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【腐女子カプ厨】巨雑6438【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (651レス)
【腐女子カプ厨】巨雑6438【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/
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609: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:07:26.19 d ため息をつきながらエレンはミカサが組み立てた積み木の上に最後のひとつを乗せる。 三角形の積み木を乗せれば家のような形が出来上がった。 ミカサはその周りに小さなぬいぐるみを並べる。どうやら積み木の建物が彼らの家らしい。 「どれがお父さん?」 「クマさん。それでウサギさんがお母さん」 並べたぬいぐるみを一つひとつ指さしながらミカサはエレンに家族たちを紹介していく。 それを眺めながらエレンはミカサに相槌を打っていた。 「ワンちゃんがお兄ちゃんでネコちゃんが妹」 「そうか、たくさんいるな」 「うん、みんなが寂しくないように。家族は沢山いたほうがいいから」 微笑ましく思っていたがその一言でエレンは思わず表情を曇らせる。こういう場合はどういう顔をすればいいのか、一瞬分からなかった。 「ミカサは今、寂しいのか?」 ミカサはウサギのぬいぐるみを抱きしめながら彼顔を上げた。無表情で自分を見つめるエレンにミカサは小首を傾げる。 「寂しくない。エレンもお父さんもいるから」 ぎゅっと彼女の腕に力がこもったのが分かった。寂しくなんてないわけがない。 ミカサのことをずっと見てきたエレンにはそんなことくらいすぐに分かってしまった。 ミカサは強い子だ。素直だし我儘も滅多なことでは言わない。 泣きたいこともあるのに泣こうとはしないし、自分のことよりも周りのことを常に見ているようなタイプの子供だ。 強がる必要なんてどこにもないのに。エレンは手を伸ばして再び彼女をぬいぐるみごと抱きしめた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/609
610: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:07:51.88 d 「……エレン?」 先ほどよりも強く、きつく抱きしめる彼の腕にミカサは困惑を示す。 はっ、と我に返りエレンは慌てて腕の力を緩めた。 身体を離すことはなく、腕の中にミカサを閉じ込めたままエレンは彼女の顔を覗き込む。 「そうだよな、こうやっていれば寂しくなんてないもんな」 やはりミカサだけはエレンにとって特別だった。 どうしても構ってやりたくなってしまうし、他人事として見られない。 出来ればずっと傍にいてやりたいと思う。 この保育所から巣立った後も、自分がもしもこの子と一緒に暮らせればきっと寂しい想いなんてさせない。 彼女とこうして迎えが来るまでの時間を二人きりで過ごしている間、何度もそういった想いが過っている。 しかし彼女と一緒にいたいという理由はそれだけじゃない。 ミカサと一緒に暮らしたいという理由はそんな単純なものじゃない。 さらにいえばそれは彼女には直接的には関係がなかった。 どちらかといえばエレン自身の問題ではあるし、しかもこれはミカサのことを考えたうえでのものじゃない。 むしろミカサにはさらに寂しい想いをさせるだけだろう。 新しい母親と出会わせてやることが出来なくなるのだから。 これらは万が一に、エレンが彼への想いを成就させた場合の話ではあるのだが。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/610
611: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:07:56.34 d がらっ、と扉が開く音がする。 エレンとミカサ、二人揃ってそちらのほうを見やれば一人の男がそこに立っていた。 今日は額には汗は浮かんではいない。チェックのマフラーを巻きグレーのスーツを着た男は彼らの姿を見て鋭い瞳をほんの少し和らげた。 どきり、と心臓が大きく高鳴った。ミカサよりも彼のほうへと視線が釘付けになり、外せなくなってしまう。 穏やかに見つめる視線は自分に向けられたものじゃないことは知っている。 それでも今は勘違いもしてしまいそうになる。 いや、実際してしまっていた。彼がそんな眼差しで自分を見つめているものだと思うと胸がさらに苦しくなる。 「お父さん」 ミカサは彼に向かってそう叫ぶ。その声にエレンは現実に引き戻された。 気付いた時にはミカサはぬいぐるみを手放していた。 エレンの腕から抜け出すと彼の元に向かって歩いて行く。 「お父さん」と彼女に呼ばれた男はしゃがみこんでミカサと目線を合わせる。傍まで来た彼女の頭を撫でるとミカサは嬉しそうに笑みを零した。 「遅くなって悪かったな。いい子にしていたか?」 「うん、エレンと一緒にいたからいい子にしていた」 大きく頷いたミカサに「そうか」と男はつられたように笑みを浮かべた。 