテルまで少佐の車に乗せていただいてもよろしいでしょうか?」 ニッカネン「え? しかし私の車はあのメルセデスと違って乗り心地もあまり良くないですから……」 提督「確かにご迷惑かもしれませんけれど、せっかくですし少佐のボルボ240にも乗ってみたいです……ダメでしょうか?」 ニッカネン「それは……まぁいいでしょう。上からはカンピオーニ少将とフェリーチェ大尉のためにできるだけ便宜を図るよう指示されておりますから……ただ、できればご内聞にお願いします」 提督「ええ、もちろんです♪」 ニッカネン「送迎車の運転手には私から話をしておきましょう」 提督「すみません、ワガママを言ってしまって」 ニッカネン「その程度ならワガママの内には入りませんよ」そう言うとかすかに微笑を浮かべた…… 提督「それじゃあ私はミカエラに説明しないと……フェリーチェ大尉」 フェリーチェ「は、何でしょうか」 提督「私はニッカネン少佐と話したい事がありますので、ホテルまでニッカネン少佐の車に乗ります……黒塗りの後部座席に一人だなんて寂しいでしょうけれど、ホテルに戻ったらその分の埋め合わせはするから……我慢してね?」まるで命令を伝えるかのような堅苦しいはっきりした口調で呼びかけると、口調を変えてこっそり耳打ちした…… フェリーチェ「了解しました、少将……まったく、貴女はすぐそうやって女と一緒になりたがるんだから」 提督「ごめんなさいね♪」見送りのため整列している将校や艦娘たちから見えないよう、こっそりとフェリーチェに小さなウィンクを投げた…… フェリーチェ「いいのよ」 ニッカネン「お待たせしました……さあ、どうぞ」 提督「ありがとうございます♪」助手席に乗せてもらい、まるでエアロックのような重くずっしりしたドアを閉める……途端に外部の音がシャットアウトされて、低いエンジン音だけが深い火山の鳴動か何かのようにお腹の底に伝わってくる…… ニッカネン「それでは出しますよ……ベルトは締めましたか」 提督「ええ♪」 ニッカネン「では行きましょう」 …まるで子供のようにわくわくしながら、ニッカネンの運転を楽しむ提督……名ドライバーを数多輩出しているフィンランド人だけあって、ニッカネンの運転は相当上手で、重さのあるボルボをキレのある挙動で走らせる… 提督「……少佐は運転がお上手ですね」道路の前方を見据えて巧みにボルボをコントロールするニッカネンのきりりとした横顔に、つい見惚れてしまう…… ニッカネン「そうですか?」 提督「ええ♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/842
843: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/08/16(火) 01:51:09.71 ID:Wk3G7LJE0 …ホテル前… ニッカネン「着きましたよ、少将」 提督「ありがとうございます、少佐……とても楽しいドライブでした♪」 ニッカネン「それはどうも……///」 提督「ええ、それでは明日の会議で」フェリーチェを乗せたメルセデスを待つ間に、肉が薄くひんやりとした……しかしすべすべしたニッカネンの頬へ挨拶のキスを済ませると、色白のニッカネンが少し頬を赤らめた気がした…… フェリーチェ「お待たせしました……ニッカネン少佐、本日は鎮守府の案内をありがとうございました」 ニッカネン「いえ。 ではまた明日」 フェリーチェ「はい」 …ホテルの部屋… 提督「ふー……到着して挨拶をするだけかと思っていたけれど、意外と盛りだくさんだったわね」 フェリーチェ「そうかもしれないわ……ところで、夕食の前に明日からの会議に備えてちょっと状況説明をしておきたいのだけど」 提督「分かったわ」礼服がシワにならないようきちんとハンガーに掛けるとブラウスのボタンをいくつか外して胸元をゆるめ、肩を回したり首を傾けたりして凝りをほぐしつつ、ベッドに腰かけた…… フェリーチェ「聞く気になってくれて助かるわ」 提督「まぁ、明日からの会議でどんな人が来るかくらいは知っておかないといけないでしょうし……どうぞ始めてちょうだい?」 フェリーチェ「ええ。明日からの会議だけれど、参加国は主催役のフィンランドを始め、スカンジナビアのノルウェー、スウェーデン……フィンランドからは陸・海・空軍や参謀本部の士官が数人、ノルウェー、スウェーデンからは佐官が何人か……スウェーデンからはこの前会ったラーセン大佐がメンバーに入っているわ」 提督「あぁ、あの気品がある美人の……♪」 フェリーチェ「今のは聞かなかったことにしておくわ……それからポーランド海軍からも佐官が何人か。 グディニヤやグダニスクみたいなバルト海に面した港湾もあるから深海棲艦対策には熱心で、フィンランドとも協同しているわ」 提督「ええ」 フェリーチェ「それから、問題のロシア軍将官ね……階級は少将で副官が一人。今回の件でわざわざモスクワから派遣されるほどの優秀な将官で、頭の切れるタイプだと思われるから注意して。 