【WHITE ALBUM2】和泉千晶スレ ネコ2匹目 (527レス)
上下前次1-新
134: 2013/03/09(土)22:07 ID:6QE8JUTZ0(3/8) AAS
やはり、母親には全部見抜かれていた。
「もぉ、すっごいわたし好み。オンナの秘めておきたい部分がもぉ『これでもかっ』ってぐらい伝わってきて、同じオンナ
に生まれてきたこと懺悔したくなるぐらい。フランツに聞かせたら墓から飛び出してきて、あなたの首を絞めにかかる
か、頭を垂れるかのどちらかね。まぁ、カレも身に覚えが二つ三つあるコだから後者の方が若干確率高いかな」
200年前の偉大な先人を元愛人の一人のように看做す発言の方こそ祟られても文句言えないほど不敬極まりな
い。しかし、かずさは罰を受ける罪人のようにうなだれて口をつぐむ。
そう、被告人かずさが全く弁明できないほど、今の演奏はどす黒い感情に満ちていた。
春希を奪った雪菜への嫉妬、自分を捨てて雪菜をとった春希への妄執
そして…春希を振り向かせる事が出来なかった自分への自己嫌悪
「熱心なのは結構だけど、あまり入れ込みすぎるんじゃないわよ」
省10
135: 2013/03/09(土)22:09 ID:6QE8JUTZ0(4/8) AAS
改行やりにくい…
136(1): 2013/03/09(土)23:21 ID:/J7VFNUk0(1) AAS
ちょ、まさか今頃SS投下とかワロタ
この内容ならかずさスレでも良かったんじゃないの
137: 2013/03/09(土)23:42 ID:6QE8JUTZ0(5/8) AAS
**********5/12(水)複合文化施設「Kaikomura」1階レストラン「コクーン」にて
からり、から… からり、から…
コーヒーシュガーが空しい音を立て、黒褐色の液体の中に埋没していく。
その数が5杯目にさしかかったが、同席している誰も彼女―売り出し中の若手女性ピアニスト、冬馬かずさ―の糖分過剰摂取に気付きすらしなかった。
目の前では、彼女のマネージャーがクライアントとの打ち合わせのまとめにかかっている。かずさはそれを他人事のように眺めていた。
省9
138: 2013/03/09(土)23:45 ID:6QE8JUTZ0(6/8) AAS
「では、かずささん。また明日お願いします」
「ああ・・・。いつもありがとう。美代子さん」
レストランの外でかずさはマネージャーと別れた。マネージャーはこれから冬馬曜子―稀代の世界的ピアニストにしてかずさの母、そして、冬馬曜子オフィス社長―の所に報告に向かうことになっている。
行先は峰城大学病院…公表はされていないが、曜子は白血病を患い定期的に検査入院を繰り返している。娘の売り出しのためには病床を抜け出し駆け回ることを厭わない曜子であったが、今日のような簡単な打ち合わせは報告受けで済ましている。
だから、かずさは今日はひとりで帰ることになっていた。
帰る、か…
かずさの足取りは重たかった。今日は形ばかりの仕事であったが、それでも仕事のあるうちはそれで気を紛らすことができた。母親から押しつけられた忙しいスケジュールも却ってありがたかった。
しかし、仕事が終わってひとりになった時に襲う寂寞感をやり過ごす術までは、まだかずさは見出せてはいなかった。
そうしてふらふらと出口に向かうかずさの横をひとりの女性が通り過ぎた。
ぴく…
省9
139: 2013/03/09(土)23:47 ID:6QE8JUTZ0(7/8) AAS
彼女と会った時の記憶がよみがえる。いろいろと神経質になっていた時期にわけのわからない取材を求められ怒りを覚えたかずさは手にあったバッグを投げつけて逃げ出した。財布や携帯まで全て入ったバッグを…
何も考えず駆け出し、気がつくと迷子になってしまったかずさであったが、春希に助けられ事無きを得た。なお、投げつけたバッグはこの女性記者が律義に冬馬曜子オフィスまで届けてくれていた。
今から思い起こせば赤面ものである。しかも、その後この板倉とかいう女性記者にお礼もお詫びもしていない。当時の自分自身はそれどころではなかったし、今からお礼なりお詫びをするとしても完全に時期を逸しているが…
「『ごめん』、くらい言っておくか」
このまま知らんふりをして帰っても同じくらい気まずい思いが残る。ならば、また少々無遠慮な取材を食らうことになったとしても、謝意を伝えてすっきりした方がいいとかずさは考えた。
「すいません。記者の板倉さん…ですよね」
「え、…ええっ!」
話しかけられた女性記者板倉は驚き、当惑した。なにせ目の前にいるのは冬馬かずさ。数か月前には取りつくしまもなかった人物の方から話しかけられれば面くらうのも当然だった。
かずさはかまわず、たどたどしく謝罪の言葉を口にする。
「この前はごめんなさい。いや、あの時はちょっと気が立ってたっていうか…その…」
省5
140: 2013/03/09(土)23:53 ID:6QE8JUTZ0(8/8) AAS
>>136
