イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (953レス)
イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/
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921: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/03/31(日) 02:21:54.49 ID:pRbdUNY+0 …食後… カヴール「さて、食卓は片付きましたね?」 ガリバルディ「ええ、大丈夫よ」 レモ「今度はなぁに?」 ドリア「あちこちからクリスマスカードが届いておりますから、せっかくですし読み上げようかと」 ガリバルディ「いいわね、どうせ時間もあることだし」 デルフィーノ「そうですね。それにしてもそれぞれ個性があって面白いです♪」デルフィーノは鎮守府に届けられたメッセージカードの山をより分けながらしきりにうなずいている…… カヴール「それでは読みましょうか……♪」おっとりとした貴婦人のような様子で暖炉の前の椅子に腰かけると「鎮守府宛」になっているクリスマスカードの中から、企業の広告や管区司令部からのカードを除いた何枚か手に取った…… エウジェニオ「誰から?」 カヴール「最初は……あら、イギリスのグレイ提督ですね」 …提督の実家とは別に、鎮守府にも送られてきた提督たちからのクリスマスカード……これにもそれぞれの性格や色が出ていて、イギリスの貴族令嬢であるグレイ提督は上品なハロッズ(百貨店)のカードに綺麗な筆記体で「Merry Christmas」とつづってあるのに対し、アメリカのミッチャー提督はコミック風のサンタクロースが描かれたカードに大きな文字で「Merry X‘mas」と、いかにもアメリカらしい書き方をしている… ガラテア「それで、レディ・グレイは何とおっしゃっています?」美しいガラテアが、カヴールの後ろから乳白色の美しい腕を首元に優しく回す…… カヴール「ええ、今読みますね……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。このカードを書いている間、あの明るいイオニア海の海原を思い出しました。どうか七つの海が平和でありますよう、そして貴女方が良いクリスマスを過ごせますように」……だそうです」 ネレイーデ「ふふ、あの人は相変わらずですね……♪」 ドリア「それでは次は私が読みましょうか……「メリークリスマス、ガールズ。ノーフォークは北風が寒くって最悪で、サンディエゴやマイアミ、あるいはそっちのナポリみたいな港が恋しいわ。ステイツからプレゼントを贈ったから、喜んでもらえたら嬉しいわ」だそうですよ」 セッテンブリーニ「ミッチャー提督も相変わらずね、プレゼントはきっとダサいセーターと野球帽、七面鳥のローストにチューインガムで間違いないわ」 ドリア「まぁ、ふふっ……♪」 カヴール「それから次のカードは……エクレール提督ですね。フランス語ですから、私が読みましょう」 ダルド(駆逐艦フレッチア級)「ヴァイス提督からのカードは私が読めるわ」 アントニオ・ピガフェッタ(駆逐艦ナヴィガトリ級)「ドイツ語なら私も読めるけどね……途中で代わろう」 ルイージ・トレーリ(大型潜マルコーニ級)「では、百合姫提督のカードは私が読みますね」 …フランスのエクレール提督は香水つきのカードに長々とメッセージを書き、ドイツのヴァイス提督は堅苦しいまでにきちんとした内容を罫線でも引いてあるかのような具合で真っ直ぐに書きつづり、百合姫提督は和紙を使ったはがき大のカードに丸みを帯びた丁寧な筆文字でメッセージを書き留めている… カヴール「あらまぁ、くすくすっ……♪」 チェザーレ「なにかおかしい事でも書いてあったのか?」 カヴール「ええ、ふふっ♪ エクレール提督ったらエスカルゴの前菜から始まるクリスマスの正餐ですとか、お国自慢を長々と書き連ねてあるものですから……♪」 エウジェニオ「エスカルゴってカタツムリのことでしょ……それがごちそうの前菜なの? カエルやカタツムリを食べるフランス人には困ったものね」 カヴール「まぁまぁ、あれもバター焼きにすれば案外良いものですよ?」 ダルド「そろそろいい? それじゃあこっちも読むわよ……「クリスマス、そして新年おめでとう。レープクーヒェン(ドイツのクリスマスに欠かせないショウガクッキー)を送ったので、ぜひご賞味いただきたい」だそうよ」 ピガフェッタ「レープクーヒェンか……地味な菓子だが嫌いじゃないよ」 トレーリ「それでは次は百合野提督のカードですね、読みますよ……「タラント第六鎮守府の皆様、メリークリスマス。クリスマスカードを送る風習がないものですから、何を書けばいいかずいぶん悩みました。ともあれタラント第六のみんなが良いクリスマスと新年を過ごせるよう、心から願っております。またいつか訪問できる機会を楽しみにしています」とのことです」 カヴール「ふふ、いかにも日本人らしい奥ゆかしい文面ですね」 チェザーレ「むしろ彼女の人柄であろうな……それぞれプレゼントも付いてきたようであるから、少々早いが開けてしまおうか」 (※イタリアではプレゼントを開けるのはイエス・キリストが生まれたとされる1月6日の公現祭(こうげんさい)の日。プレゼントは東方の三賢人の誘いを断り、結果キリストの誕生に立ち会えなかったことを後悔し続けているとされる魔女「ベファーナ」が持ってくるとされている) フルミーネ「やった♪」 カヴール「まぁ、少し早い気もしますが……クリスマスですからね、提督方の贈り物に限ってはいいということにしましょう♪」 …チェザーレやカヴールたち、留守を預かる「大人組」の許しを得て、クリスマスのメッセージカードに添えて送られてきた包みを喜び勇んで開ける駆逐艦や潜水艦の艦娘たち……娘たちによって人柄がでるのか開け方もさまざまで、待ちきれない様子で嬉しそうに包み紙を破る娘から、ある程度落ち着いてリボンをほどく娘までさまざまだった… フレッチア「すんすん……匂いからするとショウガクッキーね」 ピガフェッタ「レープクーヒェン、ドイツのクリスマス菓子では定番のやつさ」 コマンダンテ・カッペリーニ「百合野提督の贈り物は……化粧品と手拭いですね」 …日頃から潮風に吹かれ波飛沫を受けている艦娘たちにと、日本メーカーの乳液や保湿クリームといった化粧品の詰め合わせと、銀座の中心地、歌舞伎座のそばにある老舗で売っている、色も柄もさまざまな手拭いがたくさん入っている……かさばらずにお洒落なものをという、百合姫提督らしい気づかいが見て取れる… トレーリ「柄のいくつか「鎌○ぬ(構わぬ)」と言葉遊びになっていたり「後ろに下がることがない」蜻蛉(とんぼ)の柄みたいに、戦場での縁起を担いでいたりするんですよ」 デュイリオ「まぁまぁ、それは素敵ですね♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/921
922: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/04/08(月) 00:19:59.79 ID:XZ5d4hH20 …しばらくして・中型潜「スクアーロ」級の部屋… スクアーロ「ふぅ、たっぷりのご馳走に上等な酒……最高だったな」 トリケーコ「そんな風にすぐ横になると消化に悪いですよ?」 スクアーロ「今日はクリスマスなんだ、そう言うなよ」 デルフィーノ「スクアーロはクリスマスでなくたってそうじゃないですか」 スクアーロ「お、言ったな? そういう生意気を言うと……こうだぞ♪」ベッドから飛び起きるとデルフィーノの肩口を甘噛みし、ついでに脇腹をくすぐる…… デルフィーノ「ひゃあぁ、やめて下さい……っ///」ばたばたと暴れ回るデルフィーノ…… ナルヴァーロ「ほら、じゃれ合うのもほどほどにしなさい……私たちはバンディエラの部屋に遊びに行ってくるわ♪」そう言ってナルヴァーロ(イッカク)とトリケーコ(セイウチ)は出ていった…… デルフィーノ「はぁ、はぁ、はぁ……///」 スクアーロ「どうだ、姉に逆らうとどうなるか分かったか?」スクアーロ(サメ)の名にふさわしい、白くギラギラした犬歯をのぞかせてにんまりと笑ってみせる…… デルフィーノ「もう、分かりましたよぉ……」 スクアーロ「よーし、ならいい……しかしジァポーネの提督もマメだねぇ」 …鎮守府の艦娘全員に行き渡るほどの化粧品や、和紙の包み紙さえお洒落な和風の小物が詰め込まれた百合姫提督の贈り物……スクアーロは早速包み紙を開けて、中に入っていた「資生堂」の乳液をしげしげと眺めた… デルフィーノ「そうですねぇ」 スクアーロ「ああ……ところでデルフィーノ」 デルフィーノ「なんです?」 スクアーロ「せっかくだしちょっと塗ってくれるか、肌がガサガサなんだ」 デルフィーノ「はい、いいですよ」 スクアーロ「悪いな」 …スクアーロは自分なりに「海のギャング」らしくということでクリスマスパーティの正餐に着ていた、グレイで黒リボンの付いているボルサリーノ(ソフト帽)と、サメの背中のような濃い灰色のスーツとジレ(ベスト)、パールグレイのネクタイとワイシャツを次々に脱いでいく……着る物をすっかりハンガーに掛けてしまうとベッドにうつ伏せになり、デルフィーノに乳液の瓶を渡した… スクアーロ「どうだ?」 デルフィーノ「たしかにずいぶん荒れてます。もしかして食生活とかが乱れているんじゃないですか?」 スクアーロ「みんな同じものを食っているのにそんな訳があるか……まぁいい、塗ってくれ」 デルフィーノ「もう、人遣いが荒いんですから……」よいしょとスクアーロの背中にまたがって甘い香りの乳液をとろりと背中に垂らすと、すんなりした手で塗り込んでいく…… スクアーロ「お、なかなか気持ちいいな……♪」 デルフィーノ「それなら良かったです。せっかくだからこっちもやってあげますね?」スクアーロのサメ肌へ馴染ませるように肩甲骨、背中、脇腹、腰の辺りへと器用な手つきで滑らせていく…… スクアーロ「あぁ、いいな……うん、上手じゃないか……♪」 デルフィーノ「あの……スクアーロ///」スクアーロにまたがり、その白い裸身を見ながら揉みほぐすように乳液を塗り込んでいるうちに、ごちそうとお酒で火照った身体が甘くうずき始める…… スクアーロ「ん?」 デルフィーノ「……そのぉ、ついでだから脚もマッサージしましょうか///」 スクアーロ「どういう風の吹き回しか知らないが、せっかくそう言ってくれたんだ……ぜひやってくれ」 デルフィーノ「はぁい……♪」スクアーロのきゅっと張りつめたようなヒップからしなやかな太ももに手を這わす…… スクアーロ「おい、それじゃあ手つきが違うだろう……この万年発情期が♪」 デルフィーノ「だ、だってぇ///」 スクアーロ「ったく、仕方のない妹だな……ほら♪」ごろりと寝返りを打つと自分の手にも乳液を取り、デルフィーノのフリル付きワンピースの下へ手を入れ、片手でくびれた腰から太ももの付け根、もう片方の手で形の良い乳房を愛撫する…… デルフィーノ「はぁ、あぁんっ……はひゅっ、はひっ♪」数分もしないうちに可愛らしいくりくりした瞳は焦点を失い、半開きの小さな口から甘えたような吐息が漏れる……我慢しきれないと言うように片手はとろりと濡れた秘部へ伸び、もう片方の手はワンピースの裾をたくし上げている…… スクアーロ「ふふ、可愛い表情で喘ぐじゃないか……♪」 デルフィーノ「らって、らって……ぇ♪」ろれつも回らないままに嬌声を上げ、くちゅくちゅと指を動かしながらふとももに蜜を垂らし、スクアーロの上でひくひくと跳ねる…… スクアーロ「ここなんかも好きだったろ?」ちゅぷ……っ♪ デルフィーノ「ふわぁぁぁ、そこ……そこれす……ぅ///」 スクアーロ「ふふ、今日は午後いっぱいしてやるからな……覚悟しておけよ?」 デルフィーノ「はぁ……い♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/922