うかつなことを言うと言質を取られるから、うっかりしたことは言わないように」 提督「そうね……なんだか聞いているだけで、氷みたいに冷たい目をしてニコリともしない顔が目に浮かぶわ」 フェリーチェ「そう思っておけば問題ないはずよ。とにかくこちらとしてはオブザーバーとして、スカンジナビア側とロシア側がいがみ合わないよう上手く取り持ってあげれば良いだけだから……くれぐれも「ソ・フィン戦争」の火を付けることがないように」 提督「ええ。 それにしてもロシアの将官ね……士官学校の教官や先輩方はまだソ連が仮想敵だった頃だから詳しいけれど、私はもうその世代じゃないし……それに今までロシア軍の将官なんて会ったこともないから、どんな人なのかちょっと興味があるわ」 フェリーチェ「いいけど、例え美人だったとしても口説いたりはしないでちょうだい」 提督「……ということは女性なの?」 フェリーチェ「ええ……頼むから国際問題のタネを作るような真似はしないでよ」 …その頃・バルト海上空… 女性士官「……あと十五分程度でヘルシンキです、少将」 女性将官「ダー(ああ)……カサトノヴァ少佐、準備は整っているな?」灰皿に煙草を押しつけて消すと、副官の少佐に尋ねた…… 少佐「はい」 少将「よろしい」 …独特なエンジン音とゆっくりと回転しているように見える二重反転プロペラが特徴的なツポレフTuー95「ベア」戦略爆撃機の高官輸送型……未だに世界で最高速かつ長大な航続距離を持つターボプロップ機の座席にロシア海軍の黒っぽい冬用制服を着た将官が腰かけ、向かいに副官の少佐が座っている… 少佐「……少将、フィンランドの戦闘機です」エスコート(護衛)というよりは警戒しているかのように、五時方向と七時方向(斜め後ろ)に占位したフィンランド空軍のFー18C「ホーネット」… 少将「結構、時間通りだな……」 少佐「ダー」 少将「それと今回の会議だが、よく目と耳を澄ませておけ」 少佐「はっ」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/843
844: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/08/21(日) 01:41:30.76 ID:a8IKP+rY0 …翌日… 提督「どう、大丈夫かしら?」 フェリーチェ「ええ。金モールもよじれてはいないし、略綬もきちんとしているわ」 提督「なら大丈夫ね」 …紺色のきちんとした軍装に肩章の仰々しい金モールと、一列ごとの幅はまだ短いものの何だかんだで三列にわたっている略綬、ピシッとしたタイトスカートと黒ストッキングに、磨きあげておいた革靴……腰には礼装用の短剣を吊るし、髪は結い上げ、タイをきちんと締めた… フェリーチェ「ええ、なかなか凜々しく見えるわ」 提督「ありがと♪」ちゅっと音をさせて、軽く唇にキスをする…… フェリーチェ「やめて、口紅の色が移るから……」 提督「分かったわ♪ ……さ、気合いを入れていかないとね」姿見の前でもう一度格好を見直すと部屋のロックをかけ、フェリーチェとロビーへ降りた…… …午前・会議場… ニッカネン「お早うございます、カンピオーニ少将。フェリーチェ大尉も」 提督「ええ。 おはようございます、少佐」 フェリーチェ「おはようございます」 ニッカネン「各国の将校もおおかたやって来ましたし、会場も開いていますから……席におかけになってはいかがでしょう?」 提督「ありがとう、そうさせてもらいます」 …会議場はフィンランド国防省が用意した施設の一室で、かなり広々とした室内のスクリーンを取り囲んで「コ」の字型にテーブルと椅子が並べられ、席にはそれぞれの名前を記したネームプレートが英語と出身国の母語で併記されている……席には控え目な花とミネラルウォーターのボトル二本とグラスが置いてあり、提督とフェリーチェは自分の場所を確認すると、それからあちこち立ち歩いて各国の士官たちと顔を合わせ、軽く挨拶をかわした… フィンランド軍士官「……それでは、そろそろ時間となりましたので……皆様、どうぞお席の方へ」ガヤガヤとざわめきが聞こえ、椅子を引く音や咳払いが一通り収まると、司会を務めるフィンランド軍参謀本部の士官が開式の辞を述べる…… フィンランド士官「……では早速ですが、近年のバルト海における「深海棲艦」の動静について、ニッカネン少佐から」 ニッカネン「各国の将官、また士官の方々……紹介にあずかりました、クリスティーナ・ニッカネン少佐です……」 提督「……」 フェリーチェ「……」提督はペンを持ってメモ帳を広げ、フェリーチェはラップトップのコンピュータを開いている…… ニッカネン「……冬季になりますとバルト海の結氷により、いわゆる深海棲艦の活動は低調となることは周知の事実かと思われます。