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【Wizardry】ウィザードリィのエロパロ16【総合】 [無断転載禁止]©bbspink.com (320レス)
【Wizardry】ウィザードリィのエロパロ16【総合】 [無断転載禁止]©bbspink.com http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/
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286: 名無しさん@ピンキー [] 2020/06/05(金) 00:33:28 ID:KFof8Jmb https://imgur.com/a/1V8yYhs すっぴん美人 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/286
287: 名無しさん@ピンキー [sage] 2020/07/07(火) 20:35:13 ID:y8+tgUOT 七夕ほす http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/287
288: 名無しさん@ピンキー [sage] 2020/12/16(水) 10:16:20 ID:Y528ixpz 年の瀬という概念がこの世界にもあるのか http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/288
289: 名無しさん@ピンキー [sage] 2021/03/30(火) 15:16:33 ID:gmUelJld あるんだろうな。イベントは大事だよ http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/289
290: 名無しさん@ピンキー [] 2021/04/14(水) 21:44:38 ID:jjxo+6Ec アライメントGoodの低レベルのビショップ少女が、パワーレベリングの為に迷宮内でアライメントEvilのパーティーと待ち合わせ。 寄生の代償に迷宮内でエロエロされる。 こんな基本しか思い付かない・・・ http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/290
291: 名無しさん@ピンキー [sage] 2021/04/15(木) 05:23:20 ID:dlacpdrp ビショップ少女が何故パワーレベリングを必要とすることになったのか… 所持品が「?ごふ」で8個とも埋められている少女だったりするのか Evilパーティに引きずられてアバズレ(性格「善」→「悪」)になっていくのもありかな http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/291
292: 名無しさん@ピンキー [sage] 2021/04/22(木) 11:15:02 ID:UqBiN61e 謎の行動っていうのは後で説明がちゃんとできるといいよね ところで?RINGではないのかと思ったけど それだと歩けないか…。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/292
293: 名無しさん@ピンキー [sage] 2021/04/23(金) 12:59:27 ID:pogi8V1M 先に城塞都市にやってきていたお姉さん(当時、知恵・信仰心12)が ダンジョン入口で護符いっぱい持たされて ダンジョンから出してもらえなくなっている件について 「魔除け持って帰りませんか。これさえあれば〜〜」 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/293
294: 名無しさん@ピンキー [sage] 2021/04/25(日) 19:31:23 ID:zoyoSiYm しかも裸でなw http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/294
295: 名無しさん@ピンキー [sage] 2021/04/26(月) 10:17:01 ID:xxEh2jDR 全裸よりも裸ローブかなぁ… 魔除け見せてくれる時にオッパイとかお毛が見えるの え、そのためにわざわざ装備欄1個埋めるのかって? ダンジョン内で生活しているのに魔除けの魔力で血色がいいのか http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/295