923: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/04/27(土) 00:49:53.25 ID:Vpqh/dsf0 …一方・提督の実家にて… 提督「ふわ……ぁ」 …午後の日だまりを浴びながら猫のように伸びをすると、ベッドに寝転がり文庫本をめくり始めた……と、ベッド脇のテーブルにある携帯電話が震えだし、提督は本を閉じるとせかせかと携帯に手を伸ばした… 提督「……もしもし?」 ミッチャー提督「ハーイ、フランチェスカ。いま大丈夫?」 提督「あら、ジェーン♪ ええ、大丈夫よ。貴女の声が聞けて嬉しいわ♪」 …電話口の向こうから聞こえてきたキレの良いアメリカ英語の主は、かつて提督と付き合いがあったアメリカ大西洋艦隊のジェーン・ミッチャー提督……グラマーで褐色の肌、黄色の1971年型「バラクーダ」を乗り回し、コルトM1911「ガバメント」のカスタムピストルで射撃にいそしみ、アメリカ人らしいスタンドプレーと多彩な悪口、それにタフさと知性を兼ね備えた実力派の提督で、穏和な提督とは正反対に近い勇猛果敢なタイプだが、映画という共通の趣味もあってか意外なほど仲が良い… ミッチャー提督「そいつはこっちも同じよ……ところで一つ貴女に言いたいことがあるんだけど」 提督「……ええ、どうぞ?」思い詰めたような声の響きに思わず姿勢を正し、何を言われても驚かないように身構えた…… ミッチャー提督「それじゃあ言わせてもらうわ……メリークリスマス♪」 提督「もう、ジェーンったら……真剣な口調で言うから何かあったのかと思ったじゃない」身構えていたぶん拍子抜けで、笑い出しながらベッドの上にひっくり返った…… ミッチャー提督「あははっ、ソーリィ♪ なにせこっちはターキーを食ってクリスマスポンチを飲んで、すっかりご機嫌だからね、ちょっと驚かせてみようかと思ってさ……今はガールズたちにクリスマス映画を見せてるとこ」確かに電話口ごしに映画のものらしい音声や曲が聞こえてくる…… 提督「いいわね。それで、映画は何を流しているの?」 ミッチャー提督「心暖まるクリスマス映画の定番よ「ホワイト・クリスマス」に……」 提督「ビング・クロスビーの? 曲も名曲で、映画自体も素敵よね」 ミッチャー提督「でしょう? あとは1947年版の「三十四丁目の奇蹟」と「素晴らしき哉、人生!」、それから「スクルージ」ね」 提督「スクルージだけはイギリス映画ね?」 ミッチャー提督「そ、ハリウッドにも「クリスマス・キャロル」を映画にした作品はいっぱいあるけど、私の中じゃこれが一番イメージにピッタリだから。1935年の映画だけど、時代がかった感じが逆に文学作品っぽくていいわ」 提督「そうねぇ。それにどの映画もみんな心暖まる映画で、クリスマスにふさわしいと思うわ」 ミッチャー提督「でしょ? なにしろ任務に次ぐ任務じゃあ気持ちがすさんでくるし、うちのガールズにもクリスマスくらいは幸せな気持ちでにこにこ笑っていてもらいたいからね。テーブルにはキャンディとチョコレート、デコレーションケーキにローストターキー、頭にはパーティ帽……ヤドリギの下ならキス御免で、ベッドに吊るした靴下の中やツリーの前にはリボンのかかったプレゼント……これならハッピーな気分になれるってものよ」 提督「いい考えね♪」 ミッチャー提督「サンクス、そっちは何してるの?」 提督「今は実家でベッドに転がって読書中……海軍士官になるまでは考えもしなかったけれど、何も考えずにベッドでごろごろできるのって最高の娯楽ね」 ミッチャー提督「しかもクリスマスのごちそうとワインを腹いっぱい詰め込んでから、でしょ? たしかに最高だけど、ずっとそんなことをしていたら、また太ももにぜい肉が付くわよ?」電話越しにクスクスと笑っているのが聞こえる…… 提督「ええ、でもクリスマス休暇の間はそれも考えないことにしているの♪」 ミッチャー提督「スラックスがキツくなっても知らないわよ?」 提督「その時はスカートにするわ……それでジェーン、貴女自身のご予定は?」冗談めかしてたずねる提督…… ミッチャー提督「ごあいにくさま、フランチェスカと違ってサッパリよ」 提督「あら、意外……ジェーンなら一人で「ダイナ・ショア・ウィークエンド」を開催出来るほどだと思っていたわ」 (※ダイナ・ショア・ウィークエンド…往年の名女性歌手ダイナ・ショアがゴルフ・コンペを開いた際、クラブハウスに女性たちが集まったことに由来するという全米最大のビアン・イベント。カリフォルニア州パームスプリングスで開催される) ミッチャー提督「そうだねぇ……私だってアレサ・フランクリンみたいに歌って、フレッド・アステアのように華麗に踊れて、おまけにハンフリー・ボガードみたいに気の利いた台詞が言えれば良かったんだけど、残念ながらそうはいかないもんでさ♪」 提督「ふふ……それを言ったら私だってオードリー・ヘップバーンみたいな顔が欲しかったわ♪」 ミッチャー提督「お互いないものねだりってわけね……でもフランチェスカは綺麗だと思うわよ。脚はまるでシルヴァーナ・マンガーノかジェーン・フォンダかってところだし、胸だって全盛期のころのジーナ・ロロブリジーダみたいで……それでいて顔は柔和で優しげ。パーフェクトじゃない」 提督「あら、ずいぶん褒めてくれるのね……おだてても何も出ないわよ?」 ミッチャー提督「そいつは残念」 提督「くすくすっ……相変わらずみたいね♪」 ミッチャー提督「まぁ、ノット・バッド(悪くはない)ってところよ。どいつもこいつも責任逃れしようとのらくらしているし、何をするにも申請書類をレーニア山くらい積み上げないと許可されないけど」 提督「ふふっ、お役所仕事はどこも同じね」 ミッチャー提督「そういうこと……ともかく、クリスマスカードとプレゼントをありがとね。うちのガールズも喜んでたわよ」 提督「それなら良かったわ。それから貴女のカードもこっちに届いたわ……またこっちにくる機会があったら教えてね? うんと歓迎するわ♪」 ミッチャー提督「サンクス、いいクリスマスをね♪」 提督「ジェーン、貴女もね」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/923
924: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/05/06(月) 01:48:13.72 ID:LBiF/fyO0 …一方・クリスマスのトゥーロン第七鎮守府… リシュリュー「提督、午後の郵便でまたクリスマスカードが届いておりますよ」 エクレール提督「メルスィ、リシュリュー。ちなみに誰からかしら?」 リシュリュー「読み上げて差し上げましょうか?」 エクレール提督「ウィ、お願い」姿見の前で顔を左右に向けてみたり制服の裾を伸ばしてみたりと、艦娘たちを前に行うクリスマスのあいさつに備えて身支度に余念がない…… ジャンヌ・ダルク「モン・コマンダン(私の司令官)、ぜひ私にもお手伝いさせてください」 エクレール提督「そうね、それではリシュリューと半分ずつ分け合って読み上げてもらおうかしら……構わないわね?」 リシュリュー「無論ですとも……ではこちらの束を」枢機卿のような緋色の生地をした厚手の衣をまとい、丁寧だが表情の読めないリシュリュー…… ジャンヌ・ダルク「ええ、お任せを!」裾に金百合の縫い取りが施された白い清楚なワンピースとふわっとした上着を羽織っている…… エクレール提督「ではリシュリュー、貴女の束からお願いするわ」 リシュリュー「では僭越ながらわたくしめが……まずはパリの海軍省から」 エクレール提督「形式的なものね、後で構いません」 リシュリュー「さようで……地中海艦隊司令部」 エクレール提督「それも後で結構ですわ」 リシュリュー「イギリス地中海艦隊のメアリ・グレイ少将」 エクレール提督「わざわざクリスマスカードを送ってくるだなんて、おおかた皮肉でも書き連ねてきたのでしょうね」 リシュリュー「でしょうな……ドイツ連邦海軍のヴァイス中佐」 エクレール提督「そう」 ジャンヌ・ダルク「では続けて私が……マリアンヌ・サヴォワ少佐」 エクレール提督「ああ、マリアンヌね。パリで一緒だったわ」 ジャンヌ・ダルク「ジュヌヴィエーヴ・フォルバン少佐」 エクレール提督「彼女ならカサブランカですわね。ジャンヌ、続けてもらえる?」 ジャンヌ・ダルク「はい、次は……イタリア海軍、フランチェスカ・カンピオーニ少将」 エクレール提督「フランチェスカから!? ……まぁ、わたくしからもカードを送ったのですし当然ですわね///」 ジャンヌ・ダルク「そうですね」 リシュリュー「おほん……他のカードは後回しにしてもよろしいような物ばかりかと存じますし、司令官も食堂でのあいさつの前にいささか公務が残っておりましょう……私どもは失礼させていただきますゆえ、何かご用の向きがございましたらまた……」 エクレール提督「え、ええ……そうですわね。つまらない書類仕事が少しだけ残っておりますし、二人はそれまで食堂でくつろいでいて構いませんわ」 ジャンヌ・ダルク「あの、モン・コマンダン? よろしければ私もお手伝いを……」 リシュリュー「……ジャンヌ」小さいが含みのある声でたしなめる…… ジャンヌ・ダルク「あっ……いえ、なんでもありません。失礼します///」 エクレール提督「え、ええ……///」 …二人が下がると提督からのクリスマスカードをしげしげと眺め、それから丹念に文を読んだ……提督の柔らかな筆跡で書かれている筆記体のフランス語を読み、二つほどあった小さな文法の誤りを見つけると眉をひそめ肩をすくめたが、読み終えると頬を赤らめてもう一度読み返した… エクレール提督「それにしてもフランチェスカときたら……本当にこういう事を恥ずかしげもなく書くのですから///」 …提督からのクリスマスカードには「クリスマスおめでとう」の下に添えて「クリスマスには会えないので、私からの愛をプレゼントに込めて送ります……可愛いマリーへ。フランチェスカ」とあり、ほのかに甘い香りのする香水が吹き付けてある… エクレール提督「……まったく、もう///」時間をかけて「シェルブールの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーヴ風にセットした髪を指先でいじりつつ、口元に笑みを浮かべるとカードを読み直し、それからカードにキスをすると引き出しの大事な場所にしまい込んだ…… エクレール提督「さて……わたくしも食堂へ行くとしましょう」 エクレール提督「フランチェスカ、貴女も良いクリスマスを……♪」一人でつぶやくように言うと、足取りも軽く執務室を出て行った…… ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/924
