【安価】恋愛相談屋しながら魔法少女業に励む【コンマ】 (433レス)
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62: ◆AZbDPlV/MM [saga] 11/07(木)10:40 ID:PdTq4uL+0(2/16) AAS
移動販売の車の横に、小さく設けられている食事スペースに、制服を着た一組の男女が、受け取ったクレープを手に席に着いた。男子の方は席に着くなり、即座に大口を開け、苺とクリームがたっぷりと使われたクレープにパクついた。
あきら 「うぉーっ! うまーっ!!」
クレープを口いっぱいに頬張った男子高校生は、姫乃 あきら。口いっぱいに広がるクリームの甘さ、苺の甘酸っぱさ、クレープ生地のもちもち感と卵の風味に瞳を輝かせている。
栞 「ふふっ。いつも幸せそうな顔をして食べるね、あきら君」
あきらの食事をニコニコと優しい眼差しで眺めているのは、幼馴染の及川 栞。栞もクレープを手にしているが、あきらを眺めるばかりで、まだ一口も口にしていない。
あきら 「俺ばっか見てないで、栞も食えよー」
栞 「そ、そうだよね……んむっ……ん! 美味しいね!」
あきら 「なー! このもちもち感は、タピオカ粉使ってんだろーなー」
栞 「こういうのもあるんだね」
先述したように、ふたりは幼い頃からの幼馴染だ。異性同士でありながら、なんの躊躇いも疑問も抱くことなく、高校生になった今でも、こうして同じ時間を過ごしている。お互い、自分の隣に相手がいることが当然で、大切な存在なのだ。
高校生というお年頃であるため、そんなふたりを“夫婦”や“恋人同士”だと囃し立てる人間が後を経たない。小学校中学年から続いているせいで、恥じらう気持ちもなくなってしまっていた。その余裕はまるで、長年連れ添った熟年夫婦のようである。
栞 「恋愛相談屋も、もう長いことやってきたねー」
あきら 「そだなー……えっと? 中二からだから……四年?」
あきら 「うっわ!? 四年もやってんのかぁ?!」
栞 「いろんな人の恋愛をみてきたね」
あきら 「だなー」
中学二年生になってから、唐突にあきらが校内の生徒相手に“恋愛相談屋”なる活動をしはじめたのだ。しかし、その動機は不明。栞は人と接することが苦手でありながら、あきらが真剣に取り組んでいるため、微力でも彼の助けになりたいと思い立ち、途中からふたりでの活動を始めたのだ。あきらが辞めない限り、この活動は続くだろう。今日は恋愛相談屋を休業し、クレープの買い食いをふたりで楽しんでいる。
ゆったりとした放課後。しみじみと思い出に耽りながら、クレープを食べ進める。そんな無言の中、栞は瞳をウロウロさせ、なにごとかを思案しているようだった。クレープを飲み込み、一緒に頼んでいたコーヒーで口の中を潤してから、口を開いた。
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