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【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net (368レス)
【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/
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233: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/28(土) 23:57:46.71 ID:AD9QSNOL ミライユの全身に回った毒は彼女を蝕み続け、全身の傷からの出血はいよいよ致命的なところまで来ていた。 ここにミライユの23年余の人生は終わりを告げていた。 ラテたちの献身的な「痛み止め」により、より安らかなものとして…… ミライユは最後の夢を見た。いや、最期の、と言った方が良いのかもしれない。 ミライユたち四人は、ソルタレクの最高級酒場『サクラメントゥム』にて、楽しく酒を酌み交わしながら、 大量のご馳走を囲んでいた。ここにはあらゆる国のあらゆる珍味が揃っている。 「それで、今日は、ラテさんの大手柄でしたね! きっとマスターも喜ぶと思います! それにしても、ジャンさん、あれは無いですよ〜、死ぬかと、思いました!」 ミライユが大皿に盛られた料理をバクバクと食べながら、話を振っていく。 ジャンが祝杯片手にガツガツと食べているペースを落とし、両手を開いてポーズを取る。 「つっても、ありゃティターニアも悪いしなぁ。いっつも俺が盾じゃねーか。 今回の一番の手柄は俺だぜ?」 ラテが適当につまみながらも、何やら小道具を内職している。そして笑顔で返す。 「いえいえ、ティターニアさんと、それにミライユさんの勇敢な行動のおかげですよー! それにしてもミライユさん、年齢にしては可愛らしいですね。何か秘訣はあるんですか?」 ミライユはそれに対しバクバクと食い散らかしながらも返す。 「そんな…! 照れちゃいます。まぁ、大したことは無いですよ。いつも子供っぽいってマスターに言われてるし」 「それに、それ言うならティターニアはどうなのよ? 歳を考えれば…」 ティターニアがジャンに言われて魔道書を開きながら返す。しかし表情は笑顔だ。 そして、後ろから誰かが来ていることに気付く。勿論ミライユの大事な人だ。 「それは喧嘩を売っているということで良いのか? ジャン殿。 おや? ミライユ殿、待ち人が来たようだな。行ってやったらどうだ?」 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/233
234: ミライユ ◆6Nqsyb3PfY [sage] 2017/01/28(土) 23:59:58.32 ID:AD9QSNOL 「あ……マスター…!!」 ミライユはその男が酒場に入ってくるなり、飛びつくように男に抱き付いた。 男が抱き返し、そのハネの利いた髪を撫でながら囁く。 「ミライユ、良い子だ。今回も大手柄だった。だから……」 ――と、ミライユが異変に気付く。 愛しいマスターの姿が徐々に変貌し、露出度の高い大柄な女の格好になっていた。 「だから――死になさい」 その時の魔女"指環の魔女"だ。 「あ……あ、あぁ……」 ミライユは心臓に突き刺された刃物のようなものを見ると、既に魔女の姿は消えていた。 それどころか"仲間"たち三人がミライユの方を見ている。何か恨めしそうな表情で。 ジャンは徐々に顔が変貌し、既にミライユに殺されている、暴行を繰り返したハーフオークの姿になり、 それはやがて複数になり、暴力を振るって報復された全ての死者たちの姿になった。 半透明の姿で恨めしそうにミライユに近づいていく。 ラテの姿はやがてタイザンの娘、マトイの姿となり、その後ろからタイザン、そして ギルド時代にミライユが騙して殺した面々の姿となってミライユを取り囲んでいく。 ティターニアの姿はギルドの"任務"で暗殺した元老院の女エルフ議員になり、さらにそれに付随する任務で殺した 議員、ユグドラシアのメンバー、レンジャーギルド等の要人の姿となって、ミライユに素早く襲い掛かり、呪詛をかける。 