世界や常識がエロくなる話 part9 (753レス)
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344: 2023/02/25(土)21:23 ID:N078LIhe(1/9) AAS
姉妹だから。
双子だから、ずっと一緒。
そんな幻想が木っ端微塵になった日の事を、花音は今でも良く覚えている。
「ほら、けいたろー! あそびにいこう!」
オロオロするしかない自分を風と共に抜き去った幼い詩音が、蹲る景太郎の手を取った。
「や、やだよ! だって……」
「いいからたって! ほらいくよ!」
う〜〜〜〜〜ん、と唸りながら景太郎を引っ張り上げ、花音を無視して引きずるように通り過ぎてゆく。
「ま……まって! しおん、けいたろう!」
そんな風に始まった三人は、そのまま大きくなっていった。
ことある毎に景太郎を引っ張り、否応なしに外へと連れ出して手を替え品を替え落ち込んでる暇を与えない。
いつの間にやら練習してたのか。
あるいは天性なのか、男の子が好みそうなスポーツも難なく熟して一緒に遊び回る。
二人の後を必死に追いかける花音。
それはそれで賑やかで楽しい日々だったが、同時に胸の奥に重くて冷たい何かが徐々に沈殿してゆく不快感も感じていた花音は、単語こそまだ知らなかったが自分中の薄暗い部分の正体を薄々察しつつあった。
『劣等感』と呼ばれるものであると。
このままでは二人とも遠くに行ってしまう。
だけど一生懸命走っても追いつけない。
ならば、と幼いながらに考えて行き着いた結論が、
「賢くなって、景太郎に勉強を教えてあげる!」
違うジャンルで抜き返す、という実にシンプルな戦術だった。
実際、昔からアウトドア派だった詩音の成績は至って平均的。
そして流されるままの景太郎の成績は中の下辺りっぽかった。
だから追いつけない足を無理矢理酷使して疲れ果てるよりも、程々でリタイアして勉強にリソースを割り振ることにした。
自分が帰った後も元気よく外で遊び回る二人を横目で眺める、と言うのは予想以上に寂しかったが我慢した。
全然楽しくない勉強だけど頑張った。
急に路線変更してインドアに偏った娘を最初は心配した両親だったが『景太郎を勉強を教えてちゃんとした人間にする!』と決意表明すると逆に花音が欲しがる参考書その他を、ほぼ全て好きなだけ買ってくれた。
そうして数ヶ月後、テストのアベレージが一気に上昇して独自の勉強法も編み出した花音は次のステージに進む。
「遊んでばっかりじゃ駄目! 勉強もしないとちゃんとした人間になれない!」
詩音が握る手の反対側を取り、椅子に座らせた。
教え方だって工夫した。
詩音みたいに元気に笑うのは苦手だったが、代わりに褒めて伸ばした。
注意深く観察しながら『えらい』『すごい』『よく頑張った』と些細なことも見逃さずに言葉を掛け、意欲を引き出した。
それでもやっぱり勉強が楽しくないことは花音自身が身に染みて理解していたので、ペースにも配慮した。
逆に詩音がひとりぼっちにならないように遊ぶ時間とのバランスも考え、短時間で効果を出すための計画も作った。
その努力の結果、景太郎の成績は緩やかながらも上昇。
もっと『ちゃんとした人間』にするために花音が進んだ進学校まで追いかけてきて、現役合格できるほどに育ってくれた。
そして、やっと追いつけたかも……と言うときに、世界の方が変わってしまった。
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