[過去ログ] バナナの恐怖【バキスレッドRound154】 (1001レス)
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(2): スレタイの元ネタ 03/07/29 21:04 ID:b0ukjaQz(4/4) AAS
除海王は控え室で苦い過去を思い出していた。除が幼い頃、フンハ寺である修練が行われた。
子供の手の届かない高さにバナナを紐でぶら下げて、足元の積み木細工で足場を作って、
それを使ってバナナを取るというものだ。当然出来なければその日のご飯は抜きである。
周りの子供は難なく積み木を組み上げてバナナをゲットしていたが、除にとっては大問題だ。
なにせ十の位の足し引きで挫折した程の算数嫌いだ。まして図形の事など分かるわけがない。
除は当然の事ながら飢え続けた。そして同級生や教師からもさんざ馬鹿にされ続けたのだ。

十日ほど過ぎただろうか。飢えと羞恥で朦朧とする意識の中、遥か高みのバナナに必死に手を伸ばす、が届くわけが無い。
だが図形の事など分からない除にはそれしか出来ないのだ。だからひたすらに伸ばす、伸ばす、伸ばす。
するとどうした事だろうか。限界まで張り詰めた除の四肢がにょきり、と音を立てたのだ。
伸びた?確かにそう思えた。やはりそうだ、伸びている。それからというもの、除は一心不乱に背伸びを続けた。
それから十日後。除は積み木など使わずともバナナに手が届くほどの巨体を手に入れたのだ。
そしてそのまま除を馬鹿にした教師や同級生を一人残らず張り倒し、海王の座を手に入れた。
もうあんな目に遭うのはこりごりだ。だから思い出すのもこれで最後だ。除は試合場へと向かった。

一回戦、除海王の対戦相手はジュニアだった。しかし開始直前になって審判のフンハ坊主が、
グローブをつけて闘うのは大会規定違反だと主張する。「fuck you」「ass hole」などとひとしきり抗議した
ジュニアだったが、結局聞き入れられず仕方なくグローブを外す事にする。だがいつもの事だが自分では外せない。
そこで除に頼んだ。「スミマセンが、グラヴを外してくれませんか」

無理だ。除は真っ先にそう思った。なにせ蝶結びを解く時でさえどっちの紐を引っ張るかで5分以上は悩む除だ。
そんな複雑な作業が出来るわけが無い。そして案の定グラブの紐はこれでもかという程複雑な形に結ばれていたのだ。
除は必死に頑張った。無いと分かっている頭をフル回転させた。でもそれなのに、紐はますますねじれほつれ絡まるばかり。
いい加減客席からも「遅延行為だ」「モタモタするな」とブーイングが飛んでくる。
更に悪戦苦闘すること30分、ついには観客達が除の知性を疑い始めたのだ。
除を好奇の視線で眺め、ひそひそと笑いさざめく大観衆。止めろ、お願いだから止めてくれ。
これでは幼い日のあの恥辱と同じではないか。あの積み木細工の恐怖はもう克服したはずなのに。

飛び交う罵声と嘲笑の中、あの時と同様に除の意識は朦朧とし、そしてあの時と同様に天井を振り仰いだ。
そこには精巧な円型を模った天井が。その時除はふと気づいたのだ。自分の周囲に
無数に立ち並ぶ円柱、角柱、三角柱、そして正方形の床板に。このコロッセオは
除を閉じ込める巨大な積み木細工の城だったのだ。自分はあの過去の恐怖を
少しも克服してはいなかったのだ。駄目だ。こんな幾何学的で論理的な空間は除の理解を超えている。
もうここには居られない。逃げねばならない。今すぐここから。
そして除の理性はゆっくりと崩壊した。

かくして除は呼び止めるジュニアと審判団を尻目に脱兎の如く闘技場から駆け出した。
そして闘技場から出奔した除の行き先を知るものは誰一人としていなかった。
除海皇、脱落。
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