オォォォォォ…… オーオーオーオーオー…… ミライユがこれまでに殺害してきた半透明の死霊たちはミライユを取り囲み、同じく徐々に姿を消していくミライユに襲い掛かると、 次々と被り付いて貪っていった。腕や脚が千切れて血を吸われ、頭を割られて脳漿を吸われ、それでもミライユが心臓を奪われ、骨だけになるまで、 ミライユの苦痛は続いていた。 「アッハッハッハッハッハ……!」 魔女の声が響き、やがて途切れていく。埋葬されたミライユは、その罪を償いながら、 土の中で苦しみながらその命を閉じた。 【ミライユ無事に退場。ありがとうございました!】 >>ティターニアさん【色々気遣ってもらってありがとうございます。 こちらこそ無茶な展開を発展させて頂けて嬉しいです。】」 反省点: 今回はNPCの登場するタイミングが悪かったのと、一部(ミライユの過去に行った行為や伏線が作中でキャラに伝わっていない等) 足りない部分があったので、改めて皆さんにお詫びします。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/234
235: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/29(日) 00:20:45.53 ID:oVNlJknl 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/235
236: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/29(日) 00:21:11.94 ID:oVNlJknl 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/236
237: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/29(日) 00:21:36.90 ID:oVNlJknl 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/237
238: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/29(日) 00:22:00.77 ID:oVNlJknl 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/238
239: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/29(日) 00:22:23.18 ID:oVNlJknl 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/239
240: 創る名無しに見る名無し [age] 2017/01/29(日) 00:22:41.03 ID:oVNlJknl 埋め http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/240
241: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:39:28.87 ID:VysKKKrJ ミライユさんの呼吸が段々と弱くなっていく。 後はこのまま眠るように……楽になれるはずだ。 私には、もう、こうする以外に出来る事はなかった。 ……ふと、草むらの中を踏み歩くような、音が聞こえた。 段々と狭まりつつある夢の森を、私は見回す。 額に冷や汗が滲み、心臓の鼓動が荒っぽくなるのを、私は感じていた。 そうだ。 ここはミライユさんの為に作り出された世界。 だけどミライユさんのみに向けて効果を発する魔法じゃない。 ここは現世とは違う世界……過去と、死者の魂と、相見える事の出来る世界。 相見える事が、出来てしまう世界。 『あーあ、またやっちゃったね』 森の奥、木々の隙間から、黒い影が私を見ていた。 魔術師のローブのようにも、神父服のようにも見えるあの衣装は……私の家に伝わる交神の礼装。 