イタリア百合提督(その2)「タラントに二輪の百合の花」 (967レス)
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828: ◆b0M46H9tf98h [sage saga] 2022/04/03(日)02:06 ID:LWsM42WL0(1) AAS
提督「……ところでダニエルソン中佐はどうして海軍に?」

…海軍士官がお互いに出会うと、話は自然と今まで航海した海や港で出会った興味深いものや珍しいもの、変わったこと……そして(当人が話してくれるようなら)海軍に入った理由もよく話題になる…

ダニエルソン「私ですか……私はうちが代々クジラ取りの漁師でしてね」

提督「クジラですか」

ダニエルソン「ええ。ノルウェーじゃ伝統的に食べていたんですが、昨今は保護団体からの風当たりが強いもんですからね……それに深海棲艦のこともあってクジラ漁が立ち行かなくなったので、サーモンやカニ漁に切り替えようとしたんですが、それもダメでしてね……結局、海のことならどうにかなるだろうと海軍予備士官に志願したんです」

提督「そうだったんですね」

ダニエルソン「ええ……カンピオーニ少将はクジラを食べたことがありますか?」

提督「いいえ、一度も」

ダニエルソン「……少将もやはりクジラは保護するべき生き物で、猟の対象にするべきではないとお考えで?」

提督「どうでしょうか……同族の哺乳類を食べていると嫌悪感を抱く人がいることは知っていますが、それでいけば牛や豚も食べられませんし……実家では時々、猟で仕留めたイノシシやウサギ、シカを食べていましたから……絶滅危惧種なのに見境なく乱獲するとか、あるいは遊び半分に殺すのでなければそういう文化があっても良いと思いますよ」

ダニエルソン「そう言ってくれると嬉しいですね。ノルウェーでもいまやクジラを食べる人はごく少なくなってきてしまいましたから……たいていは日本に輸出されるんですよ」

提督「なるほど」

ダニエルソン「これが昔持っていたうちの船です」

…ダニエルソンは胸ポケットから軍隊手帳を取り出すと、折り返しの透明窓の所に挟んでいる写真を見せてくれた……ふちが少しよれている年季の入った写真には、北欧らしいずんぐりむっくりとした寸詰まりの船体に、やたら乾舷の高い船首をもった一隻の漁船が写っている……舷側は鮮やかな赤色で、埠頭に横付けした船の前でダニエルソンとその家族と思われる数人が笑顔で収まっている……

提督「素敵な写真ですね」

ダニエルソン「いや、どうも……」ぼりぼりと頭をかきながら、少し恥ずかしげに照れ笑いを浮かべた……

提督「……ところでダニエルソン中佐、ノルウェー海軍も深海棲艦が出現してからは「提督」として任官する士官が多いのでしょうか?」

ダニエルソン「ええ、多いですね……私のような予備士官を始め、他兵種からの転属や若手士官の起用、士官学校の拡充も続いていますよ」

基地司令「とはいえ、どうしても他兵種からの転属組は「艦娘」の運用となると難しい所がありましてね……何しろレーダーやミサイルに慣れている今どきの士官に、大戦中の兵器について学び直してもらうのでは時間がかかりすぎますから」

提督「そうですね」

基地司令「それに「艦娘」たちは戦う軍艦としての存在であると同時に、一人の女の子でもありますし……その心のケアや体調管理には気を遣っています」

提督「たしかに、専門のカウンセラーや医療施設、ジムや温水プール、美容室……艦娘たちの福利厚生にとても気を配っている印象を受けました」

基地司令「ええ……我々は彼女たちに高いパフォーマンスを発揮、維持してもらうためにはそういった施設が必要だと考えていますし、同時に「深海棲艦」による制海権の喪失や、それをイージス艦や戦闘機といった既存の兵器で奪い返すコストを考えれば、それだけしても充分にお釣りが来ると考えております」

提督「同感です」

ダニエルソン「それに、彼女たちはみな良い娘ばかりです……そりゃあ時には叱りつける事もありますが、よく頑張ってくれていますよ」

提督「ふふ、それは私の所でも同じです……♪」お互いに提督として理解し合い、話が盛り上がってきた所でそっとフェリーチェが耳打ちした……

フェリーチェ「フランカ、そろそろ空港に行かないと……」

提督「ええ……色々なお話を聞くことが出来てとても有意義な時間でしたが、そろそろ空港に向かわないとならないので……本当はもっとお話をしたいのですが」

ダニエルソン「それは残念です……カンピオーニ少将は例のヘルシンキで行う会議に出席なさるのですね?」

提督「ええ」

ダニエルソン「そうでしたか……私は参加しませんが、ノルウェー海軍からは別の士官が出席する予定ですから、カンピオーニ少将のことをお伝えしておきます」

提督「ありがとうございます」

基地司令「では、送迎車を玄関に回しておきましたので……有意義な時間を過ごしていただけたようなら本官としても幸いです」

提督「ええ、大変に学ぶところがありました……大佐の心のこもったもてなしについては、ノルウェー海軍本部にも御礼を伝えておきます」

基地司令「いや、これはどうも……では、また機会がありましたらぜひ当基地へいらしてください」

スレイプニール「では、いつかまた来て下さいね。カンピオーニ少将……ちゅっ♪」敬礼を交わした後、つま先立ちをすると頬に口づけをした……

提督「あら……♪」

…司令部の入り口で基地司令とダニエルソン、それに「スレイプニール」を始めとする艦娘たちが見送ってくれる中、いそいそと車に乗り込んだ…

フェリーチェ「……どうやら良い思い出ができたようね」

提督「そうね……♪」
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