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【腐女子カプ厨】巨雑6439【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net (505レス)
【腐女子カプ厨】巨雑6439【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/
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342: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:03:13.09 d この癖は、いつからだったか。 大切な人たちから自分に向けられる言葉や表情、一つ一つを思い出にしようと、心にしたためるようにして深く刻み付ける。 「なぁ、ヒストリア……いや、女王様は元気か?」 そういえば、と、ふと思い浮かんだ見知った顔。 だがその人物は自分とはあまりにかけ離れた地位にあり、今や名前で軽々しく呼んでいいような身分の相手ではない。 まさか自分と共に勉学や訓練に励んできた仲間が、国の主になってしまうなんて。 元々、由緒正しい王族の血筋であったことが明らかになり、国の変革を求める人々らによって祭り上げられた彼女は、形ばかりだった今までの王に成り代わり、名前も生活をも一変させて女王として国に君臨することになった。 「今は僕たちも遠目で見れるだけなんだ。でも、時々隠れて手を振ってくれたりするよ」 「そっか。もう暫く会ってない気がするな…」 彼女が女王に就任してから会えたのは、2度程だったか。お忍びで此処へ来たヒストリアとミカサやアルミンを含む同期連中が数人、自分の誕生日に皆でパーティーを開いて祝ってくれたのがもう大分前のことのように思える。 「なぁ、あと、ライナーとベルトルトは?アニのやつもずっと見てないような気がするし」 エレンの言葉に、隣に居たミカサが顔を上げて斜め前に座っているアルミンを見た。 アルミンは持っていたティーカップをソーサーに戻すと、話し始める。 「アニの方は憲兵の仕事が忙しいみたいで。他の2人も僕らよりずっと大変な任務があるからね。なかなか時間が取れないらしい」 「そっか。みんな忙しくやってるんだな…」 訓練兵を卒業して疎遠になってしまった者も当然いる。 アニはあんな性格だ。同期だからといって自分一人のためにこんな場所まで訪ねて来るはずもない。 しかし、それぞれが自分に与えられた役割を果たしている。 …自分ばかりが、取り残されて。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/342
343: 名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4) [sage] 2016/04/06(水) 21:03:17.91 0 腰おしゃれてイサヤマンの感覚は分からんは http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/343
344: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:03:21.59 d 「エッレーン!お邪魔するよ〜!」 「あ。この声、ハンジさんだ。」 玄関の呼び鈴よりも余程威勢のいい声が響き渡り、その声の主である客人をもてなさなければと慌てて立ち上がったエレンは、部屋のドアからロビーに急ぐ。 「こんにちはエレン君、早速だけど庭の手入れをさせてもらうね」 そう言ってハンジの斜め後ろに立っていたのは、この人の部下。 頭には日除けの麦わら帽子を被って首にはタオルを巻き、両手に使い古された軍手をはめて右手には彼の得物とも取れる使いなれたスコップ。 その出で立ちは熟練された庭師であることを物語っている。 …彼の実際の職業はともかくとして。 自分たちの上官でもある客人の訪問に、エレンに続いてミカサとアルミンも出迎えようと部屋から出てきた。 「いつもすみません、モブリットさん。ハンジさんも忙しいのに…」 「いいの、いいの。私は息抜きで遊びに来てるんだから。モブリットも何かを世話するのが趣味なだけなんだから気にしないでいいよ」 「お言葉ですが、ハンジさん。僕は貴方の世話は趣味でやってるわけじゃないですからね。」 