しかしながら、フィンランド湾およびバルト海東部では深海側による機雷の敷設により、艦艇の行動に不自由を生じており……」 提督「……なるほどね」 ニッカネン「……これにより、ポーランド、バルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)、ロシア、ドイツの一部で海運や漁業に影響が生じております。このことは沿岸各国において大変重大な……」スクリーンにコンピュータの図表データを表示し、簡潔な説明を終えて着席したニッカネン…… フィンランド士官「ありがとうございます、少佐。では続いて……」 …ニッカネンに続いて各国の士官がそれぞれの国の立場から状況の説明を行う……とはいえ、各国ごとにそれぞれの思惑と利害関係があるので、そう簡単には「足並み揃えて」といった具合にはなってくれない……結局、二時間近くかかったそれぞれの状況説明の後、今度は「艦娘」の運用や担当範囲、あるいは各国海軍の連携について、どこで折り合いを付けるかの長い長い話し合いが始まった… ノルウェー軍士官「……バルト海に関しては、分担は各国のEEZ(排他的経済水域)を目安にすべきだと考えますが」 ニッカネン「それではこちらの負担が少し大きすぎるように思います……わが軍がバルト海東部から出現する深海棲艦を抑えているのは事実ですから、ぜひ各国の協力もお願いしたいところですね」 ポーランド海軍士官「同感です。バルト海東部で深海棲艦を跳梁跋扈させることは、ひいてはバルト海全体の制海権を失うことにつながる」 ラーセン「スウェーデン海軍のラーセンです。今のご意見には賛同いたします。 しかし本官は同時に、バルト海東部での活動にもっとも適しているのがフィンランド、ポーランド海軍である事も間違いないと思いますが」 …結局のところ、各国いずれも深海棲艦対策で負担を担ったり割りを食ったりするのは避けたい上、自国の艦娘たちが怪我をしたり、あるいはもっと悪いことが起きたりという事態は避けたい……そういった面で、各国いずれもできるだけ艦娘たちを出撃させたくないのが実情だった……かといって、手の内が読めない……しかもバルト海沿岸に対する領土的野心を捨ててはいないロシア海軍バルチック(バルト海)艦隊の手を借りることもしたくはない… ロシア海軍代表「……」むっつりと黙りこくっているロシア海軍の数人は、黒っぽい制服もあいまって異彩を放っている……その中には女性の将官も一人いて、冷たい目で会議場内を眺めている…… 提督「……」 フェリーチェ「……」しばらくけりは付きそうにないと、会話を黙って聞いている提督とフェリーチェ……少し効き過ぎな暖房のせいで喉は渇き、きちんとした正装のせいでひどく暑苦しい…… 提督「……しばらくは様子見で行くわ。みんな疲れた頃合いになったら折衷案でも出してみるわね」 フェリーチェ「任せるわ」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/844
845: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/08/27(土) 01:46:37.57 ID:WyYZz/100 …またしばらくして… ニッカネン「……では、スウェーデン海軍としては「艦娘」の派遣には応じられないと言うことでよろしいですか?」 ラーセン「……本官個人としてはそちらと協力すべきであるというのは理解しているのですが、残念ながらわがスウェーデン海軍もそこまでの規模を有しているわけではありませんので……ただ、先ほど申上げたように哨戒機による支援は政府の方でも確約しておりますので、実行が可能です」 …きりりとした美しい顔に疲れも見せず、淡々と意見を述べるラーセン大佐……とはいえ、どちらかと言えばフィンランドを「緩衝地帯」として扱って、自国の中立を崩さないよう慎重に振る舞ってきたスウェーデン政府の指示もあるのか、ニッカネンの欲しい……ひいてはフィンランド海軍が聞きたい「艦娘」の派遣や協同での哨戒といった言葉は出てこない… ニッカネン「なるほど……それからポーランド海軍ですが、バルト海北部の哨戒に協力することは難しいと」 ポーランド海軍士官「残念ながら。 我々ポーランド海軍の「艦娘」たちは自由ポーランド軍当時の艦艇……つまりほとんどはイギリスから貸与・提供された旧型駆逐艦であり、かつグダニスクを始め、我が国の港湾都市と海路を維持するために戦力を割かなければならないので、そこまでの支援は難しいと思われます……その分、わがポーランド海軍としてはバルト海南部における航路の維持と海上交通のために尽力しております」 …きちんとした黒いダブルの上着に金ボタンと金モールが映えて、いかにも海軍士官らしいポーランド軍の代表たち……何人かは綺麗に切り整えた口ひげを生やしていて、風格がある……が、やはり上層部の指示か、フィンランド側に対しては煮え切らない態度を取っている… 提督「……まさに「会議は踊る」ね」横に控えているフェリーチェにこっそりささやいた…… フェリーチェ「そうね……まぁ、どこの海軍も自分から大変な哨戒や掃海を請け負いたくはないもの」 ニッカネン「ラーセン大佐、スウェーデン海軍は海防戦艦を基幹に駆逐隊、小艦艇群を有しておりますが……海面の氷が溶ける夏の時期だけでも良いのです、そちらの艦娘たちと共同作戦を行うことは叶いませんか?」 