925: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/05/13(月) 01:49:52.02 ID:1BynDEZv0 …同じ頃・ジブラルタル… クィーン・エリザベス「メリークリスマス、マイ・レディ」 グレイ提督「メリークリスマス」 …地中海の出入口である要衝ジブラルタルの鎮守府もクリスマスの時期ばかりはお祭りムードが漂っていて、蓄音機にはクリスマス音楽や「遥かなるティペラリー(ティペラリー・ソング)」といった愛唱歌がかかっている… グレイ提督「ふふ、それにしてもみな楽しげで……」 クィーン・エリザベス「ええ、にぎやかで何よりでございますね」 …食堂のテーブルにはクリスマス・プディングと一緒に大きなパンチボウルが鎮座していて、駆逐艦を始めまだまだ「遊びたい盛り」の艦娘たちがやって来てはラム酒いりのポンチをレードル(おたま)でカップに注いでは、にぎやかに飲んだりはしゃいだりしている……一方、クィーン・エリザベスを始めとする年かさの娘たちはある程度落ち着いていて、グレイ提督のそばでゆっくりとウィスキーやブランデーをかたむけている… エメラルド「提督、よろしければお代わりでも?」 グレイ提督「そうですわね……ではグレンフィディックをストレートで」 エメラルド「はい」 ヌビアン(トライバル級駆逐艦・二代)「提督、プレゼントを開けてもいいデスカ?」 グレイ提督「ええ。貴女たちへのプレゼントなのですから、好きな時に開けて構いませんよ」 ヌビアン「じゃあさっそく……わ、手袋デス」プレゼントの包み紙を待ちきれないというように破くと、中からしっとりした手ざわりの手袋が出てきた…… …ヌビア人(いまのスーダンや南部エジプトにいたナイル川流域の原住民)を艦名に持つ「ヌビアン」は黒褐色の肌に金のネックレスが良く似合っていて、グレイ提督がロンドンのホワイトホール(海軍省)に寄った際に「ハロッズ」で注文しておいた暖かな青灰色の手袋をはめて喜んでいる… グレイ提督「地中海とはいえ冬は寒いし、貴女はことのほか寒がりですものね」 ヌビアン「アリガトウ、マイ・レディ♪」 グレイ提督「いいえ、構いませんわ」椅子に腰かけ、いつも通りの表情でちびりちびりとウィスキーを傾けているが、その口元には小さな笑みが浮かんでいる…… ジャヴェリン(J級駆逐艦「投げ槍」)「私のはハンカチだ…!」 グレイ提督「前に使っていたのはずいぶんとすり切れていたでしょう? 良かったらお使いなさいな」 ジャヴェリン「はい、大切にします♪」 …普段は落ち着いた雰囲気で、エリザベス女王陛下とネルソン提督の肖像画が見おろしている食堂も、今日ばかりは紙テープやリボンでにぎにぎしく飾りつけられ、演壇の周囲ではクリスマス恒例のくじ引きが行われている… ジャーヴィス(J級駆逐艦・嚮導型)「やった、当たったぁ!」 ジャッカル(J級駆逐艦)「まーたジャーヴィーが一等を持って行っちゃったのか……私はいっつも残飯あさりだよ」 クィーン・エリザベス「相変わらずジャーヴィスは幸運の持ち主でございますね」 グレイ提督「さすがは「ラッキー・ジャーヴィス」ですわね」 (※ジャーヴィスは地中海を中心に活動し被害も多かったが、不思議と戦死者の出ない幸運艦「ラッキー・ジャーヴィス」として有名だった) エメラルド「同感です……ところで提督」 グレイ提督「ええ、何かしら?」 エメラルド「イタリアのカンピオーニ提督にもプレゼントを贈っていらっしゃったようですが」 グレイ提督「ええ。彼女には「フォートナム&メイソン」のダージリン、セカンド・フラッシュ(二番茶)を一箱……トワイニングも普段の紅茶としては充分だけれど、たまには本物を味わってみるべきですものね」 エメラルド「なるほど」 グレイ提督「タラントからはクリスマスに合わせて素敵なイタリア食品とワインの詰め合わせを贈ってもらったことですし、そのくらいのお返しはしておかないと失礼と言うものですから」 クィーン・エリザベス「それに、個人的なプレゼントも届いていたようでございますね」 グレイ提督「ええ、リチャード・ジノリの素敵なティーカップを……色も鮮やかで、午後のお茶の時間が楽しみになりますわね」 エメラルド「ああ、あのアンズ柄の」 グレイ提督「いつものウェッジウッドも良いものだけれど、違う茶器を使うのも目先が変わって楽しいというものですわ」 クィーン・エリザベス「さようでございますね」 グレイ提督「ええ……なにはともあれ良いクリスマスですわね。誰も欠けることがなく、にぎやかで……ふふ♪」 エメラルド「まったくです」 グレイ提督「エメラルド、貴女も好きな飲み物を取っていらっしゃいな。今宵ばかりは多少酔ってもとがめ立てしたりはしませんよ?」 エメラルド「いえ、充分いただきましたから……今は提督のお側にいたいです///」 グレイ提督「まぁ……ふふっ♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/925
926: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/05/18(土) 02:05:06.58 ID:1pEXzytZ0 …一方・横須賀… 百合姫提督「それじゃあ皆、メリークリスマス♪」 一同「「メリークリスマス」」 …横須賀の鎮守府では百合姫提督が艦娘たちにごちそうを食べさせるためのいい口実として形ばかりのクリスマスパーティーを開いていた……食堂のテーブルには艦隊の胃袋を支えて来た給糧艦「間宮」「伊良湖」を始め、動きが危なっかしいことで何かと話題になる給油艦の「剣埼(初代)」や大型給油艦の「速吸」、給炭艦「襟裳」といった面々が当番の艦娘たちと奮闘して作り上げたご馳走が並び、正装の百合姫提督を上座に全員がずらりと並び、グラスを持ち上げて乾杯した… 大淀「提督、お注ぎしますね」 百合姫提督「ありがとう、大淀」 妙高「提督、よろしければこの「フーカデンビーフ」をお取りしましょう」ゆで卵を埋め込んだミートローフ「フーカデンビーフ」を切り分けてくれる…… 百合姫提督「それじゃあ一切れいただきます」 四阪「提督、こっちも美味しいアルヨ!」海防艦「四阪」は大戦を生き抜き中華民国の賠償艦、その後投降して中共に渡り「恵安」として長く艦籍にあった功労艦であり、今は綺麗なチャイナドレスとウェーブのかかった髪で「李香蘭」風にしている…… 百合姫提督「ええ、ありがとう。四阪はもう取った?」 四阪「はい、もうたくさんとったアル!」 百合姫提督「それならいいわ。みんなもお腹を壊さない程度にいっぱい食べてね?」 …百合姫提督は普段から艦娘たちが暮らしやすいようにと心を砕き、特に食べ物に関しては窮屈なことがないよう、たびたび鎮守府の食卓料に自分のポケットマネーをつぎ込んでいた……そのおかげもあって、いつもやつれているように見える「第一号(丙型)」「第二号(丁型)」といった海防艦の娘たちも以前よりはずっと血色が良い… 足柄「提督。せっかくだし一杯注がせて?」 …フーカデンビーフにローストチキン、それに艦娘たちにとってはなじみ深い料理であるコロッケや、士官食堂でしかお目にかかれないあこがれの献立でもあるチキンライスを包み込むタイプのオムライスといった洋食に合わせて、テーブルには清酒だけではなく紅白それぞれのワインも並んでいる……洋行帰りのハイカラが自慢の足柄だけに、ボトルを手に百合姫提督にもワインを勧めた… 百合姫提督「ありがとう」 足柄「どういたしまして。代わりに私のをお願いしていい?」 百合姫提督「ええ、手酌はお行儀が良くないものね……はい、どうぞ」 足柄「ありがとう。ところで……」 百合姫提督「なぁに?」 足柄「今年の忘年会だけど、手はずはもう決まってる?」 百合姫提督「あぁ、そのこと……一応いつもの料亭に席は取っておいたのだけれど……」 足柄「どうかしたの?」 百合姫提督「いえ。もっと気さくな飲み屋さんとかの方が良かったかしら、って……ちなみに足柄は何が食べたい? 天ぷらとか?」 足柄「そうねぇ……やっぱり年末と言えばすき焼きじゃない?」 百合姫提督「すき焼きね、それならお願いできるわ」 足柄「そんなに心配しなくたって大丈夫よ。どうせ飲んだくれてきたら味なんか分からないんだし、水雷戦隊の駆逐や軽巡だのは味より量なんだから」 百合姫提督「もう、そんな身も蓋もない……♪」思わず苦笑いを浮かべる百合姫提督…… 足柄「事実は事実よ。現にほら、あの様子を見てご覧なさいな」 初雪「わぁ、美味しいです♪」 白雪「本当に……もぐもぐ……それに量もたくさんあって……」 雷「間宮さん、とっても美味しいです!」 間宮「そう言ってもらえると私も頑張ったかいがあります」 百合姫提督「ふふ、良かった……あの娘たちがお腹いっぱい食べている姿を見ると嬉しくなるわ」 足柄「ふ、まったく面倒見が良いというか世話好きというか……」 百合姫提督「いつも頑張っているんだもの。私だって普段から「提督」だなんて言っている以上、そのくらいはしてあげないと……ね?」 妙高「とはいえそれが実行できる提督は少ないですし、本当に提督には感謝してもしきれません」 赤城「その通りです……良かったら私からも一献///」群馬の地酒「赤城山」の一升瓶を持ってかたわらにやって来た…… 百合姫提督「あら、赤城……だいぶ回っているようだけれど平気?」 赤城「平気です、後はお風呂に入って寝てしまえばいいですから……ひっく♪」 百合姫提督「くれぐれもお風呂で溺れないようにね?」 赤城「はい……ひゃっく♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/926
927: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/05/24(金) 01:39:49.31 ID:N02BX3Bt0 百合姫提督「もう、赤城ったらそんな足元がおぼつかないほど飲んで……立てる?」 赤城「立てますよ、子供じゃないんですから……っとと」 百合姫提督「大丈夫?」倒れそうになる大柄な赤城を懸命に抱きとめる…… 赤城「ええ……すん、すんっ」 百合姫提督「ごめんなさい、もしかして汗臭かった? ……温かい部屋で食べたり飲んだりしたものだからちょっと汗ばんでいるし」 赤城「いえ、そうではなく……いつもの香水とは匂いが違いますね」 百合姫提督「あ……そ、そうね///」 足柄「そういえば今日のは甘っぽい花の香りよね……ねぇ、もしかして」 百合姫提督「///」 足柄「ふぅん、なるほどね♪」 …普段はグリーンティー(緑茶)や柚子のような、どちらかというと中性的でさっぱりした和風のパルファム(香水)を使うことの多い百合姫提督……だが、頬を赤らめた百合姫提督のうなじから立ちのぼるのはフローラルブーケ系の甘く華やかな香りで、それを指摘されると恥ずかしげに小さくうつむいた… 龍田「提督もなかなか捨てておけないわねぇ?」 百合姫提督「も、もう……これはフランチェスカからのクリスマスプレゼントだったから、少し付けてみただけで……///」 足柄「まぁそういうことにしておいてあげるわよ……そうよね、間宮?」 間宮「ええ♪ 提督が一生懸命読んでおられたタラントの提督さんからのお手紙に「クリスマスの時は私も同じ香水を付けるから、香りだけでも一緒にいましょう?」と書いてあったなんて、たとえ風の噂で耳にしたとしても言うわけにはいきませんから♪」 百合姫提督「ま、間宮っ///」 間宮「あ、いけません……ついうっかり♪」帝国海軍の給糧艦であり、また強力な通信設備と傍受機能を持っていた「間宮」は艦隊の金棒引きとして、鎮守府の噂という噂を知り尽くしている…… 妙高「はぁ、お熱いお熱い……♪」わざとらしく手で顔を扇いでみせる…… 金剛「……それでいえば、長門だってそういうのはたくさんあるでしょう?」 長門「まぁ、少しは……♪」 …戦前にはその特徴的な煙突のシルエットから広く国民に知れ渡り、ある種のアイドルとして名高かった戦艦「長門」……その性質を受け継いでいるのか、長身の古風な美人でさながら「帝劇のスタア」といった容姿の長門には、鎮守府祭や広報活動で知ったという人たちからたびたびファンレターが届いたり、上陸休暇中にツーショットやサインをせがまれたりする… 利根「へぇ、あれが少しだってぇのかい! この間の入湯上陸で一緒に陸に上がったけど、まるで「煙管の雨が降る」ってぇやつだったじゃあねぇか!」 (※煙管の雨が降る…江戸時代、花魁が好みの相手にひと吸いしたあとの煙管を渡すことに由来。要は吸い口ごしの間接キスをねだるというしゃれたアプローチで、それが複数の相手から行われることから。