『お姉ちゃん』 私の弟が、私の代わりに着せられていた礼装だ。 これは……私の幻覚?それとも……。 『また失敗した。また、死なせちゃったんだ』 違う。私は、私に出来る事を。 『出来ない事が、出来ないまま終わっちゃった。でしょ? あの時もっと綺麗に手首を切り落とせていれば、指環を奪ってそのまま戦いを終えられたかもしれないのに。 お姉ちゃんがもっと深くその人の心を抉っていれば、逆上なんてさせずに、戦いすら避けられたかもしれないのに』 私は……何も言えない。 人が死んだんだ。仕方ないなんて言えない。 私には才能がないなんて、言い訳にもならない。 『まぁ、仕方ないよね。お姉ちゃんには才能がないんだもん。 交神術の才能もなければ、レンジャーとしての才能もない。 だから僕もその人も死んじゃった』 やめて、お願い、やめて。 弟はそんな事言わなかった。 私は、才能はなかったけど、それでも弟とは家族だった……はずなんだ。だから、 『だからこれは、自分の罪悪感が産んだ幻覚?違う、違うよ。お姉ちゃん。 僕は確かにここにいるんだ。いつだってお姉ちゃんの傍にいる。大好きだったお姉ちゃんの傍にね』 だったら、なんで。 『こんな事を言うのかって?それは……教えられないよ。自分で気づかなきゃ、意味が無いんだ』 ……夢の森が、消えた。 弟の気配はもう、感じない。 呼吸を整えてミライユさんをみると……彼女はもう、息絶えていた。 その双眸に右手を被せ、瞼を閉じさせる。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/241
242: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:39:51.94 ID:VysKKKrJ 「……死は苦しきものなれど、汝の罪は我が刃が断ち切った。汝を迎えるは安らぎなり。眠れ、安らかに」 ……これはアサシン達に伝わる祝詞。 今でこそただの殺し屋集団と捉えられがちだけど、彼らは元々、神に仕え、平和の為に戦う戦士達だった。 その掲げる平和は、世の大勢とは少し違っていたかもしれないけど……。 彼らにとって殺める事は救いであり、殺めた者への敬意も、ちゃんと持っていた。 なんて、ただの綺麗事かもしれないけど。 私がただ、辛い気持ちを紛らわせたいだけかもしれないけど。 少なくとも、それだけじゃないんだ。それだけは、本当の本当。 だから……どうか、安らかに。ミライユさん。 >「……ありがとよ、ラテ。帰ったらおごるぜ」 私は、人を殺しただけだ。礼なんて言わないで下さい。 私は、本当にこれで良かったのかも分かっていないのに。 「……私、結構よく食べますよ。ミライユさんほどじゃ、ないですけど」 やめろ。そんな事言っていい訳がない。思う事すら、本当なら許されない事だ。 それは私にミライユさんの最期を委ねてくれたジャンさんと、 きっと助けようとして、それでも引き下がってくれたティターニアさんへの、 そしてなによりミライユさんへの侮辱だ。 「でも……ごめんなさい。もう少しだけ、このまま……」 肩に置かれたジャンさんの手を取り、頬を寄せ、目を閉じる。 私は、今の自分も嫌いじゃないけど……やっぱり、リアリストになりたい。 ……でないとこういう時に、辛くて、悔しくて、悲しすぎる。 だけど、いつまでも沈んだ気持ちでいる訳にはいかない。 切り替えろ。そういう訓練も、積んできただろう。 ジャンさんの手を離し、両手で頬を強く張る。 「よし……もう大丈夫です。私達は、勝ったんだ。戦利品を、拝借しに行きましょう」 振り返り、ジャンさんに笑いかけ……そこで気付いた。 「と……私は先に『解呪』をしないと」 私まだネズミ面のまんまだ。 一応いつも通りの顔を【ファントム】で被せてあるから、ドン引きするような光景にはなってなかったはずだけど。 宝箱からポーション瓶を取り出す。 中で揺れている赤い液体は……事前に用意しておいた私の血液だ。 これを飲む事で、魔物に近づいた体にもう一度、人間としての自分を上塗りする。 そんなんで大丈夫なのって思うかもしれないけど、まぁ大丈夫じゃないよね。 多分何度も何度も繰り返してたら、その内、元に戻れなくなる。 だからなるべくあの奥の手は使いたくなかった。 ……でもそれじゃ生き残る事もままならないほど私が弱いのが悲しい所。 とりあえず、はい、鼻を摘んで、ぐびー……うげえ、自分の血でも不味いもんは不味い……。 これで後は、体が元に戻るのを祈るだけです。 じゃ、私も色々漁りに行こっかなぁ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/242