人によってはそれが微笑みだとは分からない程度のものだ。しかしミカサにも、そしてエレンにもそれは彼の精一杯の笑顔だということは見て明らかだった。 ミカサに続き遅れてエレンも彼らがいる入り口のほうへと歩み寄った。手にはミカサの荷物や上着を持ち彼女の帰り支度もついでに用意してやる。 「お疲れ様です、リヴァイさん」 エレンは父親の名前を呼んだ。ミカサからエレンへと視線を移し、「ああ」と表情を変えないままに頷く。 「今日も遅くまで悪かったな」 「いいえ、これがオレの仕事ですから。気にしないでください」 エレンは答えながらミカサに上着の袖に手を通す様に促す。その姿は父親であるリヴァイよりも手慣れた様子だった。腕を広げたミカサに合わせて上着を羽織らせ、そのままボタンまで留めてやった。 「遅くなるようなことがあれば事前に連絡を頂ければ夕飯くらいまでは面倒を見ますから。いつでも連絡してくださいね」 「ああ、いつも本当にすまないな。助かる」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/611
612: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:08:21.75 d エレンがいつも最後まで残ってミカサの相手をしていることはリヴァイも知っていた。 この時間帯に残っているのは大抵エレンしかいない。 はじめはあまり話すこともなかったが、機会が増えれば自然と会話も増える。 しかもエレンは女性ではなく男性だったから余計に距離も縮まったのかもしれない。 子供を放っておいて仕事に行くなんて、という女性からの視点ではなく同じ男性として同情をしてくれるエレンにリヴァイはいくらか救われているのだというは話をリヴァイ本人から直接聞いたこともあった。 付き合いが深くなれば連絡先も交換をするし、対応に関しても贔屓とまではいかないが少し甘くもなってしまう。 リヴァイは仕事が終わってから急いで保育所までやって来てはくれるが、それでも最終の預かりの時間を過ぎてしまうことも何度かあった。 そういった時もエレンは文句も言わずにミカサの相手をしている。 事前にリヴァイから連絡を貰えば彼女と一緒に夕飯まで食べることさえもたまにあった。 本当は公私混同なんてしてはいけないことなのだが、エレンはリヴァイに対して甘かった。彼だけは特別だ。 ミカサだけではなく……――いや、ミカサがリヴァイの子供だからこそ彼女まで特別扱いしてしまう。 「寂しくなかったか?ミカサ」 上着を着せ終え鞄を背負ったミカサにリヴァイはエレンと同じ質問を問いかけた。差し出された大きな手を握り、ミカサは大きく頷いた。 「エレンがいたから大丈夫。お父さんが来るまでちゃんと待っていた」 「そうか。それならいい。いい子にしていたご褒美に今日はハンバーグでも食うか?」 「!!うん、お父さんと一緒に食べたい!!」 リヴァイの前ではミカサも一人の子供だ。 いくらエレンが好きだと言っていてもやはり態度は大きく違う。 ミカサが感情をここまで素直に表せるのはリヴァイの前だけだ。 二人の姿を見守りながらエレンは自然と笑みを浮かべている。 「それじゃあ、エレン。また明日」 「ええ、また明日。おやすみなさい」 「おやすみ、エレン。また明日」 ひらひらと小さく手を振るミカサに手を振り返しながらエレンは二人の姿を見送った。手を揺らしながら二人は寒空の下を歩いていく。 リヴァイの手を小さな手のひらで握っているミカサの姿にエレンはほっと胸を撫でおろした。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/612
613: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:08:26.19 d 同時に抱くのはやはりミカサに対しての罪悪感だった。 彼女の父親のことを父親として見ることをしていない。 一人の男として意識をしている。 その為にミカサのことも多少なりとも利用していた。 悪いとも思うしいけないことだともちろん自覚はしている。 でもそれを止められない自分がいることもまた事実だ。人として最悪だ、エレンは彼らの姿を見送る度に自分を蔑んだ。 幼いミカサは恐らく気付いてはいないはずだ。 エレンが自分の父親のリヴァイに恋情を抱いていることを、まだ彼女は知らない。 エレンはゲイだ。 いつから、という明確な時期はない。 中学に入学し、周囲の友人たちがグラビアアイドルの際どい写真やクラスメイトの可愛い子の噂話などで盛り上がっていたがエレンは大して興味がなかった。 しいていうなら隣のクラスの同級生が気になる程度だったが、それは女子ではなくて男子生徒だった。 その頃はただの憧れに似た感情だと思っていた。 クラスは違ったが彼とは仲が良く、顔を合わせば話をするくらいだった。 彼はあまりよく喋るようなタイプの人間ではなかったが頭もよく誰に対しても優しかった。 自分にないものを沢山持っていたから憧れていたんだろうとはじめは思っていたが、実際は全く違った。 そのことに気が付いたのは二年目の夏休みが終わった後、彼に初めての彼女が出来てからだ。 突然心の中に出来た大きな空洞にエレンは驚き、その日はよく眠れなかったことを覚えている。 日が経つにつれてそれは「空虚」だということに気付き、自分が彼を必要以上に欲していたことに気が付いた。自分は彼に憧れていたんじゃない。 彼を欲していたんだ。 その気持ちに気が付いてもどうすることも出来なかった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/613