ラーセン「無論、そういった打診があれば検討の上で派遣することもあり得るでしょう。とはいえ先のことはまだ分かりかねます。 その時期になったらまた改めてお国の政府からストックホルムに打診していただければ、具体的な回答が出来るものと思います」 ニッカネン「なるほど、では現状では何も確約は出来ないと?」 ラーセン「先の情勢が予見出来ない以上、本官としてはそう回答するしかありません……」 ニッカネン「……」 …各国の代表から「支援したいのはやまやまなのですが……」と、気持ちばかりで実行はさっぱりという支援案を聞かされ、とうとう黙りこくって四杯目のコーヒーをすすりはじめたニッカネン……ざわつきばかりで誰も意見を言おうとしない中、提督が切り出した… 提督「……すみません、少々発言をよろしいですか?」 司会「え、ああ……どうぞ」 提督「ありがとうございます……イタリア海軍からオブザーバーとして派遣されましたカンピオーニです」長らくだらだらと続いていた会議の間、メモをとりながら温めていた意見を述べる…… 提督「えー、まずはノルウェー海軍のヨハンセン大佐……大佐は先ほど「駆逐隊をバルト海東部まで派遣するのは難しい」とおっしゃっておりましたね」 ノルウェー海軍代表「ええ。 ノルウェー西岸に深海棲艦が出没する可能性がある以上、遠くフィンランド湾にまで艦娘を派遣してしまっては、強力な敵艦の出現があった際これを呼び戻しても間に合わない危険がありますので」 提督「確かに……では、スウェーデン南部ではいかがですか?」 ノルウェー士官「スウェーデン南部、ですか?」 提督「ええ。 例えばカールスクルーナの沖合といった所ですが」 ノルウェー士官「そうですね、それなら……いやしかし、大ベルト海峡の航行に時間がかかる可能性がありますから……」 提督「アムンセンやナンセンを先輩に持つノルウェー海軍の皆さんが、まさか海峡ひとつにそこまでの苦労はなさらないでしょう?」ノルウェーが生んだ偉大な航海者や冒険家を引き合いに出して冗談めかすと、少し笑い声が聞こえた…… ノルウェー士官「それは、まぁ……」 提督「では、ラーセン大佐」 ラーセン「何でしょうか、カンピオーニ少将」 提督「ええ……お国の南部方面に展開する駆逐隊は、基地であるカールスクルーナを中心に、オーランド諸島からエストニア沖、スウェーデン南端のマルメを結ぶ三角形を哨戒しているという認識でよろしいですか?」 ラーセン「おおよそその認識で合っています」 提督「では、例えばマルメからカールスクルーナまでのエリアをノルウェー海軍と協同で哨戒することは可能ですか?」 ラーセン「不可能ではありませんね、すでに演習などで実績があります」 提督「分かりました……では、その分艦娘の行動エリアを北部に移して……例えば哨戒線をエストニア、タリンの沖辺りまで北上させることは出来ますか?」 ラーセン「……ええ、不可能ではありません」しばし熟考してから、ゆっくりと言った…… 提督「では、こうしたらいかがでしょう……バルト海の入り口、カテガット海峡はノルウェー海軍、デンマーク海軍にお任せする……そうすればスウェーデン海軍のうち、イェーテボリに配属されている艦娘たちは手すきになります。 それをカールスクルーナに移せば、フィンランドを支援する戦隊を派遣する余裕が出るのではありませんか?」いわば「玉突き式」に、各国がそれぞれ隣国を支援する形を提案した提督…… 提督「それに移動するのは艦娘たちだけで、フリゲートや潜水艦といった通常戦力を移動させるわけではありませんから、費用もそこまでかからないと思いますが」ついでに海軍の悩みのタネである「予算」を盾にされないよう、先手を打って言い添えた…… ノルウェー士官「ううむ……」 ラーセン「なるほど」 ニッカネン「……」 提督「それはそうと、少し休憩にしませんか? さすがに皆さん疲れが見えますし……いかがでしょう?」 司会「そうですね、では一時休憩とします」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/845