243: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:40:13.72 ID:VysKKKrJ あのおじさんの死体、確かこっちの方に投げ飛ばされてたよね。 えっと……あった。 私は短刀を取り出すと、おじさんの殆ど残ってない髪を一束、切り取った。 比較的長い部分を使って、長さを整えた束を結ぶ。 いや、なんか、すみません……。 ともあれ今度は短刀で、地面に散りばめられてる宝石の中から、色の淡い物を抉り出す。 おじさんの遺髪と、小さな宝石。 私はその二つのマナの流れを読み取り、解きほぐし……撚り合わせる。 アイテム合成って色々とやり方があるけど、マナの流れを読む訓練を積んだ私はこのやり方が一番楽かな。 こうする事で、二つの異なる物体を、一つに混ぜ合わせる事が出来る。 これで、よし。 後は戦いの余波で折れちゃったおじさんの刀を拾って……あの姉妹達へ振り返る。 丁度、二人もおじさんの傍に近寄ってきていた。 「……これ、余計なお世話じゃなければ……なんだけど」 遺髪という概念が獣人にあるのか分からないから、少し戸惑い気味に、おじさんの髪を封じた宝石を差し出す。 いや、遺髪や遺骨を封じたブローチって私の故郷じゃお守りとしてよく作られてたんですよ。 え、あれ?これ地方特有の不気味な風習だったりしないよね!? 「……おじさん、今頃複雑な気持ちかもね。髪が薄くなってきてる事、気にしてたから。でも、ありがとう」 あ、良かった!とりあえず妹ちゃんが受け取ってくれた……。 「あと、この刀も……これ折れちゃってるけど、凄い名刀だよ。 復元は無理でも、形を整えれば短刀としては使える筈だから……」 いや、これはホントとんでもない刀だよ。 銘は見てないけど、折れてしまってもなお、凄まじい魔力の迸りを感じる。 その迸りに応じて踊る刃紋はまるで無限に燃え広がる炎のようで……うぅ、トレジャーハンターとしての眼が奪われる。 多分折れた刃先の方だけでも、ちょっとしたお家が買えちゃうんじゃないのか。 「……お前さ、欲しいのか?これ」 お姉さんが、受け取った刀の刃先の方を見せて、そう尋ねた。 ……ちょっとジロジロ見すぎたかな。 「す、すみません。ちょっと不躾でしたね。ただ本当に凄い刀だなって……」 「……欲しけりゃ、やるよ。私も二刀流なんて使えないし、ホロカは剣は苦手だしな」 「あ、いや、だから違うんですって……それは故人の形見ですし、赤の他人の私が貰う訳には……」 待って、剥き出しの刃をこっちに押し付けようとしないで怖い。 これもしかして怒ってたりする……? 「……お姉ちゃんも、聞こえてたんですよ。赤の他人の為にあれだけ怒ってくれた、ラテさんの声が」 ……それも、結局裏目に出ちゃったんだけどね。 どうやら妹ちゃんの言葉は図星のようで、お姉さんは私にそっぽを向いて、ただ刃先を突きつけて……いやだから怖いです! でも……くれるって言うなら、受け取っておこう。 私は、弱いんだ。才能もない。 だから……魔物だって自分の血肉にするし、他人の形見だって、くれると言うなら、受け取らなくてどうするんだ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/243