614: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:08:51.92 d むしろさらに愛おしいと思う。友人たちが可愛い女性に欲情するように、エレンも好きになった男に同じように欲情をした。その頃辺りからだろうか。 周囲のことをそれほど気にすることがなくなったのは。さすがに自分の性癖を簡単に打ち明けることは出来なかったが、昔よりはまだマシだ。 自分は男が好きだ。男しか好きになれないとはっきりと受け入れてしまうとこれまで悩んでいたことが少し馬鹿らしくも思えた。 だからエレンは生まれてから一度も女性を抱いたことはない。 これから先も間違ってもそんな気は起らない。だから結婚もしないし子供を授かることもないだろう。 両親には申し訳ないと思うが自分の気持ちも変えられない。 でも子供は好きだったからなるべく彼らと接することが出来る職業に就きたいと思った。 そしてエレンは保育士を志し晴れてその夢を叶えることが出来て今に至っている。 やりがいのある仕事だし飽きも来ない。そして何よりも子供たちと過ごす毎日は楽しく、自分が後ろめたさを感じながら生きていることを忘れさせてくれた。 ちょうど社会人になってから恋人とは上手くいかないようになっていた。新しい恋人が出来て短い付き合いばかりだ。 そんなことを馬鹿みたいに何回も繰り返していくうちに、次第に付き合い自体が面倒になって身体だけの関係を重ねるようになっていた。 週末には夜に行きつけのバーに通ってその夜の相手を探すことだってあった。 体中が空っぽになって何をやっても満たされない。自分は一生このままなんだろうと思っていた。 リヴァイがミカサを連れて保育所へやって来たのは。 小さな女の子の手を引いてやって来たその父親の姿に、エレンは目を奪われた。 「おはよう、エレン」 翌朝、いつものようにリヴァイはミカサの手を引いて保育所にやって来た。 入り口に立ってやって来た子供たちを出迎えていたエレンは二人の姿を見るや否や満面の笑みを浮かべる。 「おはようございますリヴァイさん。それにミカサも」 にっこりと笑いながら彼女を見下ろすとミカサも嬉しそうに笑った。 滅多なことで笑わない子だったがエレンが相手をすると別だ。彼にだけは特別、彼女は笑うことが多い。 リヴァイ曰く、自分と一緒に家にいる時よりもエレンといる時のほうがいい笑顔をしているらしい。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/614
615: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:08:55.82 d 「おはよう、エレン」 「だからエレン先生だって。あと『おはよう』じゃなくて『おはようございます』だろ?ほら、ちゃんと言って」 昨日は許してくれたが今朝はそうはいかなかった。 ちゃんと言えるまでここを通さないと仁王立ちをして立ちふさがる。 腕を組んでわざと怖い顔をするエレンに、さすがのミカサも怖気づいてしまう。 「う」と声を漏らして思わずリヴァイの手を強く握った。 「どうしよう」とリヴァイに助けを求めたが彼もエレンと同じような顔をしていた。 残念ながらミカサを助けることはなくただ首を振るだけだ。 「おはようございます。エレン、先生。」 「よし、えらいぞ。よく出来ました」 渋々彼女は言う通りにはしたが、またすぐにエレンと呼ぶのだろう。 不貞腐れる彼女の頭に手を置き、ぽんぽんと軽く叩いて褒めてやる。 するとすぐにまた表情を明るくし、機嫌を良くした。 よくよく見ればミカサの鼻先はや頬は少し赤くなっていた。 寒そうにマフラーに顔を埋めているし、昨日はつけていなかった白い耳当てまで付けている。 これは多分リヴァイに付けられたんだろう。 昨日に比べれば確かに今朝は冷えていた。 夜中に雨が降ったおかげで濡れたコンクリートが冷えて一部は凍って滑りやすくなっている場所もある。 「今日は寒いな。早く中に入って温かくしろよ?」 部屋の中は朝からストーブをつけているので暖かいはずだ。 これ以上ここにいると風邪を引いてしまうかもしれない。 頭に置いた手をもう一度ぽんとまた一つ叩いた。エレンの言葉にミカサは素直に頷く。 「お父さん、行ってくるね」 リヴァイと繋いでいた手を呆気なく手放して、入り口まで走っていってしまった。 最後に建物に入る前に一度二人のほうを振り向き「お父さんいってらっしゃい」とだけ言うとミカサはすぐに中に引っ込んでしまう。 ミカサぐらいの年の子でもまだ母親から離れられない子供も中にはいる。 ここまで手を引かれてやって来てもいざ保育所の中に入ろうとすると・嫌がって泣いてしまう光景を目にするのは割と日常茶飯事のことだ。 あの歳でもういくつかのことはしっかりと割り切っているようで、リヴァイと離れることもあまり寂しがっている様子を見せたことはなかった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/615