846: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/09/03(土) 11:07:46.49 ID:/gCWDoGZ0 ラーセン「カンピオーニ少将、先ほどはお見事でした」 提督「いえいえ、何かたたき台がないことには永遠に話が進まないでしょうし……それにオブザーバーの私なら、多少勝手なことを言ってもあとに響くことはないでしょうから♪」 ニッカネン「違いありませんね」 …会議室から出て別室で休憩をとる各国の代表たち……室内ではポットのコーヒーと軽食が供され、それぞれ立ったり座ったりしながら二ヶ国間で話を詰めたり、あるいは頭に栄養を送るため、小さくカットされているサンドウィッチをつまんだりしている……提督は消しゴムほどの大きさをした可愛らしいサンドウィッチを三つばかりつまみ、砂糖とミルクを入れたコーヒーをとり、それからスウェーデン海軍のラーセンとフィンランド海軍のニッカネンに合流した… 提督「それに、スカンジナヴィアの三国は関係がとてもいいようですから……我々イタリアが沿岸の防衛をフランスに任せるというのよりは現実味がありますよ♪」冗談めかして小さくウィンクを投げた…… ラーセン「ふふ、確かに……♪」 提督「……ところでロシア海軍の代表ですが……まだこれと言った発言がありませんね?」 ラーセン「ええ。ポーランド海軍の提案に反対意見を述べた以外には」 提督「どういうつもりなのでしょう? それにバルチック艦隊の大佐が、しきりに横の将官を気にしているようでしたが……」 ニッカネン「あの冷ややかな表情をした少将でしょう?」 提督「ええ……いったい誰なんです?」ロシア海軍代表は談話室でも一か所に固まり、あたかも鉄のカーテンを引いたままに見える……その中心にいる押し出しの強そうな赤ら顔の大佐はバルチック艦隊代表を務めているが、その大佐はハンカチで額を拭いながら、しきりに後ろの少将を気にしている…… ニッカネン「あの将官ですが、今回の会議に合わせてモスクワから派遣されてきた少将です」 ラーセン「おそらくはお目付役といったところでしょうね……ソ連時代ならさしずめ「政治将校」といった役どころでしょう」 提督「なるほど、それは難物ですね」 ラーセン「ええ……それにロシアが会議に絡んでくるとなると、途端に話がこじれてしまいますから」 ニッカネン「同感です。 彼らは何かにつけて、こちらが賛成だというと「ニェット(ノー)」だと言いますからね」 提督「じゃあ会議がまとまった頃になって壊してくる可能性も……?」 ラーセン「ないとは言えないでしょうね」 提督「困りましたね……それで、ロシア海軍は具体的に何を引き出したいのでしょう?」そう問いかけると顔を見合わせたラーセンとニッカネン…… ラーセン「……それは何とも言いがたいところですね」 ニッカネン「具体的なところはあまりはっきりしていないようにも感じられます……しいて言うなら、フィンランド湾における主導権は握りたいが、かといって声高に主張して自国の艦娘を使うことになってしまったら、それはそれでフィンランドをはじめ沿岸各国の得になるので面白くない……といった具合でしょう」 提督「うーん……そうなると駆け引きが面倒になってきますね」 ニッカネン「ええ……なにしろ向こうは我々が深海側との戦闘で疲弊するのを見ていればいいわけですから」 提督「しかし、ロシアもフィンランド湾が深海棲艦に閉塞されれば困る事になるのでは?」 ラーセン「確かに困らないとはいいませんが……あちらは貧乏にも抑圧にも慣れていますし、国土が大きいだけ体力がありますから」 ニッカネン「フィンランド湾やバルト海で深海棲艦が跋扈するような事態が続けば、海運においては相対的にこちらの方が大きなダメージを受けることになりますので」 提督「では、ロシア海軍に協力を願うほかはない……と?」 ニッカネン「そうならざるを得ないでしょう……もっとも、先ほど少将が切り出した「たたき台」のおかげで、ロシア海軍抜きでもバルト海における協力態勢がまとまりそうになっていますから、このまま合意する方向で持って行けば向こうがあわて出す可能性もあります」 ラーセン「あとはポーランドやバルト三国に協力を取り付けるだけですが、そこはどうにかなるでしょう」 提督「……そうですか、なら会議もどうにか無事に済みそうですね」 ニッカネン「そう願いたいものです……いい加減この暖房で蒸れた室内からおさらばして、サウナにでも行きたいところです」 提督「あー、フィンランド式サウナですね。 聞いたことはあります」 ニッカネン「……こちらへ来てから、まだ経験していらっしゃらないのですか?」どちらかというと感情表現の小さなニッカネンが珍しく驚いたような顔をした…… 提督「ええ。ヘルシンキに来てからまだ二日あまりですし、その機会がなくて……」 ニッカネン「わかりました……会議が終わったら、どこかでご案内しましょう」 ラーセン「フィンランドの方はサウナがお好きですものね……そろそろ休憩も終わりのようですし、参りましょうか」 提督「ええ」提督たちが歩き出すと、あちこちで耳をそばだててきたらしいフェリーチェが戻ってきて、さりげなく提督の脇についた…… フェリーチェ「……どうだった?」 提督「そうね……ニッカネン少佐とラーセン大佐はロシア抜きで話をまとめようとすることで、向こうを慌てさせたいみたい」 フェリーチェ「なるほど、いい形になってきたわね……フランチェスカ、さっきの貴女の意見でノルウェーも渋々ながらバルト海に駆逐隊を出す考えに傾き始めているわ。 これならスカンジナヴィア三国とポーランド、バルト三国の間で合意が得られるかもしれない……そうなればロシアの提督たちはは立つ瀬がなくなって、慌てて参加する方向に舵を切るかもしれないわ」 提督「ふう、助かったわ……てっきりこのまま会議室で雪解けの季節まで缶詰かと思っていたところよ」 フェリーチェ「金モールをつけた少将なのにだらしないわね……大尉の私だって一日や二日の雪隠詰めくらい耐えられるのに」 提督「ふふ、ミカエラにはかなわないわ……♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/846