244: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:40:35.86 ID:VysKKKrJ 「……じゃあ、お言葉に甘えて」 折れた刃先を受け取り……改めてその魔力を肌で感じ、思わず怯む。 ……これがあれば、次は、失敗せずに済むのかな。 いや、だめだ! さっき気持ちを切り替えたばかりなのにまた陰鬱な感じに戻りつつある! 「……うん、ありがとう!この刀、絶対に上手く使ってみせるから! じゃあそろそろトレジャーハンターとしての本能が抑えきれないので……またねっ!」 私は二人に背を向け、宝探しを始めた。 この古代都市を構成する鉱物も、一面に散りばめられた宝石も、持ち帰れば相当な額になるに違いない! 上手く加工すれば便利なマジックアイテムにもなるだろうし……。 いや、そもそも古代文明の作り出したアレコレがここには眠ってるはず!他にも持ち帰れるだけ、持ち帰らなきゃ! そして…… 「私はもっともっと、強くなってやるんだー!」 今度こそ、気持ちを切り替える為に、私は大声でそう叫んでみた。 ………さて。 正直な話をすればですね。 これほどの規模の遺跡に辿り着いた以上、ここらにキャンプを仮設して一週間、いや一ヶ月くらいは滞在して探索したいんです。 でもジャンさんティターニアさん、それにテッラさんを見るにどうもそういう雰囲気じゃないっぽい。 これ多分あと十分もしない内にここを離れる羽目になって、そのまま戻ってこれない奴だ。 いやだー、テッラさんお願い今晩お家に泊めて。夕飯はオオネズミのお肉でも食べるから。 ……なんて冗談は置いといて。 私は皆と合流して、テッラさんを見上げた。 >「我々に怒りを燃やすのも無理からぬこと。しかし今は聞いてください >「指環の、魔女……!」 あっ、これ私が話聞いてても半分も理解出来ない奴だ。 うえーん、ウェントゥスって誰だよぉ……。 ジャンさんティターニアさんは優しいけど流石にこの状況で教えて教えてとは出来ないです……。 >「残念ながら時間が無いようです。炎の指環を持った者がここに近づいてくる……」 テッラさんの翼がふわりと円を描くと、その下の地面に魔法陣が現れる。 これで、この古代都市ともお別れかぁ……。 「くっくっ」 なんて考えてたら、噛み殺すような笑い声が聞こえた。 「おぉ、すまんすまん。つい、思い出し笑いをしてしまった」 振り向いたその先には……魔狼、フェンリル。 「そこに埋まっている傀儡の如き女を思い出すと、どうにも愉快で愉快で、なぁ?」 瞬間、私は掻き消したはずの怒りの炎が、再び燃え上がるのを感じた。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/244
245: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:41:11.87 ID:VysKKKrJ 「我は初めから、指環を手にする術を述べておったと言うのに。 指環を手にするべきは、世界を変え得る者だと。 その悪魔紛いの半端者がそうしたように、自ら指環を嵌めれば、それだけでよかったものを」 フェンリルは濁った嘲りと愉悦を浮かべた眼で、私達を見下ろしていた。 まるで、私達を……いや、この眼は、私を捉えていない。 これは……ジャンさんと、ティターニアさんを、挑発しているのか? 「実に愚か……いや、愚かと言うも愚かよな。 運命に流されるだけの傀儡と、その傀儡師風情の指に、竜の指輪が巡り合うものか。 指環の勇者の名が、似合うものかよ」 一体なんの為に……いや、理由なんかどうでもいい。 ミライユさんはそりゃ敵だったけど。 「……無駄死にだな」 そんな舐めた笑みを浮かべて!あの人の死を踏み躙られて! 大人しくしていられるほど私は賢くな…… 「粋がるな」 たった一言、たった一睨み。 ……ただそれだけで、私は死を感じるほどに威圧されていた。 体の震えが、冷や汗が止まらない……。 「貴様は所詮、指環を巡る舞台に迷い込んだ小鼠……精々踏み潰されぬよう、逃げ惑っていろ」 フェンリルはその眼光の矛先を、ジャンさん達へ戻す。 「貴様らは、傀儡よりかは幾分マシなようだが……まだ、それだけだ。我は認めぬぞ」 そして世界をも噛み砕くと謳われた魔狼の牙が、剥き出しになる。 やれるのか……?いくら、ジャンさん達は強い。だけどそれでも、さっきの今の連戦で! 「……もう、やめましょう。フェンリル。その気持ちだけで、私は十分に嬉しい」 ……テッラさんが、片翼でフェンリルを抱き締めるように包み込んだ。 フェンリルはそれを……振り払わない。 「あなたと過ごした、果てしない年月は……時にはあなたの苛烈さに手を焼く事もありましたが。 おおむね、安らかで、居心地のよい時でしたよ。 どうか最期まで、私に居心地のよい時を過ごさせて下さい」 ……指環を巡る舞台に立てていない私には、彼らが何を言っているのかは、完全には分からない。 だけど……なんとなくだけど、分かる事もある。 テッラさんは、このままだと死んでしまうんだ。 だからフェンリルは……私達を、ジャンさん達をここに引き留めようとした。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/245