616: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:09:22.56 d 今朝のリヴァイは黒いコートを羽織っていた。 それと同色の手袋をしながらミカサと同じようにマフラーに顔を埋めている。恐らくミカサもああやって寒さをしのいでいたのは、リヴァイの格好を真似ているからだろう。 親子で似た仕草をしている彼らを微笑ましく思い口元が緩んでしまう。 「偉いのはお前のほうだろう。よくもまあチビをあんな簡単に手なずけるな」 リヴァイは感心した様子で息をつく。吐き出した吐息は白くふわりと舞った。 「それが仕事ですから。でもミカサはすごく楽なほうですよ。ちゃんと良い子にしてくれますから」 「……そうか、ならよかった」 ほっ、としたのだろう。瞬間、表情を綻ばせたリヴァイにエレンは目ざとく気が付いてしまった。 「あ、」と思った時にはもう遅かった。彼の表情から目を離すことが出来なくなってしまう。 綺麗だ、と思ってしまった。男なのに。いや、男だからそう思ってしまうんだろう。 目じりに少し皺を浮かべて笑ったリヴァイは父親の顔をしているのに。自分だけが彼だけを「そういう対象」で見つめてしまっている。 「どうした?」 あまりにも食い入るように見つめていたエレンにリヴァイは少し怪訝そうに眉を潜ませていた。 エレンは慌てて首を振り「な、なんでもありません」としどろもどろになりながら答える。 しかしリヴァイの視線は外れることはなかった。むしろその眼差しはきつくなり、エレンに突き刺さるように鋭いものになっていく。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/616
617: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:09:26.48 d 今朝のリヴァイは黒いコートを羽織っていた。 それと同色の手袋をしながらミカサと同じようにマフラーに顔を埋めている。 恐らくミカサもああやって寒さをしのいでいたのは、リヴァイの格好を真似ているからだろう。 親子で似た仕草をしている彼らを微笑ましく思い口元が緩んでしまう。 「偉いのはお前のほうだろう。よくもまあチビをあんな簡単に手なずけるな」 リヴァイは感心した様子で息をつく。吐き出した吐息は白くふわりと舞った。 「それが仕事ですから。でもミカサはすごく楽なほうですよ。ちゃんと良い子にしてくれますから」 「……そうか、ならよかった」 ほっ、としたのだろう。 瞬間、表情を綻ばせたリヴァイにエレンは目ざとく気が付いてしまった。 「あ、」と思った時にはもう遅かった。彼の表情から目を離すことが出来なくなってしまう。 綺麗だ、と思ってしまった。男なのに。いや、男だからそう思ってしまうんだろう。 目じりに少し皺を浮かべて笑ったリヴァイは父親の顔をしているのに。 自分だけが彼だけを「そういう対象」で見つめてしまっている。 「どうした?」 あまりにも食い入るように見つめていたエレンにリヴァイは少し怪訝そうに眉を潜ませていた。 エレンは慌てて首を振り「な、なんでもありません」としどろもどろになりながら答える。 しかしリヴァイの視線は外れることはなかった。 むしろその眼差しはきつくなり、エレンに突き刺さるように鋭いものになっていく。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/617
618: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:09:55.41 d そして何を思ったのか、リヴァイは唐突にエレンへ向けて手を伸ばしてきた。 手袋をしたままの黒い手がずい、と急に近づいてくる。 「うわっ、」 思わずエレンは声をあげて目を閉じる。殴られる、と咄嗟に身構えたがそんなことはなかった。 むしろ感じられたのは柔らかくて温かな感触だった。但し布越しではあったが。 しかしリヴァイの手のひらの温もりであったり、ある程度の感触はなんとなくそれでも伝わってくる。 エレンの前髪を少しあげてリヴァイは彼の額に自分の手を置いていた。 「熱があるってわけでもないみたいだな」 「あ、ありませんよ、そんなの!!」 少し声を荒げながらリヴァイの手をエレンは振り払った。 エレンの心臓はばくばくと五月蠅い。それを服の上からぎゅっと押さえつけるように左胸を押さえながらとりあえず落ち着こうと何度も大きく深呼吸を繰り返す。 「顔が赤いからてっきり熱があるのかと思ったんだが……」「違いますよ、大丈夫です。体調が悪かったらそもそもここにはいませんから」 幸いなことにリヴァイは挙動不審なエレンの様子をおかしなものだとは思ってはいないようだ。 離された手は再びエレンの元へと伸びることはなく大人しくリヴァイのコートのポケットの中へと戻される。 気遣われたのは嬉しいが気付いてくれないのはやはり少し寂しいと思う。こんな気持ちは自分の我儘だ。 「お前がいなかったら寂しいな」 「え?」 自分勝手な感情だと思っているから、ある程度は抑制しなければいけないとも思っていた。 なるべくそれを抑え込んで表に出てこないように押し殺してしまおうと、そう考えているのにこの男はその意図をこうやっていとも簡単に壊していく。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/618