847: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/09/12(月) 01:13:04.31 ID:CXXTcSsw0 …夜… 司会「えー……では、今日の会議はここで一旦中断し、続きは明日の0940時から行います。お疲れさまでした」司会が閉会の挨拶をすると、あちこちでガタガタと椅子を引く音がして、席を立った海軍士官や将官たち…… 提督「……ふー、疲れた」会議場の玄関ホールでホテルまで送ってくれる黒塗りの到着を待ちながら、くたびれた様子で長いため息をついた…… フェリーチェ「お疲れさま、フランチェスカ」 提督「ええ……だらだらと続くばかりの会議って嫌いだわ」 フェリーチェ「そんなものが好きな人間なんていないでしょうよ」 提督「確かにね……それにしても、まるで味のないガムを噛み続けているようだったわ」 フェリーチェ「同感ね」 …昼下がりから再び始まった会議ではスカンジナヴィア三国が妥協点を見つけてお互いに歩み寄りはじめた矢先に、今度はロシア海軍の代表がああだこうだと口を挟みだし、それに対してポーランドやバルト三国が反発して、いつ果てるとも分からない不毛な堂々巡りを始めていた……提督も円満に会議がまとまるよう尽力したが、責任も権限もないオブザーバー、しかもバルト海沿岸諸国とは馴染みの薄いイタリア海軍代表という立場では、いまいち各国の代表たちに響かない… 提督「とにかく、ホテルに戻ったら美味しいものでも食べて……それからベッドでぐっすりしたいわ」 フェリーチェ「良い考えね……ほら、車が来たわよ」 …数十分後・ホテル… 提督「あー……これでやっとくつろげるわ」制服をハンガーにかけるとブラウスやタイツを脱ぎ捨てながら、ベッドに腰かけた…… フェリーチェ「服は脱いだようだし、シャワーをお先にどうぞ?」 提督「ミカエラが先でいいわよ?」 フェリーチェ「こういうのは提督が先って決まっているものよ……それに、私は今日のやり取りで気になった部分をまとめておくつもりだから」 提督「そう……じゃあお先に入らせていただくわ」 …ホテルの清潔な……しかし鎮守府の豪奢な大浴場とは比較にならないほどせせこましい浴室でシャワーを浴び、脚の収まらないバスタブに身体を沈めた提督……足裏やふくらはぎは座りっぱなしだったせいでこわばり、心なしかいつもよりむくんでいる気がする… 提督「ふぅ……きっと鎮守府のみんなは夕食を済ませたころね。お風呂から出たら電話でもしてみようかしら」 …数分後… 提督「ミカエラ、出たわよ」ホテルに備え付けの、ふかふかした着心地の良いバスローブをまとい、メイクも落としてさっぱりした提督…… フェリーチェ「そう、なら私も入ってくるわ」 提督「ええ……それと、お湯の栓をひねるときは注意したほうがいいわよ。急に熱くなるから」 フェリーチェ「ありがとう、気を付けるわ」 提督「さて、それじゃあ……と」ペットボトルのミネラルウォーターを三分の一ばかり飲み干すと、ベッドサイドの小机に置いておいた携帯電話を取り、電話帳から鎮守府を選んで電話をかけた…… …鎮守府… デュイリオ「あら、電話でございますね……はい、こちらタラント第六鎮守府」 提督「もしもし、デュイリオ?」 デュイリオ「まぁまぁ、提督♪ お声が聞けて嬉しいです」 提督「私も貴女の声が聞けて嬉しいわ、デュイリオ。 今日はもう用事もないし、時間があるから電話をしたのだけれど……みんなはどう、元気でいるかしら?」 デュイリオ「あぁ、提督。 それがもうこちらは大騒動でして、すぐにでも鎮守府に戻ってきていただかないと……」 提督「えっ!?」 デュイリオ「そうなんです……ライモンドは提督がいらっしゃらないからとふくれ面、ポーラはキアンティの飲み過ぎですっかりへべれけ、チェザーレは近くの街で人妻と火遊びをして警察沙汰になる始末……シロッコは階段で転んでひっくり返り、ディアナは皿を割り、ルチアは一晩中鳴き続け……ふふっ♪」真面目な口調で言っていたが、我慢しきれなくなったのか含み笑いをもらしたデュイリオ…… 提督「もう……からかわないでよ、一瞬本当に何かあったのかと思ったじゃない」 デュイリオ「くすくすっ♪ 申し訳ありません。