246: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:41:32.40 ID:VysKKKrJ 「……行け。指環の、勇者達よ」 それは絞り出すような声だった。 ……魔狼、フェンリル。 今でも童話やおとぎ話では、その存在は恐ろしいものとして扱われる。 だけど神話を少し読んでみれば、彼がそんなにも邪悪な存在ではないとすぐに分かる。 彼は生まれた時からこんなに大きかった訳じゃない。初めは、普通の狼と変わらなかった。 だけどその成長は止まらず、巨大になり続け、果てには世界を滅ぼすと予言されてしまった。 神々は彼を二度捕縛しようとして、失敗した。 そして三度目……神々はこう言った。 もし我々のこしらえた綱を千切れないのならば、神々の脅威にはなり得ないから、もうお前を襲う事はない、と。 フェンリルはとある条件付きとは言えその言葉を信じて……そのまま最終戦争の時が来るまで、縛り続けられた。 フェンリルが神々の言葉を信じたのは、己の力に驕っていたからなのか。 それとも己を縛ろうと神々が幾度となく襲い来るだろう日々に嫌気が差したのか。 初めてこの話を読んだ時、多分、違うと思った。 そして今、違ったんだと確信した。 彼はきっと、恐れられたくなかったんだ。 自分が脅威ではないと証明して、誰かと関わりを持ちたかった。 そしてようやくこの場所で、それを手に入れた……はずだったんだ。 「……帰ったら、色々教えて下さいよ。指環の事」 転移の魔法陣の光りに包まれながら、ジャンさんの服の裾を引っ張って、そう呟いた。 フェンリルは私にこう言った。 お前は舞台に立てていない。迷い込んだだけだ、と。 私はそれが堪らなく悔しい。 もし、この指輪を巡る舞台の上で、また誰かの命が奪われるのなら。 役者にすらなれていない私が、それを救える訳がないんだから。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/246
247: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:47:14.70 ID:VysKKKrJ 「……その指環を、我らから、我が許から、持ち去ろうと言うのだ。もし下らぬ結末を迎えてみろ」 フェンリルの声が聞こえる。直後に私達の周囲を奔る、白い残影。 魔法陣の周りが、まるで深い谷のように抉り取られていた。 「この世界の何処にいても、その心の臓に、この牙、食い込ませてくれるぞ」 ……さようなら、テッラさん。フェンリル。タイザンさんも。そして……ミライユさん。 【かつて予言されし世界の滅び、フェンリルをカッコよく書きたいだけの1ターンだった……】 ふぅ、冒険も一段落したし……久しぶりにのんびり余白に落書きでもしよっかな。 今回の内容は……うん、古代都市での収穫物かな! トレジャーハンターの仕事が上手く行って、しかもギルドへの上納も必要なかったら、どれほどの儲けになるのか……。 みんなも気になるでしょ? という訳で、まずは街中を彩っていた鉱物や宝石から。 鉱物はこれちょっと売るのがめんどくさいんだよねー。普通に売ってもなんか珍しいね、で済まされちゃうんだよ。 だから今だったらユグドラシアに持ち込んでみたり、武具職人さんに頼んで立派な武具にするとか。 そういう手間をかけるかどうかで天と地ほど値段が変わっちゃうの。 武具にするなら自分好みの感じに作ってもらってそのまま使っちゃうのもいいね。 宝石は……いいよね!軽くてちっちゃくて高い!全てのトレジャーハンターの恋人……! 大抵の宝石は魔力を秘めてるから、マジックアイテムにしても役に立つ事間違いなし。 お次は……収穫物じゃないけど、こちら【秘刀カムイ】です! 銘はシュマリちゃんホロカちゃんにあの後聞きました! 