296: 流刑の姫君 [sage] 2021/05/05(水) 00:10:15 ID:jBP8fKtB あのかたは本当に女王なのだろうか。時どき、グリューエラントはその思いにとらわれる。 そのひと、リルガミンの女王アイラスは即位から歳を経て、今も、いかにも女王らしくない女王だ。 アイラスは慈悲深く優しい。聡明で、人々の声に耳を傾け、公正な治世との世の評判だ。 聡明で公正なら、女王の聡明さと公正さに不満を抱く人々も多い。利害関係のある世の中では。 争いを好まぬアイラスの性格には、もともと女王として決断に欠くところがあって、 貴族たちはたえず引っきりなしに彼女を利用し、派閥ごとにアイラスを操ろうと考えている。 城塞都市の住民たちは住民たちで、無責任に女王を褒めそやし、誹謗したりしている。 巷では、女王の足の爪の垢や、毛髪の一本でも薬になるという話だ。実際にそう信じられている。 庶民の目にアイラス女王は柔和で優しく、親しみやすい。美女は美女として、偉大や荘重らしくない。 だからアイラスは苦労している。悩ましい眉を寄せて。 あなたがもう少し、美しくなければよかった。 女王陛下に仕える騎士であれば、それは大変失礼な物思いであるが、 グリューエラントはリルガミンの女王の臣下ではなく、王宮に出入りはしても、爵位はなかった。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/296
297: 2 [sage] 2021/05/05(水) 00:12:04 ID:jBP8fKtB 亡き王女の像は庭園に佇み、緑の木陰の落ちる池の端、その水面に向かい立っている。 像は二十歳の若さで亡くなった不幸な王女の、生前の姿を白亜の彫刻に写している。 浅い水辺の、ちょうど岬に立つような王女の横顔は、凛然として整い、 長い御髪は束ねることもなく、今しも風になびくままに留まる。 ゆったりと落ちる袖から軽く両掌を広げ、風に向かい今にも語り出しそうな姿は、 ありし日の愛らしい姫君というより、若くして哲学者の風貌を思わせる。 きまじめで、ひたむきな学究とも見えるその面差しは、現女王アイラスに生き写しである。 亡き王女の名は、彫像のどこにも刻まれていなかった。 それがソークス姫という名であることは、知らなければ誰も知ることがない。 その像はソークス姫がみまかった時、現女王アイラスが思い出に残したもので、 公には、ソークス姫を厚く弔うこともできなかったので、人知れずつくって離宮に置かれた。 ソークスが反逆者として世を去り、いまだ幾年。人々の記憶にある生前の姫は、書を好み、議論を事とし、 常日頃、貴人として着飾ることを好まず、学徒として質素なローブ姿でいることが多かった。 凍るような美貌の王女、人の見るまえでは微笑ひとつ零したことはまれという。 ソークス亡き後に立てられた像は、そのような飾らないソークスの姿を保存していたが、 しかし、人の知らない事実では、その顔貌は御妹であるアイラス姫、つまり現女王アイラスの面わを、 芸術家が模してつくったものだ。 ソークス姫の死後、ソークス自身については肖像画ひとつ残っていなかったゆえ、それはやむないことだが、 アイラスとソークスとは双子の姉妹だったのだから、余人には区別のつくところではない。 でも、庭園にあるその像に写すソークスの似姿は、本当のところは、その日のアイラスその人なのだった。 そして、今現在のアイラス女王より、像はすでに二、三歳は若い。 モデルになったアイラス女王が齢を重ねても、この離宮に留められた姉姫ソークスの姿は、 静謐な水を湛える池の縁にあって、永久に若々しく美しいまま、あるだろう。 今では誰も口にしない、そうした複雑な感慨がこの場所にはあった。 グリューエラントはその感慨を確かめにここへ来る。 失せにしソークス、亡き王女の像は離宮にあり、めだたない庭園の陰にごく内密に記念されてあって、 その像がここにあること自体、王家にごく近い、わずかな者しか知らない。 おそらく女王自身が年に一度くらい、ここへ来て姉の面影を偲ぶのだろう。 グリューエラントは、その像がそこにあることを知っている。 人気のないその庭に、人目を盗むように時おり訪れては、ひとり午後を過ごしている。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/297