モブリットの、上司に対する恐れもない毅然としたその言葉に笑いが起こり、ハンジ本人とエレンまでも同じく声を上げて笑った。 皆でこんな和やかな会話をしながら、笑いの絶えない生活が当たり前のようにいつも傍にある。 こんな穏やかな毎日が与えられているのは、自分がこの場所に居ることを許されているからだ。 「そろそろ僕たちは帰るね。」 そう言ったアルミンと、泊まりがけで必要だった荷物を纏めたミカサがその後に続く。 外開きの玄関のドアが開放され、出ていこうとするミカサとアルミンにつられてエレンは咄嗟に足が動いた。 踏み出してしまった一歩。だがその先を続けられない。続けてはいけない。 いつだってこの2人の隣を歩いていた。 だけど、今の自分にその権限は与えられていない。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/344
345: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:03:52.26 d 「外まで見送りは要らないよ、エレン」 「…ああ。オレもいつかお前たちに追い付くから、それまで待っててくれよな」 エレンがそこで笑って見せたのは、精一杯の強がりだった。 今は自分が出来る事をしなければならないと、思っているから。 その顔を見たミカサが持っていた手荷物を取り落とす。 玄関に投げ出されて鞄の中からバラけ出た替えの洋服が散らばったことなんか気にもせず、エレンに駆け寄り彼の体を強く抱き締めた。 「安心して此処に居て。エレン、貴方の世界は残酷なんかじゃない…」 「………」 「ミカサ、行こう」 落とされた鞄に荷物をまた押し込めて本人の代わりに拾い上げたアルミンがミカサの肩に触れて、先を促す。 ゆっくり離れていくミカサの顔は泣き出しそうなのに笑顔で。 前にもこんな顔を見たことがあった気がするのに、それがどういう場面だったのかどうしても思い出せない。 不安にさせないようにという気遣いからか、自分の顔を見て微笑んだまま外に出て行く2人に何て声をかければ良いのか、エレンには分からなかった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/345
346: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:03:56.30 d 「心配しなくてもあの2人はまたすぐ会いに来てくれるよ、親友なんだから。」 3人の様子を黙って見ていたハンジが、あの2人が居なくなってもボンヤリと玄関のドアを眺めて放心したままその場に立ち尽くしていたエレンの背中に声をかける。 振り返って頷いた顔はそれでもすっきりしない物憂げな表情だった。 そんな彼の気持ちを切り替えさせなければと考えたハンジは屋敷の奥へと勝手に歩き出す。 「…さてさて。モブリットの庭仕事が終わるまで私たちは何して待ってよっか。座学の時間にする?」 「あ、えっと…ハンジさん。今日はまた一勝負お願いしてもいいですか」 「おぉ!私に何勝何敗したか覚えているかな〜?エレン。」 「ハンジさんの5勝0敗。オレの勝ち星無しで連戦連敗。ですよね」 玄関から応接間へと移動した2人は、向かい合うソファに座り、中央に置かれたテーブルにチェス盤を拡げて駒を並べる。 先行するのは白を選んだエレンだ。 時間が経つにつれ互いのポーンが数個取られていき、エレンの持つ重要な駒の多くはボードの端へ追いやられる。 ハンジが次の一手でチェックに持ち込めるかと思われた瞬間だった。 エレンが自分のルークをキングの隣へ動かし、キングを後退させる。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/346
347: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:04:22.02 d 「良い一手だ。アルミンの入れ知恵かな?」 「ふふ。バレちゃいましたか。昨日あいつに教えてもらったんですよ」 昨晩、徹夜でアルミンと対戦してやっと覚えた手だ。 一手で2駒動かし王を城で守ることが出来るキャスリングという特殊な技。 この前までは、それぞれの駒を動かせる範囲や簡単なルールくらいしか頭に入ってなかったエレンだったのが、実に目覚ましい進歩だ。 キングを動かさず守りに入れたいのは分かる。 チェックメイトを決められればそこでゲームが終わってしまうのだから。 