私は折れた刃先の方を貰ったので、根本にスライムの濃縮粘液を塗って皮を巻いて短刀っぽく仕上げてみた。 こっそり宿屋の屋上に登って空に向かって振ってみたら、一瞬昼間かと見紛うほど眩い炎の刃が飛び出てびっくり。 火事か放火かと騒ぎになって、憲兵さん達にとっ捕まらない内に逃げ出す羽目になりました。 いや、カムイって名前の時点である程度は予想してたんだけど、まさかこれほどとは……。 カムイってのは多分、和国の言葉である『神威』。神様のもたらす破壊、その威力とかそんな意味。 この無限に燃え広がるような波紋は、山一つ丸ごと焼き尽くしてしまうような、神の火を模しているんだ。 折れてしまった刃先でこれなんだから、折れる前はもっと広くを薙ぎ払えたんだろうなぁ。 それは集団戦において単純に強いし、一対一においても届かないはずの刀から炎の刃が伸び来たる、必殺剣として使えたはず。 ……ミライユさんの空間魔法とは、組めば相性抜群だったろう。危ないところだった……。 後は……こちら。この薄っぺらい土色の何か……。これ多分、テッラさんの、大地の竜の飛膜だと思うんだよね。 最初あの古代都市に着いた時、二匹はかなりやり合ってたけど、きっとアレは完全な演技って訳でもなかったんだ。 周囲には血や、皮や肉片が飛び散っていた。その中から見つけてきたのがこれ。 見た目は土と血で汚れたマントのようだけど、マナを感じ取れる人間なら分かるはずだ。 凄まじいほどの、大地の持つ守りの力と、引きちぎられてもなお滾る竜の生命力が。 ただこれ、めちゃくちゃ重い……私じゃマントみたいに羽織るのは無理かな。多分圧死するんじゃないかってくらい重いの……。 今度ジャンさんにいるか聞いてみよう。売っちゃうのは、なんか違う気がする。 最後に……この、ちょっとした剣よりも長い牙。言うまでもなくフェンリルの牙だと思う。 その鋭さや恐ろしいもので。持ち上げた後、涎と血で手が滑って落っことしたらそのまま地面に突き刺さった。 上手く加工すればめちゃくちゃすごい武具になりそうなんだけど、そもそも硬すぎて加工出来るのか、これ。 まぁ……上手くアイテムとして使えなくてもいいんだけどね。 これらは古代都市の、彼らの思い出として、どんなお宝よりも価値があるんだ。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/247
248: ◆ejIZLl01yY [sage] 2017/01/29(日) 04:48:05.11 ID:VysKKKrJ 【ミライユさんお疲れ様でした。 確かにリアクションが難しいなと思うシーンもありましたが だからこそ頭を捻ってどう動くか考えるのは結構楽しかったです。 NPCを出したり、色々キャラの伏線を張るなら、もしかしたら味方として参加した方が良かったかもしれませんね。 ……と言うより、参加して欲しかったなと言うのが、終わってからの私の気持ちになります。 仲間としてミライユさんとお喋りするのは、きっと楽しかったのではないかと、思ってしまいます。 それではまたいつか、どこかのスレで、お会いいたしましょう】 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/248
249: ノーキン&ケイジィ ◆xMlzBZPYec [sage] 2017/01/30(月) 05:18:34.79 ID:oIKoGK93 トリップテスト http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/249
250: 創る名無しに見る名無し [sage] 2017/01/30(月) 08:42:02.77 ID:ljciiA5V >>249 無理そうやな 参加するかしないか、早いうちに宣言した方がいい あとジャンはもう書き込んでもええで http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/250