298: 3 [sage] 2021/05/05(水) 00:16:24 ID:jBP8fKtB 孤独を楽しんでいるつもりなのだが、その彼のうしろに、芝草を踏んで立つ気配があった。 庭園の水辺に腰をおろし、木陰の静けさにひたっていると、グリューエラントは彼女が背に立つのが分かった。 その気配なら、むろんグリューエラントには眠っていてもわかる。 彼女は好きなときに好きな場所に現れることができる。 身分証の指輪があれば、このような王家の離宮にも勝手に入っても咎められないが、 グリューエラントの背後に現われることは、彼女のほかにはなかなかできないことだ。 〈瞬き移動〉の魔法で現われたとしか思えない。エルフ娘には、実際にそういう力もあった。 座っている彼の背中を、エルフの少女はつくねんと立って、しばらく、じっと見ていたが、 いつまで待ってもグリューエラントが振り返ろうとしないので、自分からしゃべりだした。ねえ、 「あの盗賊のこと覚えてる。あんたもよく知ってる、ほら、あいつのことよ」 グリューエラントは振り向いた。 「どうかしたのか」 「死んだわ。裏町のうわさで……。やくざ者のもめ事に絡んで刺されたそうよ」 「そうだったのか」 「馬鹿なやつ。町場の盗賊ギルドのしがらみなんて、口を開けば嫌っていたくせに」 顔をしかめないわけにいかなかった。明るい日差しの庭に、いっとき、寒々しい沈黙が落ちた。 グリューエラントにとって友人というほど、その男と親しいわけではなかったし、 仕事の後に酒を飲む以上、私的な付き合いがあったわけではなかった。 だが、この場の二人にとって、一度は生死を共にしたことのある人物だった。 エルフの少女はグリューエラントを立って見つめながら、その前髪には木漏れ日が落ちて揺らした。 きらきらと移ろう瞳の色も、蒼とみどりとの間で、その間にひとつ瞬きした。 彼女の考えていることは表情から全くうかがえなかったが、おそらく、彼には想像できた。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/298
299: 4 [sage] 2021/05/05(水) 00:18:39 ID:jBP8fKtB 今日死んだというその男と……もう一人の友人、グリューエラントにとっては友人であったが、 その友人については覚えている。彼は僧侶だった。 聖職者の本務は魔物退治《エクソシズム》ではないのだと、その男は常々口にしていた。 彼の言うところによると、そうだ。 僧門に入っても出世するのは簡単ではない。ここリルガミンにおいて信仰とか宗教は名ばかりにすぎず、 金と、縁故と、女の思惑と、権謀術数が支配していることは寺院とて世俗の社会と変わりない。 金も縁故もない、おれなど神学生はこのさき一生うだつのあがらないのは見えている。 そこでは良心は恥ずべきもの、一般社会同様に、敬虔さや献身などはまっさきに笑いものとされる。 「寺院にあっては、僧侶たるべき属性は中立とされる。つまり、王や貴族、世俗の権力から独立というのだな。 寺院の独立・中立を掲げて、その代わりに彼らの信奉しているのはカドルトの神ではなく、 善悪の判断をも放棄した高位聖職者の価値観を占めているのは、彼ら自身の欲望、私利なのだ。 紫の法衣をまとった大僧正も俗物にすぎない。思うさま利殖を欲しいままにする悪知恵に長けていなければ、 善でも悪でも、立派な僧侶にはなれないのだ。おれは、神かけていうが、狭い城塞都市であくせくと稼ぎ、 信徒の心を縛るための偽善の権杖より、無名の辺境で怪物相手に揮う命がけの剣のほうがましだ」 同じ敵として戦うなら悪魔にこそ罪がない――むしろ、死に場所なら軍陣でも、地下迷宮でもいい。 そうした過激な信仰を胸に戦地を求めた若い僧は、その後、念願かなって寺院の正司祭になったが、 先年のある日、グリューエラントは突然に彼の死の知らせを聞いた。寺院の鐘楼に登って転落死したとか。 なんでその日、そんなところに登ったのか、不慮の事故というが、不明瞭な状況の死と、 生前の男の記憶がどうしても結びつかず、グリューエラントは他人事のようにしか思えなかった。 共通の知人が、立て続けに死んだ。だからといって、今の二人には関係のないことではあった。 ドワーフ族の二人の戦士のことなら、それも、グリューエラントは伝え聞いている。 故郷の山の坑道で、落盤に呑まれたそうだ。これこそ可笑しげな話で、仮にもドワーフ族が鉱山事故で死ぬとは。 彼の知るかぎり、連中は殺しても死なない屈強の人種で、そんなことでくたばる矮人どもではなかった。 結局のところ、昔の六人の仲間が、わずか三年後の今、グリューエラントとエルフと、二人しか残っていない。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/299
