イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (955レス)
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638: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2020/04/01(水)02:16 ID:N1cWadxf0(1) AAS
…同じ頃・鎮守府…
ウエビ・セベリ(中型潜アデュア級)「…」
フルット(中型潜フルット級)「どうですか、セベリ?」
セベリ「いいえ…なにも聞こえまセン」
フルット「……そうですか」
アッチアイーオ「何か聞こえたらすぐに言うのよ」
セベリ「もちろんです」
デルフィーノ「きっと駆逐艦から爆雷攻撃を受けているでしょうし、数時間はデジエとアクスムから返事がないのもうなずけますけど……」
アッチアイーオ「心配と言えば心配よね……とにかく、哨戒中の各艦には無電を聴取したら必ずこちらに向けて内容を転送するように指示しておいてちょうだい」
セベリ「了解です」
アッチアイーオ「……もう、駆逐艦グループ相手に雷撃をかますなんて…どうかしているわよ」あきれたような口調で言いながらも、心配そうな様子で口元に手を当てている…
………
…
…同時刻・シルテ湾沖の深度八十メートル付近…
デジエ「…取り舵二十、両舷電動機全速!」そう叫ぶ間にも「ゴゥン…ッ!」と爆雷の炸裂音が響く…
デジエ「これで二十二個め……下げ舵十度、深度百メートルへ!」海図台の上には紙と鉛筆があり、爆雷攻撃が止むまでの目安として投下された爆雷の数を線で引いている……
…デジエとアクスムがそれぞれ四発放った魚雷は少なくとも二隻の駆逐艦をしとめたものの、デジエはそれから数時間にわたって「お返し」とばかりに猛烈な爆雷攻撃を受け続けている……あちこちにある赤色電球は粉みじんに割れ、バルブやパイプの継ぎ目からはたびたび水が噴き出す…聴音兵の「幻影」は席に着き、敵側のアスディックに比べて情けないほど原始的な水中聴音機で敵艦の動きや周囲の状況を探ろうとヘッドフォンを耳に当てているが、そのはっきりした幻影はたびたび急いでヘッドフォンを外し、十数秒後には投下された爆雷が「ズシーン…!」と船体をめちゃくちゃに揺さぶる…
水兵の幻影「ディーゼル排気バルブから浸水!」
デジエ「ぐぅ…っ!」幻影の水兵や士官たちが動き回って浸水しているバルブやパイプのつなぎ目に駆け寄り、海水を浴びながらスパナでボルトを締め上げる様子が見える……が、その間にも「ピーン…ピーン……!」とアスディックのパルスが船体を叩く…
デジエ「両舷機半速、面舵二十!」
デジエ「…まだよ、まだ……」船内にもはっきりと聞こえるアスディックのパルス音に続き「シャッシャッシャッ……」というスクリュー音が、クレッシェンドで高まってくる……しばらくすると聴音機なしでも「ジャッジャッジャッジャッ…!」と頭上を行く駆逐艦の轟音がはっきり聞こえてきた…
デジエ「両舷機全速!取り舵一杯!」
デジエ「…うっ、く……両舷機半速、針路戻せぇ!」ズゥ…ン、ズズーン…ッ!
水兵の幻影「深々度用深度計パイプより浸水!」…ピン、ピン…ッ!
下士の幻影「左舷トリムタンク用海水弁より浸水!」
デジエ「五百リットル排水! 中央トリムタンク、ブロー!」ズーン……グワァァ…ン!ガァ…ン!
デジエ「……まだまだ!」すでに湿気と汗でびしゃびしゃのハンカチを引っかけてあるパイプから取ると、あごと胸の間に伝わった汗を拭った…
デジエ「もしアクスムも捕捉しているなら二対三……そうなれば手も足りナイはず」
デジエ「そもそも爆雷だってそんなに積んでいるわけじゃないもの…それに潜望鏡で見たときはヘッジホッグの投射器はなかっタし……」ズゥゥ…ンッ!
デジエ「ふぅ、今のは遠かったわ……」
デジエ「排水止め! …ポンプがごろごろ言っていたら敵はアスディックなしでも爆雷を投下できるし……」ピーン…ピィ…ン……
デジエ「…アクスム、貴女は大丈夫なの? 両舷電動機全速、面舵一杯!」ドゴォ…ンッ、ガァー…ン!
デジエ「う゛っ…!」
デジエ「くうっ、なかなかの大盤振る舞いね……きっと後で青あざになっているわ…」
………
…
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