619: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:09:59.44 d 「そりゃあミカサは寂しがるでしょうね。オレによく懐いていますから」 「まあ、そうだな。あいつもそう思うだろうしそれに俺も寂しいと思うんだがな」 ほら、そうやってまた好き勝手に振り回して。 こちらがどんな気持ちを抱いているかなんて知らない癖に。 毎晩貴方のことを思ってベッドに寝転がった後に、どんなことをしているかなんてことも、全部、全部知らない癖によくもまあそういうことを言うものだ。 呆れるところではあるが、リヴァイを手前にした以上浮かび上がっている感情はやはり彼への好意とこれからの関係の期待だった。 しかしいずれの感情にせよ、愛情は結ばれることはないし関係が発展しないことなんて目に見えて分かっているのだが。 「冗談言わないで下さいよ。オレに会わなかったら寂しいだなんて」 本気にしてしまいたくない。 いちいち真に捉えていたら自分の身も心も持たないなんてことはよく分かっている。 分かっているのだが頭はそうはいかなかった。 「冗談なんかじゃない」 リヴァイはエレンが目の前でここまで葛藤を繰り広げていることを知らない。 素知らぬふりをしているようにも見える彼の顔が憎らしくも思えてきた。 もしも自分の気持ちが、今の瞬間にすべて伝わってしまったらリヴァイは軽蔑するだろうか。 綺麗な彼の顔がぐちゃぐちゃに歪んで、もう自分のほうを見てはくれなくなるかもしれない。 「お前がいると落ち着くんだよ。それにミカサのことも色々と任せられる……ここで一番安心して頼れるのはお前なんだよ、エレン」 頭の中で何かが崩れていく。 自分が必死になって隠そうとしていた感情が身体の中から溢れ出して止められない。 胸が苦しい。息もまともにできなくて、また熱があるわけでもないのに顔中が熱くなって頬が赤らんでくる。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/619
620: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:10:33.33 d 「お前はミカサだけじゃなくて俺の話もよく聞いてくれるからな。助かっているんだ、お前がいると。癒し系ってやつだな」 「っ、……それ、褒めてますか?」 「褒めているだろう?嫌っていうくらいに」 リヴァイは肩を竦めて首を傾げる。なんて性質の悪い人なんだろうか。これを無自覚で行っているのだから怖い。 前の奥さんも自分と同じようにこうやって彼の無自覚に惹かれて好きになったんだろうか。はああ、とエレンは大きくため息をついて頭を抱えていた。 リヴァイはエレンを気にすることなく、腕時計で時間を確認している。そういえば今日はいつもよりも長話をしているが仕事には間に合うのだろうか。 帰りが遅い分リヴァイとミカサは時間に余裕を持ってやってくる。エレンが門の前で出迎えれば今のように少し話をしてから出社することもあるが、今日はそれがやけに長いように感じた。 「それじゃあ、今日もミカサをよろしく」 やはりタイムリミットは来てしまったらしい。残念だがここまでだ。これ以上心臓を押し潰されなくても済むと分かり、エレンは胸を撫でおろした。 「分かりました。気を付けて、こちらは気にしないでください」 顔を引き締めたエレンがにっこりと笑うとリヴァイは眉尻をほんの少し下げて、申し訳なさそうに頭を下げる。 「ミカサのことは気にしなくていい」という意味合いと「迎えの時間も気にしなくてもいい」という意味はしっかりとリヴァイに伝わっていたらしい。 どうせ今日もエレンが最後まで残るのだ。ミカサの面倒はいつも通り見てやるつもりだし、リヴァイのこともずっと待ち続けているつもりだ。自分だってもう一度、リヴァイと会いたいのだから。 「何かあったら連絡ください、大丈夫ですから。ほら、早く行かないと遅刻しちゃいますよ?」 先ほどのミカサと同じようにリヴァイの肩も押してやる。 鞄を持ち直しリヴァイはマフラーで口元を隠しながら双瞳に弧を描いた。どきり、とまたエレンの心は乱される。 「ああ、分かってる」 片手を軽く上げて駅までリヴァイは歩き出した。その歩みはどこか早足ですぐに彼の姿は小さくなっていく。 エレンは昨日と同じようにリヴァイの姿が見えなくなるまで、ずっと見守っていた。 寒さのせいではなく赤くなってしまった頬を隠さないままに。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/620