300: 5 [sage] 2021/05/05(水) 00:21:41 ID:jBP8fKtB グリューエラントはリルガミンの女王の臣下の身分でなく、家爵も領地もない曖昧な地位にあった。 当今、誰一人認めぬものはない高名な剣士でありながら、彼自身は城塞都市の騎士団の一員でさえなかった。 彼は「女王の友人」という奇妙な称号を持ち、時には女王から個人的に相談を受けることもあった。 宮廷に近く、政事にはまるで係わりのない彼を選んで、女王アイラスはたびたび、親密な悩みを打ち明けた。 親密に相談されるグリューエラントに言わせれば、 アイラス、あなたが美しくさえなければ……。そればかりが女王に対する思いだった。 「率直にいうと、女王陛下。あなたが美しいからいけないのだ」 「わたしが。なにが。どうして」 若い女王は困惑し、やや首を傾げるようにした。その何気ないしぐさにも魅力があった。 チャーミングというか、どこかしら彼の気を誘うふしがある。 女王陛下アイラスのその日もこぼす欲求不満、尽きぬ悩みは、どうして貴族達は飽きもせず、いがみ合うのか。 わたしは利益調整に奔走し、御璽御名、はんことサインに費す日々を送っているのはなぜ。女王のわたしが。 「それ、そのように。ご自分の影響力を自覚しておられぬ。それが困る。人を迷わせるから」 「わたしが今、なにかしましたか」 「天然自然の御方というのは、ほんとに罪だな。それが女王の天性であるから、お恨みもできぬ」 「わたくしがなにを? どうしろというのです」 女王はグリューエラントを責めるようににらんだ。この午後、お茶に来いと呼び付けたのは女王だった。 アイラス、あなたがそんなに美しくさえなければ……とグリューエラントは心中嘆いた。 愚痴をいうために自室に招き寄せて愚痴をいう、彼の立場で身勝手とは言えない。 女王になるまえ、幼い彼女の教育係であった賢人達もそんな彼女には手を焼いたに違いない。 手を焼き、そして愛したにちがいない。誰にも愛されるべく育つ王女を。 グリューエラントは成り行きで陥ってしまったわが身を呪い、こんな自分の居処を嘆いた。 「もう二、三年。せめて四、五年ばかり、齢を取られるといいんだ。お仕事に没頭なさってくれ」 「わたしにはまだ、貫禄が足りないというのね」 はあ……と溜息をつき、アイラスは小卓に肘を置いて、少女のように慎みなく唇を尖らせた。 「苦労ばかり続くこと。気の休まる日もないのだから」 「ほら、それ。その鬱憤を俺に言うのはいいが、人前で女王がそんな顔をしていいのか」 「今だけです。わたくしは人前で弱音を吐いたりはしません」 「美しいことをやめられなければ、女王をやめればいい」 肘をついた、しどけない姿勢のまま、アイラスは彼に冷たい目をくれた。その目線は凍りつくようだった。 見知らぬものを見るような、一切の親しみの失せたアイラスの冷視は恐ろしく、 その流し目は劇場の女優より凄絶で、淫蕩なまでに毒があった。 「あなたが女王でなければ、俺は忠誠ではなく、愛を誓っていたよ」 女王は無言で身を起こした。真面目な顔で、顔を近づけた。冒険者の瞳を瞳で覗き込んだ。 怒ったり、咎めてはいない。ただ彼の瞳をまっすぐに見つめる、彼女の瞳が大きくなって近づいた。 何を言おうとしているのか……何を告げるでもなく、 曖昧に問いかけた唇が開いて、吐息がもれる。 目をそらすことは許されない。 グリューエラントは近い距離で、一点瑕のないアイラスの美貌を隅々まで見つめなければならなかった。 ひとみも、睫毛も、鼻梁も、やや丸びてきた頬とあごの線も、 なだらかな、露わな肩に落ちる髪の先まで。視界がアイラスでいっぱいになり、 彼女の体臭や、髪の香りさえ感じられるようだった。 引き寄せられる、抗いがたい魅惑と戦いながら、 心臓は締めつけられ、鼓動をやめてしまい、この瞬間がこのまま続けば死んでしまうと彼は思った。 アイラスは悪戯っぽく微笑すると、 「冒険者グリューエラントは、女王では、愛してはくださらないのか」 「陛下の友人として、俺の誠意は変わらない。そのときには命を捨てよう」 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/300