歌舞伎「助六」でお馴染みのモテ表現) 長門「あの時はたまたまよ、たまたま」 足柄「モテる女はたいていそういうことをいうのよ……ね、提督♪」 百合姫提督「私は別にモテるとかそういうのは……///」 龍田「そうねぇ、でもタラントでは向こうの提督さんとずいぶん仲良くしていたわよねぇ?」 百合姫提督「いえ……だって、それは……えーと、そういえば忘年会のことだけれど……///」 羽黒「あらまぁ、艦隊運動の時のキレの良さはどこへやら……さぁさ、提督の苦しい話題の転換に敬意を表して聞いてあげるとしましょうよ」 百合姫提督「もう、みんなしてそうやって……///」 足柄「いつも通り「マウンテン」か「チェリー」か……それとも「マミー(ミイラ)」あたり?」 (※帝国海軍士官の間ではスラングとして単語を英語にもじり「パイン」(料亭『小松』)や「グッド」(料亭『吉川』)などの言い換えが流行っていた) 百合姫提督「えぇと、今年は「山科」と「小桜」は別の鎮守府が押さえているそうなので、27日に「木乃伊」で行うことになりました」 初雪「……それにしても「木乃伊」って変な店名ですよね」 百合姫提督「ええ、なんでも店のご主人がそれらしい店名にしようと思って「木乃伊(きのい)」としたら、後で「ミイラ」って読み方があったことを知ったそうよ」 足柄「ずいぶん変な店名だと思ってたけれど、そんな理由だったのね……ま、あそこは手ごろな割に料理もお酒もいいし」 百合姫提督「ええ、それに店のご主人も何かと良くしてくれるから……」 足柄「それじゃあそういうわけで……それじゃあ時間も遅いし、一旦おつもりにしましょうか」 百合姫提督「そうね。それじゃあ一度お開きにして……まだ飲み足りない娘はもう少し飲んでも良いけれど、明日に響くことがないように」 仁淀「後は私が管理しておきます」 百合姫提督「お願いね。私はお風呂をいただいてから休みますから、何かあったら構わずに連絡してください」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/927
928: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/05/30(木) 02:51:57.04 ID:aSUSxV0q0 …翌日… 足柄「……なぁに、また飲み会なの? 忘年会の季節とはいえ、このところ三日にあげず飲み会ね」 百合姫提督「ええ。今日は横鎮の提督を始め横空(横須賀航空隊)の司令官とかみんなが集まる忘年会だし、私だけ欠席するわけにも行かないから……」 足柄「まぁいいけど、飲み過ぎないようにしなさいよ? 帰りは無理して歩こうとしないで、ちゃんとタクシーを拾うのよ?」 百合姫提督「そうするわ」 梅「良ければわらわが付いて行こうか?」 百合姫提督「お気遣いありがとう、でも大丈夫よ……場所と時間、それに電話番号はここに書いておいたから、何かあったら連絡してちょうだいね?」はぎ取り式のメモ帳に書き付けて手渡す… 大淀「では、お気を付けて」 百合姫提督「ええ、行ってきます」 …横須賀市内・料亭「美月(みつき)」… 百合姫提督「遅くなりました」 横鎮先任提督「おお、百合野くん……なに、全然遅くないよ。どこでも好きな場所にかけてくれ」 横鎮後任提督「百合野准将、どうぞ上座に」 …横須賀第一鎮守府を預かる中年の先任提督に始まり、末席の年若い佐官クラスまでさまざまな男女十人前後が座敷に集っている……百合姫提督の後からも何人かやって来ては席についた… 先任提督「さてと、百合野君はビールでいいかな?」 百合姫提督「ええ、はい」 先任提督「じゃあ注いであげよう……みんな飲み物は行き届いたね?」生ビールと(下戸の提督は)烏龍茶のグラスが行き渡ったか確認する…… 百合姫提督「ええ、大丈夫です」 先任提督「よろしい……それじゃあ今年もご苦労様、乾杯」 一同「「乾杯」」 先任提督「さぁさぁ、遠慮しないでつついてくれ……田中君、お造りや天ぷらも遠慮しないでいいんだぞ?」 若手提督「は、ありがとうございます」 先任提督「百合野君。きみも遠慮しないで、食べたいものがあったらドンドン頼んでくれよ?」 百合姫提督「ええ、いただきます」 …お造りの鯛にわさびを乗せ、ちょんとつつくように小皿の醤油を付けて口に運ぶ……薄いがもっちりした鯛の食感と濃い口醤油の深みのある味わい……それにチューブのではない「本物の」わさびならではつんとした、しかし爽やかな香気が鼻を抜ける… 短髪の女性提督「良かったらいくつかお取りしましょうか?」 百合姫提督「ええ、ありがとう」 …お造りの他にも懐紙を敷いた粋なカゴに、からりと揚がった春菊、レンコン、さつまいものような冬野菜、それに車エビ、太刀魚などの天ぷらが盛り合わせてある……手元には塩だけでなく温かい天つゆの小鉢も置いてあり、それぞれ好きな方で食べられるようになっている… 短髪「はい、どうぞ……ところでこの間は燃料を融通して下さってありがとうございました」 百合姫提督「いいえ、うちの方の割り当て分にまだ余裕があっただけだから」 先任提督「いやいや、あの時は本当に助かったよ。本当なら「横一」である僕の方から佐藤君の鎮守府に融通してあげないといけない所だったんだけどもね、あいにくジャワ島方面までうちの娘たちを動かしている最中だったもんだから……とかく戦艦ってのは燃料を食うしねぇ」 百合姫提督「そうですね」 先任提督「燃料廠にそういって追加を出してもらうとなったら恐ろしく面倒な手続きが必要になるし、最終的には艦隊司令部のお歴々も市ヶ谷に出向いて説明しなきゃいけなくなる所だったから……いやぁ、あれには本当に感謝だよ」 百合姫提督「そんなに感謝されるとかえって気恥ずかしいです……」 短髪「いえ、おかげで大規模対潜掃討も無事に済みましたから……私になにかお返しできる機会があったら何なりとおっしゃって下さい///」 百合姫提督「ええ、ありがとう……///」お酒も回って紅潮した頬をした女性提督から熱い視線を向けられ、はにかんだように答えた…… 先任提督「とにかく君が横須賀にいてくれてありがたいよ。さすが井ノ上校長の愛弟子だね♪」 百合姫提督「もう、またそれですか。その話は誰かが広めたまったくの作り話なんですよ……本当に広まって欲しくない話ばかり勝手に広まるんですから///」 短髪「でも、その事なら私も聞いたことがあります。江田島では井ノ上成美(いのうえ・なるみ)校長の愛弟子だったとか……」 百合姫提督「だからそれは誰かが言いふらした噂で……」 後任提督「そうそう、僕も聞いた覚えがあるよ。「横二」の百合野提督は井ノ上校長の愛弟子で「智」の百合野って呼ばれているって」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/928
929: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/06/06(木) 02:25:09.04 ID:uXsLn0Fo0 百合姫提督「ですから……私は山本五十六元帥の遠戚でもありませんし、江田島で特別扱いされたこともありません。漕艇訓練では皆さんと同じように手にマメを作りましたし、チェスト(衣服箱)の中身をひっくり返された事だってあります」 横空司令「まぁまぁ、そうムキにならなくても……それより鍋が来たようですよ」 先任提督「おっ、来たか♪」 後任提督「やっぱり冬は鍋物に限りますね」 若手提督「なに鍋が来るか楽しみです♪」 先任提督「ふふん、今回はアンコウ鍋だぞ……あれは深海魚だから「深海棲艦」を食ってやろうってわけでね♪ さ、遠慮しないで手を出してくれ……司令、そちらにもひとつ」 横空司令「や、これはどうも」 短髪「百合野准将、よそいましょうか?」 百合姫提督「そうですね、せっかくですから……ふー、ふー……」 …ぷるぷると柔らかな皮とほろりとした身、それにクリームのように濃厚な肝が上品な醤油味の汁に溶け込み、旬のみずみずしい白菜や桜に切ったにんじん、豆腐やシイタケなどにも沁みわたっている… 百合姫提督「ふあ…はふっ……おいひい……」 先任提督「うーん、美味い……日本酒と一緒に食うアンコウ鍋は最高だね」 横空司令「アンコウなんて霞ヶ浦空にいたとき以来ですよ……あー、沁みる」 百合姫提督「……よそってあげましょうか?」下手に座っている若手提督の呑水(とんすい)が空になっているのを見て、とりわけ用の菜箸に手を伸ばす…… 若手提督「いや、百合野准将によそっていただくだなんてめっそうもない……///」 先任提督「田中君、そう遠慮するな。君だって横鎮の一員なんだからね」 短髪「そうそう。それにあんまり遠慮するのも考え物よ?」 若手提督「は、それでは……///」 先任提督「ははは、そんな緊張しなくても大丈夫だよ♪ 海幕の偉いさんと飯を食っているわけじゃないんだ、酒の方だって気楽に飲って(やって)くれ……そうは言っても付き合い酒だからやりにくいだろうが、私はもうちょっとしたら引き上げるから」 若手提督「あ、いえ……別にそういう意味では……」 先任提督「分かってる分かってる。たんに私が年で、あんまり深酒をすると明日に響くから引き上げるだけさ……そういう点では米内さんは大変な人だよ」 百合姫提督「米内さんというと……海幕の米内・政子(よねうち・まさこ)大将ですか」 先任提督「そう、その米内さんだ。まぁあの人の飲むことといったら、まるでうわばみ(大蛇)か酒呑童子だよ。それでいて顔色ひとつ変えやしないんだから……飲み比べをしかけた若い連中がへべれけになってひっくり返っている中で、平然と飲みつづけていたって言うからね」 百合姫提督「噂には聞いたことがありますが、お酒の席ではご一緒したことがありませんので」 先任提督「周囲は何やかやと言うけれど、器のでっかい立派な人だよ……ただ、性格は井ノ上さんと正反対だな」 百合姫提督「井ノ上校長はストイックな方ですからね」 短髪「ええ。でも課業終わりの静まりかえった海辺でそっとヴァイオリンを弾いている井ノ上校長は素敵でした……」 先任提督「何しろあの人は数学や語学だけじゃなくて楽器も得意だからね、あれでみんなやられるんだ。もっとも、井ノ上さん自身は堅い人だからちっとも浮いた話はないそうだが……ま、米内さんが明るくて豪華な牡丹の花だとすると、井ノ上さんはつつましやかな一人静(ひとりしずか)ってところだね」 百合姫提督「分かります」 先任提督「……ところで百合野君、君の方はどうなんだ?」 百合姫提督「え、私ですか?」 先任提督「ああ。君だって女性士官のファンが一杯いるじゃないか」 百合姫提督「いえ、別にそういうつもりではありませんから……///」 短髪「でも百合野准将の食事会といえば有名ですし、佐鎮の早蕨少佐や館山分遣駆逐隊の市川中佐、それから松本中佐みたいに女性だけしかメンバーに入れないって聞いたことがありますが」 百合姫提督「あ、あれはお互いに仲良しの同期で「連絡を絶やさないようにしよう」ってお茶や食事の機会を設けているだけで……///」 短髪「そうなんですか? 私てっきり……」 百合姫提督「私だって一応は提督です……そんな公私混同はしません」 先任提督「うむ、実にいいことだ。それでいうと提督の中には艦娘たちと安易に「仲良く」なりすぎる者もいるが、私としてはどうかと思うね」 短髪「ごほっ……!」 百合姫提督「……そうですね、肝に銘じておきます」自分から積極的にアプローチしたわけではないとはいえ、思い当たる節は多々あるだけに気まずい…… 先任提督「アンコウだけに……かな? ははは♪」 短髪「あは、は……」 百合姫提督「……」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/929