621: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:10:37.33 d リヴァイと顔を合わせたのは次の月曜日だった。 「おはよう、エレン」 「おはようございます」 なんとなく気まずくて目を逸らしそうにもなる。無理矢理浮かべた笑顔がぎこちない。しかし首を傾げたのはミカサだけでリヴァイは特に気にしている様子もなかった。 「今日も寒いな」 「ええ、本当に」 白い息を吐きながら思わず空を仰ぐ。冷え切った空気と分厚い雲が流れる空に嫌でも冬の気配を感じてしまう。 今日はもしかしたら雪が降るかもしれない。朝の天気予報ではそんなことも言っていた。 リヴァイの格好は普段と変わりはなかった。マフラーを首元に巻いて口元は少し隠れている。 「風邪を引くなよ」 「大丈夫ですよ、オレそういうのは強いほうなんで」 ミカサの背を押し先に教室へ入るように促した。 先に来ていた他の子供たちと一緒に彼女はリヴァイに手を振り歩いていく。 ポケットから手を出して控えめに振り返すリヴァイの姿に自然と笑みが零れる。彼のこういう姿がエレンは好きだった。 「お前に風邪なんて引かれたら困るからな」 「そんな大げさな。大丈夫ですよ、ミカサは他の先生にもよく懐いていますから」 「あいつじゃない。俺が困るんだ」 そして向けられた瞳はミカサを見つめていたものとは変わっていなかった。 穏やかで優しい、父親の目をしている。 しかしエレンの瞳にはそうは映ってはいない。 どきりと心臓が一つ高鳴った。それを誤魔化す様に咳払いをした。 「おいおい、大丈夫じゃなかったのか?」 わざとらしく呆れたふりをするリヴァイが意地悪い。エレンは思わず彼を睨んでしまった。 「これは違いますよ、たまたまですから」とすぐに言い訳をしたが彼はあまり信用している様子はなかった。 「しっかりしてくれよ。お前がいないと、調子が狂うんだ。話し相手がいないと寂しいだろう?」 「それは……まあ、そうですけれども」 別によりにもよって自分じゃなくてもいいだろう。そういうことを言う相手は。 今日もリヴァイに調子を狂わされる。はあ、と大きく息をついた後エレンは冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 これで少しは気分が落ち着けばいいのだが一向にその気配はない。 「……オレも、リヴァイさんがいなかったら寂しいんで。風邪なんて引かないでくださいよ」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/621
622: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:11:02.37 d 便乗して気持ちを伝えるとリヴァイは「俺のほうこそ大丈夫だ」と言って肩を竦めて笑う。 「俺が倒れたらミカサの面倒を誰が見るんだ?」 「その時はもちろんオレが、」 そこまで口にして慌ててエレンは口を閉じた。厚かましい態度を取ってしまった自分を彼は恥じる。羞恥で顔が赤くなってしまい、それを隠す様にエレンは俯いた。 「何もそこまでしなくたっていいんだぞ。自分のプライベートくらい大事にしろ」 リヴァイも気に障ったのだろうか。心なしか口調が強くなって叱られている心持になる。 「……でも、」 「本当に大丈夫だ。絶対にそんなことはないから」 ちらりと視線を上げるとリヴァイはマフラーを上げて口元を隠していた。 「……でも、何かあったら連絡してくださいね」 「ああ、『何か』あったらな」 言葉を強調するリヴァイにエレンは眉尻を下げる。 きっとリヴァイが言うのだからその「何か」はエレンの元に訪れることはないのだろう。 安堵しながらも自分を頼ってはくれないのか、と寂しさも感じてしまう。 何も起こらないことがもちろん一番なのだが、「何か」が起こって自分だけを頼って欲しいのに。 今でもリヴァイはエレンを頼ってくれているとは思うがそれ以上に、彼に必要とされたい。気持ちが報われないのならそれ程度の欲求は満たされてもいいはずだ。 今日は随分と時間があるようだ。リヴァイはまだ足を駅のほうへと向けようとはしない。エレンは自分の腕時計に目を落とした。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/622
623: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:11:06.16 d デジタル時計が表示している時間はそこまで悠長に構えていられる程の時間ではないように思える。 「いいんだ。今日は少しのんびりできるから」 エレンに聞かれる前にリヴァイは彼の抱いた疑問の答えを提示した。 「そうなんですか?」 「たまにはこういう日もあるんだよ」 「それならもっと家でくつろいでから来てもいいんですよ?」 一応園内では登校の時間帯というのは決まっている。 でも場合によってはその時間を過ぎての登校も認められているしリヴァイとミカサにも何度かそういったことはあった。 ミカサだって出来る限りリヴァイと一緒に過ごしていたいと思っているはずだ。 しかしリヴァイは首を振った。 「あまりだらだらしていると仕事に行く気が失せるからな」 「あー……それは分かります」 エレンにもその気持ちはよくわかる。 ぎりぎりの時間まで布団の中にいると起きる気力がなくなってしまうのはよくあることだ。 だから彼も極力早めに起きて無理矢理身体を起こすタイプだった。 どうやらリヴァイも同じらしい。 