しかしそれに相反し、後先を考えず攻める一方であるナイトの縦横無尽な動かし方。 キングやナイト、ポーンたち。 それらをエレンが誰に見立てて動かしているつもりなのか、ハンジには手に取るように分かってしまった。 みんなの力が必要だと理解していながら、どうしても自分が先行して動くこと止められない、エレンらしい戦い方。 それでエレンがこの先サクリファイス(犠牲)という一手まで覚えたなら、自分たちは見るに耐えられないだろう。 ボードゲーム上の事だとしても。特に彼は。 「やっぱり負けちゃいました」 残念そうに笑ってエレンがそう呟く。 決め手となったのは、自分の駒が相手の駒に囲まれてしまいそれにエレンが気を取られている隙に、駒を奥へと動かしていたハンジがプロモーションという手を使ってポーンでしかなかった駒をクイーンに昇格させ、チェックに使った奇術だった。 それはさしずめ一兵士から一日にして女王にまで上り詰めさせられたヒストリアのように。 「なかなか良い勝負だったよ」 「…ねぇ、ハンジさん。オレたちの戦いは、こんなボードの上で行われているような生半可なものだったでしょうか」 「……?」 「ヒストリアの存在は確かに重要だった。けれど相手のキングを取れば終わりに出来るような、そんな簡単な戦いじゃなかったはずです。」 続けてエレンは言い放った。 「だから、ちゃんと皆殺しにしねぇと…」 声色が一変し、見開かれた双眸が攻撃的な金色を湛えてぎらりと光る。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/347
348: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:04:26.17 d 「エレン…?いきなり物騒なこと言うなぁ。どうしたの?」 しかし殺意剥き出しの顔を今しがたしていたはずのエレンが、今度は俯いて顔面蒼白になり、いやだ、こわい、と言いながら急に体を震わせ始める。 「何で…?オレのキングが無い。居ないんです、此処に、」 「……え?」 エレンの駒だった白のキングは台座の上に置かれている。 しかし、それは彼の眼には映らない。どうやらチェスの駒のことを言っているのではないらしかった。 「オレは、あの人の命令ならちゃんと従えるのに…」 ハンジは気付く。エレンが言う『あの人』が、誰のことを言っているのか。 「命令…?違う、そうじゃないッ!オレは自分の意思であいつらを…!」 大声で叫んだエレンがソファから急に立ち上がる。 エレンの意識と魂は交錯していた。 唯一信じて自分を託せるその人にその身を委ねたいという彼の意識と、自分が思うように戦いたいと思えば檻をも破壊できるほどの攻撃性を孕んだ、魂とが。 均衡が崩されつつある。 これ以上は自分の手に負えないと判断したハンジが何とかしなければと、自分も立ち上がった。 「少し落ち着こう、エレン。待って、今、薬を…」 激昂し今にも暴れ出しそうなエレンに背を向け、ハンジはこの部屋で安定剤が保管されているであろう場所へ移動する。こういった不測の事態でも対応出来るように念のため、各部屋に用意してあったはずだ。 注射器で精神安定剤を打つ前に手がつけられない状態になったらどうするべきか。生憎、気密性の高い防音に優れた屋敷だ。 異変に気付いた部下が駆け付けてくれる見込みはあまりない。外に出て先にモブリットを呼びに行くべきかどうか。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/348
349: 名無し草 (ワッチョイ ab82-eoZT) [sage] 2016/04/06(水) 21:04:33.02 0 ジェル座標で無知性また操るんけ http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/349