930: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/06/17(月) 03:09:45.41 ID:9+gEnvwy0 …忘年会当日・朝… 足柄「……おはよう、提督」 百合姫提督「ええ、おはよう」 龍田「あらぁ、少し顔色が青いわねぇ……今日はうちの忘年会だけれど、昨日の今日で大丈夫?」 百合姫提督「ええ、昨夜はお酒の量も控え目にしておいたし、解散した後にちゃんと肝臓ドリンクも飲んでおいたから……でもちょっとだけ頭が重い感じ」少し眉をひそめ、こめかみにほっそりした手を当てた…… 間宮「酔い覚ましにしじみのおみおつけを用意しておきましたが、よろしければ召し上がりますか?」 百合姫提督「ええ、いただきます……気づかってくれてありがとう、間宮」 間宮「いえ、たまたま市場で安く仕入れてきたものですから」そう言いつつもさりげなく気づかってくれる間宮の心遣いが温かい…… 百合姫提督「それではいただきます」 …もう年末ということもあって、少し早いが実質仕事納めの状態になっている鎮守府……そのため、どうしても欠かせない当直や当番を除く全員が揃っていて、百合姫提督のあいさつのが済むとにぎやかな、しかしどこかゆったりした雰囲気の食事が始まった… 青葉「今夜は忘年会ですね、楽しみです♪」 百合姫提督「そういってもらえると方々に予約の電話をかけたかいがあるわ」 …朝食は麦の混じっていない「銀飯」と生卵、脂がのった鮭の塩焼きに、間宮たち給糧艦の娘たちが漬け樽いっぱいに用意し、ほどよく漬かって酸味が出始めている白菜の塩漬け、そして赤味噌を利かせたしじみの味噌汁……長机のあちこちにはほうじ茶のやかんが置かれ、食後のおやつとしてカゴに盛られた温州みかんが積まれている… 鵜来「ずずっ……あー、沁みる……」 百合姫提督「そうね……ふぅ」温かい味噌汁をすすると、脈打つような鈍い頭痛が治まるような気がする…… 足柄「朝食が済んだらお風呂に浸かってきたら? そうすればすっきりするんじゃないかしら」 百合姫提督「いえ、軽くとはいえお化粧もしちゃったし、それにさすがに朝からお風呂だなんて贅沢すぎるから……」 足柄「いいじゃない。だいたいタラントのカンピオーニ提督のところなんて、温泉を引いた古代ローマの宮殿みたいな大浴場がいつでも入り放題だったじゃない。アレに比べればうちの浴場なんてささやかなものよ」 百合姫提督「さすがにあれと比較するのは……」カララの大理石や御影石をふんだんにあしらい、ランの花や観葉植物の植え込みまであるタラント第六鎮守府の豪華な大浴場を引き合いに出され、思わず苦笑いする百合姫提督…… 龍田「確かにすごい大浴場だったわねぇ、お湯は少しぬるめだったけれど」 足柄「とにかく、今夜の忘年会までに気分を一新しておいてくれればいいのよ」 百合姫提督「頑張ります」 間宮「それではおみおつけのお代わりを召し上がっていただくということで……よそいましょうか?」 百合姫提督「ええ、それじゃあもう一杯……」 ……… … …夕方・横須賀市街の料亭「木乃伊」… 百合姫提督「ちゃんと全員いるかしら」 大淀「はい、全員います」 百合姫提督「なら良かったわ。さすがにこれだけいると、私も把握出来ないことがあるから……」 …陽が落ちるのも早い冬の夕暮れ、ぽつぽつと明かりが灯り始めた横須賀の街……その喧騒から少し外れた一角にある料亭「木乃伊(きのい)」……百合姫提督と「横須賀第二」鎮守府の艦娘たちにとってはお馴染みの料亭で、店先には小ぎれいに整えられた竹藪や石灯籠のある前庭があって、小粋な入口の小さな行灯に「料亭・木乃伊」とある… 仲居さん「いらっしゃいませ、お席はこちらに用意してあります」 長門「提督、では私と一緒に♪」 比叡「いえ、ここはお召し艦である私と……どうぞお手を♪」 金剛「あらぁ、年長者を差し置いて何をしているのかしら。提督は私と一緒に行くわよねぇ♪」 足柄「はいはいはい、いつものお店なんだから案内なんていらないでしょ……さ、行きましょう?」 百合姫提督「あ、ありがとう……」 足柄「いいのよ、いちいちこの調子じゃあ埒があかないわ」 電「……それにしてもここに来るのは夏にやった暑気払いの宴会以来ですね……っとと」 百合姫提督「あいた……っ!」 電「あいたぁ……済みません、提督。お怪我はなかったですか?」 百合姫提督「ええ、大丈夫……」 足柄「はぁ……提督と電ときたら、本当によくぶつかるんだから。今日は隣同士で座らないことね」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/930
931: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/06/24(月) 01:02:09.53 ID:+db1eW/Q0 …大部屋… 大淀「えー……それでは提督、乾杯の音頭をお願いします」 百合姫提督「はい」 …襖を開けて一続きにした畳敷きの大部屋で、床柱を背にした百合姫提督が立ち上がると左から右へと視線を動かしていく……勢揃いしている指揮下の娘たちは屈託のない表情で、それぞれビールグラスや熱燗のお猪口を手にしていて、せっかちな何人かは料理やお酒が待ちきれない様子でいる… 百合姫提督「えー、本当だったらなにか立派な演説をするべきなのかもしれないけれど、私がしなくてもきっと市ヶ谷のエライ人が年末の挨拶で私の分までしてくれるでしょうし……」そう言うとあちこちからくすくす笑いが漏れる…… 百合姫提督「……とりあえず私から言いたいことがあるとすれば「みんな今年もよく頑張ってくれました」ということです」 百合姫提督「特に今年は夏の間「交換プログラム」で私が欧州に長期派遣されていた中で留守を預かってよくやってくれて……おかげで無事にプログラムも終え、こうしてみんなと一緒にいることができます。本当に感謝しています」 百合姫提督「……それでは、本年もお疲れさまでした。乾杯」 一同「「乾杯!」」 …席に着くとビールを数口すすって、それから「いただきます」をして箸をとる……卓の中央にはすき焼き鍋、そしてその隣には綺麗に盛り付けられた牛肉と野菜の皿が鎮座していて、その周囲を取り囲むように箸休めの小鉢や一品料理が並んでいる… 足柄「さ、まずは一献」 百合姫提督「ありがとう」 足柄「ところで年末年始はどうするの?」 百合姫提督「三が日は実家に帰って、あとは香取神社か鹿島神宮に参詣しようかと思っているわ」 (※香取神社・鹿島神宮…どちらも武を司る神として知られる) 足柄「いいわね……そろそろ煮えたみたいだし、取ってあげるわ」きれいにサシの入った霜降りの牛肉がほどよく煮えた頃合いを見計らい、菜箸で器によそった…… 百合姫提督「ありがとう」 足柄「いいのよ。それに早くしないとあいつらに全部食べられちゃうし……」ちらりと視界を右の方に向けた…… 青葉「……うーん、美味しい♪」 夕凪「これは私の分ですからね?」 天龍「分かってるよ、そんなけちくさい真似なんてしないって」 衣笠「そうそう、夕凪の分まで盗らないから」 青葉「きっと信用されていないんですね」 加古「あはははっ♪」 衣笠「もう、全然おかしくないし……!」 足柄「……ほらご覧なさい。あいつらさっきからバクバク口に放り込んでるわよ」 百合姫提督「大丈夫、足りなくなったら追加で頼めばいいから。そう思ってカードも入れてきたし」 足柄「提督も向こう見ずね……冬の賞与が全部消し飛ぶわよ?」 百合姫提督「いいの、せっかくの忘年会だもの……それより足柄も食べないと、お肉が煮えすぎて固くなっちゃうわ」 足柄「おっと、それもそうね」溶き卵に浸けて柔らかい牛肉を口に運ぶ…… 足柄「はふ、ふぁ……良い肉ね、これ……」 百合姫提督「ね、さすがに銘柄牛だけあって……葱もそろそろ頃合いだけれど、食べる?」 足柄「ええ、もらうわ……熱っ! この葱のやつ「鉄砲」だったわ」 (※鉄砲…煮えた葱の外側が柔らかく、中がまだしっかりしている状態。噛むと中の部分が飛び出してくる事から。さらに煮えて箸で掴むとたわむようになると「への字」と呼ばれる) 百合姫提督「大丈夫?」 足柄「平気よ、葱鉄砲の一つや二つ……あー、美味しい♪」 百合姫提督「それじゃあ私はちょっとみんなとお話してくるから」 足柄「ええ、でも見計らってちゃんと食べなきゃだめよ?」 百合姫提督「そうするわ♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/931
932: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/07/01(月) 01:08:56.29 ID:AHZDqK3E0 百合姫提督「……どう、おいしい?」 鵜来「はい、まるで舌の上でとろけるようで……♪」 第一号海防艦「本当に美味しいです」 百合姫提督「良かった、お腹いっぱい食べてね」 第一号「ありがとうございます」 新南(鵜来型)「……ところで提督の対潜法は面白いですね」 百合姫提督「そう?」 新南「はい、これまではあんなにしつこく反復して攻撃したことなんてなかったので」 三宅(御蔵型)「そうですね、一回の対潜戦で爆雷を四十発も五十発も投射するなんてしたことありませんでした」 百合姫提督「ああ、そのことね……私も対潜学校に行ったわけじゃないけれど、大戦時の帝国海軍は基本的に爆雷の投射数と攻撃回数が少なかったから、多くの米潜が逃げ切ってしまったという記録があって、その資料を反映して私なりに対潜戦のやり方を研究してみたの」 …海防艦たちの側へやってきて終始和やかな笑みを浮かべていた百合姫提督だったが、対潜戦の話になると気付かぬうちに背筋を伸ばして真面目な表情になる……ビールと日本酒の入っている桜色の頬が熱心な説明でさらに赤みを増し、近くにあった空の小鉢や箸を借りて話しているうちに、近くの海防艦や掃海艇、駆潜艇の娘たちも集まりだす… 松輪(択捉型)「それにしても提督の対潜法は独特です。例の「十文字花射法」ですか、数字の8を縦横に重ねたように航行しながら爆雷を投射したり、探信儀や聴音機みたいな水測兵器を多用したり……」 百合姫提督「うーん、あの戦法はあくまでもひとつのやり方にすぎないけれど、あの形なら僚艦が旋回、探知している間も中心に来た一隻が必ず爆雷を投射できるから、それだけ切れ目のない攻撃ができるの。私は対潜戦の心構えを「カメのように忍耐強く、マムシのように執念深く」だと思っているから……」 日振(日振型)「見張投射ばっかりだった当時に比べると全然違いますね、覚えるまでは苦労しました」 百合姫提督「そうかもしれないわ。でも、潜望鏡や雷跡を見かけたら急回頭して突っ込んでいく……この戦術は知られすぎているし、むしろ敵潜の返り討ちに遭うことの方が多かったから、基本的にやらないことにしているの」 第六十七号海防艦(「第一号(丙)」型海防艦)「なるほど」 百合姫提督「あら、いけないいけない……堅い話はこのくらいにして、忘年会なんだからもっとくつろいで? お肉の追加も頼みましょうか?」 竹生(鵜来型)「はい♪」 百合姫提督「ふふ、了解……仲居さんがきたらお願いしておくわ♪」 第三号海防艦(第一号型)「やったぁ♪」 第八号海防艦(「第二号(丁)型」海防艦)「あ、それじゃあこっちも」 第二十一号駆潜艇(「第十三号」型駆潜艇)「提督、私たちもおかわり欲しいです!」 百合姫提督「はいはい♪」 足柄「……まったく「士官とはオレもオレもと言う人種なり」ってやつね」 高雄「同感ですね。それとついでにこちらにも」 足柄「……」 百合姫提督「すみません、それじゃあこっちとむこう……それからあの娘たちにもお肉の追加を。それからお銚子のお代わりと……鵜来は焼酎の方がいいかしら?」 鵜来「はい、薩摩白波のお湯割りで」 百合姫提督「ではそれでお願いします」 仲居さん「はい♪」 …しばらくして… 明石「そーれ、捕まえたぁ……っと♪」 初雪「もう、放して下さいっ!」 吹雪「ひゃあっ、明石ってば! どこを触っているんですかっ……///」 明石「そりゃあ船体に異常がないか隅から隅まで調べないと……お、このバルジはちょうど手のひらに収まる大きさで♪」 百合姫提督「明石、いい加減に放してあげなさい?」 明石「むむ、提督が検査修理を認めないなら仕方ないですね。ほら、放してあげますよー……っと」 間宮「……それでですね、長門ったら普段は帝劇の女優さんのように見えますけれど長州訛りが抜けないものですから、この間もうっかり「であります」だなんて陸さんみたいな話し方を……♪」 長門「間宮、どこからその話を……!」 間宮「ふふっ、どこからでしょうねぇ……♪」 百合姫提督「くすくす……っ♪」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/932