「それに今日はお前にも言いたいことがあったからな」 「は?」 素っ頓狂な声をあげてエレンは目を丸くした。 「再来週の土曜日、空いているか?」 瞬間、真っ白になった頭を強引に動かした。 週末に一緒に過ごす相手なんて元からいない。 わざわざスケジュールの確認なんてすることもなかった。 「えっと、空いています」 リヴァイの双瞳が柔らかく弧を描く。そんな些細な表情の変化にどきりとしてしまう。 「なら一緒に出掛けないか?ミカサが遊園地に行きたがっているんだ」 「もちろん構いませんが……その、オレも一緒でいいんですか?」 「ああ、お前と一緒がいいんだと」 リヴァイは少し困った様子にも見えた。もしかしたら珍しく駄々でもこねられたのか。 あまりそういったミカサの姿は考えられなかった。 断る理由なんてなかった。エレンは大きく頷いて笑って見せる。 ミカサを預かる以外の理由でリヴァイから声を掛けてもらったのはこれが初めてだ。 しかも休みの日に彼と会える。これが嬉しくないわけがない。 「それじゃあまた詳細は連絡する。付き合わせて悪いな、イェーガー先生」 「ッ、いえ。そんなことは……大丈夫ですから、」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/623
624: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:11:34.17 d こんな時に呼び方を変えるなんてずるい。動揺して口ごもってしまう。 駅に向かい立ち去ってしまったリヴァイの後ろ姿をエレンは見ることが出来なかった。 どきどきと心臓が五月蠅い。彼と一緒にいるといつもこんな調子だ。 ここまで心臓が早く動きっぱなしだったら、きっと自分は早死にしてしまうんじゃないんだろうか。 それよりも再来週はどんな服を着ていけばいいのだろう。 とりあえずミカサに会ったら他の子に言わないように口止めしないと。頭の中はぐちゃぐちゃになって混乱している。 リヴァイがいなくなった後も、他の園児たちが登校していたはずだったのだがそれ以降の記憶はあまり鮮明に残ることはなかった。 ***** 二週間後の土曜日なんてすぐにやって来てしまった。 迎えの時には一切その話題は出さなかったが、夜になってリヴァイから連絡が来た。 「土曜日の朝に家まで迎えに行く」とだけ簡潔に書かれた文面をエレンは何度も読み返してしまった。 日が変わっても夢じゃないのかと思いながらリヴァイとのトーク画面を開いて確認をする。 カレンダーに赤い丸まで付けてしまい、それを目にするたびに頬が緩んで仕方がなかった。 リヴァイにはやはり自分の気持ちはバレてしまっているのだろうか。でも好かれていると分かっていたらむしろ誘われなんてしなかっただろう。 リヴァイは決して男が好きだというわけじゃない。ただ娘のミカサが自分を好いているから誘っただけでそれ以上の意味はない。トーク画面やカレンダーを目にするたびに浮かれてしまう自分に対してエレンは何度もそう言い聞かせた。 そうだ、これはただのデートなんかじゃない。 ただの友人としての誘いだ。たったそれだけのこと。関係なんてものは何も進展はしないに決まっている。 「どうしたんだ?エレン」 煙草を吸いながらぼんやりとしているエレンに男が声を掛けた。彼はまだベッドの中だ。 シャワーを浴びた後も汚れたシーツの中に戻ってだらだらと寝転がっている。 エレンはその男の隣に並んでピロートークをするつもりにはなれなかった。椅子に腰掛けてだらしがない彼の様子を眺めていた。 「いや、別に」 冷たく言い放ちフィルターを噛みしめる。この前の週末にバーで出会った彼とは連絡先を交換していた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/624
625: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:12:22.71 d これが二度目の逢瀬だ。明日はリヴァイとの約束の日だったが、その前に無性に人肌が恋しくなってしまって彼を呼んでしまった。 彼との相性は特別悪くはない。 どちらかといえば良いほうだが完璧という程でもない。溺れない程度に良い。 それくらいの相性のほうが身体だけの関係を続けるにはちょうどよかった。 彼の左手の薬指に指輪が嵌められていることに気付いたのは今日が初めてだった。 確か初めて出会った時には付けていなかったはずだ。 恐らくエレンがそこまで深い付き合いを求めてはいないと分かったから、開き直って堂々と既婚者であることを曝け出しているのだろう。 「一つ聞いてもいいか?」 「どうぞ?」 男はベッドの中で両手を広げる。 このまま飛び込んできても構わないと言っているようだったが、エレンはその誘いには乗らなかった。 短くなった煙草を灰皿に押し付けながら口の中に残った紫煙をエレンは吐き出す。 「奥さんには言っているのか?バイだってこと」 男にとってエレンの質問は予想外だったらしい。 ハトが豆鉄砲を食らったような顔を浮かべた。 広げた両手を下ろし彼は顎をこすった。 「言っていないよ。言えるわけがないじゃないか」 「一度も?」 「もちろん。