[過去ログ] 【クリアリ】クリフトとアリーナの想いは Part13【アリクリ】 (982レス)
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927: 紡がれる愛 1/4 2014/09/16(火)22:43 ID:tIpaBg9U0(1/5) AAS
今からおよそ二十一年前。
国一番のおてんばと呼ばれ、天真爛漫さが魅力的だった王女アリーナ。
しかし、神官クリフトとの不本意な別離が尾を引き、心身ともに焦燥してしまう。
彼女がこの屋敷へ静養に訪れたのは、写真の日付からおよそ半年前。
体調の異変に気づいた当時の母と祖母が王女を問いただすと、
さすがに隠しきれないと観念したのか、これまでの経緯をすべて打ち明けた。
問診の結果、自分に起こった事実を知った彼女は、産むと言ってきかなかったという。
「生命を宿した喜びと失った悲しみの両方を知る私たちは、
あの方の願いを拒むことなど到底できませんでした。同じ女でしたから」
祖母は二度の流産を経験し、難産の末に産まれたのが一人娘である今の母。
結婚して間もなく病を患った母は、授かった最初の子を諦めざるを得なかったそうだ。
二人は悩みに悩んだ末、この屋敷で密かに出産させることにした。
ただし、母親となる王女には非情ともいえる、三つの約束を守ることを条件に。
最初の一つは、出生の事実を誰にも告げないこと。
次の一つは、生まれる子と実の父となるクリフトとは絶対に会わせないこと。
そして最後の一つは、自分が生みの母だとは決して名乗らないこと。
彼女たちの準備は抜かりなかった。
心労で病に伏したという名目で、王女をこの屋敷に逗留させることにしたのだ。
この家の当主である父にも悟られないよう、秘密裏に事を進めてゆく。
それから半年後、玉のように元気な男児が産声を上げた。
髪の色は父親譲りの紺青だが、顔立ちは祖父である前国王によく似ていたという。
幸か不幸か、このことが出生の秘密を闇に埋もれさせる結果となった。
「あの方は、最後まで約束を守られました。実の子でありながら養子として引き取り、
ここまで立派に育て上げられたのですから」
「では、私は…私の両親というのは――――」
「そうです。あなたはアリーナ様とクリフト様との間に生まれた子なのです」
その瞬間、青年の頬に一筋の涙が伝う。
喜怒哀楽のどれにも定まらない何かを乗せ、輝く水晶のように零れてゆく。
写真を見た時から、ある程度の覚悟はできたつもりだった。
なのに、いざ真実として告げられると、心の準備など実にあっけなく脆いものだ。
「どうして。どうしてもっと早く…」
本当のことを言ってくれなかったのか。
青年は目を見開いて唇をきつく噛み、立ちすくむ母の肩を強く揺さぶった。
なぜだ。どうして今なんだ。
あと数か月早ければ、実の息子として最期を看取ることができたのに。
もう数年早ければ、父の顔を一目でも見ることだってできたのに。
もし、もっと早ければ…両親を引き裂いた王家の決定をも覆してみせたのに――――
戻せない過去。消えない絶望。青年は自分の無力さを呪わずにはいられなかった。
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