301: 6 [sage] 2021/05/05(水) 00:25:16 ID:jBP8fKtB 「どうしておまえは市城を去らぬのだ、フェー」 フェーと呼ばれて、イールヴァは胡乱な目つきを向けた。 「森に帰ればいいではないか。せっかくの金貨の使い途もないのだろう」 「あんたの知ったこと、狼の尻尾よ。あたしにだって最近の都合というものがあります」 「なさそうに見える。エルフは気楽そうだ」 庭園を渡っていく初夏の風は池にさざなみを立て、水面に落ちる梢の影を白くかき立てる。 そのとき、向こうの岸に建つ離宮は、つかの間、ざわざわと形を乱し、消えてなくなり、 しばらくの後にゆっくりと再び水面に立ち現われてくる。 それだ……その瞬間が良いのだ。 グリューエラントは、それは幻想の雲の中に出たり入ったりする天上の伽藍のようだと思いながら、 彼のそうした美術観を共有する友人は居たことがなかったので、ひとりでそれを眺めていた。 エルフの少女は景色に頓着なく隣にくると、グリューエラントの傍に腰を降ろし、 草にあぐらをかいて座った。衣の裾の短いのを気にせず。 「あんたはこのまま宮仕えに収まっちゃうつもりなの、立ち枯れの柳よ。似合わないわ」 「出世が夢で上京したのだ。今の俺はグリューエラント卿であるぞ。何がわるいか」 「仕事してないじゃない」 「知るまいが、俺とて日々、色々と忙しい」 「どこが」 口調とは裏腹に、イールヴァの瞳は揺れて頼りなく見上げた。そんな顔をされると気の毒になるくらいだ。 何が不安なのだ、エルフの娘……。おまえがそんな顔するのこそ、似合わない。 蓮っ葉な口をきいても整った顔、憎まれ口を叩いても憎らしくない彼女を、愛おしいと思う気持ちは変わらずにある。 昔変わらない仲間、グリューエラントのその思いは、可愛いものをみて可愛いな、と思うもので、それ以上でない。 グリューエラントに友人は多くない。王宮にあっても友人は少ない。少ない同士の、友人なのだ。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/301
302: 7 [sage] 2021/05/05(水) 00:28:04 ID:jBP8fKtB 家柄や門閥に関係なく女王に遠慮なく直言できる「友人」なる称号をもち、 剣を取っては、武芸は当代並びないものを持ちながら、その剣とて、平和な時世には役に立たず たまに練兵場に顔を出しても、グリューエラントのすることといえば、尻で道場の床を磨くくらいのもの―― 若くて高名は為したものの、実質は日々、空を見上げては欠伸して暮らしている、 直参退屈戦士というものがいればグリューエラント卿のことという。 女王も女王だ、あの方は綺麗な顔をして人を迷わす。ふわふわした友情をもてあそびながら。 もちろん、グリューエラントは女王に対しては女王の幸せだけを願っている。言うまでもなく、彼自身のよりも。 しずかで人気のない、この庭園にグリューエラントが来るのは、自分ひとりの物思いに引きこもるためだ。 エルフもそれは知っているが、居ても決して邪険にはされないので、寄り添うように近くにいて、 何をするでもなく、草をいじっている。 そうさせておけば何時間でも彼の傍で草むしりをしていた。その無心なこと、何もしなさはエルフ特有と思う。 エルフが彼につき合うのは、エルフが優しいからではなく、本当にここに居たいから、彼のそばに居たいから居るので、 飽きればどこかへ行くだろう。そうしているだけでいつまでも飽きないのは、いつまでもそうして居たいからだ。 そんな彼女が、そばにいる事実だけで彼は幸運だと思う。 エルフとは、生まれながらに、愛されるために在るような種族だ。グリューエラントはそう思う。 生まれつき知力と魔力に恵まれ、美形が多く、長生きする。 身体的な頑健さに欠けるというが、腕力がものをいう原始人の間ならともかく、 この文明社会では、彼女のように知能が高くて魅力が高ければ、それだけでだいたい何でも成功する。 そのくせ自然生活者で、彼女らには欲がない。よその種族からみれば、悩みがなくて能天気にみえる。 そうエルフに言うとエルフは怒る。プライドも高いのだ。エルフと呼ばれることさえエルフは嫌う。 たしか彼女らの言い分によると、他種族からは『高貴な一族』とか『善良な人びと』といわれないと承服しない。 それが正式な呼び方とかで自己主張はやたら誇らしい。 グリューエラントがエルフを見るとき、彼の目にはいつも、エルフ族への率直な称賛がある。 エルフを羨ましいとも、なりたいとも思ったことはないが、彼女らの機転の良さなり、魔法の手際なり、 好ましい容姿なり、素敵だなと思えるものはみな、イールヴァの備えている天性の美質だ。 それを褒めてやらないとイールヴァは不満だ。