ワロて頂き何より
かずさスレへの投稿も考えましたが、書き込み多いスレに長文投稿は
まずかろう&雪菜True後ですし
とりあえず、千晶登場まで
141: 2013/03/10(日)00:15 ID:d1GSJ4FO0(1/2) AAS
かずさはやっぱ糖分過剰摂取じゃないとなw
千晶がとういう格好してるのか気になる
142(1): 2013/03/10(日)00:22 ID:xkoDBqzP0(1/13) AAS
「あ、瀬ノ内さん。今日は…」
板倉記者が口を開いたところを、すかさず千晶は自分のセリフを重ねてつぶす。
千晶はいつもこの手でこの小うるさい雑誌記者をはぐらかしていた。舞台の間の取り方を逆用したワザである。
「ああ、冬馬さん。わたし。クラス別だったけど学年同じだったよ。でも覚えてないよね。瀬能千晶っていうんだけど」
突然見知らぬ学友に話しかけられ、今度は冬馬が泡を食う。
「え、ええ?」
かまわず千晶は続ける。
「ひょっとして、今の舞台見ていた? ごめんごめん、全然気付かなかった」
そういう千晶の顔は悪戯を見つけられた少年のものだった。だが、その目はひそかにかずさの反応を注意深く見ている。
「あ、いや、今日は別件で…」
省13
143(1): 2013/03/10(日)00:24 ID:xkoDBqzP0(2/13) AAS
その言葉に、かずさは不意をうたれる。急になれなれしく名前で呼ばれたことに対してではない。
その口調、しぐさがまるで…かずさの不倶戴天の親友のまさにそれであったから。
「???っ…あ、ああ…」
かずさは思わず肯定の返事を返してしまった。
「『よかったぁ。じゃ、絶対絶対来てよね。…来てくれないとちょっとだけ傷ついちゃうかもなぁ…』」
そう言って、千晶はかずさの手に強引にチケットを2枚握らせる。
その際の演技も完璧に『小木曽雪菜』のそれであった。かずさは混乱のあまり何も反抗できずにチケットを受け取る。
「『じゃあ、見終わったらまたこの場所で会おうね』」
「………、あ、うん…」
かずさは呆気にとられ、こくりとうなずくばかりであった。
省9
144(1): 2013/03/10(日)00:28 ID:xkoDBqzP0(3/13) AAS
**********5/13(木)「シアターモーラス」『届かない恋』開演前
「明日の講演後このコ連れて来て。そしたら取材でも何でも応じるよ」
瀬之内晶はそう言って板倉記者にチケットを握らせると、あっという間に雑踏へ消え失せてしまった。
あとに残されたかずさと板倉記者だが、かずさのほうは呆気にとられたようすで、板倉記者が何を話しかけても生返事しか返ってこなかった。
仕方なく、明日会う約束だけしてその場は別れた板倉記者だったが、かずさが来るかは半信半疑だった。久しぶりに会った学友?にしては様子がおかしかったが…
翌日の講演開始10分前。待ち合わせは20分前だったから、もう10分の遅刻だ。
「…また騙されたかも?」
シアターモーラスの入口で待ちつつ、そうぼやいた板倉であったが、程なく彼女は現れた。
「…やあ、板倉さん」
「はいはい、かずささんこんにちは〜。今日はお付き合いありがとうございます。いやいや、本日は僭越ながら御同席させていただきますので…」
省15
145(1): 2013/03/10(日)00:30 ID:xkoDBqzP0(4/13) AAS
間もなく舞台が始まった。オープニングニングに流れたのは「White Album」。かずさにとっても懐かしい曲だ。
メジャーデビューを夢見る高校生、西村和希が二人のヒロインをバンドに引き込もうとするシーン…前半はラブコメディ色が強い
「俺と合わせられるのはお前しかいない!」
「だから質問に答えろ」
「俺みたいなヘタクソをフォローするには、お前くらいの腕がないと不可能なんだよ!」
開演後、しばらくして…2人目のヒロイン『冬木榛名』登場のあたりから…板倉はかずさの異変に気づいた。
最初はギャグシーンで他の観客と同じようにクスクス笑っていたかずさが、やがてクスリとも笑わなくなったばかりか、だんだんと表情を強ばらせている。
「…あの…かずささん?」
「…まさ…か……っ」
かずさは、気付きつつあった。
省5
146(1): 2013/03/10(日)00:32 ID:xkoDBqzP0(5/13) AAS
舞台はコンテストの直前、控え室での和希と雪音。雪音が和希にキスをねだるシーンだ。
「じゃ、もう一度目をつぶるので考えてみてください。制限時間は30秒!」
「え? え? え?」
「ん〜っ!」
「目をつぶったのはわかったけどさ…その背延びは何?」
「残り20秒〜」
「ゆ、雪音…?」
「残り10秒〜」
「10秒はやっ!?」
「………」
省11
147(1): 2013/03/10(日)00:35 ID:d1GSJ4FO0(2/2) AAS
終わってなかったのかよw
気持ちはわかるがあまり一気に投下すると何だから焦らず日を跨いだ方がいいんじゃない?