933: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/07/08(月) 01:40:17.33 ID:s6lOcY020 …さらにしばらくして… 青葉「ほぉら、撮りますよぉ? もっと近づいて、笑って笑って♪」 百合姫提督「はいはい♪」 龍田「青葉はすぐ写真を撮りたがるのよねぇ」 青葉「いいじゃありませんか、いつも上手に撮れているんですから」 利根「おう、確かに毎回いい具合に写ってらぁな……ひっく、どうだもう一杯♪」 天龍「いただきます!」 木曾「私も!」 利根「おっ、さすがに水雷戦隊は威勢がいいや! 気に入った、さぁ飲め飲め!」 …そう言って注いだのは利根川の流れる房総の名酒「仁勇(じんゆう)」で、威勢のいいべらんめえ口調な利根とは似合わないすっきりとした飲み口のいい酒で、勧められた百合姫提督もついついペース良くお猪口を空けてしまっていた… 木曾「はー、美味いっ!」 利根「おう、遠慮せずもう一杯やれ♪ 利根の川風ぇ〜、たもとに入れて……月に棹差す高瀬舟……っと♪」 (※利根の川風…江戸時代にブームになった中国古典「水滸伝」を日本に置き換えて大流行した、読本「天保水滸伝」の台詞。浪曲などでもお馴染み) 百合姫提督「ねぇ、足柄……もう少し、側に寄ってもいいかしら///」 足柄「そ、そりゃあ別に構わないけど……///」 矢風(標的艦)「あーっ、提督と足柄ってば二人でいちゃいちゃしてるぅ♪ 初々しくって可愛いんだ♪」 足柄「あのね、そういうのを余計なお世話って言うの……よ!」二人を茶化してくる矢風に、力加減をした上でポカリと一つ拳固を食らわせる足柄…… 矢風「あいたぁ!」 摂津(標的艦)「んもう、矢風はすぐそないなちょっかいを出して……」 矢風「ふぅーん、摂津ってばそういう事を言うんだ……それじゃあ今度、赤城や加賀の練習相手をお願いしちゃおうかなぁ?」 摂津「それはあかんって、うちじゃあ反応がトロい言うてすーぐ好き放題されてまうし……///」 加賀「別に矢風でもそんなにすばしっこくはないですけれど……ね♪」後ろから忍び寄ると、矢風の小さい身体をつかまえて脇腹や足裏をくすぐった…… 矢風「ひゃあっ!? あひゃひゃ、くすぐった……あはははっ♪」逃れようと身をよじらせ、脚をばたばたさせる矢風…… 百合姫提督「あらまぁ、矢風ったらすぐ捕捉されちゃって……これじゃあ練習にならないわね、加賀?」 加賀「はい、ちっとも苦労しないですね……うりうり♪」 矢風「ひゃあぁっ、そこはダメだってぇ///」 …無礼講の宴席でお酒が回って陽気かつ親しげになると同時に、かなり騒がしくなってきた艦娘たち……肩を組んで戦前・戦後の歌謡曲を歌う娘もいれば旺盛な食欲のおもむくままに飲みかつ食べる娘もいて、中にはすっかり酩酊している娘やうつらうつらしている娘もいる… 百合姫提督「ん……ふわぁ……」 足柄「あら、提督はそろそろおねむかしら?」 百合姫提督「あぁいえ、大丈夫。 お部屋は暖かいしお腹もいっぱいで、少しあくびがでちゃっただけ……」そう言っている間にもあくびがこみ上げ、手の甲で口元を隠した…… 足柄「大丈夫じゃなさそうね……飲みたい連中には二次会にでも行ってもらうとして、一旦おつもりにしましょうよ」 百合姫提督「そうね、みんなひとわたり食べたり飲んだりしたみたいだし……そうしてもいい頃合いかしら」 料亭の女将さん「……失礼いたします」 足柄「ほら、ちょうど良いところに女将さんも来たわよ」 百合姫提督「これは女将さん、お忙しいでしょうにわざわざすみません……それに大人数で騒がしくしてしまって……」 女将「いえいえ。こちらこそ鎮守府さんには折々の宴席をうちで設けていただいておりますのに、すっかり挨拶が遅れてしまって」料亭の女将さんはほっそり気味のしっとりした美人さんで、所作も丁寧で着物の襟もきちんと抜けていて、身ごなしの一つ一つが小粋な雰囲気をかもし出している…… 百合姫提督「とんでもないです……少し早いかもしれませんが、また来年もよろしくお願いします」 女将「これはご丁寧にありがとう存じます……こちらこそ、今後ともぜひご贔屓に♪」 百合姫提督「騒がしい娘たちですしなにかとご迷惑かと思いますが、もし構わなければまた新年会でも……それと」そろそろおつもりにしますというように小さくうなずいた…… 女将「はい、そのように……それではどうか、良いお年を」畳に揃えた指先をつけて丁寧に一礼すると、ふっと大人の色香が漂うような視線を向けた…… 百合姫提督「よいお年を///」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/933
934: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/07/13(土) 01:47:55.33 ID:inAHo1iA0 …夜・横須賀市街… 足柄「うぅ、寒っ……流石に夜風がこたえるわね。提督は寒くない?」 百合姫提督「大丈夫よ、ありがとう♪」 …夜風に吹かれながら歩く百合姫提督たち……どちらかと言えば小柄な百合姫提督は足柄に身体を寄せると、お酒で赤らんだ頬をそっと肩に乗せてにっこりする… 足柄「ならいいけど……帰りにコンビニでも寄っていきましょうか///」 百合姫提督「ええ、せっかくだから甘い物でも買っていきましょう」 利根「それじゃああたしらはここで……せっかく陸に上がったんだから、もう一軒行ってくらぁ♪」 足柄「いいけど飲み過ぎて警察のお世話になったりするんじゃないわよ?」 天龍「任しとけ!」 足柄「……やれやれ、あの暴れ川連中ときたら。よその鎮守府の娘と喧嘩とかしなきゃいいけど」 百合姫提督「そうねぇ、でも年末くらいは羽を伸ばして好きなようにして欲しいし……」 足柄「警察署のトラ箱に入ったり、内務の連中から監察を食らわない程度にならね……コンビニならこっちのほうが早道だったわよね」 百合姫提督「ええ」 …古くからの軍港の街である横須賀、その中でも特ににぎやかな繁華街は「海軍さん」のころから変わらない「鎮守府さん」相手のさまざまな商売で繁盛していて、ネオン輝く夜の街角はしばしの楽しみを求めて財布と欲望をふくらませている艦娘や鎮守府関係者たちを誘蛾灯のように誘っている……そんな繁華街を抜け、近道しようと角を曲がった百合姫提督と足柄だったが、通りの建物はいずれも玄関先に「ご休憩○○時間〜円から」といった値段表を載せ、洋館風の装飾がどこか後ろめたい雰囲気をしたピンクや紫の明かりで彩られている… 足柄「っ、そういえばこのあたりはそういう通りだったわね///」 百合姫提督「言われてみれば……」 足柄「べ……別に私はそういうつもりじゃないわよ///」 百合姫提督「ええ、分かっているから……///」 …立ち並ぶホテルにはときおり連れだって入っていく人たちと、そこに混じってちらほらと艦娘たちの姿も見える……今しも百合姫提督たちの目の前で、冬空の下で寒くないのか心配になるような短いスカートの女性を連れた艦娘がするりと建物へと入っていこうとする… 艦娘「……あれ、もしかして横二の百合野提督ですか?」ホテルへ入ろうとした女性連れの艦娘が百合姫提督に気付き、驚いたような声をあげた…… 百合姫提督「っ!」 艦娘「やっぱり! 私、横須賀第三の明石です♪ トラックの時はうちの駆逐艦を曳航して連れてきてもらったのに、お礼もまともにしないで済みませんでした♪」 百合姫提督「いえいえ、お互い持ちつ持たれつですから……」 明石(横三)「とんでもない。「横二」さんにはもうお世話になりっぱなしで♪」 足柄「……こんなところでする話じゃないでしょうが」小声で文句を言う足柄…… 明石(横三)「それにしても百合野提督とこんな所で出会うなんて珍しいですねぇ♪ ……そうそう、もし使うならここと向こうのホテルはいい感じですよ♪」 百合姫提督「え、ええ……お気遣いありがとう///」 足柄「ねぇ、お連れのお姉さんが寒そうだし早く入ってあげたら?」 明石(横三)「いけないいけない、すっかり忘れてた……もっとも、今は寒くてもすぐ溶接作業そこのけに暑くなるんですけど♪ ……とにかく良いお年を♪」 百合姫提督「……良いお年を」 足柄「はいはい……ったく、べろんべろんに酔ってたわね……」 百合姫提督「そうね……」 足柄「……ねぇ、提督」 百合姫提督「ん?」 足柄「あー、その……ちょっと歩き疲れちゃったんだけど、どこかで脚を伸ばせないかしら///」 百合姫提督「そう、ね……私も酔いが回ってきたみたいで、ちょっとふらふらするし……どこかホテルでも探しましょうか///」 足柄「わ、分かったわ……どこにする?」 百合姫提督「そうね、それじゃあ向こうのホテルに……///」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/934
935: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/07/20(土) 01:20:03.31 ID:GWtTM44s0 …ラブホテル… 足柄「……最近のこういうホテルって受付がいないのよね」 百合姫提督「そうね、パネルを押せば良いようになっているから……このお部屋でいい?」 足柄「ええ……いいけど、提督もこういうの案外手慣れているのね」 百合姫提督「そうね、同期の集まりとかで終電を逃したときに入ったりしたこともあったから……///」 足柄「まぁいいわ、とにかく部屋に入りましょうよ」 …客室… 足柄「……あら、意外ときれいじゃない」 百合姫提督「そうね、ちょっとしたホテルよりもずっと豪華な感じ」 足柄「ね? ベッドも大きいし、調度だってしゃれてるわ」小粋なショートブーツを脱ぐとベッドに座り、お酒のせいか少しむくんでいるふくらはぎをさすった…… 百合姫提督「ええ……ところで足柄///」 足柄「なに?」 百合姫提督「……その、ちょっと汗を流してこようと思うのだけれど///」 足柄「あ、あぁ……まぁずいぶん飲んで身体も火照っただろうし、良いんじゃないかしら///」 百合姫提督「え、ええ……じゃあ、お先に良いかしら///」 足柄「べ、別にいいわよ?」 百合姫提督「そう、それじゃあお先に……///」 …浴室… 百合姫提督「ふぅ……」 …やたら大きくて飾り立てられた浴室の中、流れるシャワーに身を任せる百合姫提督……乾かすのが大変なので艶やかな長い黒髪はまとめ上げ、お湯がかからないよう気を付けながら背中や胸元を湯に打たせる… 百合姫提督「良く考えたら、今まで足柄とホテルに来ることなんてあまりなかったかもしれないわ……」 百合姫提督「……どうしよう、なんだか恥ずかしくなってきちゃったわ///」自分の身体を見おろし、それから湯気に曇る大きな楕円型の鏡を手のひらで拭うと、ほのかに赤面した自分の顔がじっと見つめかえしている…… 百合姫提督「ううん……私から誘ったようなものなんだから、しっかり足柄をリードしてあげなくちゃ」 …寝室… 百合姫提督「で、出たわよ……?」 