提督とお話が出来て嬉しかったものですから、つい……こちらは万事順調ですよ♪」と、電話口の向こうからルチアの吠える声が聞こえてくる…… 提督「良かったわ……でも、それにしてはルチアが騒いでいるわね? どうしたの?」 デュイリオ「ああ、ちょうどディアナが明日の夕食に出す牛すじ肉のシチューを作ろうと下ごしらえをしているものですから」 提督「それで大騒ぎをしているのね……♪」 デュイリオ「ええ……ところで提督、せっかくですからここにいる娘たちと順繰りにお話でもなさってはいかがでしょう?」 提督「そうね……いない娘たちには申し訳ないけれど、そうさせてもらうわ♪」そう言って、何人かの艦娘たちとたわいもない会話をする提督…… フェリーチェ「出たわよ……っと、楽しいお話の最中だったようね」 提督「ええ……♪」近況や来たるクリスマスの話をしつつ、フェリーチェに向けてウィンクを投げた…… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/847
848: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/09/20(火) 01:17:03.17 ID:lu5tE7z10 …翌朝… 提督「ふわぁ……おはよう、ミカエラ」 フェリーチェ「おはよう、フランチェスカ……コーヒーはミルク入りの方が好きだったわね」 提督「ありがと、覚えていてくれたのね……♪」ベッドで半身を起こし、コーヒーのマグを受け取る……室内はセントラルヒーティングで暖かいが、片手で毛布を引っ張り上げて胸元を隠した…… フェリーチェ「今日の日程は覚えている?」 提督「ええ、大丈夫よ」砂糖少しとミルクの入ったコーヒーをひとすすりしてほっと小さく息をつくと、くしゃくしゃになった髪を軽く手で梳いた…… フェリーチェ「なら結構……新聞は?」 提督「気にはなるけど、あいにくフィン語もスウェーデン語も読めないわよ?」 フェリーチェ「まさか、私が貴女にフィン語の新聞なんて勧めるわけがないでしょう。記事の少ない海外向けだけど一応「レプブリカ」よ」 提督「そう、それじゃあ後で読むわ」 …ベッドから降りるとバスローブを羽織って浴室に行き、歯を磨いて顔を洗い、それからシャワーを浴びてさっぱりした… 提督「……改めておはよう、ミカエラ♪」軽く頬にキスをする提督…… フェリーチェ「ええ、おはよう。 いいけど、早く髪を乾かさないと時間に間に合わなくなるわよ」報告書か資料か、ラップトップを立ち上げて手早くキーを叩きながら、提督のあいさつに軽く答えた…… 提督「それもそうね」 …タオルで髪を包んで乾かしつつ海外版の「レプブリカ」紙にざっと目を通し、読み終わったところで化粧台の前に座り髪を整え始める……肌に当たる櫛の感触を楽しみながら長い髪をくしけずり、冷風から温風へと切り替えながらドライヤーをあてる……髪がある程度まとまったところで軍帽に合うような形に結い始め、ピンを差して形をまとめた… 提督「うん、いい感じ……♪」少しもつれているこめかみの辺りを直し、鏡に向かって微笑んでみたり真面目な表情を浮かべてみたりする…… フェリーチェ「そろそろ終わらせないと、朝食を食べ損ねるわよ」 提督「はいはい」 …手際よくルームサービスを頼んでおいてくれたフェリーチェに感謝しつつ、バスローブ姿で朝食をしたためる提督……向かいにはフェリーチェが座り、ライ麦パンとコケモモのジャム、しっかりした味わいのチーズといった朝食を淡々と食べる… 提督「それにしても……」 フェリーチェ「ん?」 提督「フィンランドの食事は……何というか、ずいぶんと素朴な感じね」ジャムを付けたライ麦パンをよく噛んで飲み込むと、少し考えてから言葉を選んだ…… フェリーチェ「厳しい土地だもの、仕方ないわ……ま、今回の会議が上手くまとまればパーティがあるし、そうしたらきっと美味しいものだって出るわ。ごちそうのためにも頑張ってちょうだい」 提督「ええ、そうさせてもらうわ」 …会議場… ニッカネン「おはようございます、少将。フェリーチェ大尉も」 提督「ええ、おはようございます……ぴりっとした空気のおかげで目が覚めますね」 ニッカネン「田舎に行けば森の香りとしっとりした朝霧でもっと空気を楽しめるのですが、贅沢は言えませんね……昨夜はよくお休みになれましたか」 提督「ええ、おかげさまで……おはようございます、ラーセン大佐」まだ日の出を迎えたかどうかもあやふやな冬のフィンランドの朝だというのに眠そうな様子一つ見せず、きちんと折り目正しい様子のラーセン…… ラーセン「おはようございます」 ニッカネン「それでは、会議場に入りましょうか」 …午前中… 司会「……では、この件に関しては賛成多数で可決とします。次の議題ですが……」 提督「……昨日に比べればずいぶんと話が早くまとまってくれそうね。筋肉痛のカタツムリから、短距離走者のカタツムリくらいにはなったんじゃないかしら?」 フェリーチェ「昨日のやり取りで互いの立場が明らかになったからでしょうね。お互いに制服組同士、小難しい外交に関しては政府に任せて、身内でどうにか出来る範囲のことだけ折り合いを付ければいい」 提督「ええ……この調子なら、カチコチの雪だるまになる前に帰国できそうね♪」口元を手で隠し、小声でフェリーチェに耳打ちした…… フェリーチェ「どうかしら。あちらがそれで納得してくれればいいんだけど……」向かいのテーブルから冷たい目で会場を見わたしているロシア海軍の女性少将をちらっと眺めた…… ロシア海軍将官「……」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/848