そんなエルフがグリューエラントは好きだ。 暑いな、とグリューエラントは呟き、立ち上がった。池の水辺をいちど爪先で蹴ってみて水飛沫をたてる。 そこで靴を脱いで左右に放り、頭からシャツを脱ぐと、彫像のソークス姫の肩に脱いだそれを投げかけた。 イールヴァはきょとんとしたまま、唐突に目にした彼の精悍な上半身に見とれた。 「俺につき合って泳ぐか、イールヴァ。放埒なヴィリスよ。それともそこで見ているか」 「あんたの裸なんか見たいものか」 妖精の乙女は立って、サンダルをとんとんとし、木立ちのほうへ行った。 腰を振って行く後ろ姿に、好ましい目線を送っているグリューエラントも、今でこそ卿と呼ばれる身分ながら、 けっして人の憎めない、まだまだ若者らしい若者だった。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/302
303: 8 [sage] 2021/05/05(水) 00:33:44 ID:jBP8fKtB 水は大して深くもなく、ざばざばと膝まで水に浸かってから、グリューエラントはふと、彼の指にあるものを見た。 かつての功業の報酬であり、現在の身分の証でもある、指輪の宝石はけっこう大きなもので、 宮廷に上がる用でもなければ、剣術の訓練にはしばしば邪魔で外す。 水に落としたり、失くしたりするとは思わないが、裸になって、それだけ身につけているのは変な思いがした。 指輪を抜いて岸に上がるところで、彼は、彼を見つめる視線を感じた。 水際にたつ、彫像のソークス姫は池のほうに向いているので、普段、水に入ってみなければ正面から顔は見ない。 意外なことに、この場所に何度もたびたび訪れていても、 グリューエラントは彫像のソークスと正面から目を合わせたことがなかった。 こう見ればすばらしい美人だと思う。それは彼の日頃知っている女王アイラスと同じ顔なのだけれど、 現在の女王よりは二つ三つ、若いので、姉なのに、今はアイラスの妹かと見紛う。なんて愛らしい、と。 弁論家のように、堂々と両手をひろげ、語らうのは天地の神か、精霊か――もっとも 今、まっすぐ視線の先に立っているのは、裸のグリューエラントになるのだが、 彼は初めて好意をもって彼女に微笑み返した。 水から上がって、ソークス姫の指に指輪を通すと、彼は池にもぐり、しばらくのあいだ水浴びに興じた。 ややあって、存分に水泳に飽きたグリューエラントは、シャツと靴のある岸辺に戻った。 ぐしゃぐしゃの髪を拭き散らしてから、傍らの像から指輪を取ろうとしたが、そこで手をとめ、首をかしげた。 像の差し出す左手は薬指をやや折り曲げ、どうしたことか、そのままでは指輪が抜けなかった。 水に入るまえ、指輪をはめたときには、確かに指は伸びていたはずだ。でなければ指輪も通らない。 彼は、戸惑い、ソークス姫の横顔を見たが、彫像は彫像として何も答えはしない。 風に向かい語ろうとする姿のまま、学者めいた表情はどこか誇らしげにさえ見えた。 奇妙には思えど、グリューエラントはもう一度、彼女の手をとって撫でた。 どうしても、像の指を壊しでもしなければ、指輪は抜けそうになかった。それは忍びない。 「イールヴァ、来てくれ。どこだ」 声が届くとエルフは木立の間から顔を出した。やはり近くにいたらしい。 彼女を招き寄せて、あらためて像の手を見たグリューエラントは、 「指輪がない。消えてしまった」 「なんのこと」 のんびりやって来たエルフに、彼は手短に事情を説明した。 泳いでいるあいだ、指輪を像の手にはめていたこと。折り曲げていた指は元通り、伸ばされて、 怪しいことが起こった痕跡はどこにもなく、ちょっと目を離したすきに指輪だけが消えた。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/303
304: 9 [sage] 2021/05/05(水) 00:37:31 ID:jBP8fKtB イールヴァは疑念たっぷりに彼のほうを見た。信じないのは無理もない。 彼にもわけがわからない。何食わぬように風を見つめるソークス姫の像が無性に憎らしく、腹がたった。 グリューエラントは途方にくれてしまった。 「困った。あれが無いと王宮に入れない」 「そういう問題じゃないでしょ。あんた、ソークス……様の指に、指輪なんてはめて、一体なんのつもり」 「どんなつもりもない。不慮のことだ。まさかこんな奇怪な」 そういえば、そういう昔話があるな、とグリューエラントは思い当たった。 無考えに、女神像に指輪を与えたせいで、女神に愛を誓ってしまったという騎士の話だ。 