足柄「そう、じゃあ私もちょっと汗を流してくるわ」 百合姫提督「……明かりをいじってみたりした方がいいのかしら」手持ち無沙汰を紛らわすためにいくつもあるスイッチを押して何がどうなるか試していると、不意に室内用プラネタリウムが点灯して、天井に天の川が投影されはじめた…… 百合姫提督「これはこれで綺麗かもしれないわ……」 足柄「出たわよ……って、何これ?」 百合姫提督「それが、電灯をいじっているうちにプラネタリウムのスイッチを入れちゃったみたいなの」 足柄「何やってるのよ……でもまぁ、これはこれでなかなか綺麗じゃない? シャワーを浴びてさっぱりもしたし……///」バスローブ姿の足柄が大きな円形のベッドにひざから乗り、ベッドの上でちょこんと正座している百合姫提督ににじり寄るように近づいてきた…… 百合姫提督「足柄……///」 足柄「提督……いえ、今だけは下の名前で呼ばせてもらうわよ。……深雪///」 百合姫提督「あ……///」唇に触れると思った足柄のキスが首筋に走り、足柄の黒髪から漂う甘い椿油の香りが鼻腔をくすぐる…… 足柄「外泊届、出してあるわよね?」 百合姫提督「ええ、もしかしたら遅くなるかもしれないと思って……///」 足柄「じゃあ心配することは何もないわね……ん、んっ///」 百合姫提督「あ、足柄……っ///」しなやかでなめらか、それでいで頼もしい足柄の肩にぎゅっと腕を回し、その肌の熱を感じている…… 足柄「……深雪、言っておくけど……もう我慢出来ないわよ」バスローブの帯を解いて、小ぶりで形のよい百合姫提督の乳房に指を走らせた…… 百合姫提督「ええ……♪」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/935
936: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/07/29(月) 01:55:10.65 ID:Ujps+46Q0 …翌朝… 百合姫提督「……うぅん、もうこんな時間」 足柄「すぅ、すぅ……」百合姫提督の上になかば覆い被さるようにして寝息を立てている足柄……羽織っていたバスローブはベッドの下に投げ出され、黒漆のように艶やかな髪は白いシーツの上に流れている…… 百合姫提督「ねぇ足柄、起きて?」 足柄「う、うぅん……」 百合姫提督「足柄ってば、そろそろ起きないと」 …ゆさゆさと身体を揺さぶるたびにしっとりと昨夜の汗を残した肌が触れ、形の良い足柄の乳房が柔らかく弾む……百合姫提督に揺り起こされて、嫌々ながらも足柄が目を開けると、引かれたカーテンの向こうはまだ曙光も差していないらしくうすぼんやりと暗く、ベッドに備え付けられているデジタル時計は0600時をまわったあたりを示している… 足柄「ん……そんなの延長すればいいじゃない」 百合姫提督「そうも言っていられないでしょう、鎮守府にも戻らないといけないし……」 足柄「大淀あたりにそう言っておけば執務くらい代わりにやってくれるわよ……それよりもう一回♪」 …目が覚めるにつれ、あらためて自分の下で横たわっている百合姫提督への愛欲を感じ始めた足柄……ぐっと百合姫提督をベッドに押しつけると、吸い付くような肌に舌を這わせつつ花芯の方へと二本の指を滑らせる… 百合姫提督「だ、だめよ……いくらなんでも仕事納めの日に私がいないわけにはいかないもの///」恥ずかしげに顔をそむけ「名残惜しそうに」といってもいいくらいの弱々しさで足柄を押しのけようとする…… 足柄「もう、仕方ないわね……」昨夜の火照りを残した艶っぽい表情を浮かべ、髪をかき上げながらしぶしぶ身体を起こす…… 百合姫提督「ありがとう、足柄……それとチェックアウトの前にシャワーを浴びないと……」なかば乾いた唾液や愛蜜でべたべたになった身体をどうにかしようと、ベッドから脚をおろしてスリッパをつっかけた…… 足柄「だったら私も一緒に入るわ。一人で浴びたら水がもったないし、時間もそんなにないんでしょう?」 百合姫提督「……それもそうね」 …浴室… 百合姫提督「ひゃあっ、あんっ……だめぇ……っ♪」 足柄「何がダメなのよ、そんな甘ったるい声を出しておきながら♪」 百合姫提督「だって……もう一回している時間なんてないもの……あふっ、んん……っ///」 足柄「あぁもう、深雪ってばそんな風に身をよじってくれちゃって……もう、最っ……高♪」シャワーの湯気に包まれ、腕の中でもがく百合姫提督をつかまえてしなやかな肌の感触を楽しむ足柄…… 百合姫提督「足柄、お願いだから……このままだと本当に遅れちゃう……///」 足柄「……だったらすぐイカせてあげるわよ♪」後ろから抱きとめるようにして腕を伸ばすと、百合姫提督の秘部にするりと右手の中指と薬指を滑り込ませる…… 百合姫提督「あ、あっ、あぁぁぁ……っ♪」 …しばらくして… 百合姫提督「もう、早くしないと朝礼に間に合わないわ……足柄があんなふうに「もう一戦」「もう一戦」って止めないから///」 足柄「仕方ないじゃない、深雪があんまりにも可愛いんだもの」 百合姫提督「……そんなの言い訳にならないわ///」恥ずかしげにうつむいた…… 足柄「あぁ、もう……! そういう所がたまらないって言ってるの♪」 百合姫提督「こうなったらタクシーをつかまえましょう///」朝帰りをする人たちを乗せようと流しているタクシーに手を振った…… タクシー運転手「おはようございます、どちらまでやりましょう?」 百合姫提督「横須賀第二鎮守府の正門までお願いします」 運転手「ああ、横二さんですか……昨夜も何人か「横二」の女の子が乗りましたけど、同じような年格好の女の子じゃあ考えられないような所で乗ったり降りたりするもんですから、乗せる側としてはちょっとビックリしますよ」朝まだきの空いている道路を走らせながら、苦笑いする運転手…… 百合姫提督「ええ、そうですね……」 …しばらくして・鎮守府… 百合姫提督「おはようございます」 一同「「おはようございます」」 百合姫提督「えー、本日で年内の業務は終了となり、明日からは年末年始のお休みとなります。旅行や外出は楽しみでしょうが、くれぐれも体調には気をつけてください……」 …艦娘たちはいずれも神妙な表情で朝礼を聞いていたが何人かはずいぶんと甘い一晩を過ごしていたらしく、寝不足がうかがえる目をしていたり、甘ったるい白粉の残り香を漂わせている… 百合姫提督「……それでは、良いお年を♪」 一同「「良いお年を!」」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/936
937: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/08/03(土) 02:56:27.41 ID:hMQ0KcoD0 …その日の午後… 足柄「それじゃあ気を付けて帰るのよ」 百合姫提督「ありがとう。足柄たちは旅行だそうね?」 足柄「ええ、姉さんたちと那智勝浦に行こうって予約しておいたの。値段は割高だけど、仕方ないわ」 百合姫提督「そうねぇ、年末年始はどうしても混み合うものね……それじゃあ楽しんできてね?」 妙高「ええ、もちろん♪」 羽黒「はい!」 那智「もちろんです」 足柄「そうするわ」 熊野「私と鈴谷も妙高たちと一緒に行くんですよ」 百合姫提督「那智と言えば熊野権現さまだものね……最上は東北に行くそうだから、お互いにお土産を買ってきてあげたら良いかもしれないわね」 熊野「そうですね。それにしても姉様ときたら、飛び出しかねないくらい張り切っていました……」最上型でも「最上」「三隈」と改修が施された「鈴谷」「熊野」は姉妹ながら、少しぎくしゃくすることもあったりする…… 百合姫提督「……お互い仲良くね?」 熊野「それはもちろんです、それに提督は分け隔てのない人ですから」 百合姫提督「そう言ってくれて嬉しいわ、ありがとう」 …濃緑色のマツダ・ロードスターに帰省のためのこまごました荷物を積みながら、休暇に出かける艦娘たちとあいさつを交わす百合姫提督……温泉旅行や名だたる神社への初詣など、年末年始の休暇を有効活用するべく喜びいさんで出かけていく艦娘たち… 百合姫提督「ふぅ……これでよし」 松「……準備が出来たようですね」 竹「気を付けて行ってらっしゃいまし」 梅「よい年の瀬をな。それからこれはわれら姉妹からの手土産じゃ♪」車のダッシュボードに置けるような小さな松飾りを手渡した…… 百合姫提督「まぁ、ありがとう……いつ作ったの?」 竹「非直の時間や夜の自由時間を使って作りました、どうぞ良いお年を」 百合姫提督「三人とも、ありがとう♪」 …帰省の道すがら… 百合姫提督「……それにしても、うちの鎮守府は本当に良い娘たちばかりね」 百合姫提督「どの娘もよく馴染んでくれているし、お互いによく助け合って……年始のお休みが明けて鎮守府に戻る時は、お土産でも持って行ってあげようかしら」 百合姫提督「時には横着をしたり困った娘もいるけれど、それだって可愛い程度だし……」 …普段過ごしている鎮守府で運転するものといえば業務車の「日産・AD」バン程度で、帰省を除くとなかなか運転する事のないロードスターの軽やかなレスポンスに新鮮な驚きを覚えつつ、年末の混み合った高速を走らせていく… 百合姫提督「それにしても実家に帰るのも久しぶりね。もしおせちの準備や買い出しが済んでいないようなら手伝わないと……」 ……… … …関東・百合姫提督の実家… 百合姫提督「……ただいま♪」 百合姫提督の母「まぁ、お帰りなさい♪ あなた、深雪が帰ってきましたよ」 百合姫提督の父「お帰り。お休みが取れて良かったね……道路はずいぶん混んでただろう」 百合姫提督「ただいま。そうね、年末だからかせわしない運転の人も多くて、ちょっと疲れちゃった」 …玄関先に飾ってある門松や松飾り、それに物心ついた頃から見なれている干支の置物を見て、あらためて実家に戻ってきた気分になってきた百合姫提督……すでに大掃除は済んでいるらしく、フローリングの床は艶が出ていて、家全体がこざっぱりした雰囲気を漂わせている… 父「だろうね」 母「手を洗ったら着替えてゆっくりしなさいね。それが済んだらお父さんたちにも顔を合わせてあげなさい、きっと喜ぶわ」 百合姫提督「ええ、そうする」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/937
