[過去ログ] ガロア第一論文と乗数イデアル他関連資料スレ11 (1002レス)
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825(1): 12/28(土)21:59 ID:aD5GuW9/(15/19) AAS
つづき
いろいろな部分的結果が非厳密な物理的考察から得られ,沢山の論文が書かれたが,徐々に,分類結果はK理論に関連するような何らかの一般コホモロジー理論で得られるだろうという共通認識が得られた.これは後に理論素粒子物理を経由して純粋数学側で取り上げられ,数学者Freed とHopkins によって 2016 年に空間 d 次元時間1次元のG-SPT相でフェルミオンを含むものの分類結果は(IZMSpin)d+2(BG) という一般コホモロジーで与えられるという提唱がなされた.ここでMSpinはスピン同境ホモロジーもしくは対応するトム・スペクトラムで,スペクトラムE に対してIZE は常ホモロジーと常コホモロジーの間の普遍係数定理を一般(コ)ホモロジーに拡張するために必要になる双対操作でアンダーソン双対と呼ばれ,BGはGの分類空間である.このFreedとHopkins の主張はユークリッド的で反転正値かつ可逆な場の理論の彼らの数学的に厳密な定式化による考察に基づいてはいるが数学的には厳密な証明ではなく予想に留まるものではある.しかし,理論物理屋の間ではその他の状況証拠からも非常に確からしいと思われている.
この問題をさらに数学的に追究するには色々な方法が考えられる.ひとつは,物性系を統計力学系として作用素環を用いて厳密に数学的に研究することには長い歴史があるので,その枠組みでこれらの相を定式化し,分類を証明しようという方向性である.このプログラムを次々と遂行なさっているのが緒方芳子さんで,その業績に対してごく最近猿橋賞が授与されたのは記憶にあたらしい.緒方さんがポアンカレ賞を受賞なさったときの記事も『数学通信』の第26巻第4号にあるのでそちらをご覧になると良いと思う.
もうひとつの方法は,Freed と Hopkins の立場に近く,系を可逆で反転正値な場の理論として考えることにし,それを数学的に厳密に扱うという方法である.こちらの研究を力強く推し進めているのが山下さんである.例えば,理論物理学者の米倉和也さんとの共著からはじまる一連の論文で,山下さんは,理論物理における可逆相の議論を厳密化することにより,同境ホモロジーのアンダーソン双対およびその微分一般コホモロジー化のモデルを構成した.また,数学者の五味清紀さんとの共著論文で,山下さんは微分KO理論の新たなモデルを構成したのだが,これはトポロジカル超伝導体の理論物理における解析を動機としており,スピン同境ホモロジーのアンダーソン双対との関連も自然に示唆されるような構成になっている.
以上の論文の概要からもおわかりだろうと思うが,山下さんは,純粋数学者としてのトレーニングを受けたはずながら,不思議に我々理論物理屋の言うことを判ってくださる.私の所属する研究所には,幸い数学者と物理屋の双方が多数所属するので,代数トポロジーが必要になりはじめたころから色々と同僚の数学者に質問をしてはいたものの,まずはこちらの意図を理解してもらうことが困難で,また,数学的問いが何とか伝わったとしても,それを解決したい動機が伝わらなければ真剣に考えては貰えないわけである.というわけで,代数トポロジーを必要とする私の研究は遅々として進んでいなかった.その状況が2021年に山下さんに巡り合ったことで有り難いことに大きく変化したのである.
つづく
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