どうせ過疎ってるんだし
あまりに長文すぎると読むこと自体拒絶したくなるわ
何より連投規制で引っ掛かる可能性が高くなる(まして書き込みの少なくなる深夜)
148: 2013/03/10(日)00:40 ID:xkoDBqzP0(6/13) AAS
>>147
ありがとう。
明日にします。
149: 2013/03/10(日)23:28 ID:xkoDBqzP0(7/13) AAS
こんばんは
昨日は長文連投失礼。
もうラスト以外できているけど、ペース配分して投稿します。
今日は、『届かない恋』の終幕まで。
ちなみに、雪菜True後の後日談ですので、千晶Trueの『届かない恋』とは内容異なる
(千晶入れ込んでない、雪音に千晶入ってない等)ってことでご了承ください。
150(1): 2013/03/10(日)23:31 ID:xkoDBqzP0(8/13) AAS
「イチャイチャしたりジタバタしたり忙しいな」
「うぇっ!? ふ、冬木?」
ガタンッ!
「えっ!? かずささん!?」
突然立ち上がったかずさに驚いたのは板倉だった。かずさの顔からは血の気が失せていた。
「ごめんな… それから、今日まで本当にありがとう」
「…まだ終わってないだろ。最後の、一番めんどくさい本番が残ってる」
「そうだな…これが最後だ」
「………っ」
「行こうか、冬木。雪音が待ってる」
省9
151(1): 2013/03/10(日)23:32 ID:xkoDBqzP0(9/13) AAS
**********幕間
「…かずささん?」
板倉に話しかけられてかずさは我に返った。
『榛名』のキスシーンから第一幕の終わりまで、結局かずさはずっと立ちっぱなしだった。
「…行く…」
そうつぶやいたかずさに板倉は聞き返した。
「?…おトイレですか?」
「あの女のとこだよ!」
「えっ? かずささん?」
板倉を押しのけて出ようとするかずさであったが、座っていたのは端が詰まった席であったため、板倉や他の観客が邪魔になりすぐに出られない。
省13
152(1): 2013/03/10(日)23:33 ID:xkoDBqzP0(10/13) AAS
「後悔…するぞ…」
「後悔なんて…し飽きた…」
暗転する舞台
「いつもの約束…守れよ?」
「榛名…」
「雪音には…内緒だぞ」
雪音は、ふたりの逢瀬に気付きつつも、カタチだけの「遠距離恋愛の彼氏と彼女」の関係にすがりつく。
いや、カタチだけの廃墟同然の関係にすがり、崩壊だけ先延ばしにするような日々を送る。
「『もぉ〜、ひどいよねぇ〜。誕生日にまで仕事入れられて〜』」
「『てなわけで、和希くんゴメン! 電話してくれてうれしかったよ! じゃあ…』」
省10
153(1): 2013/03/10(日)23:34 ID:xkoDBqzP0(11/13) AAS
そして、最終幕。
そんな嘘に塗り固められた日々に疲れた和希がふと、榛名のピアノを聞きたいと漏らしたところから話は終盤に向かう。
ブランクとスランプに喘ぎ、自暴自棄になって和希まで拒絶して引きこもってしまった榛名。その危機を救う為に現れたのは他でもない、雪音であった。
「…何のために来た…? わたしを罵りに来たのか? それとも…憐れみに来てくれたとでも言うのか?」
雪音を拒絶する榛名。しかし、雪音は引き下がらない。
「どうしてそんなこと…そんなこと、どうして言うの…全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
ぱしっ。平手の音が響く。
「勝手な…ことを言うな…あいつの…想いも夢も、尊敬も、焦りも、嫉妬も、彼女の座もずっと独り占めしておいて…今さら被害者ですよってしゃしゃり出てくるなっ」
ぱしんっ。榛名も負けじと返す。
省7
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