251: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/30(月) 21:34:47.70 ID:SrnXSExw >「でも……ごめんなさい。もう少しだけ、このまま……」 「……戦うのは慣れてても、ヒト相手は初めてだったか。 そりゃ最後まで止めようとするよな……」 静かに頬を寄せるラテの姿は、ネズミの毛に覆われているとはいえ華奢だ。 魔物を狩るのには慣れていただろうが、初めての殺人は肩に重くのしかかるだろう。 ジャンも旅を始めた頃、身を守るためとはいえ初めて野盗を殺してしまったときも 手にこびりついた血が取れない錯覚にとらわれたのだから。 >「よし……もう大丈夫です。私達は、勝ったんだ。戦利品を、拝借しに行きましょう」 だが、ラテはジャンが思うより心の強い人間だったようだ。 両手で頬を強く張り、その動作を軸にして気持ちの切り替えを行う。 そうしてこちらに振り返り、いつものにこやかな笑みを見せてくれた。 >「と……私は先に『解呪』をしないと」 「血を触媒に化けるなんざ、まるで吸血鬼みてえだな。 あいつらも血を使って色々できるって言うしよ、ダーマに行ったらあいつらから教えてもらえるんじゃねえか?」 すっかり元気を取り戻したラテと共に雑談を交わしながら まだ壊れていない家へ向かい、今回の戦利品を漁ることにした。 ラテは死んでしまったタイザンの遺品を回収するとのことで分かれ、 ジャン一人で家へと向かう。家を漁っている途中、ティターニアとラテがあの姉妹、 シュマリとホロカと話していたようだが、ジャンはあまり近づきたくはなかった。 それはミライユとの戦闘が影響していたというわけではなく、ごく単純な理由。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/251
252: ジャン ◆9FLiL83HWU [sage] 2017/01/30(月) 21:35:16.13 ID:SrnXSExw (獣人の毛って大抵俺の鼻によくねえんだよな……気を抜くと、くしゃみが出そうになっちまう) 幸いラテのネズミの毛はジャンの鼻にはひっかからなかったようだが、 もし、あの姉妹がジャンの鼻にひっかかる毛であれば…… 一緒に戦利品を回収している間、くしゃみが止まらず、力加減ができないジャンがどれだけ貴重な装飾品を うっかり壊してしまうか考えるだけで恐ろしいだろう。 「……お!これはなかなかいい壺じゃねえか。表面の銀と金細工がいい味出してるなコレ」 あの姉妹がこちらに来ないかビクビクしている内に、家の居間で両手で抱えるほど大きい壺を見つけた。 銀で作られた壺に、狼と龍をかたどった金細工が壺の表面を彩っている。 誰でも足を止め、見惚れるような作りに思わず壺を高く掲げた。 「ジャンさん……でしたか?あなたにもお礼を――」 「こりゃ高く売れそうだ、転移で飛ばされちまう前に持ってい――ぶぇっくしょっ!!」 鼻がむずむずするなと思った瞬間、居間に長年積もっていた埃が全て巻き上がるほど大きいくしゃみが出た。 その拍子に高く掲げていた壺を地面に叩きつけ、見事銀の壺は砕け散り、金細工も儚く無数の欠片となってしまう。 慌ててジャンが振り向くと、そこには例の姉妹が並んで立っていた。 「あんたも助けてくれたからな……お礼を言いに来たんだが」 「……とりあえず下がってくれねえか。お前らの歩幅で十歩ぐらい」 無性にむずむずする鼻を抑えながら二人から後ずさり、何回か小さくくしゃみを 繰り返しながら姉妹の返答を待った。 「……ありがとよ。あいつを止めてくれて」 「本当に、ありがとうございました」 ぺこり、と頭を下げる二人だが、ジャンとしては礼を言われるよりも できるだけ早くティターニアたちの方へ行ってほしかった。 「お、おう。まぁアレだよあんまり気にするな、雇い先とかそこらへんならたぶんティターニアが考えてくれただろ」 適当に姉妹に返しつつ、今のくしゃみで吹き飛んだであろう金貨の数々を思うと胸が締め付けられそうになるジャンであった。 腰の袋に入りそうな装飾品を大体回収し、全員が合流した頃。 テッラが口を開き、『指環の魔女』について語り始めた。 http://hayabusa6.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/252
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