何世紀もまえの古い神殿に、昔の神々の像が立ち並んで残る。そこで暇つぶしをする若い騎士達のひとりが、 球戯の合間に、女神像の指に指輪をはめてやった。ちょうど今のグリューエラントのように。 そのあとで彫像の手から指輪は消え失せてしまい、 それ以来騎士は、夜ごと、夢ごとに訪れる美しいヴェヌス神の訴えを聞くはめになった。 毎晩、ヴェヌス神は寝床に来ては、指輪をくれた以上、これは正式な婚約なのだから、 責任をとって結婚してくださいと訴え、 さもなければ、人間の男に約束を反故にされた女神は、耐えがたい恥をこうむるのだから……と、 哀願を続ける女神に悩まされ、その若い男は日に日に病み衰えていくのだった。 呆然自失しているグリューエラントをエルフは冷たい目で見ていたが、 「あんた、まさか女王様のことを……」 「くだらんことを言うな。これは造り物だ。ソークス姫はとうに亡くなってこの世におらぬ」 それはもちろん、俺たちが……グリューエラントは言いかけて、 イールヴァの顔が引きつり、恐怖に染まるのを見て口をつぐんだ。 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/304
305: 10 [sage] 2021/05/05(水) 00:40:40 ID:jBP8fKtB エルフを落ち着かせるために、グリューエラントは今思いついた、騎士と女神像の昔話をした。 「その、おとぎ話では、終わりはどうなるの」 「普通、男は死ぬのではないか。徳の高い高僧がいて、悪霊を追い払ってくれる話もあるが、その場合には高僧が死ぬ」 僧侶ならすでに死んでいた。当時の仲間の六人中、四人が死んでいるのは偶然だろうか。 運命《フェイト》にしてはまだ二人生きており、偶然《チャンス》にしては確率より高いと言わざるをえない。 イールヴァは疑わしげに、 「それ、本当なの?」 と言った。彼にしても、なんとも言えなかった。思いつきを話しただけで、自分でも現実のことと思えない。 グリューエラントはひとまず落ち着いて、客観的にものごとを考えてみた。 まず、ソークスは神話の神々と交感できるほどの稀代の魔術師だった方なのだから、 亡くなったあとも、冥府から手を下して復讐するくらい、できるのかもしれない。できなさるだろう。 仮にそんな不思議なことがあったとして、不思議とはいえまい。が一方、グリューエラントは、 ソークス姫自身のお気持ちとして、そんなにまで自分達が恨まれているとは意外だった。 だって、ソークス姫の反逆と死について、当時無名の冒険者であった彼らに責任があるとは思わない。 そして、他人事のように、あくまで無責任と考えている自分に気づき、彼は赤面した。 ソークス姫がどのような方であろうと、姫自身のお気持ちは、姫自身に聞くしかないことだ。 それを何の気なしに、彼女の指に指輪をはめてしまったのは……この際、弁解の余地なく彼の責任だ。 グリューエラントは彫像の手をずっと握っているのに気づいた。それを離した。 「ソークス姫を捜さなければ」 「指輪を取り戻すの。でも、どうやって」 「黄泉の国まで求めなければならないか…」 「Oops! You are in rock! ...」 エルフは「お手上げ」のしぐさをし、がっくりと肩から力を落とした。 「かわいそうなソークス様。でもあたし達が悪くないじゃないか!」 その仕草が大げさなので、グリューエラントはかえって気楽になった。 「元気出せ、金髪の悪戯娘。厄介事を負ったのは俺であって、おまえではない」 「そんなの分からない――」 恨めしく口走ったものの、錯乱したエルフはとっさに新しい呼び名を思いつかず、台詞につまった。 「グレー、グリュー、灰色犬の耳。あんたがどうなっても構わないけど、呪いや祟りなら、次に死ぬのはあたし」 「エルフェよ、おまえの指先は真珠みたいな爪をしてるな。いつか触れてみたいと思っていた」 少女が青い目を見はり、固まっている隙に、グリューエラントは彼女の手をとって頬に押し当てた。 「おまえの手に触れたぞ。これで、俺は死んでも心残りは一つなくなったようだ」 「馬鹿、あんたはやくざ者のすすき星だ」 「おまえを愛しているが、今そんな場合ではないな。助けてくれ、イールヴァ。おまえの魔法使いの腕が必要だ」 http://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1546503304/305
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