俺は女だけじゃなくて男も好きだなんて言えないよ、彼女を愛しているんだから」 よくもまあ平気で浮気なんてしておいて「愛している」なんてさらりと言えたものだ。 呆れ果てるエレンに男は小さく笑った。悪びれる様子なんて全く見られない。 「大切に思っているんだ。彼女のことも、それに子供のことも。家庭は崩したくはない。でも結婚してからセックスレスになってね。だからこうやって火遊びしているってわけさ」 「……最低だな、アンタ」 思わず本音を呟いてしまった。 女ではなくて男を選ぶ理由はエレンでもわかる。男なら妊娠しない。 それに仲良くしていてもまさかセックスをしているなんてまずは思われない。 彼のような既婚者であれば尚更だ。 仕事先で出会った友人だとでも誤魔化していれば彼の奥さんは浮気だとは思わない。 男は怒らなかった。反省はしていないが、それくらいの自覚はあるようだ。カラカラを笑いながら「そうだな」と頷いていた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/625
626: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:12:26.47 d 「でも君だって同じようなものだろう?本命がいるのに俺を利用するなんて」 うっかり片思いの相手がいることを話さなければよかった。 それにこんなやつと同類なんて思われたくはない。舌打ちを一つして顰め面を浮かべたが、エレンは言葉で否定をすることが出来なかった。 「悪い男だと思うか?」 上目遣いで彼を見上げる。自分よりも体格がいい男はこうされることが好きだというのはエレンの経験上分かっていることだ。 彼もそうだった。甘えているのだと勘違いをして気を良くしている。顔を近づけられてもエレンは拒まなかった。 瞼を閉じて彼からの口づけを受ける。舌を差し込んだ後、すぐに引っ込めて唇を開けば男の舌が口内にねじ込まれた。音を立てて舌を絡ませながらエレンは男の首に腕を回す。 体勢を変えて自分の身体の上に跨ってきた男の単純さにキスをしながら呆れてしまった。 「いや?むしろ魅力的だね、君のような男は」 キスを終えて男はエレンの顔の間近で厭らしく笑った。色っぽさなんて感じない。 ときめきなんて微塵も感じていなかったがエレンは不敵に笑って男の襟足を指先で触れた。 再び自分の身体に触れてくる大きな手のひらに身体を捩りながらエレンは快楽に身を任せようと瞼を閉じる。 浮かんでくるのはどうしてもリヴァイのことだ。行為中忘れようとしても彼の顔や声が浮かんできてしまう。 もしも男の手のひらが彼のものだったら。聞こえる息遣いがリヴァイのものだったら、そんな妄想の中にエレンは自分の意識を沈めた。 「ッ、」 思わず口にしそうになるリヴァイの名前を飲み込んでエレンは唇を噛みしめる。 それが快感を堪えている姿だと思った男はこちらを見上げながら、下半身に顔を埋める。 「はっ……アッ、」 わざとらしく立てられる水音を聞きながらエレンはリヴァイのことを考えてしまっていた。 男は自分と同じようにはならないのだろうか。エレンのペニスを舐めながら自分の妻のことを考えることはないのか。 子供への罪悪感だとか、そういうものは抱いたりしないのか。身体を捩りながらエレンは手を伸ばし、男の頭を押さえつける。 こちらを見上げた男にわざと吐息を荒げながら「もっと」と呟けば彼は喜んでいた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/626
627: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 14:12:52.73 d 男はなんて単純な生き物なんだろうか――自分を含めてだが。 エレンは呆れながらもわざとらしく声をあげて善がって見せた。こういう時くらい楽しまないと。 「んっ、あっ……なあ、もっと……もっと強くしろよ」 年下の癖に生意気だと言われかねないが彼は別だ。 煽るような言い方をしたほうが彼は燃えるらしい。 お望みだといわんばかりにきつく吸い上げ、根元を擦る彼の愛撫にエレンはまた甲高い声をあげてシーツを掴む。 同類だとは言っていたがやはり彼は自分とは違った人間のようにしか思えなかった。 自分は彼のことだけを見つめることが出来ない。セックスにだって集中出来やしない。 どれだけ愛されてもその向こうにいるリヴァイのことしかエレンは考えられなかった。 歪む視界の向こうで自分を見下ろすリヴァイを想像しながらエレンは男の口の中で果てた。 END((ノ∀`)・゚・。 アヒャヒャヒャヒャ http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/627
628: 名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4) [sage] 2016/04/06(水) 14:13:19.50 0 つべのライオンホンマかわええ見飽きん http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459819775/628
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