849: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/10/02(日) 01:45:34.45 ID:1wqdHT430 ニッカネン「その意見には納得できかねます、マリノフスキー大佐」 ロシア海軍大佐「どう思われようとご自由だが、我々はそう決定している……少佐」赤ら顔の大佐は規模の小さいフィンランド軍「少佐」が他国なら大佐クラスに相当するにもかかわらず、下の階級だと言わんばかりの態度を取っている…… 提督「また始まったわね……」 …右耳には単調な声で話す同時通訳のヘッドホンを当て、もう片方の耳で生の声に含まれている調子や強弱を聞き、相手の出方を確かめようとする提督……手元の手帳には交渉材料に使えそうな単語がいくつか書き散らしてあり、隣のフェリーチェはメモ帳とラップトップを使い分け、さらに目線は相手の口元や視線を捉えている… フェリーチェ「バルト海艦隊の代表はモスクワから来たお目付役の前で強気な態度を取って「いいところ」を見せたいのよ」 提督「きっとそうね……ねぇミカエラ、そろそろニッカネン少佐の援護射撃をしてあげようかしら?」 フェリーチェ「待って、ラーセン大佐が動くわ……」 ラーセン「失礼、発言をよろしいですか?」 司会「ラーセン大佐、どうぞ」 ラーセン「どうも……失礼ながらマリノフスキー大佐、貴国のバルト海艦隊に所属する「艦娘」たちだけでバルト海全域をカバーするのは物理的に不可能かと思いますが」 大佐「ニェット(いや)、本官はそう思わない」 ラーセン「そうでしょうか? ですがそちらの艦隊に所属している「艦娘」を海域に展開させると、哨戒可能な範囲は周囲……浬、対してフィンランド湾の面積はこれだけあります……明らかに足りないように思えますが?」 大佐「……」 ミカエラ「……フランチェスカ」 提督「ええ。 マリノフスキー大佐、私からも一つ……」 …午後… 司会「では、以上でバルト海「深海棲艦」対策会議を終了いたします。皆様、お疲れさまでした」 提督「ふー……どうにかまとまってくれてよかったわ」 フェリーチェ「お互いに妥協出来そうなところまで持って行けてよかったわ……ロシア側もこっちの意見を押し切るほどの力はないし、どこかで折れるとは思っていたけど」 提督「ミカエラの読み通りね……」と、資料を小脇に抱えたニッカネンが近寄ってきた…… ニッカネン「お疲れさまでした、カンピオーニ少将、フェリーチェ大尉」 提督「いえいえ、少佐こそ……途中、なかなか話が決まらなくて大変でしたね」 ニッカネン「いえ、沿岸諸国の会議ではこのくらいよくありますから……ところで少将」 提督「はい、なんでしょう?」 ニッカネン「この後、なにかご用事は?」 提督「いえ、せいぜいホテルに戻って夕食を食べるくらいです」 ニッカネン「そうですか……ところでこの前お話ししたサウナですが……もしご都合がよろしければ、これから一緒にいかがですか?」 提督「ええ。 せっかくの機会ですから、ぜひお願いします♪」 ニッカネン「それはよかった……フェリーチェ大尉は?」 フェリーチェ「いえ、私は片付けなければならない資料があるので明日にでも……申し訳ありません」 ニッカネン「おや、それは残念です……では少将、後でそちらのホテルまでお迎えにあがります。1600時頃でよろしいでしょうか」 提督「ええ。 何か必要なものはありますか?」 ニッカネン「そうですね、同性とはいえ身体を見られるのが気になるようでしたら水着が必要ですが、他のものはタオルを始め、たいていの浴場でレンタルがありますので」 提督「分かりました、それじゃあ楽しみに待っていますね」 ニッカネン「はい、それでは……」 提督「もう、ミカエラったら……私のために遠慮しなくたってよかったのに♪」 フェリーチェ「よく言うわ。 とにかく、サウナにもフィンランド美人にものぼせないようにすることね」そう言うとあきれたように小さく肩をすくめた…… http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/849
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