938: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/08/11(日) 01:17:15.02 ID:navodhGB0 …しばらくして・和室… 母「深雪、お茶を淹れるけれど飲む?」 百合姫提督「うん、ちょうど欲しかったところ」 …和室の掘りこたつに下半身を入れ、背もたれ付きの座椅子でのんびりとくつろいでいる百合姫提督……帰省の途上で着ていたコートやセーター、スラックスは脱ぎ、白地に紅白の椿をあしらった浴衣というスタイルでゆったりと庭を眺めている……こたつの上にはカゴに載せたお煎餅やおかき、味の良い宇和島のミカンがいくつか入っている… 母「よいしょ……はい、どうぞ」 百合姫提督「ありがとう……お父さんは?」 母「お友達とお酒を飲みに行ったわ。もっとも「年の瀬だからあんまり遅くならないようにする」って言っていたわ」 百合姫提督「そうね、それがいいわ」 …視線の先にある庭先の鳥のエサ台には古釘が打ち込んであり、そこに突き刺した痛みかけのリンゴをヒヨドリがついばみ、しゃもじや炊飯釜についていた米粒やパンくずを載せた皿にはスズメやムクドリがむらがっている……時折いらだったヒヨドリが灰色の羽を震わせ、ヒーヒーと甲高い鳴き声をあげてスズメを追い散らし、またリンゴをついばむ… 百合姫提督「あぁ、こうやっていると年末っていう気分になるわ」 母「良かったわ。ずうっと忙しかったものね」 百合姫提督「そうね、今年は盛りだくさんだったから……でもおかげでイタリアにも行けたし、そういう面では楽しかったわ。ところで年末年始の支度は?」 母「もうだいたいは済んでいるわ。大掃除もしたし、あとは買いだしくらいかしらね」 百合姫提督「だったら車を出すから、明日にでも一緒に行かない?」 母「この時期のデパートは混むわよ?」 百合姫提督「早めに行って帰ってくればきっと大丈夫、お買い物のメモはある?」 母「ええ。とは言っても毎年同じだからそんなに悩まないけれど……ちょっと待っててね」台所から長いリストが書き込まれたメモ用紙を持ってくる…… 母「足りないものや思いついたものがあったら言ってね……紅白かまぼこ、栗きんとん、かずのこ、伊達巻、田作り、コハダの粟漬け、黒豆、ちょろぎ……」 百合姫提督「お煮しめはいつも通り?」 母「ええ、うちで作るから大丈夫。おもちも知り合いから分けてもらうから……海老、くわいの煮しめ……あと、あなたが帰ってきたからサラミとか洋風のオードブルでも買い足しておきましょうね」 百合姫提督「そうね、毎年何だかんだでつまんでいるし」 母「……と、リストはこんな感じ」 百合姫提督「うん、全部あると思うわ」そう言っていると、お風呂が沸いたことを知らせるメロディと音声が鳴った…… 母「お風呂が沸いたみたいだし、入って来たら?」 百合姫提督「それじゃあ先に入らせていただきます」 母「ゆったり浸かっていらっしゃいね」 百合姫提督「はーい♪」 …脱衣所で帯を解き、大人しめな下着を洗濯ネットに入れてから洗濯機に投入する……クリーム色の内装でまとめられた浴室は午後の日差しを受けて照明を点ける必要もないほど明るく、ふたを取ってかけ湯をすると、広い湯船に足先からゆっくりと浸かった… 百合姫提督「はぁ……ぁ♪」ちゃぷん……と胸まで浸ると身体をじんわりと暖かい湯が包み、思わず満足げなため息が出る…… 百合姫提督「あぁ……♪」 …そこそこの大きさがあり丁寧に掃除しているとは言え、年季が入っていてどこか潮っ気も感じる鎮守府のお風呂と違い、入れ替えたばかりのさら湯に満たされたピカピカの浴槽で時間も気にせずお湯に浸かっていられる贅沢は帰省している間しか味わえない……艶やかな黒髪ときめ細やかな白い肌を丁寧に洗い流すと、湯船に入り直して心ゆくまで入浴を楽しんだ… ……… … 百合姫提督「お風呂上がりました」 母「どう?家のお風呂は気持ち良かったでしょう」 百合姫提督「ええ、とっても」火照った身体を冷ますべく、冷蔵庫の冷たいほうじ茶で喉をうるおす…… 母「もう少ししたらお父さんも帰ってくるって」 百合姫提督「まだ1800時にもなっていないのに……もしかして昼のお酒だから効いたのかしら」 母「かもね……今日は冷えるから温かいけんちん汁と、それから豚の角煮。昨日から煮込んでおいたからすごく柔らかいわよ。良かったら先に食べる?」 百合姫提督「ううん、お父さんが帰ってくるまで待つわ」 母「そう、分かった」 百合姫提督「今日はお父さんがお出かけだから、明日はお父さんに留守番をしてもらって……買い出しの帰りにどこかでご飯でも食べよう?」 母「ふふ、そうね♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/938
939: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/08/18(日) 01:41:19.33 ID:5/cfhJWp0 …翌日… 百合姫提督「それじゃあ行ってきます」 母「留守をお願いしますね」 父「ああ、気を付けていっておいで」 百合姫提督「はい」 …百貨店… 百合姫提督「わ……すごい混雑」 母「だから言ったでしょう? 買い物だけなら私一人でもできるし、なにも一緒に来なくても良かったのに……」 百合姫提督「買い物はお母さんだけで出来たとしても、荷物持ちがいれば楽だろうから」 母「それはそうね、大いに期待しているわ」 …実家から車を走らせ小一時間、県下の中核都市にある百貨店の入館待ちの行列に並ぶ百合姫提督と母……店頭には門松や年末年始の営業日を知らせるポスター、福袋商戦の広告でにぎにぎしく飾り立てられ、寒空の下で百貨店の開館を待つ人たちで人いきれがしそうなほどになっている… 店員「お待たせいたしました、開館でございます! どうぞ列の順番にお進みください!」 百合姫提督「良かった、オープンしたみたい」 母「年末年始はデパ地下だけ開店が早いのよ……そろそろ順番ね」 百合姫提督「お買い物のリストはあるし、お母さんが疲れちゃう前に済ませようね」 母「そうね」 …デパ地下… 百合姫提督「えーと、黒豆……黒豆……」金箔が入っていたりいなかったり、はたまたたくさん入っているのや少量サイズなど種類もさまざまなおせち関連の食品……母親に買い物カートを預け、人混みをすり抜けつつリストに並んだ商品を手に取っていく…… 母「あった?」 百合姫提督「うん、あんまり大きくないパックでいいでしょ?」 母「そうね、そこまで黒豆ばっかり食べるわけじゃないから……あと、伊達巻きは少し高い方にしましょうか」 百合姫提督「分かった」 …館内の買い物客の数が増えるに従って混雑が増し、それと同時に空気もむっと淀んでいる感じがする……特に太平洋の爽やかな潮風に慣れきっている百合姫提督にとって人いきれの館内はこたえるものがあり、外套のボタンを外してラベンダー色をした薄手のセーターとスラックスの動きやすい姿で歩き回っている… 母「……次は肉類ね。ハムとか鴨のローストとか、いくつかあれば困らないものね。あとおつまみにチーズやサラミも」 百合姫提督「じゃあ向こうのお店ね」輸入食品や瓶詰めなどを扱っているお店に立ち寄り、クラッカーに合わせるレバーパテやコショウをまぶした鴨のロースト、カマンベールチーズ、それに夏のイタリア訪問を思い起こさせるサラミやオリーヴの瓶詰めなどをカゴに入れる…… 母「こんなところね……それじゃあお会計をしましょう」 百合姫提督「私が出そうか?」 母「いいのいいの、お祖父ちゃんが「深雪が食べたいだろうから色々買ってやれ」ってお金を出してくれたから」 百合姫提督「もう……育ち盛りの中学生や高校生じゃないんだから……」思わず苦笑いを浮かべる百合姫提督…… ……… …中華料理店… 百合姫提督「買いだしお疲れさまでした」 母「ええ、お疲れさま♪」 …烏龍茶のグラスを軽く合わせて、年末年始の「食料調達」で流した汗をねぎらう二人……店頭の年季の入った額に彫り込まれた筆文字にも貫禄のある中華料理店は全国レベルとは言わないまでも県下では有名な老舗で、年の瀬らしい慌ただしさの中にあっても落ち着いた雰囲気をかもしだしている… 店員「お待たせいたしました」上品な白い器に盛られた名物の上海焼きそばと、蒸籠に入って湯気を立てている大ぶりな焼売が卓に並ぶ…… 百合姫提督「相変わらず美味しそう……いただきます」 母「いただきます」もう一つの名物であるタンメンを丁寧にすする……途中で注文したものを分け合ったりしつつ、ゆっくり昼食を楽しむ…… 百合姫提督「……ふふ」 母「どうかした?」デザートの杏仁豆腐をすくいながら首を傾げた…… 百合姫提督「ううん。ただ、こうしているといつも通りの年末みたいな気分だから、なんだかホッとしちゃって……」 母「良かったわね。年末年始はうんとのんびりしなさいよ」 百合姫提督「ええ♪」 http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/939
940: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2024/08/27(火) 01:39:38.33 ID:OwjY5jBW0 …翌日… 百合姫提督「……良い気持ち」 母「横須賀では本当に忙しかったみたいね。少しやせたように見えるわ」 百合姫提督「そんなことはないと思うけれど……昨日お風呂の後で体重計に乗ったけれど、ほとんど変わっていなかったから」 母「そう? でも顔が細くなった気がするし、お祖父ちゃんから「もっと食べなさい」って言われるわね」 百合姫提督「もう言われたわ。相変わらず……」 母「ふふ「天ぷらかウナギか、それともすき焼きがいいか」……って?」 百合姫提督「ええ」 …母親と差し向かいでこたつに入り、浴衣にどてらのくつろぎ姿でぼーっとしている百合姫提督……テーブルの天板代わりになっているこたつ板には読みさしの文庫本がしおりを挟んで置いてあり、手の届く位置にはテレビのリモコンや読み終えた新聞、頂き物のクッキーが並べてある……と、居間の壁を飾る数枚の額縁の中に、目新しいものがあることに気がついた… 百合姫提督「あそこにあんな額縁あったかしら……」 母「ああ、あれね♪ 夏の時にあなたがイタリアから絵はがきを送ってくれたでしょう? 素敵だったから飾ってあるの」 …夏の「戦術交換プログラム」でイタリア海軍の公報施設を訪れた際にPX(酒保)で見かけた絵はがきを買い求め、実家に宛てて投函しておいた百合姫提督……絵はがきには紺碧の海に白いを広げ帆走する練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」の美しい姿が収められていて、百合姫提督が子供の頃にとった賞状や記念写真、それに風景画の間で明るい地中海の息吹を感じさせる… 百合姫提督「気に入ってくれて良かったわ。練習航海中で実物を見られなかったのは残念だったけれど」 母「まぁ、そのうちに見る機会も出来るわよ」 百合姫提督「そうね」 母「ええ。さぁ、そろそろお煮しめの準備に取りかからないと……!」 百合姫提督「私も手伝うわ」 母「いいのよ、私がやるから座ってなさい♪」 百合姫提督「でもお父さんはお祖父ちゃんのところで大掃除、お母さんはおせちの準備をしているのに私だけ座っているのも……」 母「分かったわ、それならちょっとだけ手伝ってもらおうかしら」 百合姫提督「ええ」 …台所… 母「深雪、お醤油を取ってくれる?」 百合姫提督「はい」 母「ん……このくらいかしら」 百合姫提督「ええ、もうちょっとみりんをいれても良いかもしれないけれど……」 母「じゃあそうしましょうか」 …母娘水入らずで台所に立ち、お煮しめの味付けを決めている二人……百合姫提督は浴衣のままだが袖口が邪魔にならないようたすき掛けにして、小皿で味を見ている… 母「それにしてもますます手際が良くなったわね」 百合姫提督「鎮守府にいると間宮とか伊良湖みたいな料理上手が多いし、手伝うことも結構あって……」 母「結構なことじゃない♪」 百合姫提督「ええ。何しろぬか漬けの漬け方からフランス料理までみっちり仕込まれたから」 母「それじゃあそのうちに作ってもらおうかしら」 百合姫提督「そうね、三が日が過ぎておせちに飽きたらその時にでも」 母「期待しているわね……いけないいけない、もう少し火を落とさないと……」落とし蓋をした雪平鍋ではコトコトと音を立ててお煮しめが煮えている…… 百合姫提督「わ、美味しそう」 母「もう……あなたくらいの年頃なら、お煮しめなんかよりもまだまだすき焼きでしょうに♪」 百合姫提督「そうかもしれないけれど、すき焼きは鎮守府でもやったから……まだお肉の脂が残っているような気がするもの」 母「まぁまぁ。同じすき焼きでも、うちで年越し番組を見ながら食べるすき焼きは格別よ?」 百合姫提督「ええ。毎年の恒例行事だし、楽しみにしているわ」 ……… … http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1514656546/940
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