350: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:04:53.83 d 考えながらもハンジは飾り棚の引き出しから取り出して、密閉された容器に入っていた薬を注射器で吸い上げさせ、準備をする。 「嫌だっ…!オレはッ!誰の指図も受けないッ!」 ガシャンッ エレンの手によって乱暴に振り払われたチェス盤が大きな音を立てて床に投げ出される。飛散してばら蒔かれた駒が床に転がり落ちた。 朧気な意識の奥底からそれでもいつだってじわりと胸を掴んで離さない記憶。 深紅の絨毯に散らばるその様を見て、赤く赤く無惨に投げ出された幾つもの亡骸が脳裏に思い起こされる。 敵も仲間も同様に。無数の死体の上に築き上げてきたのは、ただ国の安寧を願うためのものだったか。 自分たちが手に入れようとしていたのは平和という偶像で飾られた小さな世界でしかなかったのか。 狂っているのはオレじゃない。 ずっと前からエレンはそんな違和感を少しずつ感じていた。 皆が話している言葉と自分の記憶とにズレが生じて、本当のことが分からなくなっていたことに。 自分はどうして此処に居なければいけないのか。 己の意思を蔑ろにされてまで閉じ込められている理由が分からない。 もう誰の言葉も信じられないならいっそ、自分の感情に付き従うしかないのではないか。 そう。自分を支えてくれていたのは、ミカサとアルミンだけじゃない。 いつも隣に居て自分を見守ってくれていた人が、他にも居た。 家族や親友という繋がりが足枷になって引き止めさせてしまうのならば、自分に対し何の柵もない彼ならきっと。 あの人ならば…自分の全てを理解してくれる。望みを伝えれば此処からだって解き放ってくれるはずだ。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/350
351: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:04:57.87 d 「…ねぇ、ハンジさん。みんな遊びに来てくれるのに、何で兵長だけオレに会いに来てくれないんですか?」 立ち竦むエレンは窓の外を見た。 何故だろうか。空を見て、彼の影を探してしまうのは。 自分はあの人の背中をいつも追い求めていたのだと、それだけはハッキリと分かる。 自分はあの背を追って、まだ飛べる。 皆が握って離そうとしない命綱を、自ら振りほどくことだって厭わない。 「待って、エレン…『兵長』って、誰?そんな人、どこにもいないよ…?」 信じられないような発言にエレンは眩暈がした。 「!?嘘だッ!最期まで一緒に戦うって決めたんだ!!今も一人で戦ってるかもしれないのに!何でッ!オレだけが、こんな所に…っ」 自分の中に確かにある、あの圧倒的な存在が現実のものではないと否定されるなんて。頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。 いつでも先頭に立ち、導いて、進むべき未来を選ばせてくれた彼は、自分が造り出した幻や妄想なんかじゃない。そんなはず、ない。 「此処に居ないって言うなら、オレ、探しに行かなきゃ…あの人を。」 「待って!エレン!!」 迷わず部屋のドアへと向かおうとするエレンを制止しようと、薬が入った注射器を握り締めたハンジが後を追う。 その時だった。 エレンが出口に到達する前にドアがひとりでに開いたのは。 実に良いタイミングでモブリットが戻ったのだとハンジは思った。 だが予想に反してその人物は、自分の部下なんかよりも今最もこの場所に必要となる人間だった。 「おい、何の騒ぎだ」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/351
352: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:05:24.25 d 品のある黒いスーツジャケットに身を包み、首には白いクラバットを巻いている。 前髪はやや右側で分けられ、襟足は短く刈り揃えられた黒髪の男。 眉根を寄せて怪訝さを顔面に貼り付けたその人物。 それは間違いなく今しがた帰って来た、この屋敷の主人だった。 その人物を視界に写した途端、エレンの瞳から大きな涙が零れ落ちる。 「あ…あ…っ、兵長…っ、兵長っ」 言いたいことは山ほどあった。 だが、一気に溢れ出るものを言葉として伝える術も分からず、衝動のまま彼に縋り付く。 堰を切って漏れ出た感情のまま、子供みたいに泣きじゃくって自分の身体に縋る少年に動揺を見せるわけでもなく、その男は肩を支えて相手を少し押し戻した。 「教えてくれ、エレン。いつから俺にそんな肩書きがついたんだ?」 その男は、先程エレンが口にした言葉を確認しようとしていた。 責めるわけでもなく、突き放すわけでもなく、落ち着かせるように頬に触れて涙でくしゃくしゃの顔をじっと覗き込む。 「俺の名前は?」 この少年の持ち前の美しい両眼はいまや白目が血走り充血して、鼻面までをも赤くさせている。整っているはずの顔を歪ませ酷い有り様だった。 「……っ」 それでも眼を背けず自分を見つめてくるグレイシュブルーの静かな瞳に、エレンの眼は戸惑うように揺らぐ。 自分はこの人をいつもなんと呼んでいるか。なんと呼ぶべきであるか。分かっていないわけじゃない。 「リヴァイ…さん」 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/352
353: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:05:28.13 d 俯き、小さな声でそう言ったエレンの肩は酷く震えていた。 その後も消え入りそうな声で続けざまに自分の名を呼び、肩に顔を埋めて泣く少年の頭を手で支える。 リヴァイと呼ばれた男は、エレンに向けていた穏やかな表情とは一変し、睨みを効かせ、相手を責めるような鋭い眼をエレンの肩越しから奥に居た人物に向けた。 困ったように苦笑いで答えるしかないハンジ。 リヴァイは、どういうことか後で説明しろと眼で問い質しているらしかった。 だがその前にチェス盤と駒がぶちまけられた床の惨状を見るに、もっと別の落ち着ける部屋にエレンを連れていき、暫く様子を見るべきか。そう考えたリヴァイが、彼から少し離れようとした瞬間、かくん、と、細身の身体が力無くその場に崩れ落ちる。 「エレン…?」 咄嗟に抱えられた少年はリヴァイの腕の中で、そのまま意識を手放した。 お互いの自室とは違い、2人で夜を過ごすための部屋は、別の場所に用意されている。 応接室や客間から離れた所を敢えて選んで用意されたその場所は、何日の間も使用されていなかったというのに、清掃を担当した本人が言う通りに塵一つ無く、ベッドメイキングも何もかも完璧だった。 ベッド脇の飾り棚に灯りを灯すための道具。香油が入ったガラスの小瓶。水差しとコップ。 いくつかの着替えとタオル、替えのシーツが仕舞われた引き出しが付いた収納棚がその隣に置いてあるくらいの、シンプルな内装。 余計な物は一切置かない。この部屋は。時間を気にするのも煩わしいから、時計だって置いてない。 お互いの身一つがあればいいと、そんな意味を持つことも知っているから、それ以上は何も言わない。確認する必要もない。 「わっ、ちょ、リヴァイさ…!」 ベッドの上で無遠慮に剥ぎ取られる衣服はあれよあれよと言う間に脱がされていくのだが、カーテンが開け放たれたままで窓から射す光を直に受けて曝された自分の貧弱な身体が哀れになり、その先を一旦止めさせたくなった。 明るいうちから致す事になろうとは思っていなかったから。 それならせめてカーテンを閉めて、暗いなら蝋燭を灯すくらいの配慮を貰いたかったのに。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/353
354: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:05:54.63 d あー!わー!とか叫んでる間に結局全部脱がされてしまい、残った恥じらいを捨てきれないエレンはシーツを身に纏おうと手繰り寄せて握り締める。 その様子を見ながら腰を下ろし、今度は自分の衣服を脱ぎ始めるリヴァイを、直視出来ずに視線を不自然に泳がせたエレンは明らかに挙動不審だ。 「いい加減慣れねぇのか」 慣れる、わけがない。 現役の兵士であるこの人の屈強な肉体を見せ付けられたら、どんなに自主トレしようと屋敷で燻っているしかない自分の身体なんて比べてしまえば情けないったらない。 だから女性のような恥じらいというよりかは、そっちの方がエレンにとっては酷だった。 でもそんなどうにもならない劣等感を知られることすら恥である。 「だ、だって。…だって、オレ、記憶があやふやだから、毎回初めてのような、ものなんです」 自分の上へのし掛かってきたリヴァイに対しどうか容赦を…と、そんな意味も込めての、苦し紛れの言い訳だった。 その言葉に少し口端を吊り上げ嗤うリヴァイの顔は影になった所為もあってか、いやに蠱惑的であり、エレンは心臓を直に撫で上げられるような恐怖と期待の矛盾した切迫感に身を震わせる。 「そりゃあ、ヤる度に初々しくて堪んねぇな」 …なぁ、エレン? 艶めいた低い声でそう言われてしまえば、もう。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/354
355: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:05:59.44 d 耳から犯されたそれが首を下り、背筋から伝わって腰までをも悪寒が走り抜ける過程で既に。 痺れが全て快楽に変わる事を、予感させていた。 さっきの初めて宣言はどこへやら。 自ら腰を揺すって躯をしならせ、いい、いい、と浮かされたように繰り返し囀ずる淫靡さに、持っていかれそうになりながらリヴァイは迫り上る射精感に堪えていた。 「っ、…おい、ちょっとは自制しろ…ッ」 「や、あっ、止まんな…んぁあっ」 いつの間にか完全に主導権が奪われている。 無垢だった少年をここまでにしてしまった自分に罪があると今ここでリヴァイは懺悔したい気持ちにまでなったが、申し開きをしたいその相手は聞いてもらえるような状態ではなさそうだ。 元々加減をしてやるつもりであったから、前戯も丁寧に時間をかけ、挿入後も様子を見ながら動きを緩やかにしてやっていたというのに。 途中から自分で動きたいと言い出したエレンに、本人のペースでやらせた方が相手にとっても楽かと考え、上にさせてやったのが間違いだった。 一度イかせたしそれで落ち着くだろうと思ったのだが、余計に拍車を掛けてしまっただけのようだ。 我を忘れ向こう見ずに突き進む性格もリヴァイは理解しているつもりだったが、今日のエレンは妙に性急で、貪欲である。 「やッ、んン、やだぁ…っ、ほしい、りばいさ…っ、もっとシて欲しぃ…ッ、」 「…ッ、エレン…」 そんな可愛いことを、腰を擦り付けながら言う。 脳を掻き交ぜられるような甘い声でねだられ頭が麻痺しかけて、倒錯行動に至らせるほどの危険すら感じたが、理性の綱をそれでもリヴァイは手放さなかった。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/355
356: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:06:25.48 d 身を起こし、エレンを抱き締めると、宥めるように背中をさする。 「…駄目だ、今日はゆっくり。…な?」 「ふ、ぅ、ん…うぅ、」 その言葉に相手の肩に取り縋り、必死で自分を落ち着かせ従順になろうとするいじらしいエレンに、いい子だ。と言って、震える額にキスを落とし、乱れた髪を梳いてやる。 本当なら淫ら極まりない声で泣くまで喘がせ、溺れさせてやりたいくらいだが。 倒れたばかりでこんな行為を強いていることさえ間違いなのに、これ以上無理をさせるわけにもいかない。と、リヴァイは我慢させざる負えなかった。 首に手を回して相手の律動に合わせられるまでにやっと自分を取り戻したエレンの腰を抱いて、緩和な動きで下から突き上げる。 洩れ出た熱い吐息を時折奪って口付け、エレンの様子を見ながらリヴァイは抽送を繰り返していたのだが、閉じられた瞼の端から突然、水滴が頬を伝って零れだした。 動きを止め、どうした?と、聞きながら、眦から零れ落ちた涙を唇で拭ってやっても、留めどなく溢れ出て更に止まらなくなったので、困り果てたリヴァイはエレンの頬を両手で抱えるようにして押さえ、真っ直ぐ見つめる。 「おいおい。泣かれたら、善くねぇのかと思っちまうだろ…?」 具合が悪いのか?と聞くリヴァイに、ふるふると首を振って、エレンがしゃくり上げる。 途中で気分が悪くなったら中断するから、ちゃん言え。と、最後まで自分の事を第一に気遣ってくれているリヴァイの優しさに、エレンは今まで押さえていた涙がついに決壊してしまった。 「……ん、ふ………って、だって…っ、こんな、近くにいるのに遠くて、こわいんです…また離れ、たら、リヴァイさんのこと、全然分からなくなっちゃうかもって…思ったら、オレ…ッ」 ずっとそんな不安を抱えていた。 一緒に居る間は相手の事が分かるのに、傍に居ない時は何故かリヴァイの記憶だけが薄れていく。 同期の皆や幼馴染みのことは絶対に忘れないのに、リヴァイのことだけが、何故か。 事故で一時的に失われただけかに思われていた記憶の穴は、リヴァイに関することだけが未だ進行して広がっていた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/356
357: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:06:29.53 d リヴァイと過ごした日々の大事な記憶を何度も何度も反復し、紙に書き留め、忘れまいと抗う事を人知れず繰り返していたけれど、いつかまた完全に喪失してしまったらという恐怖がエレンをいつでも責め立てた。 「……。大丈夫だ。俺はお前を覚えてる。ちょっとくらい忘れても、ちゃんと思い出させてやるから…」 だからもう泣くなとリヴァイはエレンを強く抱き締める。 その言葉にやっと開かれた揺蕩う瞳は水底の硝子玉のようにゆらゆらと綺麗で、尚も愛しさが込み上げる。 自分を信じて疑わないのであろう純真な瞳ごと、舐め回して愛してやりたいくらいだった。 愛しいと感じる身体そのものが情欲に直結しているみたいにリヴァイを昂らせてしまったから、エレンは自分の中に収まっていたモノを、強制的に思い出させられて腰にずくん、と、快感が走る。 抱き締めたままで堪らずリヴァイが中を穿つと、甘ったるい矯声が耳に心地よく響いてそれを更に引き出すようにして腰の動きが速くなり、互いの熱を限界まで掻起させるのも容易かった。 「んンぁ、ふぁあっ、あ、ぁっ」 「……っは、エレ、ン…ッ」 最奥まで捩じ込み、中イキさせて自分の種をこれでもかってくらい植え付けてやりたい程だった。 しかし、ドライオーガズムは平常でも暫く動けなくなるくらい身体に負担がかかるものだ。 元より今日は大事を取ってそこまではしないつもりだった。 肉穴が、きゅうきゅう締まって限界を訴えてくるので、イキそうか?と、聞けば、こくん、こくん、と頷いて、エレンが絶頂を前にしがみ付こうとするので、リヴァイは中から濡れて滑る自身を引き抜いた。 なんで?どうして?と、恨めしそうに震えている哀れな瞳に構わず、血管が浮き出て極限まで猛った肉棒を相手のそれに擦り付ける。 エレンの手を取り互いのモノを握らせて、リヴァイも一緒に強く握り込んで裏筋をぐっと擦り上げた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/357
358: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:06:56.20 d 「っあぁ、ン…!あ、ーんんッ」 「ーーッ!」 吐き出した自分の体液が相手の性器を汚していることすら、得も言われぬ快感で。 出した後で白濁に塗れたぺニスをしつこく擦り付け絡ませ合うという動物じみた行動にすら互いに酔いしれて、いつまでも2人は名前を呼び合い濃厚なキスを交わして確かめ合った。 くたりとベッドに沈むエレンの体をきれいに拭いてやって、服を着せてやる。 自分で出来ますと言ってもけっきょくリヴァイがやってしまうとエレンは分かっていたから、全部任せた。 何から何まで、すみません。と、手間をかけさせている事を律儀に謝るエレンに、俺が好きでやっていることだとリヴァイは言いながら毛布をかける。 「明日はオレが調子良かったら、対人格闘の訓練つけてもらってもいいですか?」 「ああ。」 「オレ、いつか記憶が戻って病気も治ったら、リヴァイさんと色んな所へ行きたいです」 「……そうか」 穏やかな表情で夢物語を話して微笑むエレンの頭を撫でてやれば、すぐにうつらうつらと微睡み始める。 その稚い様子にどうしようもなく愛情が湧き出てしまうリヴァイは、こめかみにキスを送った。 「無理をさせたからな。もう休め」 そう言ってやれば、素直なもので、数分も待たずにエレンは眠りへと落ちていく。 「……何処にも行けないんだ、エレン。」 深い眠りに静かな寝息を立てる綺麗な顔を見下ろしたリヴァイの瞳は冷たい影を落とし、曇る。 忘れても思い出させてやるなどと、根も葉もない戯れ言を吐いた自分のこの舌を噛み切ってやりたい。 「なんせ、俺が切り落としちまったんだからな」 飛ぶことを覚え始めたばかりで未完成だったが、真っ直ぐで美しかった柔い風切り羽を本人も気付かぬ間に削ぎ取ったのも、この鳥籠に閉じ込めてお前を騙し続けているのも、他でもない自分なんだ…と。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/358
359: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:07:00.71 d この前はサシャとコニーが泊まりに来て。また別の日にはジャンとマルロ。 その後はピクシス指令と部下の女性が訪ねて来た。 その次はエルヴィンさんとナイルさん。昨日はまたミカサとアルミンが来ていた。 必ず毎回2人ずつ、それすらも意味があったのだと。 『身体の調子がまだ戻ってないこともあるけど、脳が情報を処理しきれなくて、一時的にまた昏睡状態に入ったんだと思う。』 『何故、エレンの記憶は戻りかけている』 『薬に対して身体に抗体が出来てしまっているのか。それとも自分の意思で飲まないようにしているのか…』 『だが、飲み続けたとしても、あいつの中に未だ燻る衝動をそんな薬ごときでずっと抑え込めるなどと、俺には到底思えん』 『そのためのストッパーとして貴方がいる』 夢か現か。その時は、自分でもよく分かっていなかったが。 裸足のまま夢遊病みたいに意識がはっきりしない頭で屋敷を彷徨って辿り着いた部屋の前でそんな会話を聞いてしまったのは、大分前の事だったろうか。 気怠さが抜けきらない身体を起こしたが、そのままでは少し寒く感じた少年は素肌にシーツを身に纏い、ベッドから這いずり出て窓から外を眺めた。 ガラス越しに空を仰ぎ見、月明かりを宿したまるい瞳は磨かれた金のような眩い輝きを放つ。 脱ぎ捨てベッドに置いたはずの服が縺れ合う間に散らばってずり落ちたのか、自分の衣服が床に散乱していた。 どうにかしようとそれらを拾い上げると、シャツから何かが落下する。 そのまま転がり落ちて壁に当たり、動きが止まった小さな石ころのような球体のものを彼は拾い上げた。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/359
360: 名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU) [sage] 2016/04/06(水) 21:07:00.88 a 腰ちゃんどう見ても男子高校生styleやけどおしゃれさんなん http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/360
361: 名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4) [] 2016/04/06(水) 21:07:31.13 d 自分にだけ見せる顔。雄の顔ではない、男のリヴァイだけが見ることのできるエレンの雌の顔が見たいのだ。 結果的には…そう、結果的にその顔は見ることができたし、自分のモノにもできたと思う。だが、エレンは心までは許してくれなかった。 「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」 「良さそうだな、エレン」 「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」 エレンの背中にちゅ、ちゅ、と吸いつきながら、腰を掴んでぐちゅぐちゅになって解れている後孔を何度も穿つ。 外気に触れれば熱を持つローションがエレンの内側の肉をますます敏感にしてしまうようで、中は火傷しそうなほどに熱かった。 こうしてセックスするようになって、どのくらい経つだろうか。季節は冬から春に変わっていた。 エレンはやたらセックスをねだるようなことはしなかったが、我慢ができなくなるとリヴァイのところにやってくる、そんな感じだった。 まだ少し、リヴァイに抱かれることに戸惑っているようだったが、指先でも触れればその体は素直になった。 だが、エレンは最初の頃よりも声を抑えるようになった。 息ができているのか心配になるくらい顔を枕に押し付けて、くぐもった喘ぎだけを漏らす。 手はシーツを強く掴んでいて決して離そうとはしなかった。 まだ男に抱かれる屈辱に耐えているのかと思いきや、気持ちいいか、と聞けば素直に気持ちいいと言うのだ。 だったら我慢などせずにもっと喘げばいい。 縋りつけばいい、そう思っているのにエレンは頑なにそうしようとはしなかった。 「おい、エレン」 「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」 声を我慢されるのが不愉快で、一度性器をずるりと抜くと、その体をひっくり返してこちらを向かせた。 顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、荒い息を繰り返すエレンは驚いた様子でリヴァイのことを見た。 http://shiba.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1459925027/361
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