[過去ログ] 吉原のティアラって風俗店使ったことある? (370レス)
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225: 2012/10/18(木)00:41 ID:5mqb1pmd(1/4) AAS
 膝を抱えて俯いていたアタシは、立ち上がってカバンからケータイを取り出した。
 まだ忘れていなかった、矢澤さんのケータイの番号を打ち込む。
 通話ボタンを押す前に、大きく深呼吸した。

 しっかりしないさいよね。
 いつまでも逃げてるだけじゃ、なにも解決しないでしょ。
 ちゃんと話し合って、本当に終わらせなくちゃ。
 このまま美琴に、心配をかけ続けるワケにはいかないんだから。

 決心して通話ボタンを押そうとしたら、反対に着信を知らせる音が鳴り響いた。
 せっかくのところを邪魔されムカつくあまり、表示を確認もせず電話に出る。

『いま美琴ちゃんが車を降りたところなんだけど、これからそっちに――』
省17
226: 2012/10/18(木)00:41 ID:5mqb1pmd(2/4) AAS
高台の家に着くと、アタシを乗せたまま車は車庫に向かった。
 車庫から家の中に入ると、そのままバスルームへと連れて行かれる。
 仕方なくシャワーを浴びて、アイツが用意していたナイトウェアに着替えた。

 細かな刺繍が美しい、フランネルのネグリジェとナイトガウン。
 今夜はなんだかいろいろ、ここひと月ほどの週末とは扱いが違う。
 それはともかく、今夜は千堂センパイが家にいるらしくて、落ち着かなかった。

 アイツの家はコの字型になっていて、両翼をアイツと千堂センパイで使い分けている。
 だから気にしなくていいよと、アイツは言ったけど。
 リビングの向かい側に見える窓の灯は、やっぱり気になった。

 そわそわしているのを見兼ねたのか、アイツは別の部屋にアタシを案内した。
省18
227: 2012/10/18(木)00:42 ID:5mqb1pmd(3/4) AAS
 話すと決めてから、それでもアタシが躊躇っていた短くはない時間、アイツは黙ってタバコをくゆらせていた。
 ゆらゆらと立ち昇る紫煙を目で追いながら、美琴とコイツを矢澤さんに逢わせないで済む方策がなにかないものかと、つい埒もないことを考えてしまう。

 その無意味さに気づいて、アタシは溜め息をついた。
 往生際が悪いにも程がある。
 いまさら躊躇うなんてどうかしている。
 アタシには、コイツを相手に張れる見栄なんて、とっくに残っていないのだから。

「……、美琴が、海外に留学してたことは、知ってるでしょ」
「知ってるよ。中学三年生のときコンクールで優勝して、奨学金が貰えたんだよね」

 そう…、そしてアタシは、この国に残された。
 毎日のメールのやり取り、週に一度ほどの短い電話。
省21
228: 2012/10/18(木)00:45 ID:5mqb1pmd(4/4) AAS
 雨の中行き逢ったアタシを、矢澤さんは近くのコーヒーショップに誘ってくれた。
 初めて矢澤さんとふたりきりで過ごした、夢のような時間。
 アタシはもう、恋をしていた。
 交換したケータイの番号とアドレス。
 何気ないメッセージのやり取り。 一緒に見に行った、花の展覧会。 逢う度に、高まっていく気持ち。
 矢澤さんも同じ気持ちだと打ち明けられたときは、死んでもいいとさえ思った。
 ――そうして、矢澤さんと身も心も結ばれたあと、アタシは知ったのだ。
 アタシと出逢う以前から、矢澤さんは姉の恋人で、ふたりが大学卒業後に、結婚の約束をしていたことを。
「……、矢澤サンは、なんて?」
 二本目のタバコを灰皿